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どんな悩みも水無月くんにお任せ!!  作者: たかべー
新・相談部始動編!!
36/78

水無月翔に天敵現る!?

この回から、第2章になります!

一週間とちょっと前、みんなに対して「俺にとってみんなは大切な人だ。そして相談部も大切な場所だ!」とカッコつけて宣誓したにもかかわらず、相談部は過去最悪の雰囲気になっていた。もしかしたら、このまま崩壊してしまうのかもしれないと思う程である。ついこの前、崩壊の危機を脱したというのに、またしても崩壊の危機に直面していた。その原因はわかっている。俺ともう一人、一週間前に仮入部をしてきた文月ひまわりという女のせいだ。

文月ひまわりは、一年A組で、二宮さん、桔梗さんと同じクラスの友達だそうだ。一年でありながら生徒会副会長をしており、成績も学年トップらしい。運動神経も良く、音楽も得意で、ピアノはもちろん、他にも様々な楽器を弾くことができるらしい。そして何といっても特徴的なのが、見た目だ。どう見ても高校一年生には見えない身長と幼い顔つき。まるで小学生のようだ。初めて見た時は誰かの妹か、迷子の子どもかと思ったくらいだ。

これがロリという種族なのだろう。俺は初めてロリという生き物を見た。本当に現実に存在していることに俺は驚いた。マンガやアニメの中だけの存在だと思っていたからだ。この見た目のため、男女問わず人気があるらしいが、みんなは文月ひまわりの本性をわかっていない。この女は、名前と見た目からは想像もできないような本性が隠れている。普段は猫を被っているようなので、周りは気づいていないらしいが、俺に対しては本性をさらけ出して攻撃してくる。優秀なだけあって、知識も多く、論理的なことを言ってくるので、結構言い合いになってしまう。では、なぜ文月ひまわりが相談部に来たのかを知るには、一週間前に遡る。


一週間前の放課後(俺が宣誓して数日後)、俺たちはいつも通り部室で各々過ごしていた。すると、ドアをノックする音が聞こえたので、霜月が「どうぞ」と声を掛けると、一人の女の子、そう、文月ひまわりが立っていた。この時の俺は、まだ彼女のことを知らずに「誰だ、このロリは?」と心の中で思っていたが、副会長ということもあって、みんなは知っていた。「ひまわりちゃん!」と二宮さんと桔梗さんが声を揃えて言ったので、二人の友達だろうと思っていた。珍しく第一声がカスミンではなく二宮さんだったことに少しビックリしたくらいだ。文月ひまわりは二人に笑顔で応えてから、部室を見渡し、入ってきた。そして「ふーん、ここが相談部か!」と呟いた。

「ニャにか悩みでもあるのかニャ?」カスミンが尋ねた。

「はい。ちょっと確認したいことがあって来たんです!」文月ひまわりは答えた。

「そうか! なら、そこの椅子に座るがいい。我が盟友よ! どんなことでも相談に乗ってやろう!」桔梗さんがそう言った。桔梗さんにとって文月ひまわりは盟友らしい。特別に仲が良いということだろうと思った。

「いえ、今回私が確認したいのは…あなたです! 水無月翔さん!」文月ひまわりはまるで探偵が犯人を突きとめる時のように、俺の方を向いてビシッと指さしてきた。

それを見たみんなが「一体何をしたんだ?」というような顔で俺を見てきたが、心当たりがなかったので、文月ひまわりが何のことを言っているのか、わからなかった。それに彼女と話したのはこの時が初めてだった。

俺は「何を確認したいんだ?」と尋ねると、文月ひまわりは、みんながいると話しにくいからという理由で、俺一人を呼び出した。なので、俺が部室を出て行こうとすると、みんなは気を遣ってくれ、俺と文月ひまわりが部室で話すようにしてくれた。大事なことなら周りに人がいない方がいいだろうとのことだ。なんてやさしい人たちなんだ、と俺は感激した。

みんなが出て行くのを文月ひまわりは笑顔で見送っていたが、みんながいなくなると、一瞬で鋭い目つきに変わり俺の方を見てから、再び作り笑顔に戻り、落ち着いたトーンで自己紹介を始めた。

「私は文月ひまわり。一年A組で、霞ちゃんと桔梗ちゃんの友達です。一応、生徒会副会長もしています」

文月ひまわりの丁寧な自己紹介を聞いた時、どこかで聞き覚えのある名前だなと思っていると、以前、桔梗さんが言っていたのを思い出した。それに、生徒会副会長ということは、もちろん睦月会長とも知り合いだろうと思った。もしかして、何か調査にでも来たのだろうかと思って、こちらも丁寧に対応した方がいいと判断した。

「どうもご丁寧に。俺は、水無月…」俺が自己紹介をしようとしたら、文月ひまわりに途中で遮られた。

「先輩のことは知っています。よく学校を休むのに成績は学年トップ。運動も得意で、特にテニスが好きだとか…。あの五十嵐兄弟に勝ったらしいじゃないですか?」

「よくご存じで…」

「それに…最近はこの部活でも実績を積んでいるようですね?」

「俺はそんなにたいしたことはしてないです。他のみんなが頑張ってくれているおかげです」

「随分謙遜するんですね?」

「別に謙遜しているつもりはないです。事実を言っているだけで…」

「ふーん」文月ひまわりはそう言って、俺を少し見つめてから、「ところで、先輩は会長のこと、どう思っているのですか?」と質問してきた。

「会長? どう思っているって? …特に意識して考えたことないけど…すごい人だと思っている…かな」質問の意図がわからなかったが、とりあえず正直に答えた。

「具体的にどこがすごいと思っているんですか?」

「具体的に? そうですね……みんなをまとめるリーダーシップがあるところとか…」

「そうですね! 私も同感です」文月ひまわりは同意してくれたので、少し安心した。まるで何かを試されているような感覚だったからだ。「他にありますか?」と文月ひまわりはさらに聞いてきた。

