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どんな悩みも水無月くんにお任せ!!  作者: たかべー
相談部始動編!!
9/78

イギリスからの転校生!!

5月も中旬に差し掛かり、だんだんと暖かくなってきた。

ある日、朝のルーティーンを終えた俺は珍しく遅刻することなく学校に到着していた。教室に着くと最初に如月さんと目が合い、「おはよう」とあいさつをしてきたので、俺も「おはよう」と返事をした。机に鞄を置いて、椅子に座ると霜月が近づいて来て、話しかけてきた。

「おはよう。珍しいな! 翔が遅刻しないって!」

「俺を遅刻魔みたいに言うな!」

「違うのか!?」霜月は俺をからかっているよう言った。

「ちっ、違わなくはないけど…」

チャイムが鳴ってみんなが席に着き、担任の師走先生が教室に入って来た。

「えー、今日はこのクラスに新しい仲間が加わります!」

師走先生の発言を聞いて、教室はザワザワしだした。

「エイプリルさん」

師走先生がそう言うと、一人の女の子が教室に入って来た。金髪ストレートでパッチリ二重の碧眼、肌は白く、顔も小さい。スラッとした体形で、どっからどう見ても美少女だ。クラスのみんな男女問わず見とれているようだった。特に男子は……。見た目からして外国人のようだ。この時期に転校してくるってことは、何か理由があったのかと俺は考えていた。

「じゃあエイプリルさん。自己紹介をお願い」

師走先生に促され、彼女は自己紹介を始めた。

「グッモー、エブリワン! ワタシは、ブルーベル・エイプリルといいマス! 『ベル』って呼んでくだサイ! イギリスからやって来まシタ! 日本に来たことは旅行で何回かあるのデスが、住むのは初めてデス! わからないこともたくさんあるので、教えてくれると嬉しいデス! よろしくお願いしマス!」と金髪美少女は明るく元気な様子であいさつした。

みんなは大きな拍手で受け入れた。俺の彼女の第一印象は明るくて元気な子って感じだった。どちらかというと俺のちょっと苦手なタイプ。見た目と性格からしてみんなから好かれそうだから、すぐに友達もできるだろうと思った。この時は、俺とは関わることはないだろうと思っていた。


休み時間には、早速、エイプリルさんの机の周りには人だかりができていた。クラスメイト以外にも他クラスの生徒も廊下から見に来ていた。まぁ留学生ってだけでも珍しいのに、来た人がこんなにも美人だと尚更注目されるだろう。本人も笑顔で接しているし、人と話すのが好きなんだろうと思って見ていたら、一瞬目が合って、俺に笑顔を向けてくれたような気がした。おそらく俺の勘違いだろう。


4時間目が終わり、俺は勉強道具を片付けて、部室に行こうとした時、エイプリルさんが俺の方に来て、声を掛けてきた。

「コンニチハ!」

「こっ、こんにちは」急に声を掛けられたので俺の声は少し引きつった。

「ようやく会うことができまシタ! ずっと会いたかったデス!」

エイプリルさんは満面の笑みで言ってくれたが、俺の頭の上には「?」が浮かんでいた。周りもシーンとして俺たちのやり取りを聞いているようだった。

「え!? 翔とエイプリルさんって知り合いなのか!?」近くで聞いていた霜月が俺に尋ねてきた。

「いや、俺は知らないけど…。誰かと勘違いしていませんか?」

「イイエ。勘違いじゃないデス。ワタシの声、聞き覚えはないデスか? ロクガツサン!」

彼女のその発言を聞いて、俺はハッと思い、記憶を探った。

六月…これは俺がネット上で活動する時のユーザーネームだ。主にブログやチャットを使う時に使用している。どうして六月にしたかというと、名字が水無月だから安直に六月に言い換えただけだ。でも、この名前を知っている人は、ネットで交流する人たちしかいないはず…。しかもイギリス人なんて…。いや、そういえば英語の練習をするために、オンラインでイギリス人と話したことがある。その子はいつもお祭りで売られているようなお面で顔を隠していたから、どんな人かわからなかったが、おそらく同じ年くらいだろうとは思っていた。俺は特に顔バレとか気にしてなかったから隠してなかった。

