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ユニークギフト『司書』でどんな問題もバッチリ解決! ~名門貴族の落ちこぼれでも物語のヒーローになれますか?  作者: 日之影ソラ
第一章

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15/30

15.正体

 チクタク、チクタク。

 部屋に飾られた置時計の針が進む。

 静かな時間の中では、小さな音が鮮明に聞こえる。

 帰宅して一時間が経過しようという頃、今のところ視線は感じない。

 ニナのおかげもあってフレンダさんも落ち着いていた。

 精神的な疲労も溜まっている。

 今日くらいはゆっくり眠らせてあげたい。

 だからこのまま泊っていくことになった。


 寝る前に二人はシャワーを浴びに行く。

 フレンダさんを安心させるため、ニナも付き添っている。

 僕はもちろん部屋で待機していた。


「うーん……」


 どうしたものかな。

 ニナはともかく、僕も一泊していいのだろうか?

 見た目は黒猫でも男だし、あんまりよくないんじゃないかな。


「って違う。今はそうじゃない」


 論点がズレていた。

 僕は一人ツッコミを入れて頭を切り替える。

 部屋の向こうで聞こえるシャワーの音に惑わされそうになりながら、精神を集中させる。


 今考えるべきは、どうやって犯人を見つけるかだ。

 視覚では見つけられず、動物の感覚を使ってもまったくわからない。

 痕跡がない以上、『不可視』のギフトは違うだろう。

 ならやっぱり『千里眼』か?

 外部の人間で、かなり遠くから目標を視認できる誰か?

 だとしたらどうして学園では何もしないんだ?

 

「何もしない……」


 一番気になっているのはそこだ。

 家まで覗き込んで、姿も痕跡すら残さない。

 それだけ完璧に潜み近づいていて、どうして何もしないんだ?

 家の中も覗く相手が、見るだけで満足しているとは思えないんだけど……。


 正体がバレることを恐れている?

 触れることで効果が消えるギフトなのか。

 それとも……。


「こういう時、先生の眼なら見つけられるのかな」


 見えないものを見る先生の瞳。

 僕たちには見えないことも、先生には見えている。

 僕のギフトの力を見抜いていたように。

 そういえば、本の中にもいくつかあったっけ。

 見えないものを見る特別な眼が。

 たとえば――

 

「――! もしかして」


 僕は一冊の本を連想させる。

 少し古い架空の物語を。

 一筋の光、可能性が浮かび上がる。

 ちょうどその時だった。


「いやあああああああああああああ!」


 二人のほうから悲鳴が聞こえた。

 今のはフレンダさんだ。

 思わず声を出しそうになった僕はぐっとこらえ、二人の元へ駆ける。

 

「いい加減にしてよ!」


 今度はニナの声だった。

 ひどく怒っているのは明白。

 到着した僕の視界には、あられもない姿の二人が映る。

 シャワー室の扉が半分開いていて、恐怖でしゃがみ込むフレンダさんをニナが支えている。

 床に落ちたシャワーからお湯が流れ、扉から湯煙が漏れ出す。

 僕は慌てて視線を逸らす。

 女の子二人の裸なんて刺激が強すぎる。

 とか、いっていられる状況ではなかった。


「女の子を泣かせるなんて最低だよ! こそこそしてないで出てきなさい!」


 大声で怒鳴るようにニナが挑発する。

 しかし当然のように返事はなく、視線もなくならない。

 濃い湯煙は輪郭を捉えるはずが、なにもないように漂う。

 猫の五感を研ぎ澄ませても、二人の気配以外には感知できない。

 

 やっぱり掴めない。

 だけどいる!

 

 だったら試してみよう。


「二人ともごめん!」


 僕は変身を解除し元の姿に戻る。


「アレン!?」

「すぐ見つける! だから待ってて!」

「うん!」


 ニナの信頼を感じる。

 裸を見たことはあとで謝ろう。

 今はやるべきことがある。

 変身を解除したことで、僕の存在に相手は気づいたはずだ。

 モタモタしていると逃げられる。

 ここからはスピード勝負だ。


 本を切り替える。

 僕のギフトは一度に複数の本を使えない。

 他の本を使う場合は切り替えがいる。


 僕は左手をかざす。

 呼び出すのは、悲鳴が聞こえる前に思い浮かべた一冊。

 タイトルは――


「【幽世白書(かくりよはくしょ)】」


 この物語の主人公は、普通の人間には見えないものが見える。

 触れることはもちろん、匂いや痕跡も残らない。

 実態のない存在……。


 幽霊。


 霊的存在を見る力『霊視』を持つ。

 さらに主人公は幽霊を見るだけでなく、触れることもできた。

 その力を活かし事件を解決していく物語。

 幽霊や霊体は視認できない。

 実態がないものを五感で捉えることはできない。

 それでも、嫌な視線というのはわかるものだ。

 現に彼女たちは感じている。

 もしも犯人が霊体になっているのなら、今の僕にはハッキリと――


「見えた!」


 二人のすぐ隣に、僕を見て驚愕している男子がいる。

 若干透けているし、足も宙に浮かんでいる。

 どうやら予想は当たっていたらしい。

 彼も僕と目が合って、咄嗟に逃げようとした。


「逃がさないよ!」


 今の僕は霊体が見れるだけじゃない。

 直接触れることができるんだ!

 壁をすり抜け逃げようとする男の腕を掴み、勢いよく引っ張り出す。

 そのまま腕を背に回し、頭を抑えてグワンと揺さぶる。


「や、やめろ!」

「こっちのセリフだよ」


 多少手荒くなってしまうけど仕方がない。

 これくらいはやっていいだろう。

 女の子を泣かせたんだ。

 フレンダさんだけじゃなくてニナの身体まで見るなんて、許されない。

 気絶するまで振り回す。

 霊体が本体に戻るまでずっと続けるつもりだった。

 

 途端、霊体に重さを感じる。

 霊体に重さはない。

 咄嗟のことで驚きながら、僕は彼を地面にたたきつけた。

 その直後にニナが叫ぶ。


「あ! こいつが犯人なの!」

「え?」


 ニナに見えている?

 視線からしてフレンダさんも見えているみたいだ。

 とはいえこれで、見えない視線の正体は露見した。

今日の更新はここまで!


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