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どんな悩みも水無月くんにお任せ!!  作者: たかべー
新・相談部始動編!!
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初詣と昔遊び!!  

 初詣に行ったことがあるだろうか。一年の初めに神社や寺院を訪れ、その年が良い年になるようにお願いする日本の風習だ。

 その起源は、平安時代から伝わる『年籠り』という習慣らしい。年籠りとは、村や家の長がその地域に氏神様が祀られている社寺に大晦日の夜から元日の朝まで寝ずに籠ることである。一度も寝てはならないという決まりがあったそうで、うっかり寝てしまうと白髪やシワが増えるという言い伝えもあったらしい。

 時代が変わるにつれて、この年籠りが大晦日にお参りする除夜詣と元旦にお参りする元日詣に分かれたと言われている。

 江戸時代になると元日詣は、恵方詣と呼ばれるようになり、人々はその年の恵方に位置する神社にお参りをしていたらしい。恵方は毎年変わるため、決まった社寺にお参りする習慣はなかったようだ。

 明治時代になると、人々の生活スタイルが変化し、年籠りよりも恵方詣が盛んになっていった。また、鉄道会社の集客競争が勃発し、「鉄道を使って初詣する」という流れを人々に植え付けるために、様々な地域で競い合っていたらしい。当時の人々にとって、鉄道での小旅行は珍しくワクワクするものだったため、誰でも楽しく参加できるイベントとして急速に普及していった。

 このような流れで恵方詣が盛んになっていったが、恵方が毎年変わるため利益を生み出しにくかったそうだ。そのため方角を限定することをやめ、現在の初詣スタイルが誕生したのである。

 正直俺は初詣なんてどうでもいいと思っている。人が多いとわかっているのに、どうしてわざわざ自分からそこに行くのだろうか、と甚だ疑問である。それに一年を良い年にしたいのなら、神様にお願いするのではなく、自分で良い年にすればいい。自分の行動は自分で決められるのだから、神様にお願いするまでもない。

 そんな考え方をしてしまうため、俺はここ数年初詣には行っていなかった。


 1月1日の午前10時、俺に家には牡丹さんとベルさんとレオさんが来ていた。どうやら初詣に一緒に行くことになっているらしい。またつゆりが計画していたのだろうと思っていたが、ベルさん曰く、俺が誘いに応じたらしい。覚えがないので、いつ話したのか尋ねると、今日の深夜帯に話していたらしい。あの時の俺は、眠気に襲われていたので、会話の内容を全く覚えていないが、初詣に行く約束をしていたらしい。そう言われれば、そんなことをベルさんが言っていた気が、しなくもない感じがしてきた。頭が働かなかったから、とにかく「YES」と答えていたので、その時に誘いを了承したのだろうと思う。何はともあれ、自分でオーケーの返事をしてしまったのなら、今更覆すわけにもいかないので、一緒に初詣に行くことにした。

 俺たちは一番近くの暦神社に行くことにした。この神社は決して大きくはないが、地元の人が度々訪れたり、県外からも参拝に来たりしている。俺は夏頃に、ベルさん、レオさんと一緒に来たことがある。たしか、あの時はおみくじの結果が悪かったのを薄っすらと覚えている。普段、人はあまりいないが、さすがに正月となると、たくさんの人が参拝に訪れており、屋台も並んでいた。

「Oh! 人が多いデスね! あの時とは全然違いマス!」ベルさんが目を輝かせながら人や出店を見回し、興奮気味に言った。

「そうだね! 結構いるね!」牡丹さんが同意した。

「なんでこんなに人がいるんだ? この前は全然いなかったのに!」レオさんが見渡しながら、驚いていた。

「正月だからね! 日本では、風習で正月にお参りすることが当たり前になっているの!」つゆりが簡単に説明した。

「イギリスだと、新年はどう過ごすんですか?」俺は質問した。

「イギリスでは、新年になったからといって、特に何かをすることはありまセン。1日は休みデスが、多くの人は2日から仕事が始まりマス!」ベルさんが答えてくれた。

「たしか、日本の正月って、イギリスのクリスマスの過ごし方なんだよね?」牡丹さんが確認するように尋ねた。

「そうデスね! イギリスでも地域によって変わると思いマスが、私の家ではそんな感じでシタ!」

「国によってこんなにも違いがあるんだな!」レオさんが感慨深そうな態度で言っているように見えた。

「レオくんも知らないことがあるんだね!」つゆりが俺も思っていたことを言ってくれた。

「お、俺にも知らないことはある。ただ、一度覚えたらもう忘れないけどな!」レオさんは、知らないことがあるということを認めつつも、最後は胸を張って言っていた。事実だが、それを言えるところがカッコいいと思った。

 参拝するために、いざ境内に入ろうとしたところで、ベルさんに「ちょっと待ってくだサイ!」と呼び止められてしまった。どうやらベルさんは、事前に神社参拝の作法をリサーチしたらしく、それ通りに行おうとしていた。というわけで、まずは鳥居をくぐる前に一礼をした。そして、参道を歩く時は真ん中を避けて歩くということで、左側通行を心掛けた。何でも、参道の真ん中は正中と呼ばれ、神様が通る道だと言われており、ここを避けて通らなければならないらしい。