「他には……繊細なところがありながらも、みんなの前では堂々と振舞う器量の良さ、とか」

「そうですね! それも同感です。……しかし、やはりそうでしたか! 私の知らない間に、会長と先輩に何かあったのですね?」

「何のことですか?」俺は情報を漏らさないために、知らない振りをした。

「隠そうとしても無駄です。夏休み前に会長がここを訪れていることは知っています」

そう言われたので、すべてを隠し通すのは無理だろうと判断して、言ってはいけないことを言わないようにすることにした。

「まぁそうですね。睦月会長が相談に来たのは事実です。でも、内容を教えることは…」そう言いかけたところで、言葉を遮られた。

「睦月会長? ……随分と会長と仲が良いのですね?」文月ひまわりは何とか笑顔を保っていたが、今にも崩れそうだった。それを見て、俺は何か地雷を踏んでしまったのかもしれないと思った。

「仲が良いかはわかりませんが、そう呼ぶように言われたので…」

「そう…ですか……。会長に気に入られているのですね?」

「どうでしょか? 自分ではよくわからないです」そう答えると、文月ひまわりは勢いよく立ち上がった。

「先輩は、会長に気に入られています!!」

文月ひまわりは感情的に大きな声で言った。その後すぐに冷静になり、座り直してから、乱れた髪の毛を整え、生徒会長の最近の様子を語り始めた。

 文月ひまわりは、睦月会長が何かに悩んでいることに気づいていたらしいが、それが何か聞いても教えてくれなかったらしい。なので、会長が相談してくるまで待つことにしたらしい。待っている間も常に睦月会長を気にかけていたが、結局自分に相談は来なかったらしい。そして、気がつくと睦月会長は元気になっていたので、悩み事は解決したのだろうと思って、安心したらしい。

しかし、これで大団円というわけではなかったようだ。最初は、睦月会長のことだから、自分で解決したのだろうと思っていたらしいが、ふと相談部の部室に睦月会長が入るのを見かけたのを思い出し、相談部で何かあったのかもしれないと調査を始めたらしい。この話を聞いた時、文月ひまわりは、信頼している人が自分に相談しなかったことに対する嫉妬を感じているかもしれないと思ったので、相談に来たのは事実だが、解決したのは睦月会長が行動したからだということを伝えたが、そんなことはどうでもいいと一蹴された。

それから、睦月会長の近況報告はまだ続いた。

文月ひまわりの話によると、睦月会長は悩みを解決してから、人一倍元気になったという。それはとても喜ばしいことだと認めていた。睦月会長は男女隔たりなく誰に対してもやさしく、必ずあいさつをしているという。まぁ生徒会長ならそうだろうなと思っていたが、それに少し変化があったらしい。睦月会長は、女子にはいつも笑顔であいさつをし、男子には凛とした態度であいさつをしていたらしいが、男子の中で唯一俺にだけ笑顔であいさつをするようになったそうだ。俺は特に意識していなかったので、気づいてなかった。文月ひまわりの勘違いじゃないのかと言ったが、文月ひまわりが間違いないと断言した。

さらに、睦月会長は用事がないと男子には話しかけないのに、俺に対しては自分から話しかけることがあるという。そう言われれば、心当たりはあった。廊下ですれ違った時、あいさつをした後、天気の話や授業の話をしたことがある。しかし、それは俺だけじゃないだろうと言ったが、文月ひまわり曰く、男子では俺だけらしい。

それに、夏休みに砂浜でサンドアートをしていたのを見ていたらしく、あんなに楽しそうな睦月会長を見たのは久しぶりだったそうだ。どうしてその時参加しなかったのかを聞くと、睦月会長と一ノ瀬さんのデートを邪魔したくなかったから、遠くから見守り、変な奴を寄せ付けない役をしていたという。要するにストーカーだ。

つまり、ここまでの話をまとめると、文月ひまわりは睦月会長が好きで、俺との仲良さそうな場面を見るのに嫉妬しているということのようだった。

「で、もしそれが本当だとして、俺にどうしろと? もしかして、睦月会長を無視しろとか言うんじゃないだろうな?」俺は少し強い口調で聞いた。

「そんなこと言いません! それでは会長が悲しみます」

この答えを聞いて少し安心した。どうやら共感能力は失っていないようだった。

「じゃあ、キミは今日何しにここに来たんだ?」

「そうですね………。私は確認に来ました!」

「確認? なんの?」

「ここが会長にとって益をもたらす場所なのか。……それとも、先輩が会長に変なことをしないか……です!」

「変なことなんてするわけないだろ!」思わず一回ツッコミを入れた後、一旦落ち着き「……それで…どうだったんだ?」と質問した。

「正直、悪い印象はありません」文月ひまわりがそう答えたので、俺は安心したが、また続きがあるようだった。「でも、今日だけじゃ、まだ判断できません」

「じゃあ、これからも調査は続けると?」

「はい。でも、外からだとわかりにくいので、私もこの部活に仮入部することにしました!」

文月ひまわりはそう言って、すでに記入済みの入部届を差し出してきた。どうやら、最初から目的は仮入部することだったようだ。それなら、こんな回りくどいことはせず、すぐに言えばよかったのに、と思った。生徒会の仕事があるのに大丈夫なのか確認すると、心配ないとのことだった。それくらい簡単に両立できるらしい。

