鈍感な世界で生きる敏感な人!!
HSPという言葉を聞いたことがあるだろうか。これは、Highly Sensitive Personの略で敏感な人という意味だ。日本では繊細さんという方が馴染み深いかもしれない。敏感な子どものことはHSC(Highly Sensitive Children)という。HSPは生まれながらの気質であり、決して病気ではない。
HSPは5人に1人の割合でいると言われている。最近少しずつ認知度を上げているようだが、まだまだ理解されていないことが多いようだ。あなたはHSP、敏感な人と聞いて、どんなイメージを抱くだろうか。恥ずかしがりや、神経質、心配性、引っ込み思案、忍耐力がないなどネガティブな要素ばかりではないだろうか。これらのイメージは、HSPが悪いものだという印象を与えてしまうため、払拭する必要があるだろう。なぜなら、HSPには素晴らしい能力があるのだから。
HSPの優れた能力として、7つ挙げることができる。
1つ目は、一度に多くの情報を吸収できることだ。HSPは敏感な神経を持っているため、細かいところまで感じ取り、受け取った情報が心の奥まで届くのだ。物事を生き生きと思い描く想像力を備えており、得た情報を元に様々な思考や空想を広げることができるのだ。
2つ目は、音やにおいなどの微細な違いも察知できることだ。HSPは自分で選ばなくとも、音やにおい、視界に入ってくるものを気にせずにはいられないことが多い。非HSPが普通だと感じる音やにおいも、HSPにとっては、強く感じることがあるということだ。この能力を上手く使い、自分にとって心地良い音楽を聴いたり、花のいい香りを嗅いだりすると、心を安らかにできるだろう。
3つ目は、ゆくっり、深く多角的に考えられることだ。HSPは1つの物事について、たくさんの異なる観点から捉えることができる。時間を掛けてじっくり考えることにより、独創的な発言や行動ができるようになる。この能力を活かした、作家、アーティスト、思想家は結構多い。
4つ目は、とても慎重で、危機管理能力が高いということだ。HSPは口に出すか行動に出る前に、よく観察し、考えることが多い。たとえば、会話を始める前には、複数のパターンをあらかじめ想定しておいて、相手の答え方次第で、話す内容を変えるようにしている。このように、足を踏み入れる前に、その状況について綿密に考えるので、失敗したり、不運に見舞われたりするのを防ぐことができる。一方、起こりうる危険性について、ウジウジといつまでも考えていると、行動が遅くなるという欠点になりうるので、注意が必要である。
5つ目は、共感能力が高く、気配り上手であることだ。HSPは相手の気持ちを察知する能力が高く、その能力を活かした仕事に就くことが多いらしい。たとえば、サービス業や人をサポートする仕事に身を置き、相手から感謝されることが多いそうだ。
6つ目は、誠実で、責任感があるということだ。HSPは不穏な空気を感じ取ると、責任を取らなくてはならないと思い、すぐにどうにかしようと頑張ることがある。ある調査によると、4歳の敏感な子どもは、道徳的なジレンマに陥った際、社会的に優れた答えを出すらしい。たとえば、確実に誰にも見られていないと分かっている時でも、他人を騙したり、ルールを破ったりしない傾向があるようだ。
7つ目は、想像力が豊かで、内的生活が充実しているということだ。HSPにインスピレーションの源になるものはたいして必要なく、自分の内側から湧いてくること多いらしい。それを上手く昇華することができれば、素晴らしい芸術作品を生み出せるかもしれない。
また、HSPは良好な環境下であれば、高い能力を発揮できると言われている。HSPは神経系が敏感で多くの情報を吸収し、熟考できるので基礎能力が高い人が多い。平穏で適度な刺激があり、いつでも落ち着くことができる環境であれば、HSPは自分の強みを活かすことができるのだ。
