エンパスの優れた能力とは!?①
共感力が極端に高い人たちのことをエンパスという。エンパスは、神経系が極端に敏感で、反応する力が人よりも強い人たちのことを指す。他人の気持ちがわかり過ぎてしまうため、サイコパスとは真逆の存在と言われている。極度に感受性の強い人は、人口の20%程いると言われている。つまり、エンパスは5人に1人の割合でいるということだ。
では、普通の共感力がある人とエンパスはどう違うのだろうか。普通の共感力がある人は、自分以外の誰かが苦しんでいる時はその苦しみを理解したり、喜んでいる時は一緒に喜んだりすることができる人のことだ。
一方、エンパスは、他人の感情、エネルギー、身体的な症状をそのまま感じてしまうのだ。大抵の人は、それらを適度に遮断するフィルターを備えているが、エンパスは何の防御もない、むき出しの状態で世界を生きている。エンパスは周囲のポジティブなエネルギーも、ネガティブなエネルギーも全て吸収してしまう。そのため、しばしば過剰な刺激に耐えられなくなり、疲れ果ててしまうことがある。
この特徴を聞くと、HSPと同じじゃないか、と思うかもしれない。たしかに、エンパスとHSPには共通点が多い。刺激に対して敏感であること、一人になる時間が必要であること、大人数のグループが苦手であること、自然や静かな環境が好きだということなどなど。とはいえ、全く同じというわけではない。エンパスは、HSPをさらに敏感にした人たちである。
エンパスはよく、他者の不快感と自分の不快感の区別がつかなくなるらしい。感情や五感を含め、目に見えない全てのエネルギーを吸収するため、わからなくなるらしい。実際、これらの特徴を裏付ける研究結果も多数存在する。エンパスは、ミラーニューロンの働きが極端に強く、そのせいで他者の感情をまるで自分のことのように感じてしまうらしい。ミラーニューロンとは、共感の働きに特化した脳細胞のことだ。他者の感情をまるで鏡のようにコピーし、その人の苦痛、恐怖、喜びなどを感じることができるため、そのように呼ばれている。普通の人たちも他者の感情をコピーすることがあるが、エンパスはその度合いが激しいということだ。
また、エンパスは内向的なエンパスが多いが、中には外向的なエンパス、両向タイプのエンパスもいる。たとえエンパスだろうと、社交スタイルは人それぞれということだ。
エンパスは大きく分けて3つのタイプがある。身体エンパス、感情エンパス、直観エンパスだ。
身体エンパスは、他者の身体的な症状をまるで自分のことのように感じることができる。たとえば、一緒にいる友人が腹痛を訴えると、自分もお腹が痛くなったり、頭痛を訴えると、頭が痛くなったりする。これはネガティブなことだけではない。他者が活力に満ちていたり、リラックスしていたりすると、同じように感じることができる。
感情エンパスは、主に他者の感情を吸収する。たとえば、隣に座っている人の気分が落ち込んでいれば、自分も落ち込んでしまったり、激怒している人に出会ってしまうと、自分が怒られていないにもかかわらず、立ち直るのに時間が掛かったりすることがある。
直観エンパスは、直観力が優れているタイプである。大抵の人は、知覚の帯域が狭く、物質的な世界、いわゆる現実世界しか知覚できないが、直観エンパスは、物理法則の限界を超えた、目に見えないエネルギーと非局所性の世界を見ることができるらしい。
直観エンパスはさらに細かく7つのタイプに分けることができるらしい。テレパシー能力があるテレパシー・エンパス、未来を予知することができる予知エンパス、夢でメッセージを受け取る夢エンパス、別次元と意思疎通ができるミディアム・エンパス、植物と意思疎通ができる植物エンパス、動物と心を通じ合わせることができる動物エンパス、地球・太陽系・気候の変化に感応する地球エンパスなどなど。
直観エンパスはにわかには信じ難く、スピリチュアルなこと言っていると思われるだろうが、彼らは自分の力を信じており、まだ科学では解明されていないと考えている。
エンパスは決して病気ではない。エンパスは刺激に敏感過ぎたり、他人のストレスやネガティブな感情を吸収してしまったり、高ぶった神経がなかなか収まらなかったり、孤独や寂しさを感じやすかったり、燃え尽き症候群になりやすかったりするらしい。しかし、素晴らしい資質もたくさんある。
エンパスは、とても思いやりが深く、困っている人の気持ちを敏感に察知することができる。それに夢想家で、理想が高く、情熱的で、創造性があり、共感力が高く、物事を広い視野で眺めることができる。植物、森、山、川、海など自然の中にいると心から落ち着くことができる。さらに、動物との繋がりも強く、お互いに愛し愛される関係を築くことができる。
エンパスは、エンパスとしての特性を否定されながら育てられることが多い。「もっと強くなりなさい」、「こんなことで泣くな」などと言われたことは誰でもあるのではないだろうか。男性エンパスの多くは自分の繊細さを恥ずかしく思い、人に言わずに隠そうとする傾向がある。「男のくせにめそめそするな」、「もっと男らしくしろ」と言われ、男はこうあるべき、というステレオタイプに悩まされていることが多いのだ。
また、エンパスは周りに合わせようとして、無理をしてしまい、普通にならなければ、と自分にプレッシャーをかけてしまうことがよくある。たしかに、エンパスは感受性が強いが、それは悪いことではない。
エンパスは、クリエイターであり、発明者であり、ビジョナリーであり、アーティストであるため、正しい環境さえあれば、仕事で大きな能力を発揮することができる。エンパスの理想的な仕事環境は、ストレスが少なく、少人数か一人で働く仕事が向いている。道路の渋滞や満員電車で通勤し、オフィスの喧騒に8時間も閉じ込められるのは苦手で、静かな環境や家などで働くことに向いている。
具体的な職業を挙げると、自営業、フリーライター、フリーのウェブデザイナー、グラフィックデザイナー、アーティストなどのクリエイティブな職業だ。また、エンパスは人のためになりたいという気持ちが強いので、人を助ける仕事を選ぶ人も多い。たとえば、医師、看護師、歯科医、理学療法士、心理療法士、ソーシャルワーカーなどだ。
逆に向いていない職業としては、営業職、広報、政治、法廷弁護士などがある。これらはどれも押しが強くて攻撃的なタイプの人が向いており、エンパスには耐えられないだろう。また、一般的な会社勤めも苦手傾向にある。基本的に会社の仕事は融通が利かず、何事も決められた通りにやることが求められるが、エンパスは肩にはめられることが苦手である。周りは当たり前と思っている、昔からのしきたりや慣習を黙って受け入れることができないのだ。
エンパスであることは一つの才能であり、天から与えられた贈り物である。上手くコントロールできれば、受けられる恩恵もたくさんある。
3月上旬のある日の放課後、俺は中庭のベンチに座って空を見上げて黄昏たり、水を飲んだりしていた。すると、後ろから「久しぶりだな! フライ!」という声が聴こえたので、振り返ると、七星さんが立っていた。
