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どんな悩みも水無月くんにお任せ!!  作者: たかべー
新・相談部始動編!!
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【番外編】藤皐月人生録!!

 「自分を好きになることができない人に、人を好きになることなんてできない!」。私はこの言葉に深く共感する。今でこそ私は、弥生や睦月、牡丹ちゃんやベルちゃんという友達がいたり、翔くんという大好きな人がいたりするけど、昔の私は、仲の良い友達がおらず、家族ともギクシャクした関係で、とても孤独を感じていた。

 私の両親は共働きで、毎日仕事が忙しく、家にいることがほとんどなかった。両親とも朝早くに家を出て、帰って来るのは夜遅い。休みもないようだった。私が小さい頃は、ご飯を作り置きしてくれたり、洗濯をしてくれたりしていたが、8歳の頃にはもう何もしてくれなくなったので、自分でどうにかするしかなかった。父も母も、私には関心がないようだった。

 小学生の時のある日、テストで100点を取ったから、それを見せびらかして母に自慢したことがあったけど、母は「そう」という一言だけ言って、それ以上は何も言わなかった。私は母に喜んでもらいたくて、認めてもらいたくて、何回も100点を取ったけど、母の態度は決して変わらなかった。だから私は、勉強しても意味がないと悟り、勉強が嫌いになった。

 スポーツも頑張ったことがある。小学校のマラソン大会で一位になったことがあり、それを父に報告すると、父は「あぁ、そうか」と言うだけだった。

 それ以降、私は諦めて、両親に話し掛けることがほとんどなくなった。その影響か、学校での人付き合いも悪くなっていき、私は家でも学校でも孤独になった。最初は苦しかったけど、人間という生き物は不思議なもので、何日もすると、その状態にも慣れていた。というより、私も両親と同じように、他人に関心がなくなっていたのだ。

 私は、そんな自分が大嫌いだった。勉強もできない、運動もできない、これといった趣味もない、見た目も地味で何の取柄もない自分が…。

 そんな風に自己嫌悪や自己批判、自己否定感に陥っていたある日、暇つぶしにネットサーフィンをしていると、あるブログ記事が目に留まった。『六月』という人が投稿している記事で、タイトルは「自分を好きになることができない人に、他人を好きになることなんてできない!」だった。この言葉自体は、どこにでもある一般的な言葉だと思ったけど、なぜかその記事を読みたいと、その時は思った。そして私は、その記事の内容にとても共感した。

 それから『六月』という人が投稿している、『人生山あり、谷あり、希望あり!』というブログを読むのが日課になった。ブログの内容は、主に科学知識を語ることが多く、どれも日常で活かしていくために、簡単に要約して説明されていた。

 このブログで、私は多くのことを学び、そして気づいた。この頃の私は、心に深い傷を負っているということを。

 多くの人は、熱が出た時や転んで膝を擦りむいた時などの体の不調の時は、すぐに手当てをするのに、誰かに嫌なことを言われて傷ついたり、何かに失敗して落ち込んでしまったりした時など心の不調の時は、あまり手当をしないのである。それに、正しい手当の仕方を知らないから、間違った方法で手当てを行い、治るものも治らなくなっているのである。

 この頃の私は、両親に自分を受け入れてもらえないことから、心がズキッと痛み、自分は価値のない人間だと思ったり、人との繋がりが減ったりしていた。さらに、孤独を感じていたから、世の中の全てがネガティブに見え、疑心暗鬼になって、自分で壁を築き、より孤独になっていたのである。

孤独は体に悪く、寂しさや満たされない気持ちが長引くと、うつや不眠、高血圧、体重増加、コレステロール値の上昇、ストレスホルモンの増加、免疫力の低下など、心身の不調を起こすのである。

まさにこの頃の私が陥っていた状態だった。なので、私はこのブログに書かれていた手当の方法を試してみることにした。

 自己否定をしてしまう時には、それに反論する練習をした。「やっぱり私はダメダメだ」という言葉が頭に浮かんだ時は、「そんなことはない! 私は毎日学校に通っているし、家事もしている!」とやさしい考えで反論した。

 また、相手の立場で物事を考える練習もした。孤独になっている人は、人の視点に立って考える力が弱くなっているせいで、人とすれ違い、より孤独に陥ってしまうらしい。なので、まずは、自分と相手は違うという前提で、相手の気持ちを考えるように練習した。そうすると、少しずつ両親の気持ちを汲み取れるようになった気がする。おそらく、両親は仕事が忙しすぎて、家のことをする余裕がなかったのかもしれない、と考えられるようになってきた。そう考えられるようになって、少しずつ共感能力も高まった気がする。

