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ユニークギフト『司書』でどんな問題もバッチリ解決! ~名門貴族の落ちこぼれでも物語のヒーローになれますか?  作者: 日之影ソラ
第一章

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11.初めての相談者

 二年生以上は外部からの依頼を受ける。

 依頼は校舎一階ロビーの掲示板に張り出されていて、好きなものを自分たちで選ぶ。

 選ぶといってもなんでも受けられるわけじゃない。

 学年の指定、人数の制限、必須ギフトの指定など。

 細かな条件設定がされているものがあり、そういう依頼は限られた者しか受けられない。

 依頼には難易度に分けてポイントが設定されている。

 二年生以降の成績は、この依頼の成果によって大きく左右される。


「楽に稼げる依頼ないかな~」

「あるわけないだろ。真面目に探せって、ん? なんだこれ」

「どうした?」

「これ見ろよ」


 複数の生徒たちが一か所に注目した。

 他の依頼書の形式とは異なる書き方をした一枚の張り紙。

 そこには大きくこう書かれていた。


「「お悩み相談?」」


 難しい依頼の補助から学園生活での悩みごとまで。

 どんな問題もバッチリ解決します!

 ご希望の方は図書館までお越しください。


 可愛らしいイラストも添えられて、明るい雰囲気が溢れる募集用紙だった。

 注目した生徒たちは互いに顔を見合う。

 

「なんで図書館?」

「さぁ? というか胡散臭いなこれ。関わらないでおこう」


 反応は冷ややかである。

 二人は張り紙を無視して依頼を探し始めた。


  ◇◇◇


「ぜーんぜん来ないよ!」

「そうだね」


 僕とニナは図書館で相談者が来るのを待っていた。

 今はちょうど授業と授業の間。

 調べものをするために図書館へ足を運ぶ人たちも多い。

 僕はカウンターで受付をしながら、ニナもその手伝いをしてくれていた。

 

「そのうちきっと来るよ。ゆっくり待とうよ」

「アレンはのんびり過ぎだよ! もう十日経ってるんだよ? 張り紙だって作ったし、友達に話して宣伝もした。なのに誰も来ないなんて……あの張り紙もいい出来だと思ったんだけどなぁ」

「張り紙はよかったよ。可愛らしくて僕は好きだった」

「本当? じゃあなんで来ないんだろう」

「……たぶん僕が原因じゃないかな」


 少し前まで、僕は学園でもいないような扱いだった。

 名家の落ちこぼれという評判が広まり、みんな腫物を扱うような視線を向ける。

 それが今、変わろうとしていた。

 魔獣を撃退したという噂は注目度の高いものだった。

 ただ、噂は噂のままで確定した事実として広まったわけじゃなかった。

 理由は、騒ぎの原因を作った当人が容疑を否認しているからだ。

 学園側も今回の件について正式に公表していない。

 だから未だに噂の域を出ず、僕に対する評価も完全に覆ったわけじゃない。


「興味はあると思うんだ。それでもやっぱり、僕に頼ることをよく思わない人は多いんじゃないかな」

「そんなことないよ! アレンは誰より頼りになるんだから」

「ありがとう。けど、僕のことを知らない人の多いからね。仕方がないことだと思うよ」

「うぅ、またそうやって自分を悪く言って」


 別にそんなつもりじゃなかったんだけど……。

 あの日を境に、僕は俯かないと決めた。

 今でも決意は変わっていないし、今の発言も決して後ろ向きな意味で言った訳じゃない。

 ただの現状把握だ。

 僕がこの学園の人たちにどう思われているか。

 辛くとも正面から受け止めて、乗り越えていくしかないのだから。


「今すぐに見方が変わるわけじゃないからさ。気長に待とうよ」

「アレンはそういうけど、もうすぐ進級試験もあるし、終わったらあっという間に二年生だよ? このままだと何もないまま進級しちゃいそうだよ」

「それは……うん、よくないよね」

「でしょ? だからせめて一人くらい来てくれないかな~ こうパッとした相談じゃなくてもいいから! 一つでも相談を解決したらその評判が広まって、他のみんなも頼りやすくなるよね」


 その通りではあるのだけど、中々思い通りにはいかない。

 同じような会話をここ数日何度か繰り返している。

 

「そういえばニナ、授業は受けなくていいの? 最近ずっとここにいるよね」

「大丈夫。一年で必要な授業はもう受け終わってるから!」

「もう? 凄いな」

「私のギフトは炎系統に特化してるからね。そんなに多くないんだ」


 学園の授業はギフトの系統や性質によって科目が分かれている。

 長い歴史の中で、ギフトの特徴は解明されてきた。

 使い方はもちろん、個人差のバリエーションも周知され始めている。

 先人たちの知識と経験を元にして、次に続く人たちが正しく力が使えるように。

 そういう教育をする場所がこの学園だ。


「授業っていったらアレンは一つも出てないよね?」

「僕のギフトは特殊だから」

「そうじゃなくても受けておいたほうがよかったんじゃないの? 試験には共通科目の筆記テストもあるんだよ」

「大丈夫だよ。知識は本を読んでいれば身に付くし、一度覚えたら忘れないから」


 ギフトのおかげもあって、授業で教わるような知識は身に着けている。

 筆記テストで満点を取るくらいなら全然……。


「ニナ?」

「どこが役に立たないギフトなんだか」

「あははは……ほ、ほら試験前でわからないところがあったら聞いてよ。僕の中にある知識で応えら荒れるものなら教えるから」


 ニナは実技が得意な反面、何かを覚えたりするのは苦手だったりする。

 以前にあった中間試験では、筆記だけギリギリだった。

 これで機嫌を直してもらえないだろうか。


「本当? 勉強教えてくれるの?」

「もちろんだよ」

「やったー!」

 

 あっさりニコニコ顔になった。

 ホッとする反面、彼女の素直さがちょっと心配になる。

 危ない人に騙されたりしないかな、とか。

 そんな心配が頭の隅に過ったころ。


「あ、あの……」


 僕たちの前に、一人の女子生徒がやってきた。


「はい。本をお探しですか?」

「い、いえ……その……相談したいことがあって」


 モジモジしながら彼女は答えた。

 相談という言葉にビクッと反応し、僕とニナは顔を見合わせ興奮する。

 ついに初めての相談者がやってきた。 

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