七賢人の戦い!!
ある心理学者は、恋愛を六つのタイプに分けている。ルダス型、プラグマ型、ストルゲ型、アガペ型、エロス型、マニア型の六つの型だ。
ルダス型は、恋愛をゲームと捉え、楽しむことを大切にしている。交際相手に執着することなく、嫉妬や独占欲があまりない。自分のプライバシーに踏み込まれることを好まず、複数の相手と交際することもある。この型は、007シリーズのジェームズ・〇ンドを想像するとわかりやすいだろう。
プラグマ型は、恋愛を地位の向上などの恋愛以外の目的を達成するための手段と考えている。相手を選ぶ際に社会的な地位の釣り合いを考え、自分の基準に合う人を選ぶ。この例は、〇パン三世の峰不〇子だ。
ストルゲ型は、穏やかな友情的な恋愛だ。長い時間を掛けて、自分たちでも気づかないうちに愛を育むタイプだ。友情や仲間意識に近い感情を持っているので、激しい嫉妬や不安などはあまり感じない。この例は、赤毛のアンのアンとギルバートの関係が近いだろう。
アガペ型は、相手の利益だけを考え、自分自身を犠牲にしてもいとわないと考える。相手のために気を遣い、見返りも求めない。この例は、源氏物語の花散里から源氏への愛だ。
エロスは、相手の外見に強烈な反応を起こす恋愛だ。この型は、強い一目惚れを起こし、相手の外見の美しさを褒め称える。恋愛を至上のものと考え、ロマンチックな考えや行動をとる。この例は、シンデレラや眠れる森の美女、ロミオとジュリエットなどがある。
マニア型は、独占欲が強く、憑執、悲哀などの激しい感情を持つ。強迫的で、嫉妬深く、愛されていることを繰り返し確かめたがる。不安が起こると、食欲が落ちたり、腹痛を起こしたりなど身体的不調が現れることもある。この例は、シェイクスピアのオセロのオセロからデズデモーナに対する愛だ。
このように恋愛は六つの型に分けることができるという説以外にも、マニア型、アガペ型、エロス型を基本的な恋愛の型として、他の三つの型は特殊な恋愛を示しているという説もある。
また、恋愛をしている人には、段階的に六つの心の変化があるらしい。まず、第一の変化は、恋愛相手を美化する傾向があるということだ。恋をすると相手の外見や人柄が優れていると錯覚してしまいやすい。相手の欠点すらも美化し、自分の理想像を相手のイメージに投影してしまう。これは理想化と呼ばれ、相手に対する情報が少ない時に、特に現れやすいようだ。
第二と第三の変化は同調作用と憑執傾向だ。同調作用とは恋愛相手と同じ行動をとることだ。たとえば、相手の口癖がうつったり、仕草が似てきたりする。憑執傾向は絶えず相手のことを考えている状態のことだ。この時は、寝ても覚めても相手のことを考えている状態になる。
第四は、恋人との間に生じる内閉的世界と共存関係だ。恋人たちは他人が入ることのできない、二人だけの世界を作ろうとする。二人だけの秘密を持ったり、他人には分からない会話を楽しんだりする。
第五の変化は、相手へののめり込みが強いために生じる感情の不安定を克服する心理だ。この時期はいろいろな不安や疑いを感じやすくなるらしいが、こうした疑念を克服することができたら、人の心を強くするらしい。
第六の変化は、恋愛を通して人間的に成長することだ。相手との関わりの中で、今まで知らなかった世界を知り自分の世界を広がることができるらしい。
恋愛には男女で違いもあるらしい。男性は嫉妬を感じると、相手にサービスし、恋人の魅力を確認し、関係を強める行動をとる傾向があるらしいが、女性は、恋人の気を引く行動を控え、欠点を探そうとする傾向があるらしい。女性は相手の価値を低めることによって、嫉妬心に対処しているらしい。また、女性は男性に比べ、異性の友人と恋人を明確に区別しているらしい。失恋した時の反応としては、男性は自責を感じ、思慕を断ち切ることがなかなかできないのに、女性は関係が切れたことを喜ぶようだ。男性は様々な行動をして失恋の傷みを回復したり、未練を残して別れた相手に似た相手を探したりするが、女性は未練を残さない。
このように、恋愛を科学的に研究している人はいるが、あまり多くないらしい。恋愛は多くの人が経験すると思うので、個人的にはもっと研究が盛んになればと思っている。これを元に振り返ると、睦月会長の変化は、第六まで行っているように感じるし、文月さんは、睦月会長に対してアガペ型のタイプのように見える。この分類を盲目的に信じているわけではないが、ちょっとした遊びとしては面白いのではないかと思う。
俺自身をこの分類に当てはめると、ストルゲ型が一番近いかもしれない。俺は今まで一目惚れをしたことがないし、恋愛をゲームだと思ったこともないし、恋愛で自分の地位を向上させたいとも思わないし、自己犠牲をしたいとも思わないし、独占欲もそこまで強くない方だと思う。さて、藤さんは一体何型なのだろうか。
