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どんな悩みも水無月くんにお任せ!!  作者: たかべー
新・相談部始動編!!
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【番外編】松風日記!!②

 4月初旬のある日、翔からある一曲が「俺も遂に歌い手デビュー!!」というメッセージと共に送られてきた。なんとその曲は、翔が『六月』という名前で五月さつきというVチューバーと一緒に歌っている曲だった。タイトルは『恋愛クエスト!!』。鈍感でやさしい男と、その男に一途な想いを寄せている女の子のストーリーだった。男女のデュエットで、曲調はポップで明るく、歌うパートが結構頻繁に変わる歌だった。男性パートでは、強がったりカッコつけたりといった様子が想像でき、女性パートでは、そんな男性の振る舞いに気づきながらも、ちょっとしたやさしさに惹かれているという内容の歌詞だった。僕は歌を聴いていて、結構共感してしまったので「いい歌だな」と返信した。そして、ゆのさんとの昔の思い出を思い出していた。


 夏休みが明けた初日、始業時間になっても、キミの姿は教室になかった。担任の暦先生が点呼を取り始め、キミが欠席と言っていたので、僕はキミが欠席している理由を先生に尋ねた。

「先生、風待さんはどうして欠席なのですか?」

「ん? 気になるのかネ?」

「……はい」

「そうか……」

 暦先生がそう言って真剣な表情になると、教室の空気がピリピリしてクラス全体が緊張した雰囲気に包まれていくのがわかった。そして「風待くんは……」と含みを持たせながら言い、「海外に旅行に行っているそうだヨ!」とあっさり言った。

それを聞いたクラスメイトたちは、一気に緊張が解かれたように脱力したり、ため息ついたりしていた。中には「いいなぁー、海外旅行かぁ!」、「だからゆのに電話しても繋がらなかったんだ!」と言っている人もいた。どうやらキミに連絡しても繋がらないのは、僕だけじゃなさそうだった。それを知って、僕は少しホッとした。

 それにしても、キミが休んでいる理由がわかったというのに、胸にある違和感が消えなかった。何か大事なことを見落としているような感覚だった。

 朝のホームルームが終わった後、暦先生が声を掛けてきた。

「水無月くん、ちょっといいかネ?」

「はい」

「キミは風待くんと仲が良いみたいだネ!」

「仲が良いかはわかりませんが、話はします」

「そうか! それなら、風待くんがまた元気に登校してきたら、いつも通りに話してくれないかネ?」

「それはわかりません。僕から話し掛けたことがないので…」

「そうか…」

「でも、もし、風待さんが話しかけてくるのなら、僕はいつも通りするつもりです」

「そうか! それならよかった! 風待くんを頼むヨ!」

 この時、暦先生がどうしてこんなことを言っているのか、僕にはわからなかった。


 それから一週間、僕は前みたいに一日誰とも話すことなく過ごす日々が続いた。別に悲しくもなんともなかった。クラスメイトに興味はないし、一緒に話したいとも思わなかったからだ。だけど、少し胸がザワザワする時があった。それがどうして起こるのかわからないので、考え始めた時、キミはようやく登校して来た。その時、胸のザワザワが消えた。

キミが教室に入って来ると、瞬く間にクラスメイトが集まり、キミを囲んでいた。そんなキミを僕は横目で見ていた。キミは友達から、「海外旅行はどうだった?」とか「お土産はないのか?」などと一気に詰め寄られて、困りながらも、愛想よく対応していた。そんな姿のキミを見て、僕は少し違和感を覚えた。クラスメイトは気づいていないようだったが、キミが少し痩せたような気がした。それはダイエットして痩せたというより、食べ物を食べられなくて痩せたように見えた。そう、僕の母と同じように…。それでもキミは元気に話をしていた。

 キミが登校してきた初日は、休み時間もずっと友達に囲まれていたので、僕と話す機会はなく、放課後になった。なので、そのまま帰ろうとしたら、キミは友達の壁をすり抜けて、僕に声を掛けてきた。