このようにHSPには素晴らしい能力が備わっている一方で、気をつけなければならないこともいくつかある。HSPが抱える心の問題として、自分自身に高度な要求をしてしまう傾向があることだ。自分に課したルールに縛られたり、高い基準を設けていたり、頑張らないと好かれないと思い込んでいたりする。これらに陥らないようにするには、一度ゆっくりと自分を見直して、場合によっては基準を下げたり、思いきって本来の自分をさらけ出したりしてみるといいだろう。これらは勇気のいることだが、辛く苦しんでいるのなら、変わることも必要だと思う。
HSPは罪悪感や羞恥心に苛まれてしまうことも多い。自分の力が及ばないことや本来背負うべき以上の罪悪感を抱いたり、自分には根本的な欠陥があるという思い込みによる羞恥心を抱いたりすることが多いらしい。過度な罪悪感を抱かないためには、その物事に対して、自分の力がどこまで影響するのか、考えるといいだろう。大抵のことはほとんど影響力がないことに気づくはずだ。羞恥心に対しては、オープンにしてみるという方法がある。多くの人は恥じていることや失敗したことを隠したいと思っているが、勇気を出してオープンにすると、意外にも周りの人はやさしく接してくれることが多い。人間である以上、誰でも失敗はするものなので、誰かが失敗談を語りだすと少しずつ波及し、みんな同じなんだと知ることができる。
さらにHSPは恐怖心を感じ、憂鬱になりやすい人が多いらしい。新しい可能性を考えるのが得意なために、物事が悪い方向に行く可能性も見えてしまい、それが不安を募らせることになっているようだ。この不安や恐怖心に囚われてしまうと、憂鬱になってしまうということだ。これらに陥らないためには、不安や恐怖心を感じることが悪いことではないということを知るといいだろう。不安や恐怖を感じることは自然なことであり、人間である証だ。無理やり取り除こうとするのではなく、自分を客観的に見つめるといいだろう。これらのネガティブな感情を抱いたからって、自分を批判しなくていいし、無理に楽観的になろうとしなくてもいい。ただ、そっと自分を見つめるだけでいい。もし憂鬱になってしまったら、小さな成功体験を積むといいだろう。憂鬱な気分になると、自分自身や将来のことについて、ネガティブに考えてしまい疲れてしまう。そして疲れていると、よりネガティブに考える傾向があるため、悪循環に陥ってしまうのだ。このようになってしまった時は、簡単な目標を設定して、小さな成功体験を積むと気分が晴れることがある。上手くいったという体験は気分を上向きにしてくれ、次も頑張ろうという気持ちを抱かせ、好循環に繋がりやすい。この時、いきなり大きな目標を設定し失敗すると、またネガティブに陥ってしまうため、始めは小さな目標設定をオススメする。たとえば、5分散歩したり、腕立て伏せを1回したりという感じだ。
HSPは怒りを上手く放出できないことがあるようだ。共感力が高く繊細なため、怒りや諍いのダメージを受けすぎるようだ。HSPは誠実で思慮深いがゆえに、諍いが苦手である。諍いが苦手な人は、ネガティブ感情を表に出さず、何の問題もない振りをしてしまうだろう。しかし、こうして自分を騙していると、ダメージは蓄積され、後々大きな影響を及ぼすことになるだろう。そうならないためにも、適度にネガティブなことも言った方がいいだろう。限界をはっきりさせることは生きていくのに必要なことだ。HSPは、「~すべき」という風に自分自身を道徳化する傾向もある。この考えに囚われてしまうと自分自身を縛りつけ、生きづらくなってしまうだろう。この考えに陥らないためには、「すべき」から「だったらいいのに」へ考え方を変える必要がある。生きていく中では自分の思い通りにならないことはたくさんある。その都度「~すべき」という考え方だとストレスが溜まりやすいだろう。何事も「~だったらいいのに」と考えることができるようになったら、ストレスを減らせることができるだろう。
