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どんな悩みも水無月くんにお任せ!!  作者: たかべー
新・相談部始動編!!
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男と女の違いとは!?

 男と女はただ単純に性別が違うというだけではない。脳の構成に違いがあり、男性脳、女性脳と言ったりする。自分がどちらか知りたい時は、右手を目の前に出して確認してみるといい。薬指の方が人差し指より長かった場合は男性脳、人差し指の方が薬指よりも長い、またはほぼ同じ長さなら女性脳だ。この違いは、母親のお腹の中にいる時に男性ホルモンをどのくらい浴びたかで変わるらしい。一般的には、男性ホルモンを大量に浴びた胎児は男性脳、浴びなかった胎児は女性脳になると言われている。

 では、男性脳と女性脳の違いとはなんだろうか。たとえば、男性脳は自分の評価にこだわり、情報を得た時は独り占めしたり自慢したりして、周りよりも優位に立ちたいと考える。一方、女性脳が情報を得た時は、共感を得ようとして周りとシェアしようと考える。また、男性脳はシングルタスクが得意で、一つのことに集中して取り組むことが得意だ。女性脳はマルチタスクが得意で、いくつもの作業を同時に行うことが得意だ。これは皿洗いで考えると分かりやすいだろう。男性脳は、一つのことにしか集中できないため、皿洗い中は皿洗いしかできないが、女性脳は、会話をしながら、テレビを見ながらという、ながら作業が得意ということだ。

 女性脳の大きな特徴の一つに、自己関連付けという発想がある。これは自分と関係のないことでも、関係があるかのように結び付けたり、関係のない情報でも必要な情報ではないかと考えたりすることだ。この考え方が強い人は、占いなどのスピリチュアルにハマりやすい傾向がある。一方、男性脳の人は基本占いを信じない。論理的思考をするため、根拠がないことに対しては、疑うようになっている。さらに、人間には大きく分けて4つのタイプがある。男性=男性脳、女性=女性脳というわけではない。男性だけど女性脳、女性だけど男性脳の人もいる。男性の15%は女性脳、女性の10%は男性脳という説もある。これに当てはめると、俺はおそらく男性脳だろう。基本データで物事を見るし、占いも信じない。それに薬指の方が人差し指よりも長いからだ。

 こんなに男と女には違いがあるため、理解し合おうと思ってもなかなか難しいことも納得だろう。それならば、似ている男女なら上手くいくに違いないと思われるかもしれないが、それにも落とし穴がある。あまりに似すぎていると、かえって上手くいかないということがある。理想はある程度共通点があるけれど、相違点もあるという関係が上手くいくらしい。つまり、似ているけれど互いに学ぶことができる関係が上手くいくということだ。なので、全てを無理やりパートナーに似せようとしなくていいということだ。違いがあるからこそ互いに成長していけるのだから。大事なのは、理解することが難しいということを受け入れつつ、それでも互いに歩み寄ることなのではないかと思う。


 ある日、学校に到着して荷物の整理をしていると、机の中からメモ紙が出てきて、ヒラリと床に落ちた。俺はそのメモ紙を拾い、何が書かれているのか確認した。その紙にはこう書かれていた。

『今日の放課後、相談したいことがあるので、屋上にて待つ! 十七里』

どうやら十七里からのメモ紙だったようだ。十七里に視線を送ると、俺が中身を確認したのを知って、お願いのジェスチャーをしてきたので、とりあえず頷いて返事をした。俺個人に相談したいのかもしれないと思って、誰にも言わないようにしていたが、昼休みに霜月も同じメモ用紙を受け取っていることを知ったので、俺と霜月は放課後、一緒に屋上に向かうことにした。如月さんとベルさんには、相談が入ったので、部室には行けないかもしれないと伝えた。

 そして、放課後になった。俺が気づいた時には、教室に十七里の姿は見当たらなかったので、すでに屋上で待っているのかもしれないと思った。荷物の整理を終えて、俺と霜月は屋上に向かった。ドアを開けると、十七里が両手をズボンのポケットに突っ込んで立っていた。屋上からグラウンドで部活をしている人たちを眺めているようだった。俺たちが近づくと、気配に気づいたのか、十七里が突然発言した。