 そして少しずつ自信を取り戻していたある日、私はⅤチューバーというものを知った。学校では相変わらず独りぼっちだったけど、SNSの世界なら、自分と友達になってくれる人がいるんじゃないかと思った。それに、Ⅴチューバーなら顔出しもしなくていいから、見た目も気にしなくていい。今まで何に対しても関心の薄かった私が、初めてやってみようと思ったことだった。この決心をする時も六月さんが背中を押してくれた。そんな六月さんをリスペクトして、私は『五月さつき』という名前で活動を始めた。

 最初は全く再生数が伸びず、誰にも見られていなかったけど、しっかり分析してやり方を考え、辛抱強く続けていると、少しずつ見てくれる人が増えていった。そしてある時、その時すでに人気を博していたインフルエンサーの雛月弥生が、五月さつきのことをSNSで呟いたことがきっかけで、一気に再生数や登録者が増えたのだった。


 そして私は高校生になった。高校生活でも特にデビューしたいとか思わなかったから、今まで通り独りぼっちで三年間過ごすのだろうと思っていた。しかし、翔くんのことを知ってから、私の高校生活は予想していたよりも、刺激の多い日々を送ることになるのだった。

 翔くんの第一印象は、正直あまりよくなかった。登校初日に堂々と遅刻してくるし、周りに誰も近づけないオーラを纏っていたし、先生の話もまともに聴かないし、どっからどう見ても不良のようだったからだ。ほとんどのクラスメイトも翔くんから距離を置き、なるべく関わらないような行動をしていたし、私みたいに地味な奴は、関わることもないだろうし、関わらない方がいいだろうと思っていた。しかし、そうはならなかった。

 ある日の放課後、帰ろうとしていると、駐輪場で誰かが揉めているという女生徒の会話が聴こえた。少し気になったので、彼女たちが見ていた方向に視線を送ると、男子生徒三人と女子生徒が一人、駐輪場に立っているのが見えた。その男子生徒の内の一人が翔くんで、女子生徒が如月牡丹だった。遠くから見た限り、如月牡丹の前に翔くんが立っていて、チャラい見た目の男子生徒二人と対面して睨み合っていたから、おそらく翔くんは如月牡丹を護っているのだろうと思った。そしてケンカが始まったけど、翔くんは軽い身のこなしでチャラ男を圧倒して、すぐにその場から去って行った。

 その日以降、私は水無月翔くんが少し気になりだした。でも、話しかけづらいし、少し怖かったから、チラ見するだけの日々が続いた。結局、学校では話し掛けることができずに、ずっとこのままなのだろうと思っていたけど、その予想も外れるのだった。

 ある日、私は公園を散歩していると、どこからか「ニャー」という猫の鳴き声が聴こえた。周りを見渡したけど、どこにも猫の姿が見えなかったので、聴き間違いだと思って、そのまま行こうとすると、また「ニャー」という鳴き声が聴こえた。さすがに聞き間違いではないと思ったから、聴き耳を立てて、鳴き声のする方に近づいていくと、一匹の猫が着の上におり、降りられなくなっているようだった。猫が怖がって震えているように見えたから、私はなりふり構わず急いで木に登り、猫を助けようとした。そして、猫のいる枝のところまで辿り着いたので、ゆっくりと手を伸ばすと、それに驚いた猫が上手な身のこなしで木を降りて行った。

 猫が無事木から降りられたことに安心したけど、その後すぐに、事に重大さに気づいた。私は高所恐怖症で、その場から動けなくなってしまったのだ。木に登る時は、猫を助けたいという気持ちが強かったから大丈夫だったけど、それがなくなると、途端に怖くなってしまった。下から見た時はそうでもないと思っていた高さだったけど、上から見下ろすととても高く見えて足がすくんでしまった。

 幸いこの場所は散歩道から逸れているので、人通りはなく、誰かに見られることはないけど、逆に誰からも助けてもらえないということだった。そしてその状態のまま5分程過ぎた時、散歩道を歩いている翔くんの姿が見えた。彼に声を掛けようか迷ったけど、前に駐輪場で見かけた姿を思い出したので、勇気を振り絞って助けを求めることにした。「助けてくださーい」と言うと、聴こえたようでその場で立ち止まり、周りを見渡し始めたけど、私には気づかずにそのまま行きそうになったので、もう一度「助けてくださーい」と言うと、今度は私のいる場所に近づいて来てくれた。