俺はみんなを呼び戻して、詳しい内容は省き、文月ひまわりが仮入部したいと言っていることだけを伝えると、みんな喜んで歓迎していた。文月ひまわりは、俺が部長だと思っていたらしいが、霜月が部長だということを教えると、驚いていた。そして、文月ひまわりの調査と言う名の仮入部決まったのが、一週間前の出来事である。

その翌日の放課後から、早速、文月ひまわりは現れた。文月ひまわりが入部したことが噂になったようで、一年生のクライエントも以前より増え始めた。そして、俺と文月ひまわりの意見のぶつかり合いが幕を開けるのであった。


ある日の相談内容は、ダイエットについてだった。見た目では、そこまで太っているようには見えない女子が相談に来た。昨今ダイエット法はいろんな種類がある。旧時代の食事を意識したパレオダイエット、糖質制限ダイエット、運動や筋トレをメインにしたダイエット、呼吸法を意識したダイエットなどなど、今では数えきれない程のダイエット法がある。

なぜこれほどまでにダイエット法があるのかと言うと、現代人、特に豊かな国の人たちは、食べ物が豊富にあるため、つい食べ過ぎてしまう傾向にあり、肥満が多くなっているためだ。アメリカでは成人の半分以上の人が肥満だというデータもあるくらいだ。肥満は世界的にも問題になっている。様々な病気になりやすいからだ。そのため、必然的にダイエット法が増えるのも無理はない。

しかし、ダイエットは難しく、多くの人が失敗している。たとえ成功して一度やせた人でも、気を抜くとリバウンドすることもある。それに、ダイエットのことを考えていると、認知能力をそのことに使ってしまうため、勉強や仕事にも影響が出るだろう。ダイエットはそのくらい大きな問題なのだ。

俺自身は幸い太ったことがないので、その気持ちを明確には理解していないが、いろんな人の体験談を本で読んでいるので、少しは共感できるだろうと思う。そして俺がいろんなダイエット本を読んで、個人的にオススメだと思った方法は断食だった。いろんな種類のダイエットがあり、〇〇ダイエットといって、何を食べて、何を食べたらいけないのかを語っている人は多いが、要は摂取カロリーを減らせば体重は減るのである。食べ物のことで、いろんなことを考えて頭を使うと疲れるので、キッパリ食べないとした方が楽だと思う。

「俺は、断食をオススメします!」

俺はそう言って、クライエントに理由を説明すると、文月ひまわりが俺の方を向いて反論してきた。

「えー! でも、それってキツくないですか? そもそも断食ができたら悩んでいないと思うんですけど…」

「たしかにそうだ! 断食は結構キツイと思う。だからそれよりも簡単なプチ断食をオススメする」

「プチ断食…ですか?」文月ひまわりが少し不満そうな顔で言ったので、俺はプチ断食を進める理由を述べることにした。

 プチ断食とは、言い換えれば、一日一食または二食にして、食べない時間を増やすということだ。断食が一日何も食べないのに対して、プチ断食は、決めた時間は食べてもいいということだ。

現代人は生まれた時から、一日三回食事をとることが健康に良いと教えられてきただろう。俺もそう教わったことがある。しかし、これは今では覆りつつある。現代の豊かな国では、外食やお菓子など高カロリー食が増えたため、一日三食にすると、食べ過ぎになってしまう恐れがあるのだ。成人が一日に必要とするカロリーは、千八百~二千二百カロリー前後と言われている。もし、自分の摂取カロリーが気になるなら、一度計算してみたら方がいいだろう。おそらく何も考えていない人は、想像以上に食べていることに気づくはずだ。そうやって自分では気づかないうちに、食べる量、摂取しているカロリーが増えて、肥満になっていくのである。

プチ断食は、そうならないために有効だと考える。理想は十六時間何も食べない時間を作ることだ。こう聞くと、難しいと思われるかもしれないが、睡眠時間の八時間も含めて十六時間と言うことだ。寝ている八時間に起きている八時間を足して、何も食べなければ良いのである。つまり、残りの八時間は食べてもいいということだ。

さらにプチ断食は、健康に良いということがわかっている。十六時間以上連続して断食すると、体に備わっているオートファジーという仕組みが働くようになる。オートファジーとは、細胞内の古くなったたんぱく質が、新しく作り変えられるというもので、細胞が飢餓状態や低酸素状態に陥ると活性化すると言われている。体の不調や老化は細胞が古くなったり、壊れたりすることによって生じるため、オートファジーによって、細胞を新しく作り変えると、病気に強くなったり、老化の進行を食い止めることができると言われている。ダイエットはもちろんだが、それ以外にもこんなにメリットがあるのに、しない理由はないだろう、と述べたのだが、文月ひまわりは納得していな様子だった。