「今日の夕日は……いつもより…綺麗だ!」と十七里は意味不明なことを口にした。

「そんなことはどうでもいいから、早く要件を言え!」と俺は言った。

「こんな日は……少し……切ない気持ちになるな」と十七里は俺の言葉を無視して続けた。

「いや、何黄昏てんだよ! 早く要件を言わないと帰るぞ!」と俺は再度忠告した。

「どうして僕は…」と十七里はさらに続けようとしていたので、俺は帰ろうとすると、「ちょっと待って、冗談だって!」と引き留められた。俺は振り向いて、仕方なく話を聞こうとすると、十七里は一度咳払いをしてから話し始めた。

「今日はわざわざ来てくれてありがとう! 感謝する!」と十七里は最初に感謝の言葉を言ってきた。

「いや、それが俺たちの部活だから…」と霜月が謙遜な態度で返答した。

「そんなのはいいから、早く話を始めろ!」と俺は再度要求した。

「まぁ、そう焦らないでくれ、水無月くん。話っていうのは順序があるんだ!」という十七里は、俺を落ち着かせようとしている気がした。十七里のこの独特なマイペースさは正直苦手だ。いつも流れに乗せられてしまう。

「翔は何でそんなに十七里に厳しいんだ?」と霜月が聞いてきた。

「文化祭の時、急遽代役をさせられたから…」と俺は答えた。

「あの時の演技、本当に良かったよ!」と十七里はまるで他人事のように言っているように聞こえた。

「いや、褒めても俺の恨みは晴らされないからな!」と俺は十七里に言った。

「僕は、水無月くんのこと気に入っているんだけどなぁ!」と十七里は何の感情も抱いていないようなトーンで言った。

なかなか本題に入らず、どうでもいいことを話していると、屋上のドアが勢いよく開く音がしたので、ビックリして視線を送ると、神無月が息を切らしながら立っていた。

「どうして……」と神無月は乱れた呼吸を整えながら言い、続けて「どうして俺に相談しないんだよ!」と大きな声で言った。どうやら相談部の男子で一人だけ声を掛けられなかったことが寂しかったようだ。如月さんとベルさんに話を聞いて、急いで屋上まで来たようだ。「なんだこいつ、乙女か?」と俺は心の中で思っていた。十七里によると、神無月は違うクラスだし、わざわざメモ紙を入れに行くのが面倒だったから声を掛けなかったらしい。相談をすることに関しては、別に構わないとのことだった。というわけで、俺と霜月と神無月で十七里の相談を聞くことになった。