「七星さん! どうしてここにいるんですか?」
「ちょっとクライアントに用があってな!」
「クライアント? 七星さん、何か仕事をしているんですか?」
「あぁ。こう見えて一応ボカロPだからな! 作詞作曲をしている」
「え!? 本当ですか!? 知らなかったです! なんて言う名前で活動しているんですか?」
「北斗七星Pだ!」
「本名のまんまじゃないですか!」
「まんまじゃない! 名字と名前が逆ではないか!」
「それだけじゃないですか! ほとんど本名と一緒ですよ!」
「う、うるさい! いいのが思いつかなかったのだ!」
「それに…北斗七星Pって有名人じゃないですか! 俺でも知っていますよ!」
「そ、そうか! わらわ、そんなに有名か…」七星さんは照れているようだった。
北斗七星Pは、主にネットで活躍するボカロPだ。何年も前からネットに曲を投稿しており、今では100曲を超えている。その中で、約一年前に投稿した曲がSNSでバズり、あっという間に人気に火が付いた。それからも月に一曲、多い時は二曲投稿し、それらも多くの人の心を虜にしている。たった一年足らずで動画の総再生回数は3億回を超えた。繊細な心理表現で多くの人を共感させる歌詞が強みらしい。切ないバラード系から明るいポップ系、中毒性のある演奏などいろんなジャンルの音楽を作っている。自分で作った曲をセルフカバーすることもあり、歌声は聴いたことあったが、メディアに出ることはなく、謎に包まれた存在だった。しかし、まさかこんなあっさりと正体を知ることになるとは…。
「その…いいんですか? そんなあっさり正体をバラして?」
「ん? 別に問題ないが…。隠しているわけではないからな!」
「そうなんですね…」
七星さんといい、皐月さんといい、ネットで顔を出さずに活動している人は顔バレしたくないだろうと思っていたが、そうでもないのだろうか。この考えは、俺の勝手な思い込みだったのかもしれないと思った。
「ところで、そなたにお願いがあるのだが…」
「ん? なんですか?」
「案内してくれないか?」
「案内?」
「わららはこの学校の地図がよくわからぬ。だからクライアントの場所まで案内して欲しいんだが…」
「そういうことですか! いいですよ!」
「すまない。助かる」
「その…クライアントの名前を聞いてもいいですか? 俺が知っている人かわかりませんが…」
「おそらくそなたも知っているはずだ。同じ学年だからな!」
「いや、俺、友達少ないので、同学年でも10人くらいしか知らないです…」
「そうなのか! わらわと同じではないか!」
「そうなんですね」
俺がそう言うと、七星さんはまるで何か余計なことを言ってしまい、知られたくない事実を知られてしまった人のように、顔を赤くして自分の発言に恥ずかしさを感じているようだった。そして顔を横に振って気を取り直していた。
「い、今の発言は忘れてくれ…」
「はぁ…わかりました」
そして少しの間が空いた。
七星さんは「ん! んん!」と咳払いしてから、「クライアントの名前は…」と含みを持たせながら言い、俺は唾を飲み込んで、しっかりと聞く準備をした。
「クライアントの名前は……藤皐月という女子だ!」
「皐月さん!!」
「おっ! その反応ってことは、知っているようだな!」
「ま、まぁ一応…」
この時点で俺は、なんとなく嫌な予感がしてきた。
「なら良かった! じゃあ案内頼む!」
「わかりました…」
ということで、俺は七星さんを二年B組に案内したが、教室に皐月さんの姿はなかった。皐月さんの席に荷物がなかったので、俺が「もう帰ったんじゃないか?」と言うと、七星さんは「そんなはずない!」と言って廊下に飛び出し、辺りを見渡した。そしてピンと来たような表情をしてから、スマホを取り出し、電話を掛け始めた。皐月さんからの応答はなく、困っている七星さんに対し、なんて言葉を掛けようか考えていると、C組の方から弥生さんが歩いて来て、声を掛けてきた。
「あれ!? そこにいるのは、翔くん…と北斗ちゃん! チャオチャオ!」
「弥生さん!」
「雛ちゃん! チャオチャオ!」
「どうしたの? 困ってるみたいだけど…」
「はい! 皐月ちゃんを探しているんだけど、見つからなくて…」
「皐月を?」
「雛ちゃん、見ていないですか?」
「うーん、私も見ていないなぁ。まだ帰ってないとは思うんだけど…」
「そうですか…」
「ちょっと靴箱見てくるね!」
「あ! 私も行きます!」
ということで、俺たち三人は靴箱に向かった。どうやら、七星さんと弥生さんは知り合いのようだった。そのことを七星さんに尋ねると、何度か一緒に仕事をしたことがあり、仲良くなったらしい。仕事というのは、楽曲提供で、弥生さんの楽曲のうち、何曲かは七星さんが作詞作曲をしているようだった。そう言われれば、北斗七星Pという名前をどこかで見たことあると思ったら、きっかけは弥生さんだということを思い出した。
俺がそのことに気づいた時には、靴箱に辿り着いた。そして弥生さんが皐月さんの靴箱を開けて確認すると、皐月さんの靴がまだあったので、学校のどこかにいるということがわかった。七星さんがもう一度電話しても応答がなかったので、弥生さんも電話してくれたが応答はなかった。そんなことをしていると、時間が経ってしまい、弥生さんは用事があるということで、急いで帰って行った。弥生さんは手伝えないことを申し訳なさそうにしていたが、七星さんは感謝して、見送っていた。
学校にいることがわかったが、どこにいるのかわからなかったので、探すには時間が掛かりそうだった。そんなことにあまり時間を使いたくないような七星さんが、もう一度皐月さんに電話をしたが、それでも応答はなかったので、俺も電話を掛けてみると、ワンコールで応答があった。七星さんはそれをポカーンとした顔で見ていた。
「はい! 皐月です!」
「あ! 俺だけど、今、電話大丈夫?」
「うん! 大丈夫だよ! どうしたの?」
「皐月さん、まだ学校にいるよな?」
「うん! いるよ!」
「そっか! どこにいるんだ?」
「今、相談部の部室だよ!」
「部室!?」
「うん! 翔くんに相談したいことがあって待ってるの!」
「そっか! じゃあ今から俺たちも向かうわ!」
「俺たち? 翔くん、誰かと一緒にいるの?」
「あぁ、七…」俺が答えようとしたら、スマホを七星さんに奪われてしまった。
「今から会いに行くから、待ってなさい!」七星さんは怒った声でそう言い、電話を切って俺に返してきた。そして「フライ! 案内して!」と言い、俺の手を掴んで引っ張った。
ということで、俺たちは相談部の部室に向かった。部室の前に着き、「ここが…」と言いかけたところで、七星さんは俺の話を聞かずにドアの前に立った。このままの勢いで乗り込むかと思いきや、3回ノックをして、入室の許可を取っていた。急いでいるようだったが、一応マナーは守っていた。
中から「どうぞ」という時雨の声が聴こえると、七星さんは勢いよくドアを開けた。中を見渡すと、みんなそれぞれ遊んでいたり、話をしていたりしていた。その中で皐月さんはなぜか俺の定位置に座っており、隣に座っていたベルさんとジェンガで遊んでいた。