「それって、要はカロリーを制限すればいいってことですよね?」文月ひまわりは聞いてきた。

「あぁ。そういうことだ!」

「だったら糖質制限でもいいんじゃないですか?」

「糖質制限はオススメしない。最近の研究でダイエットには効果がないと言われているからだ!」

ということで、今度は糖質制限ダイエットについて説明することになった。

 糖質制限は、いまだにダイエット法として人気があるようだが、俺はオススメしない。なぜなら、意味がないということがわかっているからだ。

糖質制限についてこんな研究がある。グループを二つ作り、仮にAグループとBグループとする。Aグループは、糖質制限をして一日千五百キロカロリーとるようにする。Bグループは、全体をバランスよく減らして一日千五百キロカロリーとるようにして、二つのグループを比べた研究がある。もし、糖質制限に効果があるのなら、Aグループの糖質制限をした方が体重の減りが大きくなるはずだが、結果はどちらのグループも変わらなかった。糖質の量と体重に相関性はなかったのだ。つまり、ダイエットにおいて糖質制限は意味がないということになる。

「でも、糖質制限をして痩せたっていう人、たくさんいるじゃないですか?」文月ひまわりはさらに食い下がってきた。たしかに糖質制限に関する本はたくさんある。その中には医者が書いた本もあるだろう。しかし、俺は懐疑派だ。

「それは、おそらく糖質制限によって痩せたんじゃなく、総摂取カロリーが減ったことによって、痩せたんじゃないかと思う!」

「お医者さんが糖質制限で痩せたとも言っていますよ!」

「あぁ、そうだな。でも、医者だって同じ人間だ。時には間違うこともあるだろう」

「先輩はその医者が間違っていて、自分の方が正しいと?」

「別に自分の言っていることが必ず正しいと思い込んでいない。あくまでエビデンスのあることを述べているだけだ!」

「医者が言っていることにエビデンスがないのですか?」

「全員がそうと言っているわけじゃない。いくつかあるエビデンスの中でもっとも信頼できるものを選んでいるだけだ。中には疑似科学というものもあるらしいからな」

「そうなんですね。断食がいいってことはわかりました。でも、それって結構大変じゃないですか?」文月ひまわりは、少し内容を変えて攻めてきた。続けて「断食に意志力を使うと、その反動で余計に食べてしまうようになる人が多いと聞いたことがあります!」と言った。

「たしかにそうだな。そういう研究もある。だから、断食と一緒に環境も整備した方がいいだろう」俺はもう一つ新しい提案した。

ダイエットは大変だ。意志の力だけで成功させることは非常に難しい。だからダイエットするための環境作りも重要になってくる。たとえば、お菓子を買わないようにすることだ。最初から家に食べるお菓子がなければ、食べる量は減るだろう。お菓子を買いに行かなければならないような状況は誰でも面倒なはずだ。これで断食の反動で食べてしまうことも防げるだろう。

他には、家の皿を小さい皿にするという方法もある。皿が小さくなると、盛り付けられる量も減るため、自然と食べる量も減るということだ。さらに、買い物はなるべくお腹を満たしている時に行った方がいい。空腹の時に行くと、お菓子や甘いものの誘惑に抗いにくくなり、つい買ってしまうからだ。これは節約にも繋がるのでオススメだ。

また、チートデイを設けるのもいいだろう。チートデイとは、ダイエット中にもかかわらず、なんでも好きなものを好きな量だけ食べていい日のことだ。チートデイを週に一回か十日に一回設定すると、ダイエットの成功率が上がるらしい。

このようにダイエットするためには、食べもの以外でも工夫することがたくさんある。人は気づかないうちに環境によって影響を受けていることがたくさんあるのだ。

これらを説明すると、「ふーん」といった表情で俺を見ていた文月ひまわりが、さらに質問してきた。

「要は、食べる量を減らせばいいってことですね」文月ひまわりは確認するように尋ねてきた。

「まぁ、そういうことだ」

「でも、それがなかなかできないから、彼女は悩んでいるわけで、もっといいアドバイスはないんですか?」文月ひまわりは根本を覆すような質問をしてきた。

「俺たちにできることは、なるべく効率のいいやり方を提供するくらいで、その後は本人次第だ」

「それって結局、本人のやる気次第って言っているようなものじゃないですか?」

「そういうつもりで言っているつもりはない。でも、ダイエットは……」俺がそう言いかけたところで、霜月が間に入ってきた。

「そこまでにしてくれないか! ほら、彼女も困っているだろ!」

霜月がそう言ったのを聞いて、クライエントを見ると、たしかに困っているような顔をしていたので、俺は反省してその後は黙った。

結局クライエントの彼女は、俺たちが挙げたダイエット法の中からもう少し考えて選び、実践してみるということになった。俺は申し訳ないことをしたと思ったので、最後に自分が一番やりやすい方法を選べばいいということを伝えた。


そしてまた別のある日のクライエントの相談内容は、自己肯定感についてだった。最近、自己肯定感という言葉が少しブームになっているようだ。特に日本の子どもは他国と比べて自己肯定感が低いというデータがある。それを国民性だと言ったり、教育のせいだと言ったりしている輩もいるようだ。自己肯定感が低い原因がなんにせよ、今では一つの大きな問題として取り上げられる程になっている。

そもそも自己肯定感とはなんなのだろうか? 一説によると、自己肯定感は六つの感に支えられているらしい。一つ目は自尊感情で、自分には価値があると思える感覚だ。二つ目は自己受容感で、ありのままの自分を認める感覚だ。三つ目は、自己効力感で、自分にはできると思える感覚だ。四つ目は、自己信頼感で、自分を信じられる感覚だ。五つ目は、自己決定感で、自分で決定できるという感覚だ。最後六つ目は、自己有用感で、自分は何かの役に立っているという感覚だ。自己肯定感は、この六つの感覚が互いに影響し合って高くなったり、低くなったりしているらしい。