「なぁ、水無月くん! 八月一日風鈴のこと、どう思う?」と十七里は俺を名指しして聞いてきた。

「八月一日さん? 別にどうも思わないけど…」と俺は答えた。

「そうじゃなくて、水無月くんから見て、どんな人に見えるかってこと!」と十七里は言い直した。そう聞かれて俺は八月一日さんのことを頭の中でイメージした。

「まぁ、ちょっと変わってるけど、やさしい人だと…思う!」と俺は率直な意見を言った。

「まぁ、そうだな! 僕もそう思う!」と十七里は同意した。

「じゃあ、霜月くんはどう思う?」と今度は霜月に質問した。

「うーん、そうだなぁ。…好きなことに対して、情熱的に生きている感じ…かな!」と霜月は顎に手を当てながら答えた。

「そうだな! 僕もそう思う!」と十七里は霜月にも同意した。

「じゃあ、神無月くんはどう思う?」と十七里は質問した。

「俺はあまり関わったことないから、よく分からねぇけど、好印象ではあるな!」と神無月は答えた。

「そうか! なら良かった!」と十七里は言った。この反応からして、もしかしてと思った俺は、十七里に聞いてみることにした。

「え? なに? 十七里は八月一日さんのことが好きなのか?」と俺は直球な質問した。

「あぁ! そうだ!」と十七里もあっさりと認めた。

「へぇー、そうなのか! いいじゃん!」と神無月は言った。

「俺はもう付き合っていると思っていたけどな!」と霜月が言った。


 それから、十七里は八月一日さんとの関係を語り始めた。十七里によると、八月一日とは小さい時からの幼馴染らしい。家も隣同士で、家族ぐるみで仲も良く、一緒に遊んだり、旅行に行ったりしていたらしい。十七里と八月一日は小中高とずっと同じ学校、同じクラスでもはや腐れ縁になっているらしい。十七里も八月一日さんを女性というよりは、仲の良い異性の友達として今までずっと接していたらしい。それが最近になって、意識の変化が訪れたようで、前は何でも気兼ねなく話していたのに、最近は八月一日さんの顔を見ると、心臓がドキドキするようになったらしい。それに以前よりも八月一日さんが可愛く見えるようになったらしい。そう思うようになってからしばらくは、自分の気持ちを信じられなかったが、学園祭を経て、ようやく認めることができたらしい。それから何度か告白しようと思ったらしいが、いざ告白しようとすると、緊張してなんて言えばいいのか分からなくなってしまい失敗を重ねているようだ。それに事前に考えたセリフも後々見返すとイケていない感じがして、いい告白のセリフが思いつかなくなったということを、十七里は俺たちに語った。何の悩みもないだろうと思っていた十七里でさえ、恋をするとここまでアホになるのかと、俺はつくづく恋の影響力の強さに感服したと同時に、俺ももし恋をしたら、こんな風にアホになってしまうのだろうか、と少し心配になった。ていうか、今までの十七里のキャラからの豹変ぶりに驚いた。十七里が「全然気づかないうちに、全然知らないうちに、心を奪われていたんだ!」と言っていたのを聞いて、俺は「え!? なにそれ? どこのメランコリックだよ!」と心の中でツッコミを入れてしまった。意外にも乙女チックな面を見せる十七里に驚きながらも、表面では冷静さを保つようにした。


「で! 十七里は俺たちに何を相談したいんだ?」と俺は十七里に聞くと、十七里の様子が少し変わって、ソワソワし始めてから、答えた。

「風鈴にどんな告白をすればいいのか迷っているんだ!」と十七里は言った。

「そんなの素直に、『好きです! 付き合ってください!』って言えばいいじゃねぇか!」と俺は言った。

「いや、それだとなんだかあっけなくてつまらなくないか?」と十七里は言った。

「何がつまらないんだよ? 変に凝るより、分かりやすく直球で言った方が良いだろ!」と俺は再度強く提言した。

「いや、それだとドラマ性が足りない!」と十七里は俺の言ったことに納得しなかった。なんだよ、ドラマ性って? こいつ映画の観すぎで現実と区別ができなくなっているんじゃないか、と俺は心の中で思った。というより、いろんな映画を観てきたのなら、理想の告白なんていくらでもあるだろ、とも思った。

「たしかに、それだけだとインパクトが足りないな!」と神無月が十七里の意見に賛同した。

「なんだよ? そのインパクトって?」と俺は神無月に聞いた。

「なんかこう…告白って…今後の関係の出発点じゃん! だから、それなりに勢いは大事かなと思って…」と神無月は歯切れが悪い抽象的な答え方をした。おそらく神無月も経験がないから、よく分かっていないのだろうと思った。

「まぁ、告白の仕方から男を判断している女子もいるかも知れないから、一理はあるか!」と霜月は顎に手を当てながら同意した。

「そうだよな!」と十七里は二人の意見に飛びついた。

「じゃあ、そのインパクトというか、勢いのある告白って、具体的にどんな感じなんだよ?」と俺は三人に質問した。

「そうだなぁ。たとえば、夕日の綺麗な海に向かって、大きな声で『キミが好きだ!』と叫ぶ…とか?」と神無月が答えた。それってなんか意味あるのか、本人と向かい合わず海に向かって告白するって、相手に対して失礼じゃないか、最悪、こいつ海が好きなんだなぁ、って勘違いされないか、と思った。