そして私を見つけた翔くんは、驚いているような、呆れているような顔をしながらも、私をしっかりと受け止めてくれ、助けてくれた。

 この時、翔くんは私のことを知らなかった。まぁ、同じクラスといっても、私は地味なので、知られていなくても仕方のないことだと思った。

「助けてくれてありがとう。水無月くん」

「ん? どうして俺の名前を?」

「え!? あ! 私、同クラスの藤皐月です」

「同じクラス……そっか、ごめん。俺、人の顔と名前ほとんど覚えてないから…」

「そうなんだ…」

「藤皐月さんか……いい名前だな」

「え!? そっ、そうかな?」

「あぁ…それに、人を護るために、恐怖に打ち克って行動するのが、素直にすごいと思う。まぁ、今回は人じゃなくて、猫だけどな」

「え!?」

「悪い。変なこと言ったな。じゃあ、またな」

「え!? あ、う、うん。またね…」

 それが翔くんと私の初めての会話だった。翔くんの話し方はずっと同じトーンで、興味があるのか、ないのかわからない感じだった。私の印象では、とりあえず会話をしているという風だった。それでも、「いい名前だな!」と言われたことは嬉しかった。それに「人を護るために、恐怖に打ち克って行動するのが、素直にすごいと思う」というセリフが妙に気になった。


 それ以来、さらに水無月翔くんのことが気になるようになっていったけど、まだ学校で話し掛けるのは怖かった。なので、翔くんに気づかれないようにチラ見しながらいろんなことをしていると、ミスをすることが多くなってしまった。ある時はクラスで集めたプリントを豪快にばら撒いたり、またある日の掃除時間にはゴミ箱のゴミをばら撒いたり、またまたある日の移動教室では筆箱の中身をばら撒いたりしていた。その都度、翔くんは何も言わずに拾うのを手伝ってくれた。他の生徒は見て見ぬふりをする中、翔くんだけはいつもやさしかった。

 ある日、六月さんのブログで、感謝について書かれていた。感謝には、人を幸福にする力があるということだった。普段から感謝をすると、エネルギーや注意力、活力が高まり、ストレス対処が向上し、自信が高まり、寛大になり、迷走神経の調子が高まり健康になれる、などの効果があるらしい。

 ということで、私は感謝日記を書くことにした。感謝日記を書くためのポイントもブログには書かれていた。それによると、書く内容は「深さ」を意識すること。つまり、起こった出来事を具体的に書くということ。さらに、意外だったことをいくつか盛り込むこと。その日、どんな予期せぬ恩恵を受けたかを書くこと。そして、受け取った恩恵を贈り物として考え、その人からどんなものを受け取ったのか、なぜ感謝しているのか、などを考えながら書くこと。これらを意識して、私は日記を書き始めた。

 そして気づいたことがある。私の日記には、翔くんが何回も登場するということに。私が何か予期せぬミスをした時は、いつも翔くんが助けてくれた。体育で足を捻挫した時は、保健室まで運んでくれた。工場見学で一人迷子になった時は、一番に見つけてくれた。私が日々の恩恵を意識すると、翔くんの存在が大きいことに気がついたのである。

 

 ある日の休み時間、翔くんがいない時に学校一イケメンと言われている霜月時雨が突然声を掛けてきた。

「なぁ、藤さん。ちょっといい?」

「その呼び方、やめてくれる?」

 私は不快な表情を浮かべながら答えた。なぜなら小学生の頃、同じクラスの男の子数人に名前をからかわれたことがあるからだ。担任の先生が点呼する時「藤さん」と呼んだのがきっかけで、数人の男の子が笑いながら「藤さん、藤さん」と連呼するのが、ものすごくウザかったのを覚えている。おそらく富士山と同じ発音だからそれがウケたのだろうと思う。私は相手にしないでずっと無視していたから、自然とその子たちも飽きて、からかいはなくなった。それでも「藤さん」と呼ばれると、あの時のウザかった奴らを思い出すことがあるから、あまり好きじゃなかった。