藤さんの告白を聞いて、俺の心拍数は急上昇していた。
「え!? それって友達として好きってこと?」俺は、少しとぼけたように藤さんに聞いた。
「いえ、異性として好きってことです! 具体的に言うと、水無月くんと一緒に遊んだり食事をしたりしたいという意味です!」藤さんは真面目な顔で答えた。続けて「もっと具体的に言うと、水無月くんとあんなことやこんなことをしたいという意味です!」と藤さんは付け足し、さらに続けて「さらに具体的に言うと…」と藤さんが言いかけたところで、「いや、それ以上は言わなくていい!」と俺は藤さんの発言を制止した。
どうやら俺の慢心でも勘違いとかでもなく、本当に藤さんは俺のことが好きなようだった。ちゃんと恋愛的な意味で。ただ、告白されたのが初めてだったので、嬉しい気持ちを抱きながらも、恥ずかしさもあり、なんて返事をすればいいのかも考えなければならないなど、俺の頭の中はいろんな考えが飛び交い錯乱していた。
「そう言ってくれるのは素直に嬉しいけど、急に言われたから、今ちょっと混乱してる!」俺はとりあえず現状を素直に伝えた。
「よかったぁ。迷惑……とは言わないんだね」藤さんは胸に手を当てながらそう言って、安心している様子だった。
「迷惑なはずないだろ! ごめん、俺、こういうのに慣れてなくて…」
「ううん。私が急に言ったから…ごめんね」
「いや、謝る必要はない。……てか、藤さんはどうして俺を好きになったんだ?」俺は率直に聞いてみた。
「え!? どうしてって…」藤さんは顔を赤くして、恥ずかしそうに言った。
「あっ! ごめん。言いにくいよな。デリカシーがなかった」俺はすぐに発言を訂正した。
なんだかいつもと違う雰囲気に俺は変な感じになっていた。いつも以上に心臓の音が大きく聴こえ、ドキドキしているのがわかった。しかし、このドキドキは今まで味わったことのないドキドキだった。
藤さんは俺以外のみんなに一通り視線を送ってから、俺の質問に答え始めた。
「水無月くんの好きなところは、とてもやさしいところかな! 誰に対してもだけど、こんな私にも、いつもやさしくしてくれるところが好きなの!」藤さんはそう言ってから、さらに語りだした。
藤さんの話によると、俺がいつも藤さんの手伝いをしていたので、そのやさしさに触れているうちにいつの間にか好きになっていたということだった。そして、俺のことを調べていくうちに、さらに好きになっていったらしい。少しというより、かなり美化されているような気がしたが、藤さんにとって俺は、素晴らしく見えているようだった。もはや俺の欠点と思われることまで、ポジティブに捉えていた。
藤さん曰く、俺は藤さんの人生を変えた人らしい。俺と出会ったことがきっかけで、勉強するようにもなったし、学校生活も楽しいと思えるようになったと言っていた。俺にとっての桃華さんみたいな人だろうか、と思った。自分を褒める内容をここまで聴くのはさすがに恥ずかしかったが、悪い気はしなかった。この時、周りから異様な圧を感じたが、俺は確認する勇気がなく、そのまま気づかない振りをした。
「でもまさか、この場で告白されるとは思わなかった!」俺は思ったことを口に出した。
俺の中で告白というのは、相手を手紙かチャット、もしくは直接、どこか人気のないところに呼び出して、二人きりの時にするものだと思っていた。もし俺がするとしても、その中から選んでいたかもしれない。これはもしかしてマンガやアニメの影響で、現実ではそんなことないのだろうか? と思った。たしかに今ではメッセージで告白すると聞いたこともある。本当がどうかわからないが、実際に会わずに告白をする人が増えているという噂を聞いたことがある。そう考えると、告白の仕方にも多様性があるんだなと思った。藤さんも何か考えがあって告白したのだろうか? と思った。
「うん。私も直前までしようか迷ってたんだけど、今牽制しておいた方がいいと判断したから…」藤さんはそう言い、周りの女子に視線を送った。
「牽制?」
「なんでもないよ。こっちの話だから!」藤さんはそう言いった。続けて「でも、理由があったとはいえ、急に言ってしまって、ごめんなさい」と謝ってきた。
「いや、さっきも言ったけど、謝る必要は…」俺がそう言いかけたところで、藤さんの発言に遮られた。
「ううん、正直告白したら、水無月くんは困るってわかってたの。……それでも…どうしても言っておきたかったから」真剣な表情で言った後、続けて「でも、水無月くんの答えはわかってる。…今のままなら、私は水無月くんに振られるって」と少し寂しそうな表情で藤さんは言った。
「え!?」予想外の発言の俺は驚いた。
如月さんやベルさんも驚いている顔をしていた。おそらく同じ気持ちだったのだろう。