「車で連れ去られそうな彼女の乗る車の前に飛び出して、『僕は死にません! あなたが好きだから!』って叫ぶ…とか?」と十七里が真面目なトーンで答えた。その答えを聞いて、こいつ本気で言っているのか、と疑った。勢いってそういうことなのか、そもそも彼女が車で連れ去られそうになること事態ほぼ起こらないことだろ。もし起こったとしても普通に犯罪だし、走る車の目の前に飛び出したら引かれて、最悪死ぬからな、と思った。

「高級レストランで夜景を見ながらコース料理を嗜み、その後、夜景の綺麗な高台に移動して『どんな夜景よりも、キミが一番綺麗だよ!』って告白する…とか?」と霜月が真面目そうに答えた。先の二人よりはマシな回答だと思ったが、少し気になるところもあった。まず、高級レストランっていうところが一般の高校生に難しいだろう。十七里がどのくらい予算を考えているのか分からないが、他人に抱かれているイメージと違った行動をすると、逆効果になる可能性もある。ギャップ萌えになる可能性もあるかもしれないが、十七里の場合は、こいつなに気取っているんだよって思われるのが落ちだろうと思う。それに夜景と比較してキミの方が綺麗って、言っていて恥ずかしくないのか、と思った。これは俺の個人的な感想だ。

「水無月くんは、何かないか?」と十七里が聞いてきたので、俺も真面目に考えてから、答えることにした。

「そうだなぁ。俺はやっぱり率直に告白する派…だな!」

「素直にって、さっき言っていた『好きです! 付き合ってください!』ってこと?」

「まぁ、それだけだとさすがに味気ないから、その前に出会ってから今までに抱いていた感情のストーリーを付け加えるかな!」と俺は答えた。

「感情のストーリー?」

「あぁ! 十七里はもう八月一日さんと長い付き合いだろ?」と俺が尋ねると、「あぁ」と十七里は頷きながら答えた。

「そして、出会った時と今の感情は大きく変化している…」と俺が言うと、十七里は頷いた。

「それなら、その気持ちの変化を今まで一緒に経験してきた出来事に当てはめて、ストーリーとして話すんだ!」と俺は続けて説明した。

「その当時思っていたことを言えばいいのか?」と十七里が質問してきた。

「あぁ、それでいいと思う! 当時思っていたことと、それが今ではどう変化して、好きになったのかを伝えることができれば、上手くいくんじゃないか?」と俺は答えた。

「それ、いいかもしれないな!」と十七里も同意した。

その日は、そこまで話して解散した。十七里が家でセリフを考えてくるらしく、翌日の放課後にまた屋上に集合することになった。本番で失敗しないように練習に付き合ってほしいようだ。「そんなの、家の鏡の前で練習しろよ!」と言ったが、「相手がいるといないとでは、感じ方が違う!」と十七里に反論されたので、仕方なく付き合うことになった。家に帰ってから俺も独自に調べてみた。本を読んだり、つゆりに聞いたりもした。


 そして、翌日の放課後の屋上に、再び俺たち4人は集まった。十七里はいくつかセリフのパターンを用意していたようで、一つずつ試すことになった。八月一日さんを想定した相手役はジャンケンで負けた神無月にしてもらうことになった。一応少しでも八月一日さんに似せるために、十七里が演劇部から借りたカツラを神無月に被らせた。その姿を見て、笑ってやろうと思っていたが、元々神無月は顔が整っているため、思いのほか似合っていた。神無月は恥ずかしそうにしていたが、そんなことを気にすることなく、十七里は練習を始めた。

まず一つ目の候補はこれだ。

「風鈴とは、気づいた時からいつも一緒だったよな! どこに行くにもずっと一緒だった!」と初めに語りだしてから一緒に過ごしてきた日々を語り、「そして、これからもずっと一緒にいたいと思っている! 好きだ! 俺と付き合ってください!」と言ってから、お辞儀をして手を差し出す。