HSPはとても敏感であり繊細であるが、世の中の多くの人は非HSPであり、鈍感である。なので、HSPはこのような鈍感な人たちと上手く付き合って行かなければならない。鈍感な人たちと上手く付き合う方法としては、周囲の人に自分がHSPであることを伝える、自分の限界点をはっきり伝えておく、休憩や散会の時間を事前に約束しておく、自分にできることは限られているという事実を受け入れる、会話中でも休憩をとるなどがある。また、敏感な自分と上手く付き合う必要もある。HSPである自分と上手く付き合う方法としては、敏感な能力を楽しむ機会を作る、過度な刺激を受けないための対策をとる。過度な刺激を受けたら、じっと内側に集中する、自分自身にやさしくなり自分を守る、自分らしくいることの喜びを感じるなどがある。
HSPは決して忌むべきものではない。それは生まれ持った素晴らしい能力であり、強みとして活かすことができる。HSPの人は自分を責めてしまう人が多いらしいが、その必要は全くない。むしろ、敏感に反応するので、日常生活では五感を使って、より生きていることの喜びを見つけることができるだろう。
1月下旬のある日の放課後、俺はいつも通り部室で読書をしていた。今日は桔梗さんが用事で帰り、ひまわりさんが生徒会の仕事で休みなので、いつもより2人少ないはずだったのだが…。
「ねぇねぇ、翔くん! HSPって聞いたことある?」当たり前のように部室に居座っている弥生さんが声を掛けてきたので、俺は読んでいた本をかばんに入れ、応答することにした。
「あぁ、Highly Sensitive Personのことだろ?」
「え!? ハイリィ…センシティブ…パ、パ…」
「Highly Sensitive Person、略してHSP。敏感な人とか繊細な人って意味の言葉だろ?」
「あ! そうそう、それ! 敏感な人って意味だった!」弥生さんが思い出したように言った。
「HSPがどうかしたのか?」俺は質問した。
「それがね……この前仕事でHSP診断っていうのをしたんだけど、その結果、私、HSPだってことが分かったの!」弥生さんは意外というようなテンションで言った。
「そっか! 弥生さんはHSPだったんだな!」俺は普通のテンションで言った。
「あれ? 翔くん、あまり驚かないんだね?」
「まぁ、弥生さんは香水を作ったり、作詞作曲もしたりしているから、もしかしたらHSPの可能性があるかもしれないなぁって思ってたから」
「え!? 翔くん、私がHSPだって気づいてたの?」
「いや、可能性があると思っていただけで、そうだとは思っていなかった」
「そうなんだぁ! 私、自分でビックリしちゃたんだけどなぁ~」弥生さんが少し悔しそうにしながら言っている気がした。おそらく俺の反応が予想よりもショボかったので、落胆したのだろう。
「へぇー! 弥生さん、HSPだったんデスね! 全然分かりませんでシタ!」ベルさんが驚いた顔で言った。
「だよね! 分からないよね! 普通そんな反応だよね!」弥生さんがベルさんの驚きを見て、少し嬉しそうだった。
「弥生さん、普段いろんな人と仕事したり、大勢の前で歌ったりしているので、全然そんな風には見えなかったデス!」ベルさんが言った。
「そうだよね…。私、人と会うの好きだし、結構外向的だと思うんだけどなぁ~」弥生さんは診断結果にあまり納得していないようだった。
「あぁ、それはもしかしたら、HSPを勘違いしているかもしれないな」
「勘違い…?」弥生さんが頭に?を浮かべていた。
「HSP=内向的って勘違いしている人が多いらしいが、実際にはHSPの30%は外向的って言われているんだ」
「へぇー、そうなんだぁ!」弥生さんが感心した様子で聞いてくれていた。
「それに好奇心が高く、刺激を求めるHSS型HSPっていう人もいるから、弥生さんはそれかもしれないな!」
「そうなんだ! HSPにもいろんな種類があるんだね! HSS型HSPかぁ。なんか少しカッコイイね!」弥生さんはあっさり納得してくれたようだった。
「そうだな」弥生さんの意見に俺も同意した。
「翔くんはHSPってどう思う?」弥生さんが質問してきた。
「どう思うって、特に何かを思うことはないけど…」俺は率直に答えた。
