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ユニークギフト『司書』でどんな問題もバッチリ解決! ~名門貴族の落ちこぼれでも物語のヒーローになれますか?  作者: 日之影ソラ
第一章

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20/30

20.強さを求めて



 昼休みが終わる。

 勉強会も休憩を挟みつつ続けていた。


「二人とも午後の授業はいいの?」

「大丈夫だよ。受けたい授業は午前中に済ませてきたから」

「オレもだ。つか授業とか聞いてもよくわかんねーし」

「あんたは寝てるからでしょうが」


 好きを見つけては文句を言い合う二人だけど、さっきの話を聞いた後では微笑ましく見える。

 これが二人にとっての交流なのだろう、と。

 ただ、会話が増えてきたのは集中力が途切れている証拠だ。

 僕は二人に提案する。


「一旦休憩にしましょうか」

「さんせーい」

「はぁ、疲れたぁ~ なんでこんなこと覚えなきゃなんねーんだよ。計算とか歴史とかさぁ~ ギフトと関係ねーじゃん」

「ホントよね。あんたと同じ意見とかムカつくけど」


 二人とも大きなため息をこぼす。

 本当に苦手、というか嫌いなんだろうね。

 進級試験に筆記があるのは一年生だけだ。

 一年では各ギフトに関することとは別に、一般教養や基礎知識を教わる。

 筆記試験で問われる内容がまさにそれだった。


「二人ともしっかりして! 学園は学ぶところなんだよ?」

「わかってるっつの」

「優等生だよね。ニナって」

「私だって別に勉強が得意ってわけじゃないんだよ。むしろ苦手だからよくアレンに教えてもらってるんだから。フレンダさんは得意そうだよね」

「私は……苦手ではないです。運動は苦手なので頭を使うほうが得意、だと思います」


 フレンダさんはイメージ通りだ。

 僕が二人を教えている間、ついでに勉強していたニナに質問され答えている場面があった。


「オレは戦ってるほうが楽だなぁー。あーあ、身体動かしてぇ」

「一人で走り回ってきたらいいじゃん」

「それじゃつまんねーだろ。相手がいねーとさ。学園の外だったら適当に魔獣でも探しに行くんだけどな」

「魔獣? 魔獣と戦っていたの?」


 僕は驚いて思わず尋ねてしまった。

 ジーク君はそれに答える。


「おう。森とかに入ってなんどか戦ったぜ。あいつら普通の猛獣より強いからな。つっても大型の魔獣とは戦ったことねーよ」

「そ、それでもすごいよ」

「そうか? なんか照れるな」

「アレンも戦ってことあるよね? とっても強い大型の魔物と」


 そう言ったのはニナだった。

 なぜかジーク君に張り合うように。

 それを聞いたジーク君は身を乗り出して――


「本当かそれ! すげーなお前!」

「あ、えっと、ありがとう」

「なぁ! だったらオレと手合わせしてくれねーか! 勉強続きで身体がなまりそうなんだよ!」

「手合わせって」


 いきなりそんなことを言われても困る。

 戸惑う僕に、フィオさんが言う。


「嫌なら断ってもいいよ。こいつの思いつきだし」

「思いつきじゃねーよ! オレは強くなりねえーんだ。そのためには強いやつと戦うのが一番なんだよ!」

「まーた始まった」


 呆れるフィオさん。

 だけど僕は、ジーク君の意見に共感していた。

 強くなりたいという気持ちは僕も同じだ。


「わかりました」

「いいのか!」

「はい。僕も……強くなりたいですから」

「いいね。その目が気に入ったぜ!」


  ◇◇◇


 僕たちは場所を移した。

 以前に魔獣と戦った訓練室は修繕中だったから、その隣を使う。

 中の構造は同じだ。

 向かい合う僕たちと、それを離れた場所から見守る三人。


「んじゃ始めようぜ。得物はなに使っても構わねーからな」

「ジーク君の武器は?」

「オレはこいつだ」


 そう言って彼が見せたのは、硬く握られた拳だった。

 つまり、彼の武器は素手。


「オレは『超身体』と『鋼鉄化』を持ってんだよ。こいつは殴り合いに特化してる。つーわけで俺の身体が武器なんだよ」

「わかりました。なら僕も――」

 

 彼の戦い方に合わせよう。

 肉弾戦、拳での戦いが得意な主人公はすぐ思いついた。

 僕は本のタイトルを口にする。


「【竜拳道】」


 ギフトの効果によって本が開かれる。

 僕の両手には黒いグローブが装着された。


「お、なんだそれ? 本からグローブが出てきやがったぞ」

「これが僕のギフト『司書』の力です。本を開いている間だけ、僕は物語の主人公と同じ力を扱えます」

「主人公の力? そのグローブがそうだっていうのか?」

「はい。これが僕の武器です。この本の主人公なら、ジーク君とも気が合うと思いますよ」


 僕は力強く拳を握る。

 ギフトの効果を発動させたことで、今の僕は主人公と同じ状態にある。

 彼の目からきっと、僕が戦う人に見えているはずだ。


「へぇ。ちなみに聞くけど、その本の主人公ってどんなやつなんだ?」

「世界で一番強い男になりたい。そう願って拳一つでいろんな強敵と戦った人ですよ。小さな獣から、最後には自分の何十倍もあるドラゴンと殴り合っていました」

「ははっ! ドラゴンとか! そいつは最高だな。ってことは今のお前は、ドラゴンと殴り合ったそいつと同じってことか」

「そういうことです」


 幻想の怪物、ドラゴン。

 誰もが知る物語の強敵と殴り合った経験が僕の中に入ってくる。

 今なら……どれだけ分厚い壁だって打ち破れる気がするよ。


「いいね、相手にとって不足なしだ! さっさと始めようぜ!」

「はい!」


 地面を蹴る。

 一直線に正面へ、狙う場所も決まっている。

 力強く握った拳がぶつかり合う。

本日の更新はここまで!

明日の更新で一章は完結です。


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