個人的にはいいと思った。馴れ初めから始まり、その時どう感じていたのか、そして時と共にその気持ちがどう変化したのか、最後にどうなりたいのか、をちゃんと伝えていたので文句なしだった。ていうか、十七里は演技が上手いことにこの時気づいた。しかし、十七里的には普通過ぎてつまらないらしく納得していないようだ。神無月もあまりキュンとしなかったらしい。ということで、続いて二つ目の候補を試してみた。

「風鈴は僕のことどう思っている? え…? 好きだって!? ……分かった! …じゃあ付き合おう!」と十七里は一人芝居をしていた。

「いやいや、なに一人で完結してんだよ! それじゃ八月一日さんが十七里のこと好きだということが前提になるじゃねぇか!」と俺はついツッコミを入れてしまった。

「そうか? これなら丸く収まると思うんだけど…」と十七里は真面目な顔をして答えた。

「いや、なに自分の都合のいいように考えてんだよ! それだと八月一日さんが十七里のこと好きじゃなったら成立しねぇだろ!」と言うと、十七里は分かりやすくテンションが下がった。

「翔! 今、十七里にとってその言葉は禁句だ! 明らかに気にしているだろ!」と霜月が小さな声で俺に注意してきた。

「でも、事実だろ! そんな都合よくいくなら、そもそも練習する必要もないだろ?」と俺は小さな声で霜月に言った。

「それでも、告白するには精神力が必要だ! 今の十七里のままでは、告白すらできないだろ?」と霜月に言われて、十七里を見ると、少し落ち込んでいるように見えたので、俺は少し反省した。

「あー、十七里。さっきはごめん。ちょっと言い過ぎた。もう少し練習してみないか?」と俺は謝罪をしながら、心の中では、なぜ自分が謝っているのかよく分からないと思っていたが、十七里それだけで元に戻り、練習を再開することにした。続いて三つ目の候補だ。

「キミは美しい! 僕にとってのミューズだ! 僕と付き合ってくれないか?」と十七里はまるで劇を演じているかのような芝居じみた感じで言った。

「十七里……真面目にやらないなら帰るぞ!」と俺は十七里を睨みながら言った。

「え!? 至って真面目なんだけど…」

「本当にこんな告白で八月一日さんがオーケーしてくれると思ってるのか!?」と俺は強めに問いただした。

「それが分からないから、こうやって練習しているんだろ!」と十七里も反論してきた。

「そうだけど……なんかふざけているように見えるんだよ!」と俺も負けずに反論した。

「こんな大事なことで、ふざけるわけないだろ!」と十七里が言ったのを聞いて、俺は気づいた。十七里は十七里なりに、真面目に考えた結果、このようになっているようだった。まあここまで迷走していなければ、そもそも悩むこともないか、と思ったので、俺は再び反省して謝った。そして、その後も十七里が考えてきた告白セリフ集を何パターンも試してみたが、これといったものは見つからなかった。


「ハァ、ハァ。なかなかいいのが見つからないな!」と十七里が手を膝についた姿勢で言った。

「そうだな」と俺は同意した。

「水無月くんは今までの中でマシだと思うものはあった?」と十七里は息を整えてから聞いてきた。

「俺は一番目のセリフがよかったと思う!」と率直に答えた。

「そっか! 霜月くんは?」と十七里は霜月の方を向いて聞いた。

「そうだなぁ、今までの中から選ぶなら、俺も一番目のやつかな!」と霜月も俺と同じ意見だった。

「そっか! じゃあ神無月くんはどう思った? 実際に何度も告白された中から、一番キュンときたものを教えて!」と十七里は女装している神無月に聞いた。

「俺は…じゃなくて、私は…三番目のやつかな! 一番キュンときたのは!」と神無月は中途半端に役になりきって、答えた。

「そっか。僕は二番目がいいと思っていたんだけどな…」と十七里は呟くように言った。それから少し沈黙が流れてから、十七里が突然何かを閃いたかのような表情になった。

「そうか! 僕が自分でしているからよく分からないんだ! これだと、告白がどんな感じか全体像が見えない!」と十七里は言った。そして続けて「僕も告白を客観的に見る必要があると思うんだけど…?」と十七里は俺と霜月を見ながら聞いてきた。