「だって、私は水無月くんのことを知ってるけど、水無月くんは私のことをほとんど知らないから…」藤さんはそう言った後、さらに続けて「でも、私は諦めない! …そのために勉強を頑張って来たんだから…」と力強く言った。
「勉強と告白と、何か関係があるんデスか?」ベルさんが藤さんに尋ねた。
「大アリです! ……水無月くんは、頭の良い人が好みだと言っていました! そして、水無月くんはずっと学年トップ! だから、水無月くんに釣り合う人になるために、頑張って来たんです!」と藤さんは答えた。
たしかに、一年前の藤さんと今の藤さんを比べると大きく成長したことがわかる。下から数えた方が早かった頃の成績と今の五位という成績を考えるとすごく努力したんだなと思う。それに、前は勉強が苦手だったのを、努力して克服したことに少し親近感を感じた。
「それは素直に藤さんの努力の成果であって、俺は何もしてない。藤さんの実力だ」
俺は藤さんに自分の実力を認めてほしいと思って、素直な気持ちを伝えた。
「やっぱり、水無月くんならそう言うと思ってた。そういうところも好きだよ!」
「……!」恥ずかしすぎて俺は言葉が出なかった。
藤さんが微笑んで俺にそう言ったのを見て、胸がドキッとしてしまった。俺の胸の鼓動はまだ激しいままだった。
「でも、私にはまだ乗り越えなければならない相手がいるの!」藤さんはそう言いながら、みんなを見渡した。
「乗り越えなければならない相手?」俺は聞いた。
「私の今の成績は五位。私の上にはあと四人いるの。不動のビッグ3、初御空会長、神無月くん、水無月くん…」そう言ってから、藤さんはベルさんの方を見た。「……そして、今年になって突然現れた、ブルーベル・エイプリルさん!」と言って、藤さんはベルさんを指さした。
「ワタシデスか!?」ベルさんは自分を指さし、驚きながら言った。
「今度のテストであなたたちに勝って、私は………私は……水無月くんとデートをするの!」藤さんは大きな声で宣言しながら俺を指さした。
「えーーーーーーー!?」というみんなの叫び声が再び部室中に響いた。
「デデデ、デートって、どういうことデスか?」ベルさんが声を震わせながら尋ねた。
「どうしてテストで勝ったら、デートになるんですか!?」如月さんも驚きを隠せない様子で尋ねていた。
「私が一位になれば、水無月くんと釣り合う女になったことの証明になります。だから、デートする権利もあると思います」藤さんはなぞ理論を堂々と答えた。
「そ、そうデスね…」
「そっか…」
ベルさんと如月さんは反論せずにあっさり納得していた。
いや、冷静に考えれば、ツッコミどころ満載だ。てか、冷静に考えなくてもわかるだろ。そもそも、それって、俺の気持ちはどうなるんだ? と思ったが、今それを言っても聞いてくれそうもない雰囲気だったので、言わなかった。
「なので、今度のテストで、私はあなたたちに勝ちます!」藤さんは再び宣戦布告した。
「いや、別にテストで勝負しなくても、デートなら……」俺がそう言いかけたところで、神無月に発言をかき消された。
「フッフッフッ、面白い! その勝負、受けて立つ!」そう言いながら神無月は立ち上がり、続けて「しかし、水無月を最初に倒すのはお前ではない! この俺、神無月紫苑だ!」と親指で自分自身を指さしてカッコつけながら言った。
「その勝負、ワタシも受けて立ちマス! 絶対に負けまセン!」ベルさんがいつになく真剣な顔で言った。
「なんだか面白そうな話をしているわね!」ドアの方から声が聞こえたので、視線を送ると、睦月会長がドアに寄りかかり、立っていた。
「会長!!!」文月さんがいち早く反応し、目をハートにして見惚れていた。
「睦月会長! いつからいたんですか?」俺は尋ねた。
「少し前からよ! さっき大きな声が聞こえたから、注意しようと思って来たの。そうしたら面白そうな話をしているようだったから、聞く耳を立てていたのよ」睦月会長は平然と盗み聞きしたことを認めた。
「すみません。うるさかったですね」俺は謝罪した。
「いいえ、気にしなくてもいいわ。それよりも、さっきの勝負の話、私のいない間に、勝手に話が進んでいるようだけれど…」睦月会長は少し不満そうな顔で言った。
「あ、すみません。この人たちが勝手に言っているだけなので、気にしなくても……」俺がそう言いかけたところで、睦月会長は被せて発言した。
「その勝負、私も受けて立とうと思うのだけれど…」睦月会長は言った。
「へ!?」俺が唖然としていると、睦月会長は続けて理由を述べた。
「私も生徒会長として、そろそろ学年一位を取りたいと思っていたの。それに、いつまでも負け続けるのも悔しいし!」睦月会長は俺をライバル視するような目つきで見ながら言った。
「これで、当事者は全員参加ですね!」藤さんが話をまとめようとすると、如月さんが納得していない様子で発言をした。