「え!? あ、ごめん。…じゃあ、なんて呼べばいいかな?」

「藤さん以外なら何でも」

「藤さん以外かぁ。そうだなぁ、じゃあ藤でいいか?」

「別にいいけど」

「じゃあ、藤。ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」

「なに?」

「藤から見て、翔ってどんな人に見える?」

「……どうしてそんなことを私に聞くの?」

「ん? だって藤と翔と仲良さそうだから」

「は? なんでそう思ったの? 別に仲良くないけど」

「そうか? 俺の目には仲良さそうに見えたけどな」

「どこをどう見たらそう見えるの?」

「翔ってあんまり自分から人と絡んだりしないんだけどさ、藤とはよく絡んでいるから」

「そっ、それは、私がよくミスをするから、水無月くんが見かねて手伝ってくれているだけで、別に仲が良いってわけじゃないから」

「そうか? 翔が自分から絡む人って結構珍しいんだけどな」

「そうなの?」

「あぁ、翔ってさあ…」

 そこまで言ったところで、翔くんが教室に戻って来たから、霜月時雨は話を途中で終わらせ、自分の席に戻っていった。

 そしてその日の昼休み、私が一人でお弁当を食べていると、中学時代に同じクラスになったことがある女子が二人の取り巻きを引き連れて声を掛けきた。

「ちょっとあなたに話があるんだけど? 『藤さん』」

「なんですか?」

 相手は中学の時から学内カースト上位だったから、当たり障りのない対応をしてやり過ごそうと思った。

「あなた朝、霜月くんと何を話していたの?」

「あなたに教える義理はありませんが…」

「どうしてあなたなんかに、霜月くんが話し掛けるの?」

「さあ?」

「霜月くんはやさしいから、きっとボッチのあなたを放っておけなかったんでしょね!」

「そうかもね」

「あなた、相変わらず変わらないわね。『藤さん』」

「その呼び方、やめてくれませんか? あなたにそう言われると不愉快なので」

「どうして? 私はただ名前を呼んでいるだけなんだけど…ねぇ『藤さん』」

 彼女がそう言って後ろに視線を送ると、後ろに立っていた取り巻き二人もクスクス笑いながら『藤さん』とからかうように何度も言ってきた。どうやら彼女たちは私に嫌がらせをしてきたようだった。しかも、霜月時雨が教室にいないことを確認済みのようだった。あまりにもしつこくて、耳障りだったから、仕方なくその場から去ろうと思って立ち上がろうとしたら、「あんたたち、さっきからうるさいんだけど」と言う声が隣から聴こえたので、私は踏みとどまった。声の正体は、隣の席の水無月翔くんだった。翔くんは三人を怖い顔で睨みつけていた。

「み、水無月…」彼女は翔くんの態度に気圧されているようだった。

「なぁ知ってるか? そうやって人に嫌がらせしたり、いじめたりするのって、自分の劣等感を隠すためなんだそうだ。自分が劣っているのを認めたくないから、代わりのターゲットを見つけて、その人を貶めようとするんだ。本当は自分が…その人よりも劣っているんだけどな」

「あ、あたしが、藤さんより劣っているって言いたいの?」

「さぁどうだろうな? だが少なくとも、今のやり取りを見ていると、あんたは藤さんに対して嫉妬しているように見えたけどな」

「あたしが嫉妬!? そんなわけないでしょ!」

「あんたは少なからず霜月に好意を抱いている。その霜月が藤さんと会話したから嫉妬してるんだろ? 違うか?」

「そ、それは…」

「あんたは随分心が狭いんだな。休み時間に少し会話しただけで嫉妬するんだからな」

「そ、そんなことない! あんたなんて、たまたま霜月くんと同じクラスになったからって、調子に乗ってんじゃないわよ。霜月くんがいなかったら、あんたなんか地味で不愛想で一生日の光を浴びないような人間の底辺のくせに!」

 彼女は感情的になって教室中に響く程の大きな声で翔くんを罵った。その時、教室は静まり返り、周りの人はみんな驚いた様子で私たちに注目していた。そして私は、その発言を聞いて怒りが込み上げてきていた。その理由はその時わからなかったけど、とにかく彼女を一発引っ叩こうと思っていた。そして立ち上がろうとしたら、彼女の後ろから声がした。

「俺の友達をそんな風に言うのは、どこの誰かな?」

 声のした方に視線を送ると、霜月時雨がジュースを片手に怖い顔をして立っていた。彼女たちもその声を聴いてハッとし、ゆっくりと振り返っていた。

「し、霜月…くん」彼女は声を震わせながら言った。

「キミは一体、翔の何を知っているのかな?」霜月時雨の顔は笑っていたけど、明らかに怒っているのがわかった。

「ごっ、ごめんなさい」

「謝るのは俺じゃないよな」

 霜月時雨がそう言うと、彼女たちは翔くんの方を向いて「ごめんなさい」と謝ろうとしていたけど、翔くんは「いや、謝らなくていい」と拒否していた。

「え!?」彼女たちは驚いた顔をして翔くんを見た。

「初めにちょっかいを出したのは俺の方だ。それに意図的に嫌な言い方をして煽ってしまった。だから、ごめん」

「い、いや、でも最初はあたしが…」

「それに…あんたの言ったことは事実だしな」

「い、いや、あたしも感情的になったとはいえ、酷いことを言ってしまって、ごめんなさい」彼女はそう言って頭を下げた。

「いやだから、あんたが謝る必要は…」

「これでひとまず、解決ってことだな!」

翔くんの言葉を遮って、霜月時雨が最後に笑顔でそう言って、騒動を収めた。その後、彼女と取り巻き二人は、そそくさと去って行った。

「まったく、一体何やってんだよ。翔…」

「別に…あいつらがうるさかったから注意しただけだ」

「ご、ごめんなさい。水無月くん…私のせいで」

「藤さんは何も悪くない。それより俺のせいでこんな風になって悪かった」

「み、水無月くんは何も悪くないよ! 私を庇ったせいで、酷いことまで言われて…」

「いや、藤が気に病むことはない。これは翔の責任だ」

「で、でも…」

「半分は霜月の責任だけどな」

「ん? 何か言ったか?」

「別に…」

 翔くんははっきりと言わなかったけど、この時きっと私を助けてくれたのだと思う。私が明らかに嫌がらせをされていたから、庇ってくれたのだと思う。今までは、ほとんどの人たちが見て見ぬふりをしていたけど、翔くんだけは違った。