「たしかに一理あるな! やってみてもいいかもしれない!」と霜月が同意した。

「まあ、そうだな!」と俺も同意した。

「ってことで、水無月くん…お願いします!」と十七里は俺に頭を下げてお願いしてきた。

「いや、なんで俺なんだよ!? 霜月もいるだろ!」と俺は聞いた。

「いやー、霜月くんはカッコよすぎるから自分に置き換えて想像しにくいというか…」と十七里は手で後ろ頭を掻きながら答えた。

「いや、客観的な視点が欲しいだけなら、自分に置き換える必要ないだろ!?」と俺は問いただした。

「いやー、リアルさも確認したいよね! 練習とは言ってもなるべく本番に近い感じでした方がいいって言うじゃん!」と十七里は答えた。なんだそれは。練習は本番のように、本番は練習のように、とでも言いたいのか、と思った。そして十七里は続けてこう言った。

「それに…水無月くんがどんな告白をするのかも見てみたいしね!」と十七里はウキウキした表情で言った。

「いや、俺も告白とかしたことないから、よく分から…」と俺が言いかけたところで、霜月が俺の肩にポンと手を乗せ、首を横に振った。もう俺に逃げ道はなかったようだったので、仕方なく受け入れることにした。というより、霜月も自分がしたくないから、俺に押し付けた感じがした。

ってことで、俺は女装した神無月相手に告白をすることになった。正直、調子に乗っていろいろ意見を言ってはいたが、俺も告白したことがなかったので、いざ考えるとなんて言えばいいのか分からなくなった。それに告白する相手が女装した神無月という視覚的に邪魔な存在がいるせいで、なかなか思考がまとまらなかった。なので、俺は目を瞑って、告白相手を想像してからセリフを考えるようにした。その時、なぜか自然と如月さんの姿が思い浮かんだので、そのイメージを保ちながら告白を始めた。

「キミと初めて出会ったのは駐輪場だったな! キミが変な奴に絡まれていたから、気になって声を掛けたんだ!」と最初に馴れ初めを話し、「今では一緒にいるだけで胸がドキドキするんだ! …キミのことが好きだから! ……俺と付き合って下さい!」と最後に締めてから、手を差し出し、頭を下げ告白した。全部言い終わった後、ものすごく恥ずかしい気持ちが溢れて来たが、個人的には悪くない告白だな、と思っていた。ずっと目を瞑って告白していたので、周りの反応が分からず、みんながどんな反応をしているのか気になった。なぜか誰も声を掛けてくれないので、少し不安だったが、俺は恐る恐る目を開けると、みんなポカーンとした顔をしていた。

「どうだんたんだよ! 俺の告白は?」と俺はみんなに聞いた。

「あっ、あぁ、すごくよかったと思う!」と十七里は言った。

「なんか結構リアルだったな! 誰を想像したんだ?」と霜月が聞いてきた。

「別に誰も想像してねぇよ!」と俺は嘘を答えた。

「そうか!? 描写が妙に凝っているような気がしたけど…」と神無月が問い詰めてきた。

「そんなことより、告白の内容はどうだんたんだよ?」と俺は話題を逸らした。

「まぁ、よかったんじゃないか!」と霜月は答えて、神無月もそれに頷いていた。

「他のパターンはないのか?」と十七里は少し興奮気味に聞いてきた。

「いや、もう今ので勘弁してくれ!」と俺は断ったが、十七里がしつこくお願いしてくるので、もう一パターンだけすることになった。

今度も先程と同じように視覚でイメージを邪魔されないように、目を瞑ってから告白を考えた。さっきと違うセリフにしないといけなかったので、どんな告白をしようかと考えていると、今度はベルさんの姿が思い浮かんだ。俺はそのイメージを保ちながら告白を始めた。