「水無月くん! 待って!」

 キミにそう言われて、僕は驚いた顔をして振り返った。

「今から帰るの?」

「あぁ」

「私も帰るから、一緒に帰ろ!」

「キミはあの人たちと帰るんじゃ?」

 僕がそう言いかけた時、キミは「じゃあ、また明日ね! バイバイ!」と友達に言って手を振ってから、「じゃあ帰ろっか!」と言い、僕の隣に立った。僕がそのまま立ち尽くしていると、キミは「ん? どうしたの? 帰らないの?」と屈託のない笑顔をして僕を見つめてきたので、僕は目を逸らし「なっ、なんでもない」と言って歩き始めた。


 帰り道、僕は久しぶりだったので、キミになんと声を掛けようか迷っていた。キミもそんな様子だったため、最初は沈黙が続いた。そして僕が先に声を掛けた。

「体調は大丈夫なのか?」

「え!? どうして…?」

「い、いや、なんとなくそう感じただけで……。久しぶりの学校は疲れるだろうから」

「そう…だね。でも、大丈夫だよ! モーマンタイ!」キミは笑顔で答えた。

「そうか…」その答えを聞いて、少しホッとした。

「ねぇ、水無月くんは、私が一週間休んでいた理由、知ってる?」

「先生に聞いたら海外旅行って言ってたけど…」

「………うん! そうだよ!」キミは少し考えてからそう答えた。そして「それを最初に先生に聞いてくれたの、水無月くんだってね! みんなからそう聞いた時は驚いたよ! 私の心配をしてくれたの?」と質問してきた。

「まぁ、少しは…」

「そうなんだぁ!」

「なんで嬉しそうなんだ?」

「え!? そんな風に見える?」

「あぁ」

 キミとの久しぶりの会話だったが、いつも通りの他愛のない会話ができていた。このまま何事もなくいつも通りだと思っていたら、キミは突然僕の前に立ち、「ごめんなさい」と言い、頭を深々と下げて謝ってきた。

「なっ、なんだ。急に?」

「夏休み、夏祭りに一緒に行く約束をしたのに、行けなくて、ごめんなさい」キミ頭を下げたまま言った。

「そんなこと…」

「行けなくなったのに、すぐに連絡ができなくて、ごめんなさい」キミは深く反省している様子で何度も謝ってきた。

 そして少し沈黙が流れてから、僕は口を開いた。

「何か理由があったんだろ? そこまで気にすることじゃない」

「理由があっても、サイテーなことをしたのは変わらないよ!」キミが涙声になっているのがわかった。

「もう過ぎたことだ。そんなに謝らなくていい」

「で、でも…」

 キミは罪悪感に苛まれているようだったので、僕は少し本音を話すことにした。

「たしかに、あの時は少しショックだったし、心配もした………」僕はそう言ってキミの肩に手をそっと乗せると、キミはゆっくりと顔を上げて僕を見てきた。その頬には涙が流れていた。そして「だけど……今こうして、またキミと話せているから、僕はそれで十分だ」と率直に思っていることを言った。

 すると、キミは「ごめんなさい…」と涙を流しながら言った後、手で拭いながら「ありがとう」と笑顔で言った。

 それを見て僕も安心した。


 それからキミは夏休みのことを話し始めた。夏祭りに行く約束をした翌日、キミは両親から急に海外旅行に行くと言われたらしく、半ば強引に連れて行かれたらしい。そして携帯電話はその時、床に落としてそれを勢いよく踏んでしまったので、壊れてしまい、修理もできないまま旅行に行ったということだった。だから、誰とも連絡ができなかったらしい。キミはおチャラけて話していたが、一瞬その話が作り話のように感じた。しかし、そのことについて深く聞かないことにした。

 キミは新しい携帯電話を買ったようで、「またこれでいつでも連絡できるからね!」と言ってから、僕たちはそれぞれの帰路についた。


 それから、またキミが僕に毎日話し掛ける日常が始まった。

 ある日、キミがいきなり遊園地に行きたいと言い出した。何を唐突にと思っていると、キミは遊園地に行ったことがないからと言っていた。話を聴いていると、どうやら前日に見たテレビで遊園地の特集をしており、その番組を見て、行きたくなったらしい。遊園地に一緒に行こう僕を誘ってきた。僕も行ったことなかったが、そもそも興味がなかったので、他のクラスメイトと行けばいいじゃないか、と提案したが、キミは頬に空気を含んで怒ったので、仕方なく誘いを受け入れることにした。