「ようやく見つけた! 皐月ちゃん!」七星さんは大きな声で言った。
そんな七星さんを無視して、皐月さんはジェンガに集中しており、今にも崩れそうなジェンガから慎重に一つ抜き取ろうとしていた。そして皐月さんの代わりに他の人が反応していた。
「ん? セブンスターではないか!? やはりさっきの声の主は汝だったか!」桔梗さんが驚いていた。
「Oh! ナナホシサン! お久しぶりデス!」ベルさんはジェンガから視線を七星さんに移し、会えて嬉しそうな笑顔で言った。
「あ! あなたは…」ひまわりさんも覚えているようだった。
「久しぶり! 七星ちゃん!」紫苑がウインクしながらカッコつけて言った。
「ロングムーンに…青鈴さん!? それに…この前の二人も……。どうして!?」七星さんが驚いたまま固まってしまった。
「どうしてって、ここは相談部だぞ! 我はここの一戦士だ!」桔梗さんが当然のような態度で答えた。
「ワタシもその仲間デス!」
「相談部……」七星さんはそう呟いて少し黙り込んだ。どうやら記憶を遡っているようだった。
「え!? セブンスター? ナナホシ? ロングムーン? セイリン?」事情を知らない時雨が繰り返し言い、何のことかわかってないようだった。霞さん、牡丹さんもポカーンとした顔で黙ったまま見ているだけだった。紫苑とひまわりさんも、七星さんに会ったことあるが、この呼び方を聞くのは初めてなので、時雨に聞かれてもわからない様子だった。皐月さんは、こんな状況でもジェンガを崩さずに抜き取ることができており、ベルさんの番になっていた。
「相談部……そっか! 前に言っていた…」七星さんも思い出したようだった。
「思い出したか! セブンスター!」
「あぁ、ここがロングムーンの言っていた相談部!」
「そうだ。そしてここにいるのが我が同胞だ!」桔梗さんはそう言って、両手を大きく広げた。
それを聞いた七星さんは、確認するように一人ひとり順に視線を送り、全員を見終わってから感想を言った。
「なっ、なんだ、ここは! 美男美女しかいないのか!」七星さんはまるで眩しいものを見るかのように目を逸らしながら言い、「そ、そなたもこのメンバーの一員だというのか?」と隣に立っていた俺を見ながら尋ねてきた。
「まぁ一応…」
「そなたも大変だったんだな…」
七星さんが何かを悟ったような言葉を掛けてくれたが、あまり嬉しくなかった。それはつまり、俺はこのメンバーに釣り合っていないという意味だと解釈したからだ。
一方、ジェンガ対決は、ベルさんが崩さずに抜くことができて、皐月さんの番になっていた。
「あ、あのー、キミは一体…?」時雨が恐る恐る言った。
「あぁ、すみません。自己紹介がまだでした。わらわは七星北斗! ロングムーンとは盟友で、青鈴さんのファンです!」
「そ、その…ロングムーンとセイリンというのは…?」と時雨が尋ねたので、七星さんは桔梗さんとベルさんとの関係を簡単に説明し始めた。その間も皐月さん対ベルさんのジャンが勝負は白熱していた。
「そういうことか! ようやくわかったよ!」時雨が理解した様子で言った。
「すみません。突然押しかけてしまって…」七星さんが申し訳なさそうに謝っていた。
「ううん。気にしなくていいよ! 私は如月牡丹! よろしくね!」
「俺は霜月時雨! よろしく!」
「ボクは相談部のマスコット兼影の支配者カスミン! よろしくニャ!」
「わ、私は…二宮…霞…です」
「よ、よろしくお願いします」七星さんが頭を下げて全員にあいさつしていた。
「まぁ、せっかくだ。ゆっくりくつろいで行ってくれ!」桔梗さんが七星さんをおもてなしし始めた。
それから七星さんは椅子に座り、牡丹さんが用意してくれたハーブティーを飲んだり、クッキーを食べたりみんなと話したりしてくつろぎ始めた。
会話が盛り上がっている中、「ところで、セブンスターはどうしてここにいるのだ?」と桔梗さんが質問をすると、七星さんはハッとして、「そうだった! あまりの心地良さに本来の目的を忘れるところだった!」と言い、ここに来た理由を思い出したようだった。そして机をバンッと強くたたいてから、立ち上がり「そなたに文句を言いに来たのだ! 皐月ちゃん!」と大きな声で言いながら、皐月さんを指さした。
皐月さんはその声にも動じずにいたが、その時の揺れでジェンガが崩れてしまった。ちょうど皐月さんが抜いている途中だったので、ベルさんは勝ったと思い喜んでいると、皐月さんが異議を申し立てていた。
「ベルちゃん! 今のは机が揺れたから崩れたのであって、私のミスではないから、勝負はノーカウントだよ!」
「エー、そうデスか? 皐月サンが抜いてから崩れませんでシタか?」
「いいえ、私が抜く前にジェンガは崩れたよ!」
「そうデスかぁ~?」
「ならもう一度勝負しよう!」
「望むところデス!」
「もう、ジェンガはいいです!」七星さんが大きな声で間に入った。
「あら、来ていたの? 北斗ちゃん!」皐月さんが今まで気づかなかったような振りをして言った。
「気づいていたでしょ! さっきからわざとらしくわらわを無視して!」七星さんは怒っていた。
「ごめんなさい。ジェンガに集中していたから、気づかなかったの」
「そんなはずないでしょ! 教室に入った時、最初にわらわと目が合ったから!」
「そうだったかなぁ?」
「セ、セブンスター! 一度落ち着け…」と桔梗さんが興奮気味の七星さんに声を掛けると、七星さんは周りを見回し、「す、すまない…」と言い、一度座ってからハーブティーの残りを飲んで、落ち着こうとしていた。
「ナナホシサンは、どうしてそんなに皐月さんに怒っているのデスか?」ベルさんが怒っている理由を七星さんに尋ねた。
「それは…」と七星さんは理由を語りだした。
どうやら、七星さんは皐月さんへの楽曲提供をしていたらしい。七星さんによると、皐月さんが七星さんに新曲を依頼したらしいが、それが無理難題だったので、直接文句を言いに来たということだった。その依頼内容とは、男女の恋愛ソングを3日で作って欲しいということだった。設定は、知的でカッコイイ一匹狼の男を一途に想う女が、すべてかけて男を振り向かせるストーリーにしたいらしい。
今までたくさんの歌を作ってきた七星さんでも、さすがに3日で作るというのは無理ということだった。それに設定が妙に限定的であることも気になっていたらしい。
「ナナホシサン! 作詞作曲もできるんデスね! すごいデス!」
「ま、まぁ一応…」七星さんは顔を赤くして照れていた。
「あなたならできるかもしれないと思ったけど、さすがに難しかったか…」皐月さんが淡々とした様子で言った。
「さすがに3日は無理だよ!」七星さんがはっきりと言った。
「まぁ、私も最初からあまり期待はしていなかったけど、まさかここまで文句を言いに来るとは思わなかった!」
どうやら、今回の七星さんの訪問は皐月さんにも予想外のことだったようだ。
「冗談ならもっとわかりやすいものにしてよ! 皐月ちゃんのことだから本気だと思って直接文句を言いに来たんだから!」