その子とは、俺が高校一年になったばかりの時にオンラインで知り合って、一年くらい月一で交流していた。俺は日本の文化のこと、彼女はイギリス文化のことを英語で語り合った。知り合うきっかけは、彼女が俺にDMを送ってきたことだった。最初は警戒して無視していたが、何度かしつこく送って来たので、俺の方が折れて返事をした。それからやり取りが始まり、結果、俺としてはいい勉強になった。二年になってからは自然とやり取りはなくなり、このまま終わったと思っていたが、まさか今、目の前にいるのが…その相手! ユーザーネームは確かベルだった。それにこの聞き覚えのある声!

「え! もっ、もしかして、ベル…さん?」

「Yes! やっと気づいてくれまシタね! ワタシ、あなたと会いたくて…話したくて日本までやって来まシタ!」

エイプリルさんがそう発言した時、教室中が「えーーー!」という声で埋まった。それよりも俺は、目の前のことが信じられなかったので、周りの反応を気にせず、話を続けた。

「え! うっ、嘘! 本当にベルさんですか!?」

「本物デス! Actually, I was planning to transfer from April, but the procedure did not go well and it was delayed. I'm glad I was in the same class as Rokugatsu-san.」(本当は4月から編入する予定でしたが、手続きが上手くいかず遅れてしまいました。でも、ロクガツさんと同じクラスになれて良かったです。)

彼女の英語を聞いて、俺は本物のベルさんだと信じた。

「You really are Miss. Bell.」(本当にベルさんなんですね。)俺はつい、いつもの癖で英語を喋っていた。

「Did you believe me?」(信じてくれましたか?)

「Yes! But I was surprised. Transferring from England to a Japanese school.」(はい! でも驚きました。イギリスから日本の学校に転校してくるなんて。)

「え! ちょっと待って。二人でなに話してんの? 結局、二人は知り合いだったのか?」霜月が会話を遮って質問してきた。

「あ、あぁ。ベルさん…エイプリルさんとはオンラインでやり取りをしてたんだ」

「ベルでいいデスよ! ロクガツサン」俺が言い直したのを聞いて、ベルさんが改めて言った。

「それって、この前言ってた…?」霜月はこの前俺が少し話していたことを思い出したようだった。

「あぁ。英語を話せるようになるために、外国の人とオンラインで話しているって言っただろ。その相手がベルさんなんだ!」

霜月は目玉が飛び出そうなほど驚いた顔をしていた。無理もない。正直、俺も今までのどんな経験よりも一番ビックリしているのだから。

「え! ってことは、エイプリルさんが翔に会いに来たって言うのはマジなのか?」霜月はベルさんの方を向いて質問した。

「カケル?」

「あぁ、翔ってのはこいつのことで、水無月翔って言うんだ!」霜月は俺と肩を組んで、ベルさんに紹介した。

「Oh! そうなんデスか! ロクガツさんの本名はミナヅキカケルって言うんデスね! どういう字なんデスか?」

俺は机に水無月翔の文字を書いた。それを見てベルさんは少し興奮した様子だった。

「Oh! 水に無に月でミナヅキ! それに翔! とってもカッコいいデスね!」

名前を褒められたのは生まれて初めてだったので、正直嬉しかった。

「翔! さっきから気になってたんだけど、ロクガツさんって何なんだ?」霜月が小声で聞いてきた。

「あぁ、それは俺がネットで使っている名前だ。水無月だから安直に六月にしてみた」

「そういうことか!」霜月はあっさり納得した。

「で、エイプリルさん! 翔に会いに来たって本当なんですか?」せっかく話題が逸れたと思って安心していたのに、霜月が無理やり戻してしまった。

「ハイ! 本当デスよ!」ベルさんは満面の笑みで答えてくれた。

「お前いったいどんな手を使ってこの子を落としたんだ?」霜月はニヤリとした顔をしていたので、俺をからかうモードに入ったと思った。この時、なんか面倒なことになりそうな予感がした。