相談に来た一年生の彼女も自己肯定感が低い自分は、ダメで頭が悪くて、いつも憂鬱で、なんの取り柄もないと言っていた。彼女の話している言葉や態度から、自己肯定感が低いだろうということはすぐにわかった。ということで、俺はまず自分自身を受け入れるようにするために、セルフ・コンパッションを勧めた。

セルフ・コンパッションとは、ありのままの自分を受け入れるということだ。完璧な人なんてこの世にはいないのだから、すごいと思っている人でも必ず短所や苦手なことはある。自分も含めて、誰でも長所もあれば短所もあるのだ。それを踏まえて、セルフ・コンパッションは、自分の長所のみを認めるのではなく、自分の短所もしっかりと認めるということだ。

自己肯定感が低い人は、自分の短所を嫌っているかもしれないが、嫌う必要はない。ただ受け入れればいいだけだ。もし、短所を認めた上で改善したいのであれば、努力すればいい。それだけだ。わざわざ、自分を嫌って蔑む必要なんかない。もっと自分にやさしくしていいのだ。わかりやすく言うと、他人にやさしくするように、自分にもやさしくするということだ。もし、何かに失敗して落ち込み、自己批判してしまったら、友達がまったく同じ状況に陥っていると仮定して、その時に自分ならなんて声を掛けるのかを考えるといい。そして、その言葉を自分に掛けるのだ。

これがセルフ・コンパッションというものだ。よく『他人にやさしく、自分に厳しく』という人がいるが、俺の場合は、『他人にやさしく、自分にもやさしく』だ。

他にもセルフ・コンパッションの方法はある。たとえば、姿勢を意識するだけで、自信を高めることができる。背中を伸ばして、胸を張った姿勢になると、堂々とした気分になり、自信が湧くのだ。思考が体を操るのではなく、体が思考を操る。体と精神は密接にかかわっているため、相互に影響し合うようにできているのだ。

抱擁は、幸せホルモンと呼ばれているオキシトシンを分泌するため、安心感や落ち着きを促す。誰かに抱いてもらってもいいが、相手がいない人にも朗報がある。自分で自身を抱いても効果があるらしい。騙されたと思って一度やってみてほしい。実際に落ち着いてくるはずだ。比較的簡単なものを挙げたが、他にも日記をつけたり、マインドフルネスを試したりする方法もある。

「物事をポジティブに考えればいいんですか?」クライエントの彼女が質問してきた。

「無理にポジティブになろうとしなくていいと思う」俺は答えた。

「えー! ポジティブアファメーションは効果があるって聞いたことがあるんですけど、 先輩は反対なんですかー?」文月ひまわりが少し煽るように反論してきた。

「たしかに、ポジティブアファメーションは効果がある。だけど、それはみんなに良い効果があるわけじゃない!」そう答えてから、クライエントの方を見て、「彼女が無理やりポジティブアファメーションをすると、逆効果になる可能性がある」と言った。

「逆効果…ですか?」クライエントの彼女がそう言ったので、俺はポジティブアファメーションの説明をすることにした。

 ポジティブアファメーションとは、文字通りポジティブ思考のことだ。自分にはできる、自分はすごいんだというポジティブな言葉で自分を鼓舞することで、実際に自信が湧いてきて、どんどん行動していき、その結果、理想の自分になれるというものだ。一部のモチベーション講師や自己啓発のグルたちに熱く信奉されている手法だ。

たしかに、これは元々ポジティブに考えることが多い人には、効果があるらしい。しかし、今回のクライエントのようにネガティブに考えてしまう人にとっては逆効果になるということがわかっている。自己評価の低い人が、「自分はできるんだ!」とポジティブな自己宣言を繰り返すと、心は「いや違う!」と反論し、さらに自己評価が悪化する恐れがある。

つまり、自己評価が低い人には、ポジティブアファメーションを勧めない方がいいのである。こういう人には、ネガティブ思考になっても構わないということを伝えた場合、気分が高揚するらしい。つまり受容した方がいいのである。

「へぇー! そうなんですねー! でも、さっき先輩は姿勢を伸ばすだけで、自信が湧いてくるって言ってましたけど、これも逆効果にならないんですか?」文月ひまわりがさらに聞いてきた。

「それは無理やりポジティブ思考になろうとしているんじゃなくて、姿勢によって勝手にポジティブになるから逆効果にはならない」

「でも、姿勢を意識する時に、自分はポジティブ思考になるためにしているんだって考えたら一緒じゃないですか?」

「だからその考えに囚われないように、最初はただ姿勢を正すだけでいい」

「行動する前にその考えに囚われてしまうから、彼女は困っているんですよ!」

お互い感情的になり始めていたところで、霜月が間に入り、この日の言い合いは終わった。


 そんなことが何度か続き、現在に至る。今日の相談者は、一年C組の木ノ花可憐きのはなかれんさんで、相談内容は、もっと友達を増やすために社交的になりたいということだった。

話を聞くと、彼女は昔から引っ込み思案で、人前で話すことも得意ではなく、一人で過ごす時間が多かったらしい。そんな状況でも彼女は満足していたらしいが、最近、親や友達にそのままだと心配、と言われて、自分が何かおかしいのかと思うようになったらしい。それから、周りを観察すると、友達はよく人と話したり、遊んだりしていることがわかったので、自分もそんな風になれたらいいのかもしれない、と思うようになったそうだ。そのため、何度か自分から社交的になろうと挑戦してみたらしいが、上手くコミュニケーションが取れなかったらしい。それで、今回相談に来たということだった。