「冗談のつもりはないんだけど……。でも、あなたがここに来てくれて助かった! まとめて説明をできるから!」
「な、何の説明だ?」七星さんが恐る恐る聞いた。
「そうね…」皐月さんはそう言って席を立ち、俺の目の前まで歩いて来た。そして「翔くん、私とデートしましょう!」と笑顔で言った。
「え!?」俺は突然の発言にすぐに言葉が出なかった。
そして周りのみんなもポカーンした顔で固まっていた。
「さっ、皐月ちゃん! いきなり何を?」牡丹さんが最初に言葉を発した。
「え!? 言葉のままだけど…?」
「い、いや、そうじゃなくて…」
「どうしていきなり翔先輩をデートに誘うんですか? て意味です!」ひまわりさんが牡丹さんの代わりに聞き、牡丹さんも頷いていた。
「好きな人をデートに誘うのは普通と思うけど、何かおかしいの? それとも、あなたたちにとって何か困ることでもあるのかな?」皐月さんは牽制するような言い方をした。
「そ、それは…」ひまわりさんが言葉に詰まっていた。
「そうデスね! 好きな人をデートに誘うのは普通のことデス! なので、翔サン! ワタシとデートしましょう!」ベルさんが皐月さんの意見に同意しつつ、突飛な提案をしてきた。
その発言に俺を含めた一同は「え!?」と声を揃えて驚いた。
「い、いや、その流れだと、ベルさんが俺のこと好きってことになるんだけど…」俺は周りに勘違いされないように確認した。
「好きデスよ!」とベルさんが言ったので、俺の心拍数は急上昇していた。そして今までのことが走馬灯のように一気に頭の中に押し寄せてきて、一瞬が何秒、いや何分にも感じていた時、続けて「………同じ部活の仲間デスから!」と言った。
「あっ! そっち…」俺は現実世界に帰って来て、冷静になった。
ベルさんの発言を聞いて、少し悲しい気持ちになると同時に、一瞬でも勘違いしてしまった自分が恥ずかしくなり、どこかに隠れたくなった。
「ふーん…ちょっとビックリしたけど、まだはっきり言わないんだね?」皐月さんがベルさんに対して何かを知っている様子で言った。
「今はまだ、言うべきじゃないと思ったノデ…」ベルさんが真剣な表情で言った。
「そう…。でも、今回のデートは絶対に譲れない! どうしても必要なことだから!」
「どうしてデスか?」
「それが作曲に必要なことだから!」
皐月さんの答えを聞いて、みんなが頭に「?」を浮かべていたので、皐月さんが理由を説明し始めた。皐月さんによると、今回の歌のジャンルは恋愛ソングで、設定は先の通り。なので、その設定通りに皐月さんと俺がデートをし、それを七星さんに見てもらい、インスピレーションを与えるということだった。
この説明を聞いて、俺はいつも通り皐月さんのとんでも理論かと思っていたが、なぜか七星さんは納得し、他のみんなも特に意見を言わなかった。よって、今度の休日に皐月さんとデートすることになった。詳細は皐月さんを七星さんで決めるらしく、俺にはまた後日連絡するということで、この日は解散になった。俺も当事者なのでデートプランを一緒に考えると言ったが、皐月さんは気を遣っているようで、断られてしまった。適宜、進捗状況を尋ねたが、「楽しみにしていてね!」と笑顔で返されるだけで、結局何も知らないまま当日を迎えることになった。
デート当日、天気は晴れ、少しずつ暖かくなり、絶好の外出日和だった。皐月さんとのデートは久しぶりで、尚且つ、役を演じなければならないので、妙に緊張し、昨夜はあまり熟睡できなかった。とりあえず、いつも通りの朝6時に起床し、ルーティーンをしてから待ち合わせの場所に向かった。
待ち合わせは駅前に午前9時だったので、俺は少し早めに家を出て、15分前に到着したが、すでに皐月さんが待っていた。今日の服装はパンツスタイルで、いつも掛けている眼鏡もしていなかったので、とても新鮮な感じがした。その姿を見た時、一瞬ドキッとしたのがわかった。
そして近くに七星さんの姿は見当たらなかったが、なんとなく気配は感じた。しかも二人を…。
「あ! 翔くん! おはよー!」
近づく前に皐月さんが気づいて、笑顔で手を振りながらあいさつしてきたので、俺は小走りで近くまで行った。
「おはよう! ごめん。待たせたみたいだな」
「ううん。私も今来たところだから」
「そっか! で、今日俺はどうすればいいんだ?」
「はい! 翔くんはいつも通りにしていてください!」
「え!? いつも通り?」
「はい!」
「え!? でも何か設定があるんじゃ?」
「そこは私がカバーするからモーマンタイだよ!」
「え!? でも…」
「大丈夫!」
「そ、そうか………わかった!」
「うん! じゃあ行こっか!」
「あぁ!」
そう言って俺は皐月さんの後を付いて行った。
「ところで、今からどこに行くんだ?」
「遊園地だよ!」
「遊園地!?」
「うん! デートには定番だから、作曲の参考になると思って!」
「そ、そうなのか…」
「もしかして、嫌だった? それなら…」
「あ! いや…。嫌とかじゃなくて…。今まで皐月さんと行ったことがあるところは静かな場所が多かったから、今回もそんな感じかと勝手に思ってたんだ!」
「そうだね。じゃあやっぱり変更し…」
「いや、遊園地に行こう! その方が作曲に役立つのなら、俺も協力する!」
「ありがとう! 翔くん!」
ということで、俺たち二人と、どこか離れた場所から見ているだろう七星さんは遊園地に行くことになった。
遊園地の入場ゲートを見た時、俺は懐かしさを感じていた。小さい頃、まだゆのさんが元気だった時に一度だけ家族で来たのを思い出したからだ。その時はまだ身長が足りなくて、ジェットコースターに乗ることができなかったが、内心ホッとしていたのを思い出した。当時は強がって残念そうな振りをしていたが、実は怖かったのである。つゆりにカッコつけたくてそうしていたのだが、ゆのさんと松さんにはバレていたようだった。
そういえば、ゆのさんと松さんも学生時代、この遊園地でデートしたことがあると言っていた。その時は、ゆのさんが松さんを引っ張りまわしていたらしく、結構大変な一日だったと松さんが言っていた。でも楽しかったようだった。
そして、今は俺と皐月さんと同じ場所にいる。正直、これはデートというよりか、作曲のために必要なことらしいので、仕事に近いかもしれない。そうであるなら、俺はきっちりこのミッションをクリアしなければならないので、気を抜くわけにはいかない。皐月さんは、「いつも通りにしていていい!」と言っていたが、なるべく皐月さんの考えに沿うような行動をしようと思いながら、入場した。
「最初、どこに行こうか?」
「どこでも! 翔くんの行きたいところに行こ!」
「皐月さんは、絶対に行っておきたいところはあるのか?」
「翔くんの行きたいところに行きたい!」
いきなり俺に判断を委ねるということだったので、まずはマップを広げて、アトラクションの種類と場所を確認した。事前に知っていれば、すべて前日までに頭に入れ、効率的なルートで回っていたが、今日知ったことなので仕方ない。
