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ユニークギフト『司書』でどんな問題もバッチリ解決! ~名門貴族の落ちこぼれでも物語のヒーローになれますか?  作者: 日之影ソラ
第一章

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19/30

19.勉強会?

 午前と午後、授業の合間は長めの休み時間になっている。

 みんなこの時間に昼食をとったり、午後の授業に向けて休んだりしている。

 一日のうちでもっとも図書館の利用者が多い時間帯だ。

 普段から忙しい時間に、今日は別の理由で忙しさを感じていた。


「ここの問題は、ここをこうすると簡単に解けますよ」

「おお、本当だ!」

「アレン君、こっちも教えてもらえない?」

「うん。えっと、ああこれはですね。まずは先にこっちの計算からして――」


 座って勉強をしている二人の間に立ちながら、交互にわからないところを教えていく。

 二人とも真剣に僕の説明を聞いてくれていた。

 そこへニナの声が響く。


「アレンちょっといい? 探してほしい本があるんだって!」

「あ、うん! ごめん二人ともすぐ戻るので待っていてください」


 二人を残してカウンターへ駆ける。

 カウンターではニナとフレンダさんが利用者の対応をしてくれていた。

 簡単な貸し出し業務なら二人に任せられる。

 ただ、十万冊を超える本の中から目的のものを探す作業は僕にしかできない。

 

「その本ですね。二階へ階段で上がって真っすぐ突き当りの本棚。下から二段目の右から十八冊目にあります」

「ありがとうございます」

「ありがとう、アレン」

「ううん、また何かあったら呼んでね」


 利用者に本の場所を教えたら、急いで二人の元へと戻る。

 

「お待たせしました」

「おう。なんか悪いな。忙しい時にきちまって」

「そんなことないですよ。相談に乗ると言ったのは僕なので気にしないでください。それにもう少ししたら落ち着くと思うので大丈夫です」

「そうか? なら遠慮なく、次はここを教えてくれ」

「はい」


 慌ただしい時間はあっという間に過ぎていく。

 昼休みも忙しいのは最初の三十分ほどだ。

 後半は利用者も減って静かになる。

 それに合わせて勉強もひと段落させ、休憩を挟むことにした。


「あー疲れたぜ」

「まだ三十分くらいでしょ? ていうか一番疲れてるのはアレン君だと思うけど?」

「そんなことわかってるっつーの!」

「ホントにわかってるんでしょうねぇ」


 この二人は隙あらば言い合いをしちゃうな。

 仲が悪いという感じではないし、見ている分には少し面白い?


「アレン。こっちも終わったよー」

「うん。二人ともありがとう。フレンダさんもごめんね? 手伝わせちゃって」

「いえ。お手伝いすると言ったのは私ですから」

「そう言ってもらえると嬉しいよ」


 二人のおかげもあって、勉強を教えながら司書の仕事も並行して熟せた。

 もし一人だったら絶対に無理だったな。


「二人はどう? 勉強は捗った?」

「おう! おかげさまでな」

「アレン君って教えるの上手いよね。ニナが教わってたっていうのも頷けるよ」

「そうでしょそうでしょ! アレンはすごいんだから!」


 なぜかニナが自慢げに語っている。

 僕はそれが誇らしかった。

 

「勉強は得意なほうだから。本を読めば忘れないし」

「へぇーすげぇ記憶力だな! オレにも分けてほしいぜ」

「馬鹿ねあんたは。ギフトの受け渡しなんてできるわけないでしょ」

「ん? あ、ギフトなのか。じゃあ無理だな」


 彼はあっさり断念した。

 二人の会話を聞きながら、あることに疑問を感じる。

 僕は恐る恐る尋ねることにした。


「えっと、二人は僕のこと……」

「こいつは馬鹿だから知らないよ。他人のこととか全然覚えないしね。周りの評判とかも聞いてないからね」

「馬鹿じゃねーよ。細かいことは気にしてねーだけだ」

「っていう感じ。あたしはニナから話を聞いてたから知ってるよ」


 ニナに視線を向ける。

 彼女はうんと一回頷いた。

 僕は視線を戻す。


「その前から噂は耳にしてたけどね。でも偏見とかはないから心配しないでよ。ていうか、あたしらはアレン君のこと言える立場じゃないしね」

「え、どういうこと?」

「あたしらも程度は違うけど似たような感じなんだ。あたしの家は男尊女卑って考え方が強くてさ。当主になれるのは男だけだし、女は下に見られてる。あたしは女で生まれたから扱いも酷かった。そんでこいつのところは、兄さんが優秀過ぎたんだよ」

「小さい頃からいっつも比べられてたぜ。兄貴はできるのに、なんでお前はできないんだってさ。仕方ねーじゃんよ。オレは兄貴みたいに賢くねーんだから」


 男を優先する考え方や兄弟で比較されることは、貴族の中では珍しくない。

 より優秀な子孫を残し、家を守っていくことが貴族にとっては大切なんだ。

 だからこそ、貴族に生まれた全員が幸福になれるとは限らない。

 僕がそうだったように、同じような境遇の人たちはいる。


「大変……だったんですね」

「アレン君ほどじゃないけどね。それにまぁ、あたしは負けず嫌いだからさ。男に負けるなーって気合いでなんとかしてきたし」

「オレも兄貴には負けたくなかったからな! 頭のできじゃ勝てねーから身体を鍛えたんだ。殴り合いなら負けねーよ」

「すごいですね、二人とも。僕なんか孤独に押しつぶされそうになってたのに……」


 そういう境遇にあっても前向きでいられることの凄さを、僕は誰よりも知っている。


「凄かねーよ。まぁでも寂しくはなかったな」

「そうね」

「「こいつがいたし」」


 二人は互いに指をさす。

 セリフも動きのタイミングもバッチリ一緒で、僕は思わず目を大きく開いた。

 

 そうか。

 この二人はお互いに助け合ってきたんだ。

 僕がニナに支えられてきたように。

 

「やっぱり凄いですよ。二人とも」 

 

 二人は僕より先を歩いている。

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