 またある日の休み時間、翔くんが一枚の紙を私に渡してきた。その紙は32点という赤点ギリギリの私のテスト用紙だった。どうやら気づかないうちに落としていたようで、それを翔くんが拾ってくれて、届けてくれたらしい。私は恥ずかしくなり、それを素早く受け取り、ぐしゃぐしゃに丸めた。

「ごっ、ごめんね。こんな点数の紙切れを拾わせてしまって…。不快になったよね?」

「ん? 別に不快になんてなってないけど、どうしてそう思うんだ?」

「だって、み、水無月くんは頭が良いから、私みたいにバカな人と絡むのは、嫌かと思って」

「そうやって、他人と比較して自分を卑下するの、やめた方がいい。いずれ身が持たなくなるから。それに、人の気持ちを勝手に解釈して、勘違いするのも気をつけた方がいい」

「え!?」

「冷静に考えればわかるはずだ。こうやって俺から関わってるってことは、少なくとも藤さんのことは嫌いじゃないってことだ。俺は、嫌いな奴には決して自分から関わらないからな」

「で、でも、私、バカだよ」

「学校のテストの点が良いからって、頭が良いとは限らない。逆も然りだ。学生時代は劣等生でも、後に優秀な科学者になった人はたくさんいるし、優等生だった人でも、社会人になって落ちぶれた人もたくさんいる。それに…」

「それに…?」

「それに…人は成長するからな! 今の成績が悪くても、今後ずっと悪いと決まったわけじゃない。勉強すれば、誰だって賢くなれるからな」

 翔くんのこのセリフを聞いた時、私は六月さんのブログの内容を思い出していた。このセリフとほとんど同じ内容の記事を以前見たことがあった。しかも六月という名前、水無月となんとなく近い感じがする。私が水無月くんのことが気になるのも、もしかして、水無月くんが六月さんだから? でも、こんなセリフは巷では溢れているから、たまたま被っただけなのかもしれない。そんなことを考えていると、いつの間にか翔くんは私の前から姿を消していた。そして同じタイミングで、六月さんが勉強の仕方について、ブログ記事を投稿していた。


 その件以降、さらに翔くんのことが気になりだしたので、六月さん=水無月くん説の真相を解明するべく、翔くんにいくつか質問をしてみることにした。内容はもちろん、ブログ内で書かれていたことに関する質問である。

「ねぇ、水無月くん。ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」

「なんだ?」

「水無月くんから見て、今の日本の教育制度ってどう思う?」

 この内容について、六月さんのブログでは結構批判的なことが書かれていた。主体性が低く受け身的でつまらない授業、子どもの好奇心を潰すようなルールや環境、無駄に仕事量の多い教員の仕事、成績や運動能力など他者との比較で優劣をつけるような競争性、非科学的な教育カリキュラム、などなど厳しい意見を述べていた。翔くんが六月さん本人なら、おそらく似たような意見を述べるだろうと思った。そして案の定、ほぼ同じことを翔くんは答えた。

 しかし、これでもまだ確信には至らない。もしかしたら、翔くんも六月さんのファンかもしれないからだ。ファンなら同じ意見になったとしても、何の不思議もない。なので、後日は違う質問をして、確認してみた。

「ねぇ、水無月くん」

「ん? なんだ?」

「水無月くんってSNSとかやってる?」

「あー、まぁ一応やってるけど…」

「そうなんだ! 何やってるの?」

「ブログをやってる」

「ブログかぁ! どんなこと書いてるの?」

「自分が学んだことだな。本や論文を読んで、どれだけ覚えているのか、復習ついでに書いてる」

「へぇー、そうなんだ! じゃあ、他の人のブログを見たりはしないの?」

「見ることはないな」

「ふーん」

「藤さんは何かしてるのか?」

「え!? うん。私もしているよ! 〇イッターとか、〇ーチューブとか!」

「そっか」

 このやり取りで、水無月くん=六月さんという私の疑心は確信に変わった。そして、翔くんに対する本当の気持ちにも気づいたのである。そう、好きだということに。それから私は、翔くんのことを徹底的に調べた。そして翔くんのことを知れば知る程、どんどん好きになっていった。でも、この時の私では、翔くんの足元にも及ばないことはわかっていた。だから、翔くんと同じ土俵に立つために、勉強を頑張った。高校生でありながらブログで収入を得ているから、私もⅤチューバーを頑張って、ある程度まで稼げるようになった。この時、同じ学校である雛月弥生と初めてコラボをした。私が五月さつきの中の人とネタバレすると、弥生は最初驚いていたけど、すぐに受け入れてくれた。それから連絡先を交換してやり取りするくらいに仲良くなった。

