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どんな悩みも水無月くんにお任せ!!  作者: たかべー
相談部始動編!!
7/78

効率のいい勉強法とは!?

子どもはみな、学び方を知らないまま学校に送り込まれる。そして教師はそんなことを気にせずにただ知識を詰め込もうとしている。多くの子どもは、その知識量に圧倒されながらも必死に食らいついている。教科書に線を引いたり、黒板をノートに書き写したりしている。しかし、そのやり方では効率が悪いことをみんな知らない。教えている教師ですら知らないことがある。それでは折角の時間がもったいない。俺たちはみんな勉強を始める前に、まずは学び方を学ぶ必要があるだろう。


GWが明け、久しぶりの登校日。正直、俺は普段から結構自由に休んでいるので、GWだからといって嬉しい感情は特になかった。逆に、多くの人が休みで外出するため、俺は家や図書館に引き籠ってほとんど一人で過ごした。

放課後、如月さんは用事を済ませてから行くということだったので、俺と霜月は先に部室に来ていた。

「なあ、翔はGW何してたんだ?」

「特に何も。いつも通り過ごしてた」

「ふーん」

「霜月は何してたんだ?」

「俺は友達とラウワン行ったり、ご飯行ったり、ショッピング行ったりしたかな」

「ふーん。楽しかったか?」

「まぁ、楽しかったな」

霜月が何か言いたそうな感じがしたが、何かはわからなかった。そんな話をしているとドアをノックする音が聞こえた。霜月が「どうぞ」と声を掛けると、ドアが開き、そこには如月さんともう一人隣に女の子が立っていた。

「へー、ここが牡丹の部室なんだ!」彼女は部室を見渡しながら、そう言った。

「うん。そうだよ!」如月さんがウキウキした様子で答えていた。

どうやら如月さんの友達のようだった。それから、彼女と如月さんは一緒に部室に入って来た。

「葉月さん!」霜月が言った。

「ヤッホー、時雨くん!」女の子が答えた。

「もしかして、相談事?」

「うん。まぁそんな感じ…」

このやり取りからして、彼女は霜月とも知り合いということがわかった。しかも結構仲が良さそうに見えた。

そして彼女は俺の方に視線を向けて、小さな声で「本当にいるんだ! 水無月くん」と呟いたのが聞こえた。なぜか、彼女は俺のことを知っているらしい。俺は彼女を知らないし、見たこともないため、聞こえていない振りをした。

彼女はそのまま俺たちの向かいの椅子に座り、如月さんは友達が話しやすいように気を遣ってか、彼女の隣に座った。

「じゃあまず、学年とクラス、名前をお願いします」霜月が定型通り質問して相談は始まった。

「え! 時雨くん知ってんじゃん!」彼女はツッコミを入れるように言った。

「一応、確認のために初めて来た人にはお願いしているんだ。ほら! 知らない人もいるかもしれないから」

そう言って霜月と彼女は俺に視線を向けた。どうもすいませんね、何も知らなくて、と俺は心の中で呟いた。

「二年C組、芙蓉葉月ふようはづきです」彼女は答えた。

「ありがとう。じゃあ早速、今日はどういった相談ですか?」

「相談っていうか、そんなたいしたことじゃないんだけど…」芙蓉さんはそう言って視線を斜め下に向けてから、黙ってしまった。

「あ! ごめん。畏まった感じだから言いにくくなったかな。どんな些細なことでもいいんだ。もし俺たちにできることがあったら協力したいから!」

霜月のフォローで芙蓉さんは少し安心した様子になった。どうやら図星だったらしい。隣に座っていた如月さんも笑顔を向けて励ましていた。

あまり畏まったやり方にすると、苦手に感じる人もいることがわかったので、次回からはいくつか定型文を用意して、人によって変えた方がいいかもしれないな、と思った。


二人のフォローにより、芙蓉さんは悩み事を話し始めた。

「実はあたし、英語が苦手で…」

芙蓉さんの話をまとめると、いつもテストで英語だけ極端に点数が低く、赤点ギリギリらしい。他の教科はそれなりだけど、いつも英語が足を引っ張っているらしい。そのため、英語を集中的に勉強した時もあったが、それでもあまり点数が上がらなかったらしい。それでどうしたらテストでいい点を取れるようになるのか、ということだった。

まぁ、学生にはよくある悩みだ。他に良いところがたくさんあっても、一つ苦手なことがあるだけでそれに意識が向いてしまい必死に努力する。もちろん苦手科目を無くそうと必死に努力することは素晴らしいことだと思う。

しかし、注意も必要だ。苦手科目は無意識に苦手と思っているだけでバイアスがかかってしまい、克服の邪魔になることがある。それに当たり前だが苦手科目の克服には多大な努力と時間が必要だ。あまりに時間がかかれば、少しずつ自信をなくし自己肯定感が下がる可能性もある。この国の教育は特に得意科目を伸ばすより、苦手科目を無くす方に特化している感じがする。それで平均的な人を作って社会に放り出している。その方が社会に出てから扱いやすく、都合が良いからだ。そんな教育に対して、俺は常に疑問を抱いている。