「その勝負、私も参加していいかな?」如月さんはいつになく冷たい目をして言った。
「別に参加するのは自由だけど、私はすでにあなたを超えているから、もう眼中にないけど」藤さんは如月さんを煽るように言った。
「藤さんにどう思われていようと関係ない。私は自分の全力を尽くすだけだから!」如月さんは冷静に答えた。
「フンッ! 勝手にすれば!」藤さんは自分の煽りがかすったのが少し悔しいような態度で言った。
こうして話がいつの間にかどんどん進んでいき、今度のテストで勝負することになった。そのことについては別に構わないが、一つ譲れないことがあったので、最後に俺は自分の意見を述べることにした。話がまとまりそうになった時、俺は机を「バンッ!」と強く叩いてみんなの注目を集めた。
「さっきから話を聞いてりゃ、どいつもこいつも好き勝手言いやがって!」と言って俺は立ち上がった。みんなが驚いた顔で俺を見ていたので、続けて「誰がトップを譲るって?」とみんなを煽るように言った。そして最後に「この座は誰にも譲らねぇ!」と強気な宣誓した。
「フフッ。面白くなってきたわね。そうだ! 無月くんにも声を掛けてみようかしら」睦月会長が不敵な笑みを浮かべながらそう呟くのが聴こえた。
この日の帰り、俺は文月さんに説教された。あの会話の流れの後に、俺があの発言をすれば、告白されるのはわかるでしょ、と文月さんは言っていた。俺は、まさか自分を好きなる人がいると思っていなかったので、「わからなかった」と正直に伝えると、鈍感さんと呼ばれてしまった。その隣で、ベルさんが考え事をしているようだったので、どうしたのかと尋ねると、「ウーン、彼女の声…どこかで聴いたことがあるような……」とベルさんは言っていた。「まぁ、同じ学校で隣のクラスなら声を聞くことはあるだろ」と言うと、「そうじゃないんデスよねぇ」とベルさんはさらに考え込んでいた。
俺たちがテストで勝負するという噂はあっという間に学校中に広まった。噂ということもあっていろんな尾ひれが付いたり、内容が多少変わったりしていた。今度のテストで勝負をするということは事実なのだが、その中で一位を取った人が、水無月翔とデートするという噂が広まっていたのだ。間違いでもないが、誤解も多い。そもそもこの条件で俺が一位を取ったらどうなるんだ? 俺は一人でデートするのか? それに俺自身も承諾していない内容だ。噂特有の事実と嘘が混在して、何が真実かわからなくなる現象だ。週刊誌とかが意図的によく使う手法だ。
後日、この噂を聞きつけた睦月会長が俺に確認しに来た。この条件を知らされていなかったということに腹を立てているようだったが、事実無根であることを伝えると、すぐに冷静になった。会長は何が真実かをしっかりと選別できる人で助かった。当事者である俺が嘘をつく理由がないということで、すぐに信じてくれたのだ。ちなみに、睦月会長は一位になると、一ノ瀬さんとデートする約束をしているらしい。「いや、二人は普段からよく遊んでいるじゃないか」と思ったが、あえて言わなかった。
この勝負の内容は噂になったが、俺が告白されたことは広まらなかった。元々俺自身に興味を持っている人がいないということもあるが、とりあえずよかった、と安心している時間も長くは続かなかった。
告白された日の夜には、つゆりに情報が行き届いていた。つゆりは、如月さんやベルさんと仲が良く、連絡先を交換しているので、誰かから情報を聞き出したのだろうと思う。その日から毎日、学校での出来事を細かく聞かれるようになった。俺は勉強に集中したかったのだが、なかなか解放してもらえなかった。数日経って、俺が一位を取れなかったら、誰かとデートすることになるかもしれないことを伝えると、つゆりの反応は逆転し、俺を自由にしてくれて応援してくれるようになった。俺は数学や物理、英語でケアレスミスが多いので、今回はそこに注意して勉強した。
他人との比較や競争はあまりよくないという研究が多い。学校では競争をなくして、みんなに平等に賞を与えるようなところもあるし、成績の採点がやさしくなるところもあると聞く。たしかに、他人との比較に取りつかれると、精神的に辛い日々を過ごし、自分にとって悪影響になることもある。
しかし、社会から競争がなくなることはない。競争があったからこそ、科学技術は発展して、人の成長にも貢献してきた。競争にもいい面はあると思う。これは持論だが、切磋琢磨し合う関係の競争は、自分の成長に欠かせないのではないかと思う。他人と比べて、相手の不幸を喜んだり、自己憐憫したりするのではなく、互いに能力を高め合っていけるような競争関係は自分を成長させるだろう。