 それから少し歩き、手水舎に着いた。ここでも決まった手順通りに手と口を清めた。まず、右手でひしゃくを持ち、水を汲んで左手を洗い、次に左手に持ち替え、右手を洗い、もう一度右手に持ち替えて左手の平に水を受けて、口をすすぐ。そして、ひしゃくを立て、残った水で持ち手を洗い、元の場所に戻した。

 みんなこの流れで清めた後は、お参りをするために、列に並んで順番を待った。5分程で俺たちの順番が回ってきたので、レディファーストということで、先に女子三人に譲った。ここでも決まった手順通りで行い、まずは鈴を順番に鳴らした。そして、お賽銭を入れ、拝礼をするのだが、暦神社では拝礼のやり方が、一般的な神社と少し違った。

 多くの神社では、二礼二拍手一礼が一般的だと思うが、暦神社では二礼四拍手一礼となっている。なぜ違うのかは知らないが、遥か昔からそのようにやっていたらしい。拝礼する前、ベルさんが事前に調べた内容と少し違ったので、少し戸惑っていたが、牡丹さんとつゆりがやさしく教えていたので、すぐに落ち着いて拝礼していた。そういえば、前に来た時は、そんな確認もせずに、自然に二礼四拍手一礼をしていたのを思い出した。

 三人の次は俺とレオさんの番になり、手順通りに拝礼した。正直、レオさんはこういう風習が嫌いだ勝手に思っていたが、そんなこともなく、最初から最後まで丁寧に行っていた。結構素直なところがあるようだ。勝手に思い込んでいてごめんなさい、と心の中で謝った。

 そして、新年最初の運試しのおみくじを順番に引いた。ベルさん、牡丹さん、つゆりは大吉で、レオさんは吉、俺は凶だった。え? 何? ここの神様は俺に恨みでもあるのか? と新年早々俺は神様を疑ってしまった。もしかして、俺がすぐにこんな風に考えてしまうことを神様は見透かして、もっと純粋になれ、と言っているのかもしれない、と考えながらも、本心では、まぁ神様なんて人間の創造物だし、気にすることはないな、と思っていた。それでも少しショックだった。これも神様には見透かされているかもしれない。

「翔くんはなんだった?」牡丹さんが純粋な顔で聞いてきたので、俺は何も言わずに持っていたおみくじを見せた。

「翔くん、凶なんだ! 私、初めて見たよ! 凶は数が少ないから、逆に運が良いって言う人もいるよね!」牡丹さんは素直な気持ちで言っているように見えたので、さっきまでの落ち込みは消え失せ、俺の心はあっという間に癒された。

「お前、また凶だったのか! 俺は吉だけどな!」レオさんが自慢げに持っていたおみくじを見せてきた。たしかレオさんが以前引いた時は、末吉だったことを思い出した。前よりもいい運勢だったので、嬉しそうなレオさんだった。


 それから、屋台でたこ焼きや焼き鳥、綿あめなどを買って食べた。これで初詣も終わり、腹ごしらえもできたので、このまま解散かと思いきや、ベルさんが家に来ないかと誘ってきた。俺は特に用事もなく、つゆりと牡丹さんもないということだったので、お邪魔することになった。

今までを振り返ると、ベルさんは俺の家に何度か来たことがあったが、俺がベルさん家に行くのは初めてだった。話では聞いており、マンションの最上階の一室を借りているということだったが、どんなマンションかまでは知らなかったので、少しワクワクした。到着してみると、15階建てのマンションで、もちろんオートロックでエレベーター内もカメラがついており、一人暮らしの女性に対しては頼れる防犯設備だった。また、ハンズフリーキーなのでバッグに鍵を入れておくだけで、鍵が開き簡単に室内に入ることができた。さらに、このマンションは最上階だけ作りが違い、最上階全部がベルさん宅ということだったので、とても広かった。ベルさん曰く、3LDKあるらしい。以前はここに一人暮らししていたらしいが、今ではレオさんと二人で暮らしているらしい。俺とつゆりの状況に似ているな、と思っていると、ベルさんが「翔サンとつゆりサンの暮らし方に似ていマスね!」と言った。ベルさんは俺と同じことを思っているようだった。

「ところで、俺たちを家に招いて、ベルさんは何をするつもりなんだ?」俺はベルさんに根本的な質問をした。

「フッフッフッ! それはデスね……。これデス!」ベルさんはそう言って、何かをばら撒いた。それを一つひとつ確認すると、福笑い、羽根つき、コマ、けん玉、百人一首など昔ながらの正月遊び道具だった。どうやら俺たちとこれらの遊びをしたかったらしい。

 ということで、まずは家の中でできる福笑い、けん玉、コマ、百人一首などをした。最初はみんな遊び感覚だったが、百人一首で、なぜかみんなマジ顔になり、真剣勝負をすることになった。中でもレオさんが圧倒的に強かった。読み手が上の句を読み上げ始めた瞬間にはもう取っていた。レオさんは、短歌を一度確認しただけで全て覚え、取り札も並べられた瞬間に配置を覚えるらしいので、俺と牡丹さんではなすすべがなかった。しかし、なぜかベルさんやつゆりと対戦する時は、いい勝負になっていたので、ただ俺が苦手なだけだったのかもしれない。