今回の相談内容を聞いて、彼女は典型的な内向型だと感じた。

人間は、社交力に関して大きく二タイプに分けることができる。外向型と内向型だ。

外向型の人は文字通り、社交的で人と関わることが好きで、いろんなことに参加し、考えるよりも先に行動するなどの特徴がある。

一方、内向型人は逆で、数人の友達と仲良くすること好きで、あまり多くのことに進んで参加することはなく、行動するよりも先に考えるなどの特徴がある。極端な外向型や極端な内向型の人がいるのではなく、多くの人はこの二つの間のどこかに分布している。たとえば、やや外向型寄りの人もいれば、やや内向型寄りの人もいるわけである。ちょうど中間の人は両向型とも言われている。これは気質であり、生まれた時からある程度決まっているらしい。

一般的に外向型は全体の三分の二、内向型は三分の一の割合でいるそうだ。そして、社会や学校では外向型の人が高く評価されたり、求められたりしている。この現状はなんとも内向型の人にとっては生きづらいだろうと思うが、心配する必要はない。歴史的な偉人の多くは内向型がたくさんいるのだ。たとえば、世界的に有名な科学者アルバート・アインシュタイン、第十六代アメリカ大統領エイブラハム・リンカーン、バスケットの神様マイケル・ジョーダン、発明家トーマス・エジソン、起業家ビル・ゲイツなど様々な分野で内向型人間が活躍しているのがわかる。ちなみに、俺は言うまでもなく内向型人間だ。

内向型の人は、無理やり外向型に合わせるのではなく、自分の強みを生かした方が良いと俺は思っている。内向型は決して悪いことではなく、それは生まれ持った才能であると俺は考えている。

如月さん、二宮さん(カスミン)、霜月は、内向的である自分をそんなに卑下せずに、少しずつ関わりを増やしていけばどうか、という意見を述べていた。ベルさんは、社交的になるにはとにかく何でもいいから話しかけること、話題なんて適当でいい、ということをアドバイスしていた。桔梗さんもそれに賛成し、自分の好きなことをしていると、いつか話の合う人と巡り合える、とアドバイスをしていた。桔梗さんのアドバイスは、まるで自分が経験したかのような語りようだった。そのアドバイスをしている時、桔梗さんはチラッと俺の方を見ていたので、もしかしたら俺を同類だと思っているのかもしれないと思った。神無月は「そんなこと悩んだことないもない」と威張って言っていた。「なぜなら、何もしなくても人が寄ってくるから!」とカッコつけて言っていたのがムカついたので、彼女には無視するように言ったが、彼女は神無月を憧れているような目で見ていた。俺の順番が来たので、みんなの意見に同調しながらも、少し違う視点でアドバイスをすることにした。

俺は、まず彼女自身が自分の性格を知った方が良いだろうと判断して、ビッグ5診断をオススメした。ビッグ5とは、今現在、最も信ぴょう性のある性格分析のことで、人間の性格を主に5つの因子に分類している。その因子とは、外向性、協調性、開放性、誠実性、神経症的傾向の5つである。

外向性は先程も述べたように、社交的であるか、内向的であるかということだ。協調性は、仲間とどれくらい協力的かということだ。協調性が高ければ協力的ということになり、低ければ一匹狼ということだ。開放性は、言い換えると好奇心のことで、いろんなことにどのくらい興味を持つかということだ。開放性が高ければ挑戦的で、低ければ保守的だということだ。誠実性は文字通り、誠実かどうかということだ。誠実性が高ければ勤勉で真面目だが、低ければ衝動的だということだ。最後の神経症的傾向とは、メンタルの強さのことだ。神経症的傾向が高いとストレスに弱くて繊細であり、低いとストレスに強く強靭なメンタルということだ。

この5つの因子で性格分析を行うことで、自分がどういった性格なのかを知ることは、これからを生きていくためにも役に立つことだと思っている。これを知ることで、自分だけでなく他人も分析できるようになると、コミュニケーションに生かせるだろうし、ちょっとした遊びもできるかもしれない。

他にも自分自身を知るツールはある。ストレングスファインダーというツールは、人間の資質を34個に分類し、質問に答えるだけで自分に当てはまる資質、言い換えると自分の強みが何かを教えてくれるツールだ。自分の強みを知ることで、社会や学校に合わせるのではなく、自分に合った生活を送ることができるかもしれない。

さらに、自分の価値観を知ることも大切だと思う。人によって価値観は様々だ。勉強が最優先だという価値観を持っている人もいれば、部活が最優先だという価値観を持っている人もいるだろう。友達や家族が最優先だという価値観を持っている人もいれば、仕事やお金が最優先だという価値観を持っている人もいるだろう。価値観というのは、個人が思っている信念のようなものなので、これが正解という価値観はないと俺は思っている。自分がどんな価値観を持っているのかは、環境に左右されることもあるが、調べてみると自分でも気づかなかった価値観を持っていることだってあるだろう。自分の人生を生きる上で、自分の価値観に沿って行動することは、大切なことだと思う。

このように俺がいくつかの自己分析のツールを紹介すると、文月ひまわりは、俺に向かって意見を述べてきた。

「自己分析は大事だと思うんですけどー、可憐ちゃんは社交的になるにはどうしたらいいのかを相談しているんですよ。そっちのアドバイスはないんですか?」文月ひまわりが煽るように言った。