今回のテスト勝負では、俺はいつも以上に全力を出せるだろう。負けたくないという気持ちもあるし、テスト対策に掛ける時間も増やした。それに、結果がどうなろうと、みんなの点数が伸びればそれで良いと思っている。この競争で、みんなが全力を尽くし、前の自分よりも成長できていたら良いなと思っている。もし、競争が嫌いだという人は、過去の自分と比べるようにすればいい。俺は普段そうしている。過去の自分より一歩でも成長を感じられればそれで満足している。
そして、テスト当日を迎えた。俺はいつになく緊張していた。テストでここまで緊張したのは初めてだった。俺は深呼吸をして、この緊張は自分の力を高めてくれるものだと言い聞かせ、今までの自分の努力を信じてテストに臨むことにした。
この学校は、全国的に見ても結構レベルが高いことで有名である。毎年数人、東大に進学しており、中には外国の一流大学に進学している人もいるらしい。過去には、ハーバード大学、スタンフォード大学、ケンブリッジ大学、オックスフォード大学などに進学した人がいる。そのため、テストのレベルも高い。学年が上がるにつれて、どんどんテストも難しくなっていく。つまり、二年の二学期である今回のテストは、内容もすごく難しいということだ。
クラスによってレベルは違うが、俺が選択した進学クラスのテストはかなり難しい。稀に勉強に追いつけずに途中でレベルを下げる人もいると聞く。正直、学歴が全てであるとは思っていないが、勉強するには良い環境だと思っている。何人か嫌な教師もいるが…。
全てのテストを終えた後、俺は緊張から一気に解放された。全身が脱力して、椅子に寄りかかった。それにいつもより達成感を強く感じた。今までよりも気を引き締めて取り組んだからかもしれない。しかし、こんな緊張感はもう味わいたくないとも思った。俺にとっては寿命を縮ませかねないからだ。
他のみんなの様子を伺うと、ベルさんはいつも通りといった感じだった。如月さんは少し不安そうな様子だったが、「全力を尽くした!」と言っていた。神無月は調子が良かったらしく、俺に勝ちを宣言した。睦月会長は冷静に「いつもより手応えがあった!」と言った。そして、今回の勝負の発端者である、藤さんは、「全力を尽くしたので、あとは結果を待つだけ!」と言っていた。
数日後、すべてのテストが返却され、掲示板にトップ10人の名前が掲載された。全教科合わせて七百点満点だ。噂の件もあって、いつもより野次馬が多かった。
注目の第七位は神無月紫苑、690点。第六位は藤皐月、692点。同率第四位は、如月牡丹、ブルーベル・エイプリル、693点。そして、同率一位は初御空睦月、水無月翔、無月零、694点。という結果だった。
俺はなんとか一位を死守することができた。正直、自己採点した時に自分の点数はわかっていたが、他の人が何点なのかわからなかったので、発表されるまで緊張していた。俺は自分の順位を見た時、内心とても喜んで頭の中で拍手喝采が起きていた。自分で自分を称え、今日の晩御飯は豪華にしようと考え、何にしようかとウキウキしていたが、外面は冷静さを保つようにしていた。
睦月会長も冷静さを装っているようだったが、表情が緩んでいたので、おそらく俺と同じ感じだろうと思った。多分、一ノ瀬さんとのデートを楽しみにしているのだろうと思う。
ベルさんは四位だということを受け止めて、また次回頑張ると言っていた。冗談で俺とデートできないことを悔しがっていた。如月さんも同率四位という結果に満足しているようだった。今までで最高得点、最高順位らしい。神無月は言うまでもなく、白い抜け殻になっていた。しばらく声はかけない方がいいだろうと思って、そっとしておいた。
そして、藤さんは思ったよりも冷静で現実を受け止めているように見えたが、顔をよく見ると、とても悔しそうで歯を食いしばっていた。
「今回は俺の勝ちだな!」俺は藤さんに声を掛けた。
「そう…だね。…それに、如月さんとエイプリルさんにも負けてしまった」藤さんは拳を強く握って、悔しそうに言った。
「今回のテストは、いつもと違って少しハラハラしたよ!」
「え?」藤さんが『?』を浮かべていたので、俺は今回感じたことを素直に話すことにした。
今回の結果を見ると、六位の藤さんと俺の得点差はたったの二点だ。これは一問の正答で順位がひっくり返る程の僅差だ。ここまで接戦だったテストは今まで一度も経験したことがなかった。この経験ができたのは、藤さんが提案してくれたおかげだと思っていること、こんな風に切磋琢磨し合える仲間がいると、俺自身も成長できること、そして何より藤さんが勉強を頑張って成績を伸ばしたことが嬉しかったことを率直に伝えた。
藤さんは俺のおかげだと言ってくれていたが、そんなことはない。俺は何もしていないし、するように言ってもいない。勉強を頑張ったのは藤さん自身であり、その成果が今この結果に繋がっているのである。それに、もし俺がきっかけで成長できたと言うのなら、それは俺にとっても嬉しい出来事だ。自分の活動が誰かの役に立っているとわかるのは嬉しいことである。