「あなたと初めて話した時はとても距離が離れていたな! でも、今はこうして近くにいる!」と定型通りに馴れ初めから始め、「これからもずっと一緒にいたんだ! 俺と付き合って下さい!」と最後に締めてから、手を差し出し、頭を下げ告白した。すると、「はい!よろしくお願いします!」という女性の声の返事があり、俺の手を握り返してきた。

「え!?」と思って、目を開いてから顔を上げると、俺の目の前には藤さんが照れた様子で立っていた。

「え!? なんで藤さんがここにいるんだ!?」と俺は驚きながら聞いた。

「それはもちろん、水無月くんの告白を受け入れるためだよ!」と藤さんはお茶目な感じで言ってきた。

「え!? あっ、いや、違う! 今のは本気の告白じゃなくて…」と俺は混乱した頭で必死に言い訳を探していた。

「フフン! 分かってるよ! 十七里くんの告白の練習に付き合ってるんでしょ!」と藤さんは笑顔で言った。どうやら藤さんは、俺たちの事情を知っているようだったので、安心したが、十七里が、どうして知っているんだ、と言いたそうな驚いた顔をして藤さんを見ていた。恐るべし、藤さんの情報網、と改めて警戒することにした。その時、俺は一つ閃いた。俺は十七里に今までのセリフを藤さんに評価してもらうのはどうかと提案した。考えてみれば、女子の感想を聞くのが一番手っ取り早い方法だということに今頃気づいたのだ。俺たち男子だけでは、どうしても男目線で評価してしまうため、意見に偏りが出てしまう。そこを藤さんに協力してもらうことで補うことができるかもしれないと思った。それに藤さんはすでに事情を知っているので、説明する必要もなく、今すぐに意見を聞くことができる。そこまで説明すると十七里も納得した。そして、十七里が藤さんにお願いすると、藤さんはその申し出を断った。理由を聞くと、藤さんは「私には関係ない」と答えていた。十七里は粘って何度かお願いしていたが、藤さんはなかなか首を縦に振ってくれなかった。その最中に、霜月が俺の肩をチョンと突いて耳打ちをしてきた。霜月曰く「翔がお願いしたら、藤さんは引き受けてくれる!」というアドバイスだったので、それを信じて、俺が「藤さん、お願いできないか?」と言うと、藤さんは即答でオーケーしてくれた。ただし条件を出された。藤さんは告白のシミュレーションを俺としたいということだった。わざわざシミュレーションしなくても、書いている文章を評価してくれるだけでいい、と言ったが、それならしないと言われたので、仕方なく条件を受け入れることになった。

 それから、俺は十七里が準備していたセリフを藤さん相手に何パターンも行った。俺は結構恥ずかしい気持ちが大きくて途中で噛んだり、セリフを忘れてしまったりすることが多かったが、藤さんは最後までしっかりと付き合ってくれた。藤さんの反応でどんな告白がいいのか、分かるかもしれないと思っていたが、ほとんどが嬉しそうな、照れているような、キュンとしているような反応ばかりだったので、よく分からなかった。一通り終えて、藤さんに感想を聞くと、どれも最高だったと興奮気味に言って、親指を突き立てていた。その感想だとシミュレーションした意味がないのだが…、と思っていると、藤さんは落ち着きを取り戻して、真面目に答えてくれる気になってくれた。藤さん曰く、外見を褒めてもらうよりかは、今まで一緒に過ごしてきた中で、どんな気持ちを持っていたのかを語ってくれた方が良い印象だったらしい。自分と一緒に過ごした時間を大切にしているんだな、と感じたそうだ。その結果、藤さんも一番目の告白が一番よかったという意見だった。ということで、十七里は一番目の告白内容をベースにもう一度考え直してから、八月一日さんに告白することになった。告白は明日の放課後、場所は屋上でするとのことだった。教室や部室だと他にも人がいるかもしれないが、屋上なら基本は使用禁止だから、誰も来ないだろうということだった。俺たちは十七里の健闘を祈り、解散した。