「たしかにそうだが、話を聞いていると、最初は社交的じゃなくても満足していたらしいから、そのままでも問題ないということをわかってほしいと思ったんだ」

「この前言ってた、ありのままの自分を受け入れるってことですか?」

「あぁ、内向的な人は、周りと違う自分がどこかおかしいと思ってしまうことが結構あるらしいから、けっしてそんなことはないことを、まずは知ってほしいんだ」

「でも、可憐ちゃんは決心して社交的になろうとしているじゃないですか? それなら、そうなった方がいいんじゃないですか?」

「たしかにそれも一理あると思う。でも俺には、彼女が無理しているように見えたんだ!」

俺は率直に感じたことを言った。彼女が本気で決心したのなら、俺も応援する。でも彼女の話を聞いたり、態度を観察したりしていると、そんな風には見えなかった。

内向的な人が無理をして外向的になろうとすると、大変な苦労をする。最悪、精神的に病んでしまいかねない。そんなことをするよりかは、自分を偽らずにありのままの自分でいてもいいんだ、と思えるような人たちと交流した方が良いと俺は思う。たとえそれが数人だとしても、その人たちを大切にしていきたいと思っている。実際、俺が主に交流している人は、家族と相談部と、他数名だけだ。俺はそれで満足している。

「でも、それって先輩の価値観ですよね?」文月ひまわりは煽るような言い方で言った。

「あぁ」

たしかに、これは俺個人の価値観であるため、彼女に押し付けるわけにはいかない。しかし、こんな考えの人もいるということを知ってもらいたくて語ってしまった。いろんな意見を聞いて、最終的には彼女自身がどうするのかを決めなくてはならない。そして彼女が決めたことを、俺たち相談部は応援するだけだ。

 俺と文月ひまわりは、霜月が止めに入るまで意見のぶつけ合いをしていた。他のみんなと木ノ花さんは、どうしていいかわからない様子で、それを見ているようだった。俺たち二人が黙ると、霜月が最終的にまとめて、木ノ花さんに提案した。

その結果、まず簡単にできそうだということで、俺が教えたビッグ5の性格分析をしてみることにしたらしい。そして、もし考えが変わらなければ、もう少し社交的になるように頑張ると言っていた。

木ノ花さんは帰り際「ありがとう」と感謝してくれたが、俺は申し訳ないと思っていた。つい文月ひまわりの挑発に乗ってしまい、クライエントそっちのけで話を進めてしまったことを反省していた。

帰りに霜月が、俺に文月ひまわりとのやり取りをどうにかできないのか? と訴えてきた。さすがにこのままではいけないと思ったらしい。霜月が直接、何度か注意をしたらしいが、一向に改める気がいので、入部を許可するかどうかを考えていると言っていた。俺もやり取りに問題はあると思うが、文月ひまわりの存在は貴重だと思っているので、その判断は待ってほしいとお願いした。霜月が理由を聞いてきたので、俺は説明した。

文月ひまわりは、たしかに俺を狙って反論しているように見える。だけど、彼女の言い分はもっともだと思うし、一意見が正しいと思い込むのを防いでくれる存在だと思っている。俺の意見はあくまで俺の考えであって、それが必ず正しいわけでもないし、人によっては受け入れられないことだってあるだろう。今まではなんとなくだが、みんなが俺の意見はおそらく間違っていないというバイアスがかかっていたと思う。それは、勉強が得意ということによるステレオタイプによるところが大きいと思うが、俺だって間違ったことを言うことはある。そのバイアスに陥らないために、文月ひまわりの存在は欠かせないと俺は考えている。俺の意見の穴を狙ってくる文月ひまわりと話すと俺も勉強にもなる。それに半分は俺の責任でもあるので、処分なら俺も受けないといけないと思う。

ということを伝えると、霜月はしょうがないな、といった表情で納得してくれたようだった。それでも、今の状況は良くないので、なんとかするようにという課題を与えられてしまった。それから、俺はどう対策しようか考えたが、なかなか名案が思いつかなかった。


それから数日後のある日の放課後、俺は中庭で水を飲み干し少し休憩した後、一人で部室に向かっていた。部室に向かっている途中の廊下で、文月ひまわりが何かを探している姿が見えた。「何か探しているのか?」と声を掛けると、文月ひまわりは、不意を突かれて驚いたような反応をしてから、すぐに冷静さを装い「先輩には関係ありません」と答えた。

俺は構わず「何を探しているんだ?」と尋ねたが、文月ひまわりは「先輩には関係ありません」とさっきと全く同じ答えを言い、一向に教えてくれなかった。

文月ひまわりがそのような態度だったので、俺はそのまま部室に向かおうとしたが、少し進んだところで振り返り、文月ひまわりの顔を見ると真剣そうに見えたので、何か大事なものを探しているのだろうと思い、俺は戻って近くに行き、落とし物の特徴を尋ねた。

何度尋ねても、「先輩には関係ないです」「余計なことしないでください」と一向に教えてくれる気配がなかったので、俺は黙って文月ひまわりが落としていそうなものを考えて探し始めた。

文月ひまわりといえば…………ロリ。ロリといえば…………リボン。でも待てよ、文月ひまわりがリボンを付けているのを、俺は見たことない。ということは違うのだろう。もう一度やり直しだ。文月ひまわりといえば、ロリ。ロリといえば…………猫耳。そうか。猫耳を探しているのか。イメージすると思いのほか似合っていたので、間違いないだろうと確信し、俺は探し始めた。そんな連想ゲームのようなことをしながら、しばらく近くで探していると、文月ひまわりが「お守りです」と突然言った。「え!? 何が?」と聞き返すと、「だから、お守りを探しているんです!」と教えてくれた。「え? 猫耳じゃないのか?」と驚いて言うと、「なんで猫耳なんですか!? そんなわけないでしょ!」と強く否定された。どうやら俺の予想は外れたようだった。