それに、俺は学校の成績だけで人を判断したりしない。たとえ成績が優秀でも嫌な奴はいるだろうし、その逆も然りで、勉強が苦手な人でも、やさしかったり親切だったりする人はいる。また、学ぶスピードも人それぞれだ。大人になってから勉強が得意になる人もいるだろうし、俺より年下でもいろんなことを知っている人もいる。そう、たとえばレオさんみたいな。俺はその人の全体的な人となりを見るように心がけているつもりだ。
その点で藤さんを見た印象は、努力家で真面目な人ということがわかる。個人的に親近感も感じている。他人のプライベートな情報も持ちすぎている気がするが…。それに、俺は結構単純だから、やさしくされただけで好きになってしまうことがあるかもしれないということも伝えた。俺が素直な気持ちを伝えていると、藤さんは涙ぐんでいた。
「え!? ごめん。余計なこと言ってしまったか?」俺は焦って、発言を訂正しようとした。
「ううん。そうじゃない。そこまで私のことを気遣ってくれることが嬉しいの」藤さんは涙声で言った。
事情を知らない周りの奴らから見れば、俺が泣かせたように見えるので、このままではマズいと思って、何か声を掛けようと思ったが、焦っていたせいで適切な言葉が思い浮かばなかった。そして、藤さんは涙を袖で拭ってから、俺と目を合わせた。
「私……水無月くんのことが好きです!」
藤さんは俺の目を見ながら、真っ直ぐな視線で改めて言った。その言葉は周りの野次馬にも十分聞こえる声量だったので、みんなにも聞こえたようだった。さっきまで騒がしかった廊下が数秒間沈黙した。
「いや、ここではちょっと…」俺は一旦場所を移そうと考えた。周りの野次馬が「今なんて言った?」と、半信半疑の反応をしていたので、まだ誤魔化せると思ったからだ。
しかし、その考えも次の一瞬で砕け散った。
「大好き!!」藤さんがそう言って俺に抱きついてきた。咄嗟のことに俺は混乱して、ただその場に立ち尽くしているだけだった。その光景を見た周りの野次馬が一斉に「えーーーーーーー!!!」と叫んだのを聞いて、もう誤魔化すのは無理だろうと悟った。そして、このことは一瞬にして学校中に広まったのである。
ちなみに一年生の成績はトップが文月ひまわりさん、二位が二宮霞さん、三位が長月桔梗さんだったらしい。七海さんは七位だった。
そんなことがあった次の休みに、俺と藤さんはデートすることになった。藤さんのもっと自分のことを知ってもらいたいという強い願望に押されて、特に断る理由もなかったので、俺はオーケーした。デートプランは藤さんが全て考えてくれるとのことだったので、俺は何も考えずに当日を迎えた。
朝10時に駅前で待ち合わせをしていたので、俺は久しぶりにオシャレな格好をして出かけた。10分前に到着すると、すでに藤さんが待っていた。藤さんのいつもと違う服装に一瞬ドキっとしてしまった。それに今日は眼鏡ではなくコンタクトにしていたので、印象がガラリと違った。
最初にどこに行くのか尋ねると、博物館に行くとのことだった。その博物館は恐竜の化石を展示していたり、その時代の歴史を学んだりできる博物館だった。実を言うと、前から少し気になっていたのだが、なかなか行くことができていなかった場所だった。藤さんは、俺が恐竜好きということを知って選んでくれたらしい。それに今だけ期間限定で展示されている貴重な作品もあるらしい。さすが藤さんの情報網だなと感心した。
街を歩いている時、後ろから誰かに付けられている気がした。それも一人二人ではなく、もっといる気がする。藤さんも気づいているようだった。誰かは大体予想がつくが、気づかないふりをすることにした。
博物館の後は昼食をとることにした。藤さんが事前に予約していた店は、結構オシャレなイタリア料理店だった。文句なしの美味しさだったが、高校生にしては少し贅沢な値段のような気がしたので、俺が払うと提案したが、藤さんもバイトをしているということだったので結局割り勘になった。俺が何も言わなければ、藤さんが全部払う予定だったらしい。
それから次は映画を観に行くとのことだった。その映画は公開されたばかりで、俺が前から観ようと思っていた作品だった。映画館でポップコーンとか飲み物を買おうかと聞くと、買わなくていいとのことだった。理由は俺が買わないからだと言っていた。
そう、俺は映画館では何も買わない派だ。集中して映画を観たいという理由もあるが、小さい時にジュースを買って飲みながら見ていたら、トイレが我慢できずに途中で抜け出したことがあった。そして戻った時には結構話が進んでいたので、なんだか損をした気分になった。それが嫌で映画が始まる前は必ずトイレに行くし、ジュースも買わないようになったのである。食べ物も大体同じ理由だ。もしかして、藤さんは俺のこのエピソードを知っているのか? と思ったが、聞く勇気はなかった。それに俺は別に自分が買わないからといって、他人がどうするかは自由だと思っている。そのことを伝えても藤さんは買わなかった。映画は結構面白かった。