 そして当日、天気は快晴で、絶好のお出かけ日和だった。なるべく多くの乗り物に乗りたいということで、朝の7時に駅に待ち合わせだった。待ち合わせ時間が早かったので、遅刻魔のキミは遅れるだろうと思いながら、10分前に到着すると、キミはすでに待っていた。どうやら今回は本気らしい。天気が良かった理由を、キミは自分の日頃の行いが良いからと言って嬉しそうだった。

 電車の中でキミは今日の作戦を教えてくれた。どうやら事前に調査をしており、いくつか目当てのアトラクションを決めているようだった。そしてそれには絶対に乗りたいということだった。そのためには、なるべく待ち時間が少ない朝のうちに、いくつ乗れるかが勝負と言っていた。そう言っているキミの目は燃えていた。

 遊園地に着くと、まだ人はあまりいなかったが、時間が経つにつれ、少しずつ集まって来ていた。そして開園時間間近になると、たくさんの人がいた。特にファミリーや若者が多かった。僕の苦手な部類の…。

キミは入場する前から興奮しており、ワクワクが抑えきれないといった様子で前のめりの態勢になっていた。そして開園と同時に入場し、目当てのアトラクションまで走って向かった。僕はそんなキミの後ろを追うのでやっとだった。そのおかげで、キミが一番乗りたいと思っていたアトラクションにはほとんど待ち時間なく乗ることができた。

キミが一番乗りたいと思っていたアトラクションは、この遊園地で一番激しいと言われているジェットコースターだった。キミも僕も乗るのが初めてだったので、基準がわからず、どんな感じかもわからなかった。とりあえず、係員の人の指示に従い、注意事項を守って待っていると、ジェットコースターがゆっくりと動き出した。

「おっ! 遂に動き出したね! 水無月くん!」

「そうだな…」

そして目の前の登坂をガタガタと音を出しながらゆっくりと進み、結構な高さまで登った。そこからは遊園地の景色が見えていた。

「水無月くん! ほら見て! こんなに高いところまで登ってるよ!」

 キミが興奮気味に声を掛けてきたので、返事をしようと「そうだ…」と言い掛けたところで、ジェットコースターが急に勢いよく下りだした。いきなりスピードが速くなったので、僕は驚いて、安全バーを握り締めた。隣に座っているキミは、笑顔で楽しそうだった。手を挙げて風を感じているようだった。そして一回転のところでは、重力を感じ、押さえつけられるようだった。ジェットコースターから降りた時、キミはすごく笑っており、満足しているようだったが、僕は疲れ果ててしまった。予想以上の激しさに圧倒されてしまったからだ。


 そしてキミは余韻を感じながらも、切り替えて次の目的の場所に行こうとしていた。正直、僕は少し休みたかったが、そんな僕の手をキミは引っ張って行った。次のアトラクションもジェットコースターだった。今度のジェットコースターは、なぜか足がブラブラ状態で乗るという、意味不明な作りのジェットコースターだった。乗った時点で嫌な予感はしたが、予想通り、いや予想以上の乗り心地だった。

「最っ高に楽しいね!!」キミは満面の笑みで言った。

「ハァハァ、まあまあだな。ハァハァ…」僕は両手を膝についた姿勢のまま強がった。

「だ、大丈夫? 水無月くん…」

「あぁ。大丈夫だ」

「そっか! じゃあ次行こう!」


 その後も、地上50メートルの高さから、最高速度65キロで一気に垂直落下するアトラクションや高さ30メートルから40度の傾斜を一気に滑り落ちて池に着水するアトラクションに乗ったりして、メインのアトラクションを一通り制覇したところで、ようやく休憩することになった。

 フードコートで軽く食事を済ませた後、今度はお化け屋敷に行こうとキミは誘ってきた。なんでも、ここのお化け屋敷は本物が出ると噂されているらしい。僕は、お化けや幽霊などの非科学的存在について科学的に説明をしたが、そんなことでキミの好奇心は萎えず、実際に確かめたいということだった。