 翌日、終礼が終わると同時に十七里は立ち上がった。俺は視線で「頑張れ!」というメッセージを送ると、十七里は軽く頷いてから、教室を出て屋上に向かった。十七里は事前に八月一日さんをラインで呼び出していたようなので、俺と霜月と神無月は八月一日さんが屋上に向かうのを見送った後、階段の下で待っていた。上手くいくことを願いながら、もし失敗してしまったら、その時用の励ましのセリフを考えたていた。しばらくすると、屋上のドアが激しく開く音が聞こえ、八月一日さんが走って階段を下りてきた。一瞬だったのでよく見えなかったが、八月一日さんの横顔からはうっすらと涙が浮かんでいるように見えた。嫌な予感がしたので、俺たちは急いで屋上へ向かい、ドアを開けると、空を見上げている十七里が一人佇んでいた。その姿を見て察した俺たちは、ゆっくりと十七里に近づいていき、励ますことにした。

「まっ、まぁ、なんだ! 生きていれば、こんなこともあるさ!」と俺は変に上から目線で言葉を掛けてしまった。

「そうだな! 今回の経験が今後の成長に繋がるさ!」と霜月も俺の発言に釣られて、上から目線になってしまった。

「頑張ったことだし、今日は気晴らしにパーッと行こうぜ!」と神無月は成果に繋がらなかった努力を称えるような言葉を掛けた。しかし、どの言葉も十七里には届いていない様子で、ただ茫然と空を見上げているだけだった。

「とっ、十七里…?」と俺が名前を呼ぶと、ようやく十七里は口を開いた。

「失敗した!」と十七里は小さな声で言った。

「あぁ、そうみたいだな」と俺は言葉を掛けた。変なことを言って余計に落ち込ませないように、共感する作戦に変えた。

「いや、多分、水無月くんたちが思っていることと違う失敗をした!」と十七里は言った。

「は!? どういうことだ?」と俺は十七里に聞いた。

「告白の仕方を間違えた!」と十七里は焦った表情で言った。

「間違えたって、どんな風に?」と霜月が聞くと、十七里は事の顛末を語りだした。

 十七里の話によると、告白セリフは昨日の意見を参考にして昨晩考えてきたので、問題はなかったらしい。俺たちもそのセリフが書かれたメモ用紙を見せてもらったが、いい文章だった。しかし、いざ告白しようと思った時に、用意していたセリフは出てこずに、嫌味みたいなことを言ってしまったらしい。それに八月一日さんは怒って出て行ってしまったということらしい。告白の失敗というよりは、ケンカしたという表現の方が近いかもしれないと思った。まだ、告白が失敗したわけではないので、チャンスはあると思うが、それよりも先に仲直りをしなければならなくなった。立ち尽くしている十七里に早く謝りに行くように促すと、ようやく動き出した。俺たちも手分けして校内を探したが、八月一日さんは見つからなかった。もう帰ったのかもしれないと思ったので、十七里に「ラインでもいいからとりあえず謝っておけ! もし会えたら直接謝れよ!」と釘を刺してから解散した。


 翌日、学校に着くと明らかに十七里と八月一日さんの様子がいつもと違うことが分かった。十七里に確認すると、会うことができなかったので、ラインで謝ったらしく、八月一日さんからは「もう気にしていない」という返事が来たそうだが、明らかにギクシャクしているのが分かった。修学旅行が近づいており、俺、霜月、十七里と如月さん、ベルさん、八月一日さんが同じ班なので、話し合いの中で八月一日さんが十七里を避けているのが分かった。すごく怒っているわけではなさそうだが、なにか違和感があった。俺の目には八月一日さんが怒ったり、嫌がったりして十七里を避けているようには見えなかったのだ。とにかく、このままではせっかくみんなが楽しみにしている修学旅行が楽しめなくなってしまう可能性があると思ったので、なんとかしなければ、と思い二人が仲直りするような作戦を練ることにした。




読んでいただき、ありがとうございます。

次回もお楽しみに。

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