「そうなんだ! HSPの人が苦手とかないの?」弥生さんが少し心配そうな顔で言った。
「そんなことないけどな。てか、俺もHSPだし!」
「え!?」弥生さんとベルさんと牡丹さんが声を揃えて驚いた。
「翔くん、HSPだったの?」弥生さんがビックリした顔尋ねてきた。
「全然知らなかったデス!」ベルさんもビックリした顔で言った。
「そうだったんだ!」牡丹さんもビックリした顔をして言った。
「あれ? 言ってなかったか?」と問うと、三人は首を横に振った。俺は前に言ったことがある気がしたが記憶違いだったようだ。
「俺は大きな音とか人混みが苦手だから、学校が結構キツイんだよ。だから刺激を受けすぎた次の日は、休んで一人で過ごして回復しているんだ!」
「そうだったの! だからよく休むんだ! ただのサボりじゃなかったんだね!」弥生さんが俺の休む理由に納得したようだった。
「ソウイエバ…そんなこと…前にどこかで聞いたことがあるような…ないような…」ベルさんが俺の発言を聞いて、記憶を辿っていた。
「私もどこかで聞いた覚えがあるんだけど…どうして思い出せないんだろう」牡丹さんもベルさんと同じように記憶を遡っているようだったが、思い出せないでいた。
「まぁ、はっきりと言ってなかったかもしれないから、覚えていなくても仕方ないな」俺は二人をフォローするつもりで言ったが、二人はしばらく考え込み始めた。
「それにしても、翔くんもHSPだったなんて、ちょっと嬉しいな!」弥生さんが笑顔でそう言ったのを見て、ドキッとしてしまった。
「そっ、そうか…。意外とHSPっているもんだぞ。5人に1人はいるらしいからな!」俺は照れを隠しながら言った。
「そうなんだぁ!」弥生さんは笑顔で言った。
すると、霞さんが俺たちの方を見ながら、そーっと手を挙げた。
「ん? 霞さん、どうしたんだ?」霞さんに気づいた俺は尋ねた。
「わ、私も…HSPです…内向的な…」霞さんが小さな声で言った。
「そうなんだ! 霞ちゃんもHSPなんだぁ!」弥生さんが嬉しそうな顔で言った。
「そっか。なら俺と一緒だな! 俺も内向的なHSPだから…」霞さんがHSPであることはなんとなく予想していた。今まで霞さんが大きな音に敏感に反応している姿を何度も見てきたからだ。それにHSPはアーティストに多いと聞く。霞さんの芸術センスはHSPの特性を活かしているのだろう。
「そう…ですね」霞さんは小さな声で言った。
「こんな近くに2人もいたんだね! ちょっと安心した」弥生さんが安堵の表情を浮かべていた。
「まぁボクはHSPじゃニャいんだけどニャぁ」カスミンが俺の顔に最接近して言った。
「そっ、そうか」俺は目を逸らしながら言った。
「霞ちゃんはHSPなのに、カスミンはHSPじゃないんだ!?」弥生さんが本質的な質問をした。俺も少し気になっていたので、耳を傾けた。
「そうだニャ。カスミンと霞ちゃんは一心同体だけど、全てが一緒ってわけじゃニャいからニャ! だからいい相棒にニャれるんだニャ!」カスミンが弥生さんの方に向き直し、堂々とした態度で答えた。
「へぇー、そっか! 心強いね!」弥生さんが納得した様子で言った。
「ボクは頼りになるんだニャ!」カスミンが胸を張って言った。
「翔ってHSPだったんだな!」唐突に紫苑が話に入ってきた。
「あ? なんか言いたいことでもあるのか?」俺は強めの口調で言った。
「いや、HSPってことは今度のテスト前日に…」紫苑は何か良からぬことを企んでいるような顔をしていた。
「自分の能力を伸ばさずに人の妨害ばかりするのって、つまらない奴のやることだよなぁ」俺は周りに同意を求めるように言った。
「そうだね。サイテーだね」弥生さんが真っ先に賛同してくれた。
「器の小さい…人ですね」霞さんが小さな声で賛同してくれた。
「人としてどうかと思います」助っ人に来ていた七海さんがジト目で紫苑を見つめた。
「そっ、そんなことするはずないだろ! なぁ時雨?」3人に責められて精神的ダメージを受けた紫苑は時雨に助けを求めていた。