今日最優先すべきことは、歌のネタを提供すること。なので、地味なものより派手なものの方がいいだろうという謎な偏見があったが、この時は気づかなかった。皐月さんも絶叫系は大丈夫ということだったので、人気かつ派手な乗り物に的を絞ることにした。
パンフレットによると、この遊園地には4大絶叫コースターというのがあるらしく特に人気があるそうだ。発射2秒足らずで時速180キロになり、スタート直後の無重力ゾーン、遠心力で身体が真横に傾いた形で大きくターンするカーブなどが魅力の『ダダンパ』。暗闇での急降下から、リニアモーターによる加速、7箇所の回転、最大落下角度120度のえぐるような落下、落下姿勢での一時停止などが魅力の『低飛車』。走行しながら座席が前や後ろにグルグルと回転し、走る方向も前向きや後ろ向きに変わる『よいではないか』。急降下、急上昇、急旋回、横揺れ、急停止などを伴う非常に激しいコースが魅力の『FUJIKAWA』の4つである。
その他にも、高さが50メートルを超え、4本のワイヤーが取り付けられたブランコが上昇や下降を繰り返しながら水平回転する『軟骨番長』。高さ50メートル越えから最高速度65キロで一気に垂直落下する『ブルー・タワー』。高さ30メートルから40度の傾斜を一気に滑り落ちて池に着水する『クール・ザブーン』。コースの全長が900メートルあり、身の毛もよだつ恐ろしさから途中でリタイアする人が続出するという『極・戦慄お化け屋敷』などがあるらしい。
久しぶりに来て思ったが、俺が前に来た時よりもすべてのアトラクションのクオリティが上がっている気がする。それに新しいアトラクションも増えていたので、以前の来た時のうろ覚えの記憶は当てにならないようだった。
とりあえず、最初は入り口近くにあった『ダダンパ』に乗ることにした。今日が俺にとって人生で2回目の遊園地だったので、絶叫系に乗るのは初めてだったが、正直楽勝だろうと思っていた。人がたくさん並んでいたので、結構待ち時間が長いだろうなぁ、と思いながら最後尾に並ぼうとすると、皐月さんが手提げバッグを漁りだした。何を探しているのだろうと思って見ていると、バッグから優先券を取り出した。なので、俺たちはあまり待ち時間なく、『ダダンパ』に乗ることができた。
座席に座り、注意事項の説明を聞いている時、心臓が高鳴っているのがわかった。俺は、人生初の絶叫マシンという未知の体験がどんなものになるのか、内心ワクワクして楽しみだった。
「翔くん、なんだか楽しそうだね!」
「え!? そ、そうか?」
「うん! ワクワクしているのが顔に出てるよ!」
「え!? ご、ごめん。気持ち悪かったよな?」
「ううん! そんなことないよ!」
俺は自覚しないうちにニヤケ顔になっていたようだ。皐月さんはやさしいので、否定してくれたが、おそらく気持ち悪い顔をしていただろう。なので、口角を上げたり下げたりして無表情を作るようにした。
そして、準備が整い、もうすぐ発射というところで、ふと皐月さんが、どのくらいの頻度で絶叫系に乗るのだろうと思ったので、話し掛けようして「そういえば、さ…」と言い掛けたタイミングで、『ダダンパ』が急発進した。事前情報で知っていたが、予想以上の急加速、ゼロGフォール、大きなループに圧倒されてしまい、まだ一つ目の乗り物というのに、降りた時にはすでに疲れ切っていた。
「翔くん、大丈夫? もしかして、絶叫系苦手だった?」皐月さんが心配して声を掛けてくれた。
「い、いや、そんなことはない! 初めて乗ったから、まだ興奮しているだけだ! とても気持ち良かったな!」俺は調子に乗って強がってしまった。
「ほんと?」
「あぁ! モーマンタイだ! 皐月さんはどうだった? 『ダダンパ』は?」
「うん! 私も気持ち良かった!」皐月さんは満面の笑みで答えたので、本当にそう感じたんだろう。あれを気持ちいいと言える皐月さんに、俺は感服した。
「つ、次に行こう!」
「うん!」
次は近くにあった『低飛車』という絶叫系に乗ることにした。先程の件があったので、次は慢心しないように覚悟をして臨んだ。座席に座ると、心臓が高鳴り始めたのがわかったが、この高鳴りは先程と少し違う種類のようだった。
「翔くん、大丈夫?」
「あ、あぁ! モーマンタイだ! いやー、楽しみだなぁ!」
さっきよりも明らかに挙動不審で口数が少なくなっていたので、皐月さんも心配しているようだったが、俺は強がり続けた。そして案の定、『低飛車』も予想以上に激しいアトラクションで、俺はずっと叫び声をあげていた。降りた時には、両手を膝につき、さらにぐったりしてしまっていた。
「か、翔くん、大丈…」
「いやー、これもなかなか楽しかったな! なぁ、皐月さん!」
「え? う、うん…」
「皐月さんはまだ行けるか?」
「う、うん…」
「よし! じゃあ次行こう!」
俺は刺激を受けすぎていることを悟られないように振舞った。なぜなら、俺がこんな早くにバテていると気づかれたら、皐月さんは休憩しようとするだろう。そうなると、ほとんどの時間が休憩時間になり、歌作りなどできないと思ったからだ。皐月さんと七星さんの歌のためにも、俺が弱音を吐くわけにはいかない。ここは踏ん張らなければならないところだ。
その後、『FUJIKAWA』、『よいではないか』と順に乗り、なんとか4大絶叫コースターを走破した。この時点ですでに限界を突破していたが、皐月さんはまだまだ涼しい顔をしていたので、続けて他の絶叫系に乗ることにした。
そして、次の場所に移動していた時、後ろから「おっ、おい! どうしたのだ?」という声が聴こえたので、振り返ってみると、探偵のコスプレをした二人の内、一人が倒れていた。俺は、その光景を見て、何かあったのかと思い、二人の元へ走って向かった。
「どうかされたのですか?」俺は声を掛けた。
「あ…あ…。きゅ、急に七星が倒れて…」介抱していた探偵が困惑しながら答えて、俺の方に顔を向けた。
「桔梗さん!!」
なんと、探偵のコスプレをした正体は桔梗さんだった。そして倒れていたもう一人に視線を移すと、七星さんだということがわかった。
「か、翔ー! どうすればいいのだ?」と桔梗さんが取り乱しそうになっていたので、俺は七星さんの近くに腰を下ろし、容体を確認した。
七星さんを見ると意識あるようだった。胸の動きを見たり、口に手をかざしたり、手首で脈拍を測ったりして、呼吸や脈拍も正常であることがわかった。額や首に触れたが発熱、発汗もなし。見たところ異常はなさそうだった。外側からではわからない立ち眩み、貧血、頭痛などの可能性もあるかもしれないと思って七星さんを見ると、グルグルと目を回しているのがわかった。
「あー、やっぱり倒れちゃったか! さすがに北斗ちゃんには刺激が強すぎたか…」皐月さんがゆっくり近づいて来ながら言った。
「え!?」桔梗さんと俺は声を揃えて言った。
「な、な、な、七星は大丈夫なのか?」桔梗さんが皐月さんに尋ねた。
「うん。多分、刺激を受けすぎてバテているだけだと思う!」皐月さんは慣れた様子で答えた。
「ん? 刺激……? 皐月さん…それって…」俺は皐月さんを見ながら言った。
「うん! 彼女、エンパスなの!」