映画を観終わった後は、カフェで過ごした。いろんな場所に行ったが、行く場所が静かに過ごすところばかりだったので、あまり疲労も感じていなかった。そこら辺も藤さんの気遣いだろうと思った。
「そこまで気を遣って疲れないか?」俺は尋ねた。
「全然疲れてないよ! それに気を遣っているつもりもないし」藤さんは笑顔で答えた。
「そんなことないだろ! こんなに俺の好きなところばかりに行って、藤さんは楽しめたのか?」
「もちろん。私も楽しかったよ! それに水無月くんが楽しんでくれたのなら、私も嬉しい!」藤さんがそう言ったのを聞いて、少し安心した。ここまで俺の好きなことばかりしていたので、少し申し訳ない気持ちを感じていたからだ。
そして藤さんはアイスコーヒーを一口飲んでから、新しい話題を振ってきた。
「ねぇ、水無月くん、Vチューバーって知ってる?」
「あぁ、聞いたことはある。バーチャルで配信している人たちだよな?」
「うん、そう。じゃあ、五月さつきっていうVチューバー、聞いたことある?」
「五月さつき……」俺は記憶を探っていると、藤さんがスマホで検索してくれた画面を見せてくれた。その姿を見たのと同時に聞き覚えがあったことを思い出したので、「あぁ、聞いたことある」と答えた。
五月さつき(ごがつさつき)は、Vチューバーの中でもトップクラスに人気がある人物だ。主な活動は、ゲーム実況をしたり、歌を歌ったり、絵を描いたり、ライブで配信したりしている。たしかSNSの総フォロワー数は80万人を超えていたのを覚えている。今ではもっと増えているかもしれないが。また、中の人は現役の女子高生という噂があるが、所詮、噂なのでどこまで本当かわからないし、正直興味もない。彼女もいろんなことに挑戦して頑張っているので、個人的には応援している。もし現役の女子高生という噂が本当なら、学業との両立は大変だろうと思うので、あまり無理はしないことを願っている、ということを言うと、「ありがとう!」と藤さんに感謝された。
「え!? 何が?」
「いや、そこまで私のことを心配してくれているから…」藤さんが少し照れた様子で答えた。
「ん!?」俺がまだよくわかっていなかったのを見て、藤さんはネタバレをしてくれた。
「実は、五月さつきって私なの!」藤さんからとんでもない発言を聞いて、俺は思わず「えー!!」と珍しく大きな声を出してその場に立ち上がり、驚いてしまった。その後すぐにマズいと思って、周りの人に謝罪して座った。
「そっ、それ本当なのか?」俺は周りを気にしながら小さな声で聞いた。
「うん、本当だよ。ほらっ!」
藤さんはそう言って、スマホの画面を見せてくれた。そこには五月さつきさん本人しか見ることのできないアカウント情報のページが開かれていた。どうやら藤皐月さんが五月さつきさんの中の人ということは、本当のようだった。
「本当なんだな。てかそれ、俺に言っていいのか?」
「うん、大丈夫だよ。隠してるつもりはないから、身バレしても別にいいかなって…」藤さんはあっさり答えた。
「いやでも、バレたらいろいろと面倒なことにならないか?」
「大丈夫だよ。そうなったらそうなったで、やめればいいだけだし…」藤さんはあっさり答えた。このことに対して藤さんより俺の方が心配しているという変な状況になっていた。
「ちなみに、藤さんが『五月さつきさん』だってこと、他に何人知ってるんだ?」
「結構いるよ。まず、家族でしょ。…それと、一緒に仕事をしている人と、コラボしたことのあるVチューバーと、…あとは、雛月弥生ちゃんも知っているよ!」
藤さんは指を折りながら数えて教えてくれた。俺は雛月さんの名前を聞いて少し安心した。少なくとも同じ学校に俺以外に知っている人がいるということがわかったからだ。そして藤さんは続けて数えていたので、他にも結構いるのだろうと期待していた。
「あとは……生徒会長と……水無月くんかな!」俺の予想とは裏腹にあっさりと数え終わってしまった。
「それって、結構…なのか? 学校だと雛月さんと睦月会長と俺以外、誰も知らないってことじゃ…」
「フフッ、私のとっておきの秘密を知っちゃったね!」藤さんはからかうように言った。それが不覚にも少し可愛いと思ってしまった。
カフェでしばらくくつろいだ後、次はどこに行くのか尋ねると、もう終わりだと言っていた。あまり遅い時間になると俺が疲れるだろうからという理由らしい。まだ大丈夫だということを伝えても、気を遣わなくていいと言いくるめられてしまった。このままでは、俺ばかりが楽しんだだけの気がするので、最後に「行きたいところがあるから一緒に行かないか?」と提案すると、了承してくれた。