「俺に話を振るなよ! どう見ても負け戦じゃねぇか!」時雨も紫苑を突き放した。
「そんなこと言うなよなぁ」紫苑は時雨に泣きついていた。
「ところで、HSP診断ってどんなことをしたんですか?」七海さんが絡み合っている男二人を無視して、弥生さんに尋ねた。
「ん! いくつかの質問に答えるだけだよ」と弥生さんは答えた。
「へぇー! 私もやってみようかな…」七海さんが興味を抱いているようだった。
「じゃあ、今ちょっとやってみるか?」俺は提案してみた。
「え!? 今すぐできるんですか!?」七海さんが驚いていた。
「あぁ、HSPの電子書籍をダウンロードしているから、これを見ながらできるぞ! やってみるか?」俺はスマホを取り出してフリフリしながら言った。
「やってみたいです!」七海さんが好奇心旺盛な目をして言った。
「いいデスね! ワタシもやりマース!」ベルさんが記憶旅行から戻って来て、ノリノリで参加宣言をした。
「わ、私もやろうかな…」牡丹さんも興味を抱いているようだった。
「当然、俺もやる!」紫苑が開き直って参加宣言した。それを見た俺は時雨に視線を送ると、軽く頷いたので、時雨も参加するのだろうと思った。
「私も、もう一度やってみようかなぁ! 翔くんの方が信ぴょう性あるだろうし…」弥生さんも乗り気になっていた。
「ボクたちも、もう一回やってみようか!」カスミンが霞さんに尋ねて、霞さんも頷いていた。
結局、ここにいる全員がHSPの自己診断テストをすることになった。
「とりあえず、2種類の自己診断テストがあるけど、どっちがしたい?」俺はみんなに尋ねた。
「どっちもデス!」ベルさんと七海さんが声を揃えて答えた。
「え!? どっちも?」俺は思わず繰り返した。
「翔サンはどっちもしたんデスよね?」ベルさんが尋ねてきた。
「まぁ、そうだな…」
「それなら、私たちも2つともします!」七海さんが元気な声で答えた。
「そっ、そうか……。分かった」
ということで、2種類のHSP自己診断テストをすることになった。
「最初に言っておくけど、どっちのテストも完全ではないからな。テスト結果がその人の性質のすべてを表すわけじゃない。あくまで、自分の敏感さを知るためのヒントとして受け止めると良いと思う」俺が始める前に忠告すると、各々返事をしたり、頷いたりしたので、続けて「まずは、いくつか質問するから、少しでも当てはまるようなら『はい』、当てはまらないなら『いいえ』と答えるように…。あまり深く考えずに直感で答えるといい」俺は最初の説明をした。
「なんだか、ワクワクしてきマスね!」ベルさんがにこやかに身体を揺らしながら言った。
「あ! この前のやり方と一緒だ!」弥生さんが言った。
「じゃあ、始めるぞ! 一つ目の質問。周囲の些細なことによく気づくと思う…『はい』か『いいえ』か…」俺は質問を2回繰り返して、みんなの様子を伺い、全員が答え終わったら、次の質問に移行した。
「次の質問。他人の機嫌に影響される…『はい』か『いいえ』か…」俺は2回繰り返して読んだ。
このようにして全部で20問ちょっと終えたところで、自己採点を始めた。
「『はい』が12個以上あったら、おそらくHSPだろうということだ! どうだった?」俺はみんなに尋ねた。
「ワタシ、4個でシター! HSPではなさそうデスね」ベルさんが真っ先に答えた。まぁ予想通りだと思った。
「私は7個だったから、私もHSPではなさそうです」七海さんが続けて答えた。これもまぁ予想通りだった。
「俺も2個だから、全然違うな! 時雨はどうだった?」紫苑も予想通りの答えを言いながら、時雨に尋ねた。
「俺は11個だったから、微妙なところだな!」霜月が微妙な顔をしながら答えた。
「私も12個だったから、HSPなのかも…」牡丹さんが少し驚いた様子で答えた。
「私、この質問だと結構当てはまって、18個なんだよね! もう完全にHSPだよ!」弥生さんが完全に納得した様子で答えた。
「わ、私は…22個…『はい』がありました」霞さんが小さな声で答えた。