「エン…パス?」桔梗さんが首を傾げながら言った。
「エンパスって、共感力が極端に高い人たちの?」俺は皐月さんに尋ねた。
「うん! さすが翔くんだね!」
「そうだったのか…」俺はなんとなく事情を察した。
「え!? どど、どういう意味なんだ? は、早く救急車を呼んだ方が!」桔梗さんが慌てた様子で言った。
「そこまでしなくても、静かな場所で休んでいたら回復するから!」皐月さんが答えた。
「え!? そ、そうなのか?」桔梗さんは俺を見て聞いてきた。
「あぁ! 大丈夫だ!」
「そ、そっか!」桔梗さんが安心した顔になった。
「とりあえず、ここから運ばないとな!」
そう言って、俺は七星さんをお姫様抱っこしてから、近くのベンチにそっと寝かせた。そして、皐月さんは持っていたノイズキャンセリングのワイヤレスイヤホンを寝ている七星さんの耳に差し、スマホを操作し始めた。おそらく、七星さんが少しでも早く回復するように、癒し効果のある音楽でも流しているのだろうと思った。
七星さんが寝ている間、桔梗さんにこれまでの行動を尋ねた。
桔梗さんによると、二人は待ち合わせの駅から気づかれないように、少し離れた場所から観察していたらしい。そして遊園地に着くまでは順調だったらしい。しかし、遊園地で七星さんが俺たちと一緒のアトラクションに乗ると言い出したらしく、それから徐々におかしくなっていったらしい。桔梗さんは、七星さんが絶叫系を苦手だと知っていたので、別に乗らなくてもいいのではないか、と説得しようとしたらしいが、乗ってみないとわからないことがある、ということで逆に説得されたらしい。案の定、一つ目の『ダダンパ』で七星さんは疲れ果てていた。それでも、俺たちが次々と絶叫系に乗るので、七星さんたちも同じように乗り続け、その結果、バタンキューということだった。
つまり、俺のせいということだった。七星さんのためと思ってやっていたことが、逆に迷惑をかけていたということだ。エンパスは他人の体調までも敏感に感じてしまうらしいから、もしかしたら、俺の強がりも実はバレており、実際はヘトヘトだったのを吸収してしまったのではないかと思った。たしかに、以前一緒にアウトレットモールに出掛けた時、七星さんが度々一人で休憩していた姿を見かけていた。あれは自分で刺激をコントロールしていたということだ。それに、皐月さんは俺の心配ではなく、七星さんの心配をしていたのではないかと、今になって気づいた。
桔梗さんがエンパスを知らないということだったので、俺は簡単にエンパスの説明をした。そして、とりあえず寝ている七星さんに謝った。
「ま、まぁ、そんな気にするな! 七星が自分で決めたことだからな!」桔梗さんが俺を慰めてくれたので、少し心が楽になった。
そして、俺はもう一つ気になっていることを、桔梗さんに尋ねた。それは、桔梗さんが一緒に来ていた理由だ。なぜなら、俺が聞いていた話では、今回の参加者は皐月さん、七星さん、俺の三人だったからだ。
桔梗さんによると、今回の作曲には桔梗さんの力も必要だろうと、皐月さんと七星さんが判断したらしく、誘われたため参加したらしい。それを皐月さんも認めていた。
「へぇー! 桔梗さんも作詞作曲できるのか!」
「いや! 我はほとんどできん!」
「え!? でも…」
「我は七星が作っているのをたまに手伝っているだけだ! 我一人ではできん! 楽譜も読めんし、楽器も弾けないからな!」
「そうなのか…」
「桔梗ちゃんはそう言っているけど、私からしたら謙遜しすぎな気がするかな…。今まで桔梗ちゃんの一言で格段に良くなったことが何回もあったから!」皐月さんが珍しく人を褒めており、桔梗さんは顔を赤くして照れていた。そして皐月さんは「それに……」と言ったので、まだ何か褒めたいことがあるのだろうと思った。
「それに……?」俺は続きを促した。
「それに……桔梗ちゃんは歌も歌っているから…」と皐月さんが言いかけたところで、桔梗さんが突然「アーーーーーー!!!」と大きな声を出し始めたので、俺と皐月さんは咄嗟に耳を塞いだ。
「きゅ、急にどうしたんだ? 桔梗さん?」
「な、なな、なんでそのことを知っているのだ! それを知っているのは我と七星だけだぞ!」桔梗さんが皐月さんを指さし、声を震わせながら言った。
「なんでって、声を聴いたら誰でもわかるでしょ? ねぇ、ナインちゃん…」
皐月さんがそう言うと、桔梗さんは抜け殻のようになってしまった。
「ナインちゃん?」
俺が聞きなれない言葉を繰り返し言うと、桔梗さんは「なっ! なんでもない!」と必死に何かを隠そうとしていたが、皐月さんがバッグの中からスマホを取り出し、画面を見せてくれた。その画面には動画サイトの『歌ってみた』が映っており、歌い手の名前は、ナインだった。
「アーーーーーー!!! そ、そんなもの、今ここで見せるなー!」桔梗さんが取り乱しながら皐月さんのスマホを奪おうとし、皐月さんはヒラリと躱していた。
ナイン……。約一年前に突如現れた歌い手だ。主にボカロ曲をカバーして歌っており、中でも北斗七星Pの曲をカバーすることが多かった。さらに、実際に北斗七星P(歌い手名はセブン)と組んで、グループ名97(ナインセブン)として一緒に歌うこともあった。北斗七星Pの名前が世に知られるようになったきっかけの曲を、セブンがいち早くカバーして歌い、人気歌い手の仲間入りとなった。
「ナイン……その歌い手なら俺も知っている! て、まさか、セブンの正体って…」さすがにこの状況で察せない俺ではなかった。
「うん! 桔梗ちゃんだよ!」皐月さんがあっさりと認めた。
「そうだったのか!!」
「うー、恥ずかしい!」桔梗さんは頭を抱えてうずくまった。
「そんなに知られたくなかったのか?」
「あ、あぁ……。我はあまり自分の歌声を聴かれるのが好きではないのだ」
「そうだったのか! ………あれ? でも、文化祭後のカラオケでは結構ノリノリだったような…」
「あ、あれは友達だけだったからだ! 知らない人の前では無理だ」
「じゃあなんで歌い手になったんだ?」
「それは…」
桔梗さんの話によると、七星さんに「作曲に必要なことだから!」と頼まれたので、歌ったらしい。そして知らないうちにアップロードされており、いつの間にか多くの人に聴かれていたらしい。本人がそれを知ったのは、5曲くらいアップロードした時くらいだった。最初は桔梗さん自身もナインが自分の歌声だと気づかずに、普通に気に入ったらしい。そのことを七星さんと話している時にネタバレされたようだった。この話を聴いて、桔梗さんは結構天然なところがあるな、と思った。
「さすがの情報網だな、藤皐月! このことは我と七星しか知らないことなのに……。ていうか、そもそもどうして汝と七星が知り合いなのだ? 汝も歌手活動をしているのか?」
「うん! 私、Vチューバーの五月さつきだから!」
「え!? い、今、なんて…?」
「だから、私がVチューバーの五月さつきなの! それで今回は新曲を北斗ちゃんお願いしたってわけ!」
「えーーーーー!!!」
皐月さんはあっさりと自分の正体を桔梗さんにバラしてしまった。桔梗さんのこともバラしたので、これでフェアということらしい。