「ロクガツサン…いえ、水無月サンのお話はとても面白くて聞いていてとても楽しかったデス! そのおかげで日本を好きになって、もっと知りたいことやお話を聞きたいと思って、会いに来まシタ!」

「なんだ。そっちか! 別に翔に会いたいから来たってわけじゃなく。日本のことを知りたいから来たってことか!」

「そうかもデスね!」

霜月が話をまとめてくれたおかげで、クラスメイトも納得した様子になり、それ以上騒ぎにはならなかった。ベルさんが変な言い方をしたので、みんな勘違いしそうになったが、なんとか修正することができてよかった。冷静に考えればわかることだ。ベルさんがわざわざ俺に逢いにイギリスから転校してくるはずがない。さすがに数回オンラインでやり取りしただけで、相手を好きになるなんてフィクションじゃないんだからあるわけがない、と俺は思った。

「俺は霜月時雨! よろしく!」

「ハイ! ヨロシクお願いしマス!」

 霜月とベルさんはいとも簡単に自己紹介をして握手をしていた。俺は、こんなにあっさりとコミュニケーションをとれるのが外向型の強みだな、と内心思いながら二人を見ていた。俺ならこんな風に自然にできないだろうな。


放課後、荷物を整理していると如月さんが話しかけてきた。

「水無月くん、今日部活行く?」

「あぁ」

「そっか。じゃあ一緒に行こ!」如月さんがいつになく積極的に話しかけてくる感じがした。

「部活デスか?」ベルさんが会話に入って来た。

「あぁ、はい」俺は返事をした。

「水無月サンは、何の部活に入ってるんデスか?」

「俺は相談部で活動している」

「ソウダンブ?」

俺は相談部の活動内容をベルさんに説明した。

「なんだか面白そうデスね! ワタシもついて行っていいデスか?」思ったよりもベルさんの食いつきがよくて、意外だなと思った。そして俺は霜月に視線を送った。

「いいんじゃね! エイプリルさん、まだ学校来て初日だし、最初の部活見学ってことで」

「だって」霜月の許可も出たので、俺はそれを伝えた。

ベルさんは、「ヤッター」と言って飛び跳ねて喜んでいた。

部室の前で俺と如月さんとベルさんは、職員室に鍵を取りに行った霜月を待っていた。その時、俺は気になっていたことをベルさんに聞いてみることにした。

「そういえば、ベルさん日本語話せたんですね! 知らなかったです」

「ハイ! 勉強しまシタ!」

「どうやって勉強したんですか?」

「父の知り合いに日本の人がいたので、その人に教わりまシタ!」

「へえー! どのくらい勉強したんですか?」

「ウーン、大体一年くらいデス!」

「え! たった一年でそこまで話せるようになったんですか!?」

「ハイ! 頑張りまシタ! 一年前は全然話せなかったんデスけど、日本のこと勉強するのが楽しくて。それに……どうしても話したい人がいたので…」

「すごいですね! 日本語って結構難しいって聞くので…、それを一年でここまで話せるようになるなんて!」

「そっ、そうデスか!」ベルさんは右手を右頬に当てて、嬉しさを隠しているようだったが、照れているのがバレバレだった。

「けっ、結構仲が良いんですね! 水無月くんとエイプリルさんは…」如月さんが話に加わって来たが、なんだか少し不機嫌な感じがした。

「ハイ! ワタシと水無月さんは仲が良いデス! 友達デス!」

その時、俺はこんなことを考えていた。ベルさんは俺のことを友達と言ってくれたが、果たして本当にそうだろうか、と。俺とベルさんはオンライン上で何度かやり取りはしたが、会うのは今日が初めてだ。そんな関係を友達と言えるのだろうか。もしかしたら、これから俺の嫌なところを見て、嫌いになることもあるのではないか。ベルさんが知っている俺はネット上の俺であって、普段の俺をまったく知らない。いつまでこの関係が続くかもわからない。そんなことを考えていると、霜月が鍵を持って戻って来た。



読んでいただき、ありがとうございます。

次回もお楽しみに。

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