「勉強についてなら、ここに我が校のトップがいるんで彼に聞いてみよう」霜月がそう言って俺に話を振ってきたので、三人の視線が俺に集まっていた。

俺は答える前に芙蓉さんに一つ質問をすることにした。

「一つ質問があるんですけど、いいですか?」俺は芙蓉さんに尋ねた。

「なに?」

「あ、俺は二年A組の水無月…」

「知ってる。水無月翔くんでしょ」俺が自己紹介をしようとしたのに遮られてしまった。

「知ってたんですね」最初に教室に来た時から気づいていたが、俺は知らない振りをした。

「知ってるよ。キミ…有名人だしね」

「え! いや、なに言ってるんですか!? 俺が有名人って!?」

俺は芙蓉さんの発言に少し動揺してしまった。

「ていうか、同い年なんだから敬語じゃなくてもいいよ。なんか敬語使われるとちょっと寒気がする。それに質問ってなに?」

「あぁ、うん。わかった」さっきの話も気になるが俺はとりあえず切り替えることにした。

「芙蓉さんは英語のテストで点数が上がればいいのか?」俺は芙蓉さんの一番の望みを再確認した。

「そうだけど…」

「そっか。わかった。ちなみに今はどんな風に勉強してるんだ?」

「教科書を読んだり、単語をひたすら書いて覚えたりしてる」

芙蓉さんの返答は俺の予想通りだった。俺の予想通り、芙蓉さんの勉強のやり方は効率が悪い。おそらく勉強のやり方なんて考えずに今までやってきたのだろう。芙蓉さんに限らず、多くの学生が勉強のやり方なんて知らずに、ただ黒板をノートに書き写したり、教科書に線を引いたりしているのだろう。だがこれだと勉強ではなく作業になってしまう。こんなやり方じゃ身につくものもなかなか身につかない。

「そっか。ちなみに如月さんはどんな風に勉強してるんだ?」

俺はいきなり自分の考えを言うと、できるやつの考えだな、と思われて敬遠されるかもしれないと思ったので、まずは如月さんに聞いてみることにした。それに聞いた話によると如月さんは結構勉強は得意なようだということだった。

「え! わっ、私!?」突然の質問に少し焦っていた如月さんだった。「私は、英語に限らないんだけど、勉強する時はなるべく集中して取り組むようにしてる、かな」

「たとえば?」如月さんの勉強法はいいやり方かもしれないと思ったので、俺は続けて尋ねた。

「たとえば!? えーと、勉強中はスマホを触らない、とか」

俺は頷いて「他には?」ともう少し話すように促した。

「えーと、集中する時間を決めて、休むときは休むとかかな」

「うん! いいね! 俺もほとんど同じやり方だ」

それを聞いた如月さんは褒められたのが嬉しかったのか、顔を赤くして照れているようだった。

「今、科学的に効率よく勉強する方法として、ポモドーロ・テクニックっていうやり方があるんだけど、如月さんのやり方はそれに近いかもしれないな」

「ポモドーロ・テクニック?」霜月と芙蓉さんは頭に「?」が浮かんでいるようだったが、如月さんは頷いていたので、知っているだろうと思った。それから俺はポモドーロ・テクニックの説明を始めた。


ポモドーロ・テクニックには4つのステップがある。

まず1つ目は、勉強に必要のないものをすべてその場から排除すること。たとえばスマホやパソコンだ。邪魔になりそうなものをすべて排除することで、勉強に集中しやすくなる。2つ目は、タイマーを25分にセットする。スマホよりもタイマー機能のみのものを使った方が集中の妨げにならないのでオススメである。3つ目は、25分間できるだけ集中して勉強に取り組む。最初は他のことが気になって、大変だと思うが、慣れてくれば集中できるようになる。4つ目は、25分が終わったら、5分の休みをとる。この休みはたとえば、目を閉じてリラックスしたり、散歩したり、などだ。そして、5分経ったらまた25分集中する。

この繰り返しがポモドーロ・テクニックと言われる勉強法で、多くの人にとって効率がいいとされている。ただし、注意も必要だ。5分の休みの時は決してスマホを触ってはいけない。もし休憩中にスマホでSNSを見てしまえば、その内容の方に意識が集中してしまい、せっかく学んだ大事なことよりも記憶に残ってしまうことがある。だから、勉強する時は、勉強道具以外は何もない環境作りが結構重要である。


みんなが俺の説明を聞いてくれていたので、つい長々と語ってしまった。俺の悪い癖だ。自分の好きな話題になると調子に乗って一方的に話し続けてしまう。みんなの表情もポカーンしており目を見開いていた。

「あ、ごめん。一方的に話して…。どこかわかりにくかったところはないか?」

「いや、すごくわかりやすかった。そんなやり方があるなんて、知らなかった!」芙蓉さんが言った。

「へぇー! 俺も今度やってみよ!」隣で霜月が言った。

「まぁ、今のはあくまで基本で、人によっては、時間を変えて自分なりにアレンジしているから、芙蓉さんも自分が集中できる時間と、休み時間でやってみるといいと思う」

「うん! やってみる。ありがとう」芙蓉さんはやる気になっているようだった。「水無月くんもこのやり方で勉強してるの?」と質問してきた。

「あぁ。インプットする時は大体このやり方だな。あと、俺が勉強している時に意識しているのが、誰かに教えるつもりで勉強していることだな!」

「誰かに教えるつもり…?」芙蓉さんが繰り返して言った。

「あぁ。誰かに教えるためには自分が理解してないと教えることができないから、覚えやすくなるんだ。他の人に間違ったことを教えたくないからな。それにインプットよりもアウトプットした方が記憶に定着しやすいんだ」