そんなネタバレ合戦をしていると、ようやく七星さんが目を覚ました。
「ん? こ、ここは…?」七星さんはゆっくりと目を開き、言った。
「おっ! 目を覚ましたか? セブンスター」桔梗さんがいち早く気づいて隣に座り、声を掛けた。
「ロングムーン……わらわは……」
「刺激を受けすぎて倒れたのだ! どうだ? 体調は?」
「そうか……わらら、また、倒れてしまったのか…」七星さんは少し悲しい表情をして言った。そして急にハッとした表情に変わり、体を起こして「二人はどうなった?」と言い、周りを見渡し、俺たちと目が合ってから「そなたたち…」と呟いた。
「七星が倒れた時、いち早く駆けつけてくれてな! ここまで運んでもらったのだ!」
「え!? そっ、そうだったのか!」
「ごめん、七星さん。事情を知らなかったとはいえ、激しい乗り物ばかり乗ってしまって…」
俺は開口一番謝った。
「き、気にするな! そなたのせいではない! わらわが自制できなかったのが原因だ。す
まない……」
「いや、七星さんが謝る必要はない!」
「し、しかし……わらわのせいで、せっかくのデートが……」
「まだ時間はあるから大丈夫だ!」
「で、でも、せっかくの雰囲気が……」
「それも仕切り直せばいいだけだ!」
「………」七星さんは悲しい表情をしており、まだ納得していないようだった。エンパスは必要以上に自分を責めることがあると聞いたことがあるので、もう少し言葉を掛ける必要があると判断した。
「俺たちの目的は、デートを通して七星さんにインスピレーションを与えることだ! だから、七星さんの体調が最優先になる。そうだよな? 皐月さん」
「そうだね! 今回のデートはあなたがいないと意味がないの! だから、あなたの体調を考慮した上で私たちも動くべきだった。これは私のミスね」
皐月さんは俺の意図を察してくれて七星さんをフォローしてくれた。そしてやはり皐月さんが心配していたのは俺ではなく七星さんだったようだ。それから皐月さんは「翔くんがカッコよかったから、つい見惚れてしまって、思考が停止していたの!」とちょっとふざけたミスの理由を少し恥ずかしそうにしながら述べた。それを聞いた七星さんが「フッ」と笑ったので、どうやら作戦は成功したようだった。それと同時に、七星さんのお腹から、グゥーという音が聴こえ、七星さんは顔を赤くして咄嗟に自分のお腹を押さえていた。七星さんの様子を見たところ、とりあえず回復したようなので、安心した。
「そういえば、もう昼過ぎていたな! とりあえず、どこかで昼食を取ろうか」俺はみんなに提案した。
「そうだね。そうしましょう」皐月さんが真っ先に賛成してくれ、桔梗さんと七星さんも頷いたので、俺たち四人はフードコートに向かった。
フードコートでは、俺と皐月さん、七星さんと桔梗さんに分かれて席に座った。なぜなら、昼食時も観察するらしいからだ。昼食時くらい休憩してみんなで食べようと提案したが、七星さんに断られてしまった。七星さん曰く「二人だけの食事はデートの重要事項だから」ということらしい。
俺と皐月さんが何を食べようか考えながら歩いていると、目の前に白衣姿の見慣れた後ろ姿をした男が視界に入った。その瞬間、嫌な予感がしたので、皐月さんと違う場所に移動しようとした時、そいつが振り返った。そして奴は「ん? 水無月に…藤じゃないか!」と俺たちに声を掛けてきた。そう、奴の正体は、神楽天正先生だ。てか、なんで遊園地に白衣着て来てんだ! というのが第一印象だった。
「せっ、先生!!」情報通で何でも知っているイメージの皐月さんが珍しく驚いていた。それくらい、神楽先生は神出鬼没なのだろう、と思った。
「なんだ、水無月! この前は雛月で、今日は藤とデートなのか?」神楽先生がデリカシーのないことを言ってきた。
「先生には関係のないことです。皐月さん、行こう!」俺はそう言って皐月さんの手を引いて、先に行こうとした。
「ちょっと待て! 水無月!」神楽先生がそう言ったので、俺たちは一応立ち止まった。
「なんですか?」俺は振り返って尋ねた。
「お前たち、どのアトラクションに乗ったんだ?」
「教える義理はありません」
「オレは今、事前調査で来ているんだ! お前たちの意見でも何か参考になるかもしれんからな! 一応聞いてやる!」
神楽先生は俺の話を聞いていなかった。それに教えてもらう立場のはずなのに、なぜか上から目線で言ってきたのが、少しイラっとした。
「だから、教える義理は…」俺はもう一度同じ返しをしようとしたが、途中で遮られた。
「五月さつき……担任のオレが知らないとでも?」
神楽先生はそう言って俺たちを揺さぶってきた。奴は俺たちが協力しなければ皐月さんの正体をバラすとでも言うかのような脅しをしてきた。正直、教師としてどうなのか、と思ったが、こいつならやりかねないので、従うしかなかった。そしてこのやり取りの間中、当事者である皐月さんは、なぜか黙ったままだった。何かおかしいと思って様子を伺うと、顔を赤くしてずっと握られた手を見つめていた。体調不良かもしれないと思って尋ねたが、本人はモーマンタイだと言っていた。それに神楽先生との会話を聴いていなかったようなので、説明するとあっさり納得していた。
そして俺と皐月さんと神楽先生はそれぞれ注文したメニューを持って席に着いた。最初、皐月さんは俺と同じハンバーガーを選んでいたが、神楽先生がみんな違うメニューにして少しでも多くの情報を得たいと、ほざきやがったので、仕方なくみんな違うのを頼んだ。
とりあえず、俺と皐月さんは神楽先生に適当に4大絶叫コースターの感想を述べた。その際、神楽先生は「フムフム」と呟きながら、メモを取ったり、質問してきたりしていた。一通り、説明を終えたので、早く立ち去って欲しかったが、神楽先生はすぐに移動しなかったので、皐月さんが気を遣って質問していた。
「神楽先生は、一人で来ているんですか?」
「あぁ、今日は事前調査だからな!」
(また事前調査か!)と俺は心の中で思った。
「事前調査…? それって彼女のためですか?」
「いや、まだ彼女ではない! だが、いずれ必ず手に入れてみせる!」
(随分自信があるんだな!)と俺は心の中で思った。
「そうですか! フフッ、頑張ってくださいね!」
「あぁ! 必ず解き明かしてみせるさ!」
(いや、何を解き明かすんだよ!)と俺は心の中でツッコミを入れた。
それにさすが皐月さんだと思った。担任だから慣れているのか、変な人相手でも上手くコミュニケーションを取っていた。そんな風に思っていると、神楽先生が何かを察したのか、俺に話を振ってきた。
「なんだ、水無月? オレに何か言いたいことがあるのか?」
「別に、何にもないですけど…」
「そんなはずはない! 何か言いたそうな顔をしていた」
「そんな顔をした覚え、ないですけど…」
「いや、お前はオレが発言する度に、表情筋や口角が微かに動いていた。これはお前が何か思っている証拠だ!」
神楽先生が訳のわからないことを言い出したので、仕方なく適当に質問してみることにした。
「じゃあ、先生はどうして今日も白衣なんですか?」