そして俺と藤さんはある公園に行った。向かっている途中で藤さんも気づいたらしい。俺が行きたかった公園とは、俺と藤さんが出会ったあの公園だ。正確に言うと、同じクラスだったので、もっと前から出会ってはいたのだが…。細かいことは気にしないでおこう。散歩していると、あの衝撃的だった出会いを思い出してきた。藤さんが登って降りられなくなった木を見つけると、古傷が痛む気がしたが、おそらく錯覚だろう。
公園を一周した後、俺は用意していたプレゼントを藤さんに渡した。実は、映画館の後に買いたいものがあると言って、インテリア雑貨の店に立ち寄っていたのである。目的は藤さんへの感謝のプレゼントを買うことだった。しかし、藤さんは感がいいのでプレゼントを買おうとすると断られるかもしれないと思った俺は、自分のものを買うついでに藤さんのプレゼントを買うことにした。藤さんが何を喜んでくれるのか全くわからなかったし、あまり時間を掛けると怪しまれると思ったので、とりあえず癒し効果のあるアロマグッズを買っていた。俺のサプライズプレゼントに藤さんは驚いたのか、しばらく何も言わなかった。
「え!? 何? これ? どういうこと?」藤さんは受け取った物の中身を見て、戸惑っている様子だった。
「これ、今日付き合ってくれたお礼にと思って…。勉強や仕事で大変だろうから、癒しグッズにしたんだけど…」俺がそう言うと、
「……」藤さんは放心状態になり、少しして涙を流し始めた。
「え!? ごめん。余計なことだったか。それなら捨てても……」と俺は焦ってそう言いかけたところで、陰でコソコソしていたストーカー共が出てきた。
「お兄ちゃん!! 一体何したの!? 何で泣かせてるの?」つゆりが怒りながら近づいてきた。
「翔サン! まさかそんな人だったなんて…」ベルさんが嘘の涙を流して泣き真似をしながら近づいてきた。
「あーあ。ついに水無月くんも女をニャかせちゃったかぁ」カスミンがそう言いながら二宮さんも気まずそうな顔をして近づいてきた。
「我が同胞よ。女を泣かせるとは何事だ! ことによっては万死に値するぞ!」桔梗さんも怒りながら近づいてきた。
「………」如月さんは何も言わずに気まずそうな顔をして近づいてきた。
「よし! ついに水無月の弱みを握ったぞ! なぁ、時雨!」神無月はそう言いながらスマホでパシャパシャ証拠を撮りながら、霜月と一緒に近づいてきた。
俺が思っていたよりも大人数が出てきたので、驚いたが今はそれどころではなかった。俺の目の前には泣いている藤さんがいる。周りから見ると俺が泣かせたように見えるこの状況をどう弁解すればいいのか、俺は思考を巡らせていた。とにかく藤さんの涙を拭いてもらおうと俺はポケットからハンカチを取り出して渡したが、藤さんは拒否して、自分の服のポケットからハンカチを取り出し、涙を拭いた。
女子たちは藤さんを俺から守るように取り囲み慰めていた。男子共は、俺に正座を強要してきたから、流されるままにその場で正座した。そして、犯した罪をしっかり償えば、許してもらえるだろうと俺に言った。その雰囲気に流されて、俺は悪いことをしてしまったと一瞬反省してしまったが、いや、待てと思い止まった。そして冷静に振り返ると、そもそも俺は罪を犯していない……はずだと考えた。
とにかく、藤さんに状況を説明してもらわなければ、俺が何を言っても信じてもらえる雰囲気ではなかった。しばらくして、藤さんが落ち着いたので、説明をお願いすると承諾してくれた。
藤さんによると、サプライズプレゼントにあまりにもビックリして、嬉しくて泣いてしまったらしい。藤さんは、俺が普段サプライズでプレゼントをする人じゃないと思っていたらしく、今までで一番ビックリしたと言っていた。たしかに、俺はサプライズが苦手だし、したいとも思わないが、今日はどうしてしたのだろうと、自分でもふと思った。昔なら絶対にありえなかっただろうと思う。相談部で過ごしたせいで、俺も少しずつ変わっているのかもしれない。ただ、俺がプレゼントする時は、これからも相手の欲しい物を確認することは変わらないだろう。今日が例外だっただけだ。
最後にトラブルが発生しながらも、俺と藤さんのデートは無事に終わった。それから何日か、この話題が学校で噂になっていた。俺が女を泣かせたという噂が広まり、それを信じた雛月さんと睦月会長に問い詰められたが、なんとか弁解して事なきを得た。周りの生徒からはいつも以上に視線を感じたが、それも長くは続かなかった。所詮、みんなも自分のことで忙しいので、時間が経てば忘れるのである。
読んでいただき、ありがとうございます。
次回もお楽しみに。