 Ⅴチューバーの活動も大変だったけど、趣味の延長線上みたいなことだったから楽しかった。それよりも大変だったのは、勉強だった。やはり、一度諦めていたものを最初からやり直すには、結構時間が掛かってしまった。それでも今回は絶対に諦めるわけにはいかなかった。なぜなら、勉強を頑張って、翔くんと肩を並べるくらいになることができたら、告白しようと決めていたからだ。幸い、翔くんには彼女がいなかったし、翔くん自身もあまりそういうことに興味もなさそうだったから。私にもチャンスがあると思っていた。

 

 二年に進学する前の春休み、私は髪の毛をバッサリ切ってイメージチェンジをした。なぜなら、翔くんがロングよりショートの方が好みと言っていたからだ。しかし、予想外のことがいくつか起こってしまった。まず、翔くんとクラスが別になってしまった。なので、私は学園長に直接抗議しに行った。その時、学園長室には、生徒会長の初御空睦月がいたけど、そんなのお構いなしに、私は自分の意見を述べた。その際、ついⅤチューバーのことを口に出してしまい、初御空睦月に正体がバレてしまったのである。学園長には何を言っても無駄だったし、初御空睦月に上手く説得されたから、仕方なく現実を受け入れることにした。

「あなた、Ⅴチューバーの五月さつきさんだったの?」

 教室の戻っている時に、初御空睦月が唐突に聞いてきた。

「そうですけど…」

「そう…」

「正直、バレたら面倒なので、誰にも言わないで欲しいんですけど…」

「そ、そうよね! うん。わかったわ。誰にも言わないから、安心して。私、口は堅い方だから」

「そっか。ありがとう」

 少し沈黙が流れてから、初御空睦月が再度質問をしてきた。

「あなた、水無月くんのことが好きなの?」

「そうですけど…」

「そう……ねぇ、水無月くんってどんな人なの?」

 初御空睦月の質問が意外だったので、私は内心驚いていた。もしかして、彼女も翔くんを狙っているんじゃないかと疑ってしまった。

「生徒会長も気になるんですか?」

「まぁ、そうね」

「どうしてですか?」

「だって、一年の時、テストで一回も勝てなかったんですもの。正直、悔しかった」

「そういえばそうでしたね。生徒会長はいつも二番から四番をうろついていましたね」

「そ、それは事実だけど、あまり言わないで欲しいわ」

「フフ、すみません。水無月くんの良いところでしたよね?」

 それから私は翔くんの魅力を彼女に説明した。

「そっか。あなたにとって水無月くんはやさしい人なんだね!」

「多分、私だけじゃないと思います。きっと生徒会長にもやさしいと思います」

「そう…そうだと嬉しいわね」

「きっとそうです」

 そこまで話すと初御空睦月がモジモジし始めたので、気になって「どうしたんですか?」と聞くと、敬語はやめて欲しいということと、名前で呼んで欲しいというお願いだった。なので、この時から、私は生徒会長のことを『睦月』と呼ぶことになり、睦月は私のことを皐月と呼ことになった。


 クラス編成は仕方なく受け入れたものの、その後の展開は、私の予想を遥かに超える出来事ばかりが起こることになった。翔くんが霜月時雨と『相談部』という部活を創るし、如月牡丹という可愛い女の子が早速利用して、即入部するし、ブルーベル・エイプリルというイギリス人美少女が翔くんのクラスに転校して来て、相談部に入部するし、一年生の可愛い後輩もどんどん入部するし、いつの間にか翔くんの周りには美少女が集まっていたのである。しかも、何かしらがあって、みんな翔くんの魅力に気づき、少なからず翔くんに好意を抱いているような気がする。さらに、弥生が何か悩んでいるようだったから、六月さんのブログや相談部のことを紹介すると、いつの間にか翔くんの虜になっていた。

 そのため、私は周りの人を牽制するために、予定を少し早めて相談部に乗り込むことにした。本当はテストで結果を出した後に告白するつもりだったけど、このままでは出遅れてしまうと思った。そして、あんなことになってしまったのである。


 ある寒い日の放課後、一人で帰ろうとしていると、靴箱で如月牡丹と一緒になった。お互いに「あっ!」と言ってから気づいたけど、私としては少し気まずい雰囲気だった。なぜなら、相談部で宣戦布告した時に、嫌な態度を取ってしまったからだ。この時は、きっと如月牡丹も私のことを嫌っているだろうと思っていた。しかし、それは杞憂に終わり、如月牡丹は普通に話し掛けてくれた。