「ん? それはこの前も言っただろ! 白衣はオレの体の一部だ。だから白衣を着ないなんて選択肢は最初からない」
「はぁ、そうですか…」
「それに、ここではあまり違和感ないからな!」
「はっ? 何言ってるんですか? 違和感大アリですけど!」
「そんなことはない! オレよりも変な格好をしている人はいる。ほら、あそこに探偵姿の二人組がいるだろ!」神楽先生はそう言って七星さんたちの方を指さしたので、俺は二人を巻き込まないために話題を変えることにした。
「そ、そういえば、先生はこの前も事前調査をしていましたけど、結局、誘えたんですか?」
「………」神楽先生は何も答えなかった。無視したというよりは、答えたくないようだった。
「事前調査もいいですけど、誘わないと始まりもしないですよ!」
「そんなことはわかっている。言われるまでもない」
「じゃあ、今まで誘ったこと何回あるんですか?」
「………」神楽先生はまたもや答えなかった。
「もしかして、まだ一度も誘ったことないとか…?」
「………」
「そんなんじゃ…」と俺が言いかけたところで、神楽先生は急に立ち上がり、「お前らの意見、参考になった! オレはこの後も調べることがあるから、ここで失礼する。またな」と言って、逃げるように去っていった。反応からして図星のようだった。
「皐月さん…よくあんな人とコミュニケーション取れるな!」
「え? そうかな? 神楽先生、面白いよ!」
「そ、そうか…」
とにかく、厄介な人がいなくなったので、これで少しは休めそうだった。
予想外の人と遭遇してしまったが、特に何もなく去って行ったので、俺と皐月さんは、昼食を取りながらこの後のことを話し合った。とりあえず、4大絶叫コースターは全部乗ったので、次は比較的控えめなところに行こうということになり、内心ホッとしていると、皐月さんが何かのチケットをバッグから取り出した。それは、『極・戦慄お化け屋敷』のチケットだった。ここのお化け屋敷は人気があるらしいが、あまりの怖さにリタイアする人が多いらしい。俺はその話を聴いて、一体どれ程怖いものなのか興味が湧いたが、七星さんのことが気になった。エンパスは五感が敏感なので、恐怖も人一倍感じるはずだ。まぁ、それはHSPである俺も同じなのだが…。俺と皐月さんが離れた席に座っている七星さんに視線を送ると、七星さんはグッドのジェスチャーをしてきた。どうやら行っても良さそうだった。
ということで、俺たちは次に『極・戦慄お化け屋敷』に向かった。ここには四人一緒に入った。少しでも人数がいた方が、怖さが和らぐかもしれないと思ったからだ。しかし、この考えは甘かった。
ここは視覚以外にも、聴覚、嗅覚、触覚など、五感で恐怖を感じる仕掛けになっており、どこからともなく聴こえるうめき声や叫び声、鉄が錆びたような独特の匂い、見るものを震え上がらせる数々の亡骸などがはびこっていた。コースの全長が長いため、約50分この恐怖を感じ続けるらしい。実際に入ってみて、耐えられない人が続出している理由がわかった。
みんなの様子を見ると、皐月さんはいつもと変わらない感じだった。桔梗さんは少し怖がっているくらいだった。七星さんは中に入ってからずっと桔梗さんに引っ付いており、恐怖に怯んでいた。俺は、自分の心拍数が高まっているのがわかったが、冷静であることを装っていた。
しかし、突然後ろからミイラが走って追いかけて来たのに、七星さんが異常な反応で驚いて、一人で先に走って行ったので、桔梗さんが慌てて後を追い、俺たちと逸れてしまった。そして皐月さんも怖いという理由で、それ以降ずっと俺と腕を組んでいた。正直、その方が俺も心強かったので助かった。
俺たちはなんとか最後まで行き出口を出ると、疲れ果てた七星さんと介抱している桔梗さんが待っていた。途中でリタイアしたかと思っていたら、七星さんはそんなことを考える余裕がなかったそうで、結局速足で最後まで回ったらしい。その結果、二回目のバタンキューということだった。
先程と同じようにしばらく休み、七星さんが目を覚ましてから、最後に大観覧車に乗ることになった。大観覧車は、珍しく皐月さんがどうしても乗りたいと言ってきた。ここでも、俺と皐月さん、七星さんと桔梗さんに分かれて乗った。
「翔くん! 今日は付き合ってくれてありがとう!」
「ん? どうしたんだ、急に?」
「翔くん、いつも私のお願いを聞いてくれるから、つい甘えちゃうの。ごめんね、無理やり付き合わせてしまって…」
「そんなことはない! 俺は自分で選んでつもりだ。嫌ならちゃんと断る!」
「そう…なの?」
「あぁ! それに、皐月さんは俺がしたことない体験をさせてくれるから、いつもいい勉強になるんだ! 感謝しないとな! ありがとう!」
「そんな、私はただ、翔くんが喜んでくれれば嬉しいから、そうしているだけで…」
「その気持ちが一番うれしいよ! ありがとう!」
俺が感謝の言葉を言うと、皐月さんは顔を赤くして俯いてしまった。褒められて恥ずかしくなったのだろうと思っていると、皐月さんが「もう、そんな風に言われると、ますます好きに…」と呟いたのが聴こえた気がした。最後の方は声が小さ過ぎたので、何て言ったのか聴き取れなかった。そして顔を上げて「翔くん! 今回、絶対にいい歌を作ってみせるから、楽しみにしておいてね!」と満面の笑みで言った。
「あぁ! 楽しみにしてる!」
大観覧車の後は、ショップを見て回り、それぞれ買い物してから、遊園地を出て帰路についた。そして待ち合わせの駅に着いて、七星さんと桔梗さんと合流し、今日の感想を尋ねた。俺的には結構頑張ったつもりなので、何かいいインスピレーションを与えることができたのではないかと思って期待していたが、七星さんから予想外のことを言われた。
「今日のデートはなかなかよかった! わらわ自身、いろんなことを体験できて、たくさんの歌詞やメロディが思いついた! でも…」七星さんはそこまで言って、言葉を含んだ。
「でも…?」俺は続きを言うように促した。
「でも……まだ足りない! これだけじゃ、いい歌は作れない!」七星さんはそう断言した。
「そう……。じゃあ、どうすればいいの?」皐月さんは真剣な表情で尋ねた。
「簡単だ! 明日もデートをすればいい!」七星さんはあっさり答えた。
「え!?」俺と皐月さんと桔梗さんは声を揃えて驚いた。
「どど、どうしてそうなるのだ?」俺が思っていたことと同じ質問を、桔梗さんが慌てた様子で尋ねた。
「だって情報が足りないのなら、実験するしかないでしょ! だから、明日もデートしてデータを集めるの!」七星さんはあっさりと答えた。
「そ、それはそうかもしれないが……さすがに二日連続は……なぁ、皐月さん?」俺はそう言って皐月さんに視線を送ると、皐月さんは嬉しそうな顔をしていた。
「そ、それはいい提案ね! ぜひそうしよう!」皐月さんはノリノリで賛成していた。
ということで、皐月さんの新曲を作るためのデートは、第二ラウンドを迎えることになった。
読んでいただき、ありがとうございます。
次回もお楽しみに。
感想もお待ちしております。