 お化け屋敷の中は当たり前だが薄暗かったので、キミは僕に体を寄せて、腕に抱きついたまま歩き出した。「もう少し離れて歩かないか?」と提案したが、キミは「怖いから無理!」ということで、一向に離れようとしなかった。そのせいで、僕の心拍数は急上昇していた。この胸の高鳴りが、お化け屋敷の恐怖からなのか、キミが引っ付いているせいなのか、僕にはわからなかった。結局、僕はお化け屋敷に集中することができずに、気が付いたらゴールにたどり着いてしまっていた。

「私、本物見つけられなかったよ! 水無月くんは見つけられた?」

「い、いや、僕も見ていない…」

「そっかぁ。本物いないのかなぁ」

「そ、そうだな…」


 その後、少し休憩することにして、僕たちはベンチに座った。キミに視線を送ると疲れている様子だったので、僕は飲み物を買いに行った。キミは一緒に行くと言ってくれたが、僕が休んでいるように説得すると、渋々受け入れてくれた。どうやら僕が思っている以上にキミは疲れが溜まっているようだった。

 僕は近くの店でジュースを買い、それを持ってキミの元へ戻っていると、キミの目の前にチャラい感じの男が二人立っているのが見えた。見たところ、その男二人にキミが絡まれているようだった。客観的に見ると、キミは容姿が整っており、美人だと思うので、ナンパでもされているのだろうか、それとも実は知り合いで、ただ会話をしているだけという可能性もある。そんなこと考えている時、少し胸の辺りがザワっとしたのを感じた。

 そしてチャラ男1がキミの腕を掴み、キミがそれを振り解こうとしている姿が見えたので、先程の推測は前者であると確信して、僕は走ってキミの元へ向かい、間に割って入った。

「あぁ? なんだ、お前?」チャラ男1が言った。

「悪いがこの人は(今日一日だけ)僕と付き合っているんだ。邪魔しないでもらいたいんだが…」僕はチャラ男を睨みつけた。

「は? お前が彼女と付き合っているって、嘘だろ!?」チャラ男2が僕とキミを何度も交互に見ながら驚いていた。

「そんなことで嘘をつくはずないだろ。とりあえずこれあげるから、今日はこのまま引き下がってくれ」そう言って僕は持っていた二つのジュースをチャラ男二人に渡してから、キミの手を引っ張って、その場を去るように移動した。

 しばらく歩いてから振り返ると、チャラ男は後を追って来ていなかったので、一度立ち止まった。そこまでしつこい連中ではなかったようだ。

「ふぅー、なんとか上手くいったな」

「………」

「実際にナンパするような奴っているんだな。正直、都市伝説かと思ってた」

「………」

 キミからの返事がなかったので様子を伺うと、キミの顔はとても赤くなっていた。

「ど、どうしたんだ? 顔が赤いが……体調が悪いのか? ハッ! もしかして奴らに何かされたのか?」

「い、いや! 大丈夫! 大丈夫だよ! ちょっとビックリしちゃっただけで…」

「本当にそうか?」

「う、うん! 大丈夫、大丈夫…」

僕がしばらくキミを見つめていると、キミは突然「あ! あれ! 次はあれに乗りたい!」と指さして言った。キミが指し示している方向に視線を送ると、大きな観覧車が見えた。


 ということで、僕たちは最後に大観覧車に乗ることにした。ここでようやくゆっくり落ち着くことができた。ゆっくりと高くなっていくゴンドラの中から、綺麗な景色と夕日を眺めていると、キミが話しかけてきた。

