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ユニークギフト『司書』でどんな問題もバッチリ解決! ~名門貴族の落ちこぼれでも物語のヒーローになれますか?  作者: 日之影ソラ
第一章

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13/30

13.千変万化

「僕たちで犯人を見つけ出そう」

「うん! 女の子を怖がらせるなんて許せないよ! 絶対見つけてやめさせなきゃ!」

「そうだね」

「……ありがとう、ございます」


 彼女の瞳から涙がこぼれる。

 堪えていたものが溢れ出るように。

 ニナが慌てて慰めてあげていた。

 今日まで我慢していた分、誰かに相談できた安心が大きかったのかもしれない。

 僕も、きっとニナも、彼女の涙を見せられて余計にやる気がでた。


「まずどうやって見つけるかだね。候補を絞ったほうがいいかな」

「どうやって絞るの?」

「『不可視』か『千里眼』のギフトを持っている人を探すんだ。一先ずは学園の生徒に限定してね」

「そうしよう! じゃあさっそく相談役の特権を使わせてもらおうよ!」


 ニナのいう特権というのは、学園内の情報を閲覧する権利のことだ。

 学園に通う生徒の情報は、本来生徒には開示されない。

 理由は説明するまでもない。

 だけど僕たちは課題を遂行するため、特別に一部を閲覧できる権利を貰った。

 今回探すのは生徒のギフト情報だ。

 

「職員室で聞いてくるよ。二人は待っていてもらっていいかな?」

「うん。いってらっしゃい」

 

 フレンダさんは軽く会釈を返す。

 今は授業中だし、ニナも一緒なら彼女も安心できるだろう。

 それでも何か起こったら嫌だから、僕は急ぎ足で職員室に向かう。

 道中、手に入れた情報から状況を整理した。


 一月前から視線を感じる。

 登下校中だけだったのが、最近は家の中でもある。

 学園内では感じない。

 今のところ何かをしてくるわけでもなく視線だけに留まっている。


「『鷹の眼』にも引っかからないとなると、どうやって見つけるか……」


 僕は職員室で生徒のギフト情報を閲覧した。

 詳しい事情は本人のプライバシーの観点と、容疑者が教員である可能性も考慮し伏せている。

 相談を受けたからといったら先生はすぐに見せてくれた。


 僕は手に入れた情報をもって図書館に戻る。

 戻ってすぐにニナの明るい声が聞こえた。

 どうやら僕がいない間に、彼女を元気づけようと頑張ってくれていたみたいだ。

 そのおかげか、さっきよりフレンダさんも落ち着いている。


「ただいま、二人とも」

「おかえり! わかったの?」

「うん。一先ず候補は絞ったよ」


 生徒の中で候補にあがったのは三人。

 全員が『千里眼』のギフトを所持している。

 そのうち男性は一人だけだった。


「じゃあその人が犯人なのかな?」

「断定は難しいかな。それをこれから確かめようと思う。フレンダさんの下校中を僕たちで見張るんだ。ニナはフレンダさんと一緒に下校して。女の子同士なら警戒もされにくいと思う」


 逆に一緒に帰るだけで退くなら、しばらく一緒に行動していれば自然といなくなるかもしれない。

 犯人を逃がすことにはなるけど、優先すべきは彼女の安全だ。


「アレンはどうするの?」

「僕は途中まで別行動をするよ。下校中に候補の人たち、一応三人に不審な動きがないかチェックする」

「一度に三人も? どうやって?」

「こういう場面でうってつけの本があるんだ」


 今回の相談を受けて、何なら役に立てるか考えた。

 そして一冊の童話にたどり着く。

 僕は左手をかざす。

 本のタイトルは――


「【動物たちと茶会】」


 ギフトによって本が召喚される。

 これにより、本を開いている間の僕は物語の主人公と同じ力を得る。

 この童話の主人公は動物たちに憧れていた。

 彼は『千変万化』という変身能力を使って、動物たちと仲良くなっていく。

 僕は能力を発動させ、身体を黒い猫へと変化させた。

 

「アレンが猫になっちゃった!」

「僕のギフトは、本の主人公の力を使えるようになるんだ」

「ね、猫がしゃべった」

「姿は猫だけど僕だからね。変わったのは姿だけじゃないよ? この状態の僕は、動物の感覚をそのまま体験できるんだ」


 動物は人間よりも感覚が鋭い。

 特に聴覚や嗅覚は、人間の何倍も強い。

 透明化で姿を消せても、匂いや音までは消せない。

 動物だから警戒もされにくい。


「動物の感覚なら不可視の存在も見つけられると……ニナ?」


 なんだか異様にソワソワしていることに気付く。

 僕が声をかけると、ニナは目を輝かせて言う。


「か、可愛い! ねぇアレン、ちょっと抱っこしてもいいかな?」

「え、別にい――」

「ありがとう!」


 答えきる前に彼女の手は伸びていた。

 一瞬で抱きかかえられ、彼女の腕の中に。


「可愛い! 私動物大好きなんだ!」

「そういえばそうだったね」

「で、でもその猫はプラトニア君で……」

「はー可愛い! うちのペットにしたいよぉ」


 さすがにペットは困るなぁ。

 でも、こうして彼女に抱きかかえられるのは悪くない。

 凄く安心する。

 ちょっと強く抱きしめ過ぎだけど。


「と、とにかくこの能力で確かめるから! ニナたちはなるべく自然な感じで帰ってくれると嬉しいな」

「わ、わかりました」

「可愛いよー」

「ちょっとニナ聞いてる?」


 二ナの動物好きは知っていたけど僕の予想以上だった。

 しばらく夢中になっていて、僕の話も聞いてくれない。

 初めからこんな状態で大丈夫なのかと……少しだけ不安になった。

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