「藤さん! 今から帰るの?」

「え、あ、うん。そうだけど…」

「私も今から帰るんだ。良かったら一緒に帰らない?」

「別に私はいいけど……あなたはいいの?」

「ん? なにが?」

「この前、私、あなたに失礼な態度を取ったでしょ」

「え? そうだったかな? うーん、覚えてないや」

「え!? 覚えてないの!?」

「うん。私の記憶には残ってないなぁ。ハッ! もしかしたら、藤さんがそう思うような態度を私が取ったのかもしれないね。ごめんね」

「い、いや、あなたは悪くないから…」

「本当?」

「うん……とっ、とにかく、一緒に帰りたいんでしょ! 今日は用事もあるんだから、早く帰るよ!」

「あ、うん! ちょっと待って」

 そうして私は初めて如月牡丹と二人で帰りながら話すことになった。

「今日は相談部の部活は休みなの?」

「ううん。今日はちょっと用事があって、休みをもらったの。みんなは活動しているよ」

「そう…」

「藤さんは部活入ってないの?」

「私はバイト(Ⅴチューバーの活動)してるから、部活はできないの」

「へぇー、そうなんだ! なんのバイトしてるの?」

「SNSで情報発信してる」

「へぇー、そうなんだ! すごいね!」

「あなたはSNSやってるの?」

「私? 私はあまりやってないなぁ。何かを調べる時に使ってるくらい」

「そう…」

 ここで少しの沈黙が流れた。

「ねぇ、藤さん。この前のことでちょっと聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」先程までの如月牡丹の声のトーンとは打って変わり、少し低く真面目な感じがした。

「なに?」私もこの手の質問は覚悟をしていたから、答える準備はしていた。

「藤さんって、一年生の時、翔くんと同じクラスだったんだよね?」

「え? う、うん。そうだけど…」

「一年生の時の翔くんって、どんな感じだったの?」

「え!?」予想外の質問内容に私の頭は理解が追いつかず、そのまま固まってしまった。

「あっ! ごめんね。急にこんなこと聞いて。でも、前から藤さんに聞いてみたいと思ってたことなの!」

「はぁ…」

「私、去年は翔くんと違うクラスだったから、一年生の時の翔くんを知らないの。だから、教えて欲しい!」

 如月牡丹はそう言って、私の目の奥まで見つめてくるような視線を向けて懇願してきたので、その勢いに負けて、教えてあげることになった。それから私は、水無月翔くんとの出会いから今までの経緯を、如月牡丹につい熱く語ってしまった。

「へぇー、そんなことがあったんだね! やっぱり翔くんはやさしいんだね!」

「水無月くんの魅力はやさしさだけじゃない! 知的で、優雅で、カッコイイの!」

「フフフ、そうだね」

「あなたも、水無月くんのことが?」

「うん! そうだよ!」

「たしかあなたが水無月くんと初めて出会ったのは、あの駐輪場での出来事だったよね? その時に意識し始めたの?」

「うーん、そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない、かな!」

「ん? どういうこと?」

「翔くんは多分覚えていないと思うんだけど、私と翔くんは小さい時にすでに逢っているの」

「い、いつ?」

「私がまだ小学生の時、だったかな」

 そう言って如月牡丹は当時の話をしてくれた。その話によると、如月牡丹には二歳年上の姉がいたらしく、その姉と水無月くんが一時期とても仲が良かったらしい。如月牡丹の姉はあまり体調がよくなくて、入退院を繰り返していたらしいが、そのお見舞いに行った時に、偶然出会ったらしい。初対面は印象が悪かったらしい。なぜなら、大好きな姉と仲良くしていたから、嫉妬していたらしい。病室の入り口から何度も睨みつけて、出て行くように念を送っていたらしい。

 そんな日々が続いていたある日、姉が気を利かせて二人を逢わせ、三人で一緒に遊んだり会話したりしたらしい。その時、如月牡丹は水無月翔くんのことを初めて知り、意識したらしい。

「どうしてその話を私にしてくれたの?」

「え? だって、藤さんも教えてくれたから、私も教えないとなぁって思って」

「そんな運命の出逢いがありましたって聞いて、私が水無月くんのことを諦めるとでも思ったの?」私はあえて嫌な言い方をした。如月牡丹ちゃんの本性を確認するためだ。だけど、正直、彼女がそんな人ではないとわかっていた。

「ううん。そんなこと思ってないよ。でも、私も負けないから」如月牡丹ちゃんは冷静な態度とキリっとした目つきで答えた。

 そんな話をしていると、それぞれの帰路の分岐点に着いた。「私、こっちだから。じゃあ、またね」と言って帰ろうとすると、如月牡丹が「あ、あの!」と声を掛けてきたので、振り返った。如月牡丹は続けて「私のことは、これから名前で呼んでくれませんか?」と言ってきたので、私は「じゃあ、私のことも名前で呼んでね!」と返事をした。すると、牡丹ちゃんは満面の笑みになり「うん! よろしくね! 皐月ちゃん!」と大きな声で言った。