「ねぇ、水無月くん! 今日一日どうだった? 楽しかった?」

「まっ、まぁ楽しかったな。初めてのことばかりだったから、いい経験になった」

「そっか! よかった!」

「風待さんは……楽しかったのか?」

「うん! 楽しかったよ!」

「そうか…」

 その答えを聞けて、僕はホッとした。遊園地という娯楽施設でも僕は基本不愛想なので、そのせいで楽しさを壊してしまうのではないかと、少し心配していたからだ。

「ねぇ、水無月くん……」キミはそう言ってモジモジしだした。

「なんだ?」

「これからは…私のこと……『ゆの』って呼んでくれない?」

「………!」予想外の発言に僕はすぐに言葉が出なかった。

 そして少し沈黙が流れた。

「あ! い、嫌ならいいの! ごめんね。急に変なこと言っちゃって…」

「べっ、別に嫌ではない。ただ、ちょっと驚いただけだ」

「そ、そうなんだ……。え!? い、嫌じゃないの?」

「嫌な理由はない」

「じゃ、じゃあ、呼んでくれるの?」

「キミがそれでいいのなら」

「うん! いいよ!」キミの表情はパァッと明るくなった。

「わかった。じゃあ、これからはそう呼ぶ」

「ほんと! ヤッター!!」キミは笑顔で喜んでいた。そして「じゃあ、呼んでみて?」と上目遣いで言ってきた。

「い、今か?」

「うん!」

「………ゆ……ゆの…さん」

「はい!」

 僕はキミに見つめられて恥ずかしくなり、目を逸らして言ったが、キミはそれでも笑顔で嬉しそうだった。

「『さん』はなくてもいいんだけどなぁ」キミはさらに要求をしてきた。

「それはさすがにちょっと…」

「そっか! わかった!」キミはあっさりと納得してくれた。そして「じゃあ、私も水無月くんのこと、名前で呼んでもいい?」と提案してきた。

「別に構わない」

「やった! じゃあ、なんて呼ぼうかなぁ~。松風くん…いや、少し硬いかぁ。松風さん…いや、もっと硬くなった…」キミは僕の名前を呟きながら、しっくりくる呼び方を探し始めた。そして「松さん…うん! いい! ねぇ、松さんって呼んでいい?」と提案してきた。

「松さん…別にいいけど…」僕は不愛想な態度で答えたが、内心少し嬉しかった。

「じゃあ、よろしくね! 松さん!」

「あぁ、よろしく。ゆのさん」

観覧車が一周回る間に、僕たちの新しい呼び名が決まったのだった。


 帰る前にはショップに寄り、キミは家族へのお土産を買っていた。僕はお土産を買う相手がいないので、何も買わずに商品を眺めているだけだった。

買い物後、僕たちは帰り始めた。キミは電車の中で次の計画を立てようとしていた。

「ねぇ、松さん! 次はどこに行こうか?」

「もう次のことを考えているのか。随分気が早いな」

「だって時間は有限なんだもん! やりたいことはできるうちにやっておかないと!」

「そうだな…」この時の僕は、ゆのさんの言葉の本当の意味をまだ知らなかった。

 そして少し沈黙が流れてから、キミは何か思いついたような顔をした。

「ねぇ、今度はプラネタリウムとかどうかな?」

「プラネタリウムか……いいんじゃないか?」

「ほんと! ヤッター!!」キミはまるで小さな子どものように喜んでいた。

「好きなのか? プラネタリウム?」

「うん! 好き! 私、宇宙好きなの!」

「そうか」

「松さんは、宇宙好き?」

「まぁ好きだな」

「そうなんだぁ! 一緒だね!」

 キミが笑顔でそう言った時、一瞬胸の辺りがザワっとしたのを感じたので、胸を手で押さえていると、キミが「ん? どうしたの?」と純粋な顔をして尋ねてきた。

「う、宇宙のどんなところが好きなんだ?」僕は咄嗟に思いついた適当な質問をした。

「どんなところ? そうだなぁ~広大さ、かなぁ……あと、未知なところ、とか!」

「そうか」

「宇宙の広大さを考えると、自分ってちっぽけな存在だなって思えるから、悩みがどうでもよくなるの!」

「そうか…」僕は少し考えてから気になっていることを聞くことにした。「ゆのさんは何か悩ん…」僕がそう言いかけたところで、電車が止まった。どうやら降りる駅に着いたようで、キミは立ち上がり、「行こ!」と笑顔で言った。


 駅からは帰り道がキミと反対方向だったので、僕は家まで送ると提案したが、それをキミは拒否した。今日一日付き合ってくれたから、早く帰って休んだ方がいいと、僕を気遣ってくれていた。それに家まで近いからすぐに帰り着くということだった。そしてキミが僕に背を向けて帰り始めた瞬間、キミは突然その場に倒れた。



読んでいただき、ありがとうございます。

次回もお楽しみに。

感想もお待ちしております。

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