「カスミンは8個だったニャ!」いつの間にかカスミンも参加していたらしい。というより、霞さんは自分と同時にカスミンとしても答えていたのか、と驚愕した。器用な人だな、と思った。
「まぁ、最初にも言ったけど、こうした心理テストは必ずしも正確じゃないから、参照する程度にとどめておいた方がいい! 『はい』が少なくてもHSPかもしれないし、その逆も然りだ」俺は改めて補足した。
「そうデスね!」ベルさんが笑顔で頷いてくれた。
「じゃあ、もう一つの方もしましょう!」七海さんが次に進むよう促してきた。
「そうだな。今度はちょっと質問が多いけど、続けて大丈夫か?」俺がみんなに確認すると、各々返事をしたり、頷いたりして答えた。
「全部で48個の質問があって、グループAとグループBに分かれている。各質問に0点(当てはまらない)、1点(ほとんど当てはまらない)、2点(少し当てはまる)、3点(ほぼ当てはまる)、4点(完全に当てはまる)で採点し、最後にグループAからグループBの合計点数を引くやり方だ」俺はルールを簡単に説明した。
「Oh! なんだかさっきよりも本格的デスね!」ベルさんのやる気が上がったようだった。
「そうですね! より正確な診断ができそうな感じがします!」七海さんがベルさんに賛同した。
「このやり方、私も初めて!」そう言う弥生さんは楽しみといった感じの顔をしているように見えた。
「………!」牡丹さんは少し緊張しているような顔をしていた。
「じゃあ、始めるぞ! 1つ目の質問。美しい音楽を聴くと、興奮する。0点~4点でどのくらい当てはまるか…」俺は2回繰り返して、みんなの様子を伺い、全員が答え終わったら、次の質問に移行した。
そして35問までいったところでグループAの質問が終わったので、一度合計点数を出してもらい、続きを始めた。グループBの36問目から最後の48問目を終えた後に、合計点数を出し、グループAの合計とグループBの合計を引いて、結果を出してもらった。
「結果の値はマイナス52~プラス140の間になるはずだ。その値が、60以上なら、HSPである可能性がある! そして数字が大きければ大きいほど、敏感ということになる!」俺は参照する数値の目安を説明した。
その結果、先程と同じように、ベルさん、七海さん、紫苑、カスミンが非HSPで、牡丹さんと時雨が中間、弥生さんと霞さんがHSPという結果だった。
「さっきと同じ結果だね。やっぱり私、HSPなんだぁ!」弥生さんが納得した様子で言った。
「ワタシはHSPではなかったみたいデス…」なぜかベルさんは少し寂しそうにして言った。
「私は…どっちなんだろう?」HSPかどうかが分かるはずの自己診断テストだったが、牡丹さんは逆に分からなくなったようだった。
「如月先輩と霜月先輩はどっちのテストも中間でしたもんね。この場合はどうなるんですか? 翔先輩!」七海さんが俺に尋ねてきた。
「うーん、どうだろうなぁ。正直、分からない」俺は率直に答えた。
「何かもっと明確な基準はないんですか?」七海さんが続けて尋ねてきた。
「そうだなぁ。いくつか特性はあるけど、診断テストと同じ内容だからなぁ」俺は考えたがいい返事を思いつかなかった。
「どんな特性なんですか?」七海さんが尋ねてきたので、俺は、HSPが情報を深く処理するのに長けていること、些細なことにもすぐに気づけるほど刺激に敏感なこと、いい経験にも悪い経験にも反応しやすいこと、共感能力が高いことなど、良い面を強調して説明した。
「へぇー、HSPってそんなにすごい能力があるんだ! 良かった!」弥生さんが安心した様子で言った。
「くっ、だから翔の能力は高いのか!」紫苑が悔しそうな顔をして言った。
「そっ、そんな能力があるなんて、知らなかった…」霞さんが驚いた様子で言いながらも、少し微笑んでいたので、喜んでいるような気がした。
「で、先輩たちはどうだったんですか?」七海さんが牡丹さんと時雨に尋ねた。
「俺は…微妙だな。些細なことに気づかないと思う」時雨が自己分析をして答えた。