「そうなんだ!」芙蓉さんと霜月が同時に言った。

「学校だと圧倒的にインプットの方が多いからな。でも、それってあまり効率がよくなくて、インプットとアウトプットの比率は3:7が一番いいって言われてる」

事実を伝えるごとに芙蓉さんと霜月の顔が驚き顔から変な顔に変わっていくのが少し面白かった。

「まぁ、そんなに焦んなくてもまだ時間はあるし、今度の中間テストでどんな感じになるか軽い気持ちで試してみたらどうかな?」

「うん。そうだね!」

「あ、あともう一つ」

話は終息しそうだったが、芙蓉さんが俺の話を聞いてくれたのが、なんだか嬉しかったので、もう少し感謝したいという気持ちになり、もう一つアドバイスをしようと思った。

「なに?」芙蓉さんが言った。

「さっきの方法は勉強全般で使えるやり方だけど、芙蓉さんはテストの点数を上げたいんだよな?」

「うん。そうだけど…」

「だったら、テストの過去問を入手して解くといいと思う」

「テストの過去問を…?」

「テストって過去のものとそんなに内容は変わらないから、それを覚えると点数上がるんだ」

「え!? そうなんだ! じゃあ水無月くんも過去問を解いてるの?」

「いや、俺はしてない…というより、教科書すら読んでない」

「えっ、そうなの! ……やっぱり凄いね、水無月くんは!」芙蓉さんは感心してくれているようだった。

「俺はテストで点数をとるために英語を勉強してるわけじゃないからな」

「…何のためにしているの?」如月さんが尋ねてきた。

「俺は英語を話せるようになるために勉強している」

「へぇ、そうなんだー」如月さんはそう言ってすぐに納得してくれた。

「えっ、じゃあ翔、英語話せるの?」今度は霜月が尋ねてきた。

「まぁ少しは…」

「ちょっと話してみてよ」芙蓉さんが振ってきたので俺は少し話してみることにした。

「Thank you for coming to the consultation today. Let's do our best for the next mid-term test.」(今日は相談に来てくれてありがとう。今度の中間テストお互い頑張ろうね)

如月さんは頷いていたので理解している様子だったが、芙蓉さんと霜月は「おぉー!」と言って拍手をしてくれた。おそらく何と言ったのかわかっていないのだろう。

「あたしもさっきの勉強法を試したらそんな風に話せるようになるかな?」芙蓉さんが純粋な目をして俺に聞いてきた。

「まぁ、できなくはないと思うけど…話すってなると、またちょっとやり方を変えた方がいいかな、と思う」

「そうなの!? 水無月くんはどうやってるの?」芙蓉さんが尋ねてきたので、俺は自分の勉強法を説明することにした。

「俺は英語しか話せない場所に行って会話の練習をとことんしたかな。よく言うでしょ。外国語を一番早く身につける方法はその国に行くか、その国の人を好きになることって。これって結構合理的だよな」

そう言った時、如月さんの俺を見る目が妙に鋭くなった気がした。そして「へぇー、もしかして水無月くんは外国に好きな人でもいるの?」と質問してきた。如月さんの顔は笑顔だが何か変な圧を感じた。俺が何か変なことでも言ってしまったのか、と思ったが、わからなかった。

「いや、いないけど…」俺は少し動揺しながら答えた。

如月さんは胸に手を当て「ふぅー」と一息ついて落ち着いていた。

「へぇー! 水無月くんって結構活動的なんだね!」芙蓉さんが「意外!」といった感じで言った。

「いや、芙蓉さんが思ってる感じじゃないと思う。俺、人が多いところ苦手だし、今の時代ならオンラインでも外国の人と話せることができるから、それで交流していただけで…」

と言いかけたところで、話が脱線していることに気づいた俺は、話題を戻すことにした。

「ていうか、俺の話はどうでもよかったな。芙蓉さんの相談がメインだった。ごめん」

「いやー、そんなことないけど。水無月くんって結構謎だったけど、話してみると普通に面白いね。ねぇ、牡丹」

「そうでしょ! 水無月くんはやさしくて、とてもいい人なんだよ! みんなが気づいてないだけで…」

普段褒められることがない俺は、唐突に褒められてどんな反応をすればいいのかわからず、普通に照れてしまった。如月さんも自分で言って恥ずかしくなったのか、ハッとして俯いた。俺は霜月に視線を送りまとめるように合図した。

「じゃあ葉月さんの相談のまとめですが…」

そこまで言いかけて霜月は俺に丸投げしてきたので、代わりに俺が話をまとめた。



読んでいただき、ありがとうございます。

次回もお楽しみに。

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