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ユニークギフト『司書』でどんな問題もバッチリ解決! ~名門貴族の落ちこぼれでも物語のヒーローになれますか?  作者: 日之影ソラ
第一章

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16/30

16.達成感

 犯人は気絶している間に手足を拘束して動けないようにした。

 目を覚ます前に、二人とも服に着替える。

 僕は本の力を継続したまま犯人を見張っていた。

 拘束していても霊体になれば簡単に逃げられる。

 ここまで来て逃がさない。


「お待たせ」

「ニナ、フレンダさん。二人とも平気?」

「私は大丈夫だよ」


 ニナと僕はフレンダさんに視線を向ける。

 彼女は見るからに怯えていた。

 必死に二ナの腕を掴んでいるのがその証拠だろう。


「大丈夫、私たちが一緒だから。もうなにもさせないよ」

「は、はい……」


 僕が犯人の能力に早く気付いていれば……。

 もう少しスマートに捕まえられたらよかったと後悔する。

 我ながら不甲斐ない。


「怖がらせてごめん。でもここからは僕が守る。フレンダさんには指一本触れさせないと誓うよ」

「プラトニア君……」

「アレンは強いんだよ。私も助けられたんだ。だから安心して」


 ニナはフレンダさんの手を優しく握る。

 彼女のもつ『体温操作』のギフトは、触れることで他者にも効果を発揮する。

 手から伝わる温もりは、彼女の恐怖を和らげるだろう。


「落ち着いてくれた?」


 フレンダさんが頷く。

 まだ怖さは消えていないけど冷静さは戻ったみたいだ。


「二人とも、この人に心当たりはある?」

「……ないです」

「私もないよ。一年生じゃないと思う」

「じゃあ上級生か」


 僕は言うまでもなく知らない人だ。

 同級生にも知り合いはいないのに、上級生にいるはずがない。

 ただ一人を除いて。


「ぅ、うう……」

「目が覚めたみたいですね」

「ん、あ? な、なんだこれ! くそっ!」

「暴れないでください。先輩ですよね? 貴方には聞きたいことがあるんです」


 拘束を振りほどこうとした男子生徒は僕を睨む。

 昔の僕ならひるんでいただろうけど、今はまっすぐ視線を逸らさない。


「霊体になっても無駄です。僕には見えています。この距離ならすぐ掴めますから」

「てめぇ……よくもやってくれたな!」

「それはこっちのセリフだよ! 貴方でしょ! ずっとフレンダさんのこと覗いてたの!」

「はっ、そうだよ! それがどうかしたか?」


 男は開き直る。

 この状況だ。

 否定することはないと思っていたけど、まさかここまで清々しく認めるとは。


「あーあ、せっかく堪能してたところなのによぉ~ てめぇのせいで台なしだ」

「悪いとも思っていないんですね」

「そりゃそうだろ。悪いと思ってたら最初からやるかっての」


 この男はクズだ。

 たった数回会話を交わしただけでハッキリわかるほどに。

 僕の内心は怒りが込み上げてくる。

 

「最低だよ! 女の子の裸はね! 好きな人以外に見せたくないんだよ!」

「うるせぇな! 俺が見てたのはそっちの女の身体だよ! 誰がお前みたいなちんちくりん見るかっての!」

「なっ、誰がちんちくりんだ!」

「お、おいやめろ!」


 ニナは歳のわりに小柄なことがコンプレックスだったりする。

 だからそこを指摘されると激しく怒る。

 二ナが怒りで拳に炎をともす。

 さすがに部屋の中でそれはまずい。


「落ち着いてニナ!」

「だってこいつ! 私のこと馬鹿にしたんだよ!」

「うん。でもここは抑えて。僕が代わりに言うから」

「ぅ……わかった」


 僕はホッとして息を吐く。

 男も安堵して同じ反応を見せた。

 タイミングが重なったことに苛立ちを感じながら、僕は大きく深呼吸をする。


「先輩、貴方のしたことは立派な犯罪です。彼女の生活を脅かしたこともですが、貴方はギフトを悪用した。ギフトは神から与えられた恩恵です。それを悪用することは決して許されない」

「許されない? 何言ってるんだよ。せっかく手に入れた力だぞ? 自分のために使って何が悪いんだ? 大体、俺が間違ってるっていうんならどうして神罰の一つもくだらないんだ?」

「自分のために使うことが悪いじゃないですよ。自分のことしか考えていないことが悪いんです。それから神罰なら下ります」

「は? どうやっ――ぶへっ!」

「アレン!?」


 もしかすると、僕のほうが神様に怒られるかもしれない。

 これは神罰なんかじゃない。

 僕が許せなかった。

 大切なギフトを悪用して、二人を怖がらせたことが。

 だから――


「覚えておいてください。次に同じことをすれば、霊体だろうと生身だろうと、僕がぶっとばします。今みたいにね」

「ぅ、うう……」

「ふふっ、もう聞こえてないみたいだよ?」

「そうみたいだね」


 その後、彼の身柄は学園に引き取られた。

 調べたところ彼はストーカー以外に複数の罪を犯していたらしい。

 まず学園に『霊体化』のギフトを報告していなかった。

 そして隠した力を使って、テストの問題を確認したり、試験でも散々ズルをしていたそうだ。

 この国でギフトを悪用した罪は重い。

 彼は学園を追放され、生涯を罪人として過ごすことになるだろう。


  ◇◇◇


「これにて一件落着だね!」

「そうだね」


 後日、僕たちは図書館に集まっていた。

 フレンダさんも一緒にいる。


「本当にありがとうございました!」

「いいのいいの! 私たちのやりたいことだから! ね?」

「うん。僕たちもフレンダさんの力になれてよかったよ」

「……はい」


 こうして彼女が抱える問題は解決した。

 思った以上にスッキリする。

 感謝の言葉を貰えることも、すごく嬉しい。

 いいな、こういうの。


「嬉しそうだね。アレン」

「え? うん。嬉しいよ。今まで誰かの役に立てることってなかったからさ」

「これから増えるよ。ところで一つ確認したいんだけど、いいかな?」

「なに?」


 ニコニコしながらニナは僕に言う。


「……裸、見たでしょ?」

「うっ!」

「はう!」

「やっぱり見たんだ!」


 今さらその話をするの!?

 せっかく忘れかけていたのに思い出しちゃったよ。

 フレンダさんも動揺してるし。


「アレンの変態! 私はいいけどフレンダさんまで見たんでしょ!」

「あ、あれは不可抗力で……え? ニナはいいの?」


 それってどういう――


「いいから反省しなさい!」

「は、はい!」

 

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