「私は…ちょっと当てはまるような気がする…かな」牡丹さんも自信なさそうに答えた。
「まぁ、何度も言うけど、あくまで自己診断のテストだからな。囚われ過ぎて行動を抑制したり、視野を狭めたりしないくらいに、受け止めれば良いと思う」俺は再度補足した。
「刺激に敏感ってことは、いろんなことを深く感じやすいってことでいいの?」弥生さんが確認するように尋ねてきた。
「そうだな。HSPでも人によって感じ方の強さは違うし、五感のどれがより敏感かも違うから、一概に一緒とは言えないけど、敏感なのは確からしい」俺は弥生さんの質問に答えた。
「そうなんだぁ!」弥生さんは納得してくれたようだった。
「だから、自然の中で鳥のさえずりを聴きながら過ごしたり、自分にとって心地良い音楽を聴いたりすると心身の健康に良いらしい」俺は補足を付け加えた。
「へぇー」弥生さんは頷きながら納得していた。
「ちょっと試してみるか?」俺はみんなに提案してみた。
「え!? 今から森にでも行くんですか?」七海さんが尋ねてきた。
「いや、ここでちょっと再現してみようと思うんだが、やってみるか?」再度尋ねると、みんな了承してくれたので、俺はカーテンで窓を覆い、電気を消して部室を暗くし、BGMに川の流れる音と鳥のさえずりを流し、芳香剤を森の香りに変更し、目を閉じて深くゆっくりと呼吸するように声を掛けた。途中で声を出さないで、音やにおい、呼吸に集中するように言った。これを3分程して目を開けるように言い、部屋を明るくして、みんなに感想を求めた。
「なんだかとても気持ち良かった! 大自然の中にいるみたいだったよ!」弥生さんが少し驚いた様子で感想を述べた。
「そうデスね! ワタシは森の中を駆け抜けているのを想像しまシタ!」ベルさんが笑顔で感想を述べた。
「私は、キャンプしている自分が浮かび上がりました!」七海さんが感想を述べた。
「わ、私は…カスミンと河原で、川の流れをずっと眺めていました!」霞さんが小さな声で感想を述べた。
「俺は川で釣りをして鮎を釣ったぞ!」紫苑が堂々と感想を述べた。
「俺は昔の記憶が蘇って来たよ! カブトムシやクワガタを取りに行った記憶が…」時雨
が懐かしさを感じながら言った。
「私は…二人で散歩する光景が浮かんだよ!」牡丹さんが笑顔で感想を述べた。
「へぇー、誰と散歩していたんデスか?」ベルさんが牡丹さんに尋ねた。
「そっ、それは…」牡丹さんはそう言って一度俺に視線を向けてから「あ、姉と一緒に散歩してたの!」と少し恥ずかしそうにしながら言っているように見えた。
「牡丹、お姉さんがいたんデスか!? 知らなかったデス!」ベルさんが驚いていた。
「あ、うん。昔いたの…」牡丹さんとベルさんは二人で話し始めたので、俺は残りのみんなに説明を続けた。
「疑似的にしてもこのくらい感じるから、本物の自然の中だと、もっと心地良いと思うよ! 俺も定期的に行っているし…」。
「そうだったんだ! 私も今度行ってみよう!」弥生さんが行く気満々になっているようだった。
「あと、ペットとか動物と遊んだり触れ合ったりするのも健康に良いからオススメだな!」俺は最後に補足した。
「へぇー、そうなんですね!」七海さんが納得したような顔で言った。
「わ、私…猫と遊ぶの…好き…です」霞さんがひょこっと手を挙げて、控えめに言った。
「私も猫好き! 犬も好きだけど!」弥生さんが霞さんに笑顔で同意した。
「俺も猫好きだな。観察しているだけで癒される」俺が同意すると、続けて紫苑、ベルさん、牡丹さん、時雨も猫が好きだと言った。
「もう! みんニャ、そんニャにボクのこと好きだったんだニャ!」カスミンが手を頭の後ろに回し、照れた様子で言った。
「そうデスね! もちろんカスミンも好きデスよ!」ベルさんが笑顔でカスミンに言った。
「見てると面白いよね」牡丹さんが軽く微笑みながら言った。
「たまに調子に乗るところがあるけどな!」紫苑が挑発するように言った。
「それはキミのことじゃニャいのかニャ? 神無月くん…」カスミンが挑発に乗って答えた。