 その後は、近くの公園に羽根つきをしに行った。もちろん、負けた人は顔に墨を塗るというルールもあった。トーナメント式で行われ、順番はジャンケンで決めることになった。その結果、第一試合はベルさん対牡丹さん、第二試合はつゆり対レオさん、俺はシードになった。ルールは単純で、5点先取制にし、点を取った人が相手に墨を塗るようにした。ベルさんはテニス経験者で、牡丹さんは卓球経験者なので、ラケットとボールを使う競技は慣れているため、羽根つきも上手いだろう、と思ったが、そう簡単ではなさそうだった。試合前の練習では、思った場所に打つことができないようだったが、何度か繰り返すとお互いに打てるようになっていた。ある程度打てるようになったので、試合を始めることにした。

 第一試合のベルさん対牡丹さんは結構いい勝負になった。ベルさんが点を取ったら、牡丹さんがすぐに取り返すという流れになり、第一試合だというのに、二人ともすでに顔が墨だらけになっていた。そして最後の点をベルさんが取って、5対4でベルさんが勝ち進んだ。

第二試合のつゆり対レオさんは先程とは対照的な試合だった。俺は、レオさんが運動するのを初めて見るので、どのくらい運動能力があるのか、楽しみにしていたが、なぜかレオさんはあまり試合に集中できていないようだった。その結果、5対0でつゆりの圧勝だった。

 そして第三試合は余力を残しているつゆり対俺になった。

「お兄ちゃん! 悪いけど、今日は私が勝たせてもらうからね!」

「俺も新年早々負け続けるのは嫌だからな! 手加減はしないぞ!」

 試合前には、お互いやる気に満ちており、俺もいい勝負になるだろうと思っていたが、結果は5対1でつゆりに大差で負けてしまった。つゆりが上手いのか、俺が下手なのか、それとも両方なのか、よくわからなかったが、楽しかったので、よしとすることにした。

 そして決勝戦は、すでに顔が墨だらけのベルさん対まだ顔に線が一本しか書かれていないつゆりの対決になった。この二人もいい勝負を繰り広げ、互いに点を取り合い、4対4になった。ベルさんは決勝に残った人とは思えないくらい顔が墨だらけで、つゆりの顔もいい感じに落書きされていた。そして最後はつゆりがミスショットをしたので、優勝はベルさんになった。

「YES! I Won!」とベルさんは墨だらけの顔だったが、笑顔で喜んでいるようだった。


 みんなの顔が墨だらけになったので、早く顔を洗うためにここで解散することになった。

「今日はアリガトウゴザイマシタ! とっても楽しかったデス!」ベルさんがみんなに対して言った。

「俺の方こそ誘ってくれてありがとう! いろんな遊びができて楽しかったよ!」俺はベルさんを見て言った。

「みんな顔が汚れちゃったね!」牡丹さんが笑いながら言った。

「フフッ! そうデスね!」ベルさんも釣られて笑い始めた。

「また一緒に遊びたいね! ね、レオくん!」つゆりがレオさんを見て言った。

「まっ、まあまあ楽しかったから、またいつでも遊びに来てもいいぞ!」レオさんが少し照れて様子で言った。


 俺とつゆりは家に帰り着いてすぐに顔を洗った。つゆりはシャワーを浴びて、俺は洗面台で顔の墨を落とした。そして俺はソファに座り、一人考え事をしていた。今までは昔遊びのことをつまらないし、面白くないと思い込んでいたため遊んだことがなかったが、今日実際にやってみると、考えを改めなければならない、と思った。俺はどうしてもやる前から、なんでも判断してしまう癖があるようで、勝手な思い込みで決めつけてしまうことがある。今日の昔遊びも勝手な思い込みで、今までしてこなかったが、こんなに楽しめるとは思ってもいなかった。おそらく、遊ぶ内容だけでなく、誰と一緒にやるのかも楽しむためには重要な要素となると思うが、やってもいないことを勝手に判断するのは、自分の視野を狭めることになるかもしれないので、今後は気をつけようと思った。

 俺が楽しいと思うことを他人が楽しいと思うとは限らないし、その逆も然りだが、自分が何を楽しいと思うのかは、実際に体験しなければわからないだろう。もし、今現在がつまらなくて、何も面白いことがない、と思っている人がいたら、何か新しいことを始めてみよう。そんな時間はない、という人もいるかもしれないが、別に大きなことをしなくてもいい。たとえば、日々の通学、通勤ルートを変えてみること、飲食店でいつも頼んでいたものとは違うメニューを注文するなど、小さなことでも構わない。世界はこんなにも多くのもので溢れているのだから、新しいことなんてどこにでもある。そんな小さな発見を毎日していたら、つまらないなんてことはないだろう。俺は、これからもいろんなことに挑戦していきたいと改めて思った。



読んでいただき、ありがとうございます。

次回もお楽しみに。

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