 そしてまたある日の昼休み、翔くんに会いにA組の教室に行くと、姿がなかったので、いつも通り一人屋上で休んでいるのだろうと思って、確認に行くと、屋上にも翔くんはいなかった。予想が外れたので、他の場所を探そうとドアに手を掛けようとしたら、直前にドアが開いた。目の前には、ブルーベル・エイプリルが立っていた。お互いに「あ!」と言ってから、少し沈黙が流れた。

「藤サンじゃないデスか! どうしたんデスか? こんなところで…」

「別に…ちょっと用事があっただけ…」

「屋上にデスか?」

「あ、あなたには関係ないでしょ!」

「そうデスね。スミマセン…」

「別に謝らなくてもいいけど…」

「そうデスか。スミマセン…」

「また謝ってるんだけど?」

「ハッ! ………ところで、屋上に翔サンはいマスか?」

「いなかったよ」

「ン? もしかして、藤サンも翔サンを探しに来たんデスか?」

「……! あ、あなたには…」

「ワタシと一緒デスね!」

 ブルーベル・エイプリルの屈託のない笑顔に、私は気圧された。そして牡丹ちゃんと同じように翔くんの一年生の時の様子を聞いてきたから、同じように教えることになった。

「ヘェー、そうだったんデスか! やっぱり翔サンはやさしいデスね!」

「水無月くんの魅力はやさしさだけじゃない! 知的で、優雅で、カッコイイの!」

 何かデジャブを感じた。

「そうデスね」

「……あなた、水無月くんに会いに、わざわざイギリスから転校して来たの?」

「そうデスよ! 他にも理由はありますが、翔サンの存在が大きいデス!」

「たしか、あなたと水無月くんって、一年前にオンラインで知り合ったのが初めてだったよね?」

「ウーン、それはちょっと違うんデスよね…」

「え!? どういうこと?」

「ワタシと翔サンは、小さい時に一度出会っているんデスよ!」

「え!?」

 それからブルーベル・エイプリルは、翔くんと初めて出会った日のことを語りだした。話によると、家族で日本旅行に来ていた時、ブルーベル・エイプリルは一人で迷子になってしまったらしい。周りには知らない人、しかも外国人ばかりだったので、さすがに好奇心旺盛なブルーベル・エイプリルも怖くなって泣いていたらしい。その時に一人の男の子が声を掛けてくれたらしい。それが水無月翔くんだったそうだ。翔くんは手を繋いでくれて、一緒に家族を探してくれたらしい。そして無事に家族と再会して喜んでいる間に、翔くんはすでにいなくなっていたらしい。

「その男の子って、本当に水無月くんなの?」

「間違いありまセン! 名前を聞いてちゃんとメモをしていたので!」

「同姓同名っていう可能性も…」

「翔サン本人デス! 顔の特徴も同じデスから!」

「そ、そう…」

 そんな会話をしていると、昼休みの終わりのチャイムが鳴った。

「Oh! 昼休みが終わっちゃいまシタね。では、教室に戻りましょうか!」

「そうね」

「あ! それと、ワタシのことはこれからベルって呼んでください!」

「なら、私のことも皐月って呼んで」

「ワカリマシタ。よろしくデス! 皐月サン!」

「よろしくね。ベルちゃん」

 まさかベルちゃんと翔くんが小さい時に出逢っていたとは驚きだった。偶然とはいえ、ここまで離れた国の人と再会するのは、さすがに運命的な何かを感じてしまう。

ちなみにこの日、翔くんは早退していたことを後から知った。早退した理由は疲れたからということだった。どうやら先生と意見の食い違いがあったらしい。


 それからもいろんなことがあったけど、翔くんと一緒にいる時はいつも楽しかった。そして前よりも、もっともっと翔くんのことが好きになっている。私はいつも翔くんに助けてもらっているから、今度は私が翔くんにお返しをする番。翔くんはまだ、私のことが好きじゃないけど、きっと振り向かせてみせる。ライバルはみんな可愛くて手強いけど、私も負けられない。

 ちなみに、二年生になり私にも予想外ことが起こったのである。特に話したこともない男どもが私を呼び出して何を言うのかと思えば、「好きです。付き合ってください」という告白だった。今まで告白されたことなかったし、特に興味もなかったけど、告白されることがこんな気持ちになるのかということを知るいい機会になった。興味のない人から、ましてやほとんど知らない人から告白されるのが、こんなにもどうでもいいと感じるとは知らなかった。告白の最中でも頭の中は常に翔くんことでいっぱいだったので、早くこの場から立ち去りたかったし、翔くんを眺められる貴重な休み時間なのに、どうしてこんなチンピラと一緒にいるのだろうと、イライラすることもあった。それが何度か続いたので、私は告白を断るのが少し上手くなってしまった。そして相手はなぜか精神的ダメージを負って、去って行くのだった。



読んでいただきありがとうございます。

次回もお楽しみに。

感想もお待ちしております。

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