「カスミン程じゃないさ」紫苑が涼しい顔で答えた。
「いやいや、神無月くんには敵わないニャ」カスミンも反論し、二人はバチバチと睨み合いを始めた。
「翔くん、動物好きなの?」バチバチしている二人を無視して、弥生さんが尋ねてきた。
「そうだな。全部好きってわけじゃないけど、観察するのは好きだな」
「じゃあ、魚とか海の生き物も好き?」弥生さんが続けて尋ねてきた。
「ん? まぁ好きだな」俺は率直に答えた。
「そっか! 良かった!」弥生さんは俺の答えを聞いて安心したようだった。
その後は、クライエントも来なかったので、雑談して過ごし、帰りの時間になった。みんなそれぞれ荷物を片付けていると、部室のドアをノックする音が聴こえた。時雨が「はい」と声を掛けると、ドアが開き、そこには急いで髪が乱れているひまわりさんが立っていた。
「すみません。生徒会の仕事が今終わって、遅くなり……」ひまわりさんはそこまで言いかけて発言を止め、俺たちを見回してから「遅かったみたいですね…」と少し悲しそうな顔で言った。
「大丈夫! ひまわりちゃんの代わりは私が果たしたから!」七海さんがグッとポーズをしながら言った。
「え!? 誰か相談者が来たんですか?」ひまわりさんが驚いた様子で尋ねてきた。
「いいニャ、今日は誰も来てニャいニャ」カスミンが答えた。
「そ、そうですか」ひまわりさんは安堵の表情を浮かべていた。
「ひまわりさんは生徒会もあるから、無理してこっちに参加しなくても…」俺はひまわりさんをフォローするつもりで言った。
「え!? 私は相談部に必要ないってことですか?」ひまわりさんが悲しそうな顔で言い、泣き始めたようだった。
「え!? いや、そういう意味じゃなくて…」俺は慌てて訂正しようとしたが、時すでに遅しだった。
「翔先輩、サイテーです」七海さんが鋭い目つきで俺を見ながら言い、ひまわりさんを慰め始めた。
「酷いです」霞さんがひまわりさんに共感して悲しそうな顔で言った。
「翔サンがそんなことを言う人だったなんて!」ベルさんはなぜかノリノリで言っているようだった。
「そんな薄情な奴だったとは…!」紫苑が呆れた様子で言った。
「ショックだよ。翔くん…」弥生さんも悲しそうな顔を作って言った。
「そうじゃなくて…」ここまで言われて俺のメンタルは大きなダメージを受けていたので、残りの二人に助けを求めるために、視線を送った。
「さすがに今の言い方はな…」時雨はどうにもできない、というような顔をして言った。
「も、もう少し、いい言い方があったかもしれないね」牡丹さんも気まずそうな感じで言った。
どうやら、俺が間違った発言をしてしまったということを、ようやく認めることができたので、ひまわりさんに謝ることにした。
「えーと、ひまわりさん。さっきは嫌な言い方をしてしまって…」と俺が謝罪の言葉を述べていた途中で、ひまわりさんが泣いている振りを止めて「ふっふっふっ、冗談でした!」と笑顔でネタバレをした。
「え!?」俺と時雨と牡丹さんは声を揃えて驚いた。
「私がこの程度のことで泣くはずないじゃないですか!」ひまわりさんがいつものテンションで言った。
「え!? でも、涙も流して…」俺は目にした現実を言った。
「私の演技力ですよ!」ひまわりさんが胸を張って答えた。
「じゃ、じゃあ、俺の発言で泣いたわけじゃないんだな?」俺は確認するように尋ねた。
「泣くほどでもないですけど、正直、先輩の言い方はちょっとショックでした」ひまわりさんが少し怒った顔をして言った。
「そっか。ごめん。気をつけるよ」俺は自分の発言を反省した。
「ふふ、先輩は本当にやさしい人ですね!」ひまわりさんが笑顔でそう言ったのを見て、俺も安心した。
「それにしても、あんなに一気に責められると、俺の繊細な心が折れてしまうんだが…」俺は周りを見回し、繊細さをアピールしながら言ったが、みんな知らん振りをして目を合わせないようにしていた。
読んでいただき、ありがとうございます。
次回もお楽しみに。
感想も受け付けております。