そのお守りは、文月ひまわりが生徒会副会長に決まった時に、睦月会長から貰ったものらしい。普段は胸ポケットに入れて肌身離さず持っているらしいが、いつの間にかなくなっていたそうだ。今日の朝、学校に着いた時に持っているのを確認したらしいので、学校内のどこかに落としている可能性が高いとのことだ。落とし物を届ける場所はすでに確認済で、なかったらしいので、今は落とした可能性のある場所を手あたり次第に探しているそうだ。

ということで、俺たちは一年A組の教室に移動した。

一年A組の教室で探している時、文月ひまわりが俺に質問をしてきた。

「先輩、部活はいいんですか?」

「ん? まぁ大丈夫だろ」俺は手を休めることなく、探しながら答えた。

「みなさん、先輩を待っているんじゃないですか?」

「まぁ、そうかもしれないけど、それよりもこっちの方が大事だし」

 そう言うと、一瞬文月ひまわりの動きが止まった。

「もしかしたら、今頃、深刻に悩んでいる人が来ているかもしれないですよ!」

「もしそうだとしても、大丈夫だろ! みんながいるから」

「信頼しているんですね」

「まぁ、そうだな! 文月さんも知っているだろ? 二宮さんや桔梗さんと友達なんだし」

「はい。二人とも、とてもやさしくていい子です! それに、如月先輩やエイプリル先輩もとてもいい人でした!」

文月ひまわりがそう言ったのを聞いて、相談部に対して抱いている印象が良さそうだと感じた。そして俺もなんだか嬉しい気持ちを抱いていると「でも、先輩のことはまだ信用していません」と念を押すように言われた。

「そっか…」

俺は気にしていない振りをしていたが、内心少しショックだった。そのまま俺は冷静さ保っている振りをしながら、次にゴミ箱を探すことにした。ゴミ箱のふたを取り、中身をあさっていると、文月ひまわりが突然大きな声を発した。

「ちょっと先輩! 何してるんですか!?」

「え!? 何が?」その声に驚きながらも、聞き返した。

「なんでゴミ箱をあさっているんですか?」

「え!? だって、この中にあるかもしれないだろ。あ! もしかして、もう確認してたか?」そう答えると、文月ひまわりは唖然とした顔になった。

「どうしてそこまでしてくれるんですか?」

「どうしてって、文月さんにとって大事なお守りなんだろ? それなら早く見つけた方が良いと思って…」

「それでゴミ箱の中まであさるんですか?」

「あるかもしれないからな! 自分にとって大事なものでも、他人にとってはゴミと思われることもあるだろうから…」

「今、私のお守りをゴミって言いました?」文月ひまわりは怒った様子で言った。

「あ、いや、ごめん。そういう意味で言ったんじゃなくて…」俺は慌てて訂正しようとした。

「フフ、冗談ですよ!」文月ひまわりは笑顔になって言った。どうやら、からかわれていたようだ。

それから一年A組の教室中を探し回ったが、結局見つからなかったので、今度は二手に分かれて探すことにした。トイレや更衣室など女子しか入れない場所は任せて、俺はそれ以外の廊下や美術室など、文月ひまわりが今日通った場所を探した。

細かく探したつもりだったが結局見つからず五時になったので、一度、文月ひまわりと合流したが、文月ひまわりも見つけられなかったようだった。

「今日はもういいです。また明日、早めに来て探そうと思います。手伝ってくれてありがとうございました」文月ひまわりはそう言ってくれたが、その表情は悲しそうだった。

「もう少し探そう。なんかこのままだとモヤモヤするし」

「先輩がそこまで言うなら、もっと使ってあげます!」そう言う文月ひまわりの表情は少し明るくなっているような気がした。

俺と文月ひまわりが、次にどこを探そうかと廊下で話していると、部活を終えた相談部のみんなが通りかかった。

「アレ? 翔サンとひまわりサンじゃないデスか? こんなところで何をしているんデスか?」ベルさんが声を掛けてきた。

「部活を休んで、二人で一体ニャにをしていたのかニャ?」カスミンが問い詰めてきた。

「勘違いしないでください! 私は先輩を利用していただけです!」文月ひまわりが少し焦りながら答えた。

「利用?」桔梗さんが首を傾げながら言った。

「あ、いや、ちょっと一緒に探し物をしていて、なかなか見つからないんだ」

俺がそう答えると、二宮さんが「あ!」と言って、持っていた自分の鞄の中をあさり始めた。そして、鞄の中から何かを取り出して、文月ひまわりに差し出した。それは俺たちが探していたお守りだった。文月ひまわりはお守りを受け取り喜んで、二宮さんに「ありがとう!」とお礼をしていた。「どこに落ちていたの?」と文月ひまわりが聞くと、体育館の女子更衣室に落ちていたとカスミンが答えた。そこは文月ひまわりも探していた場所だったので、おそらく先に二宮さんが見つけて拾ってくれていたのだろう。その確認のため、「どうして二宮さんが持っていたんだ?」と俺が尋ねると、カスミンが答えてくれた。

カスミンの話によると、午前中の体育が終わった後、教室に戻っている時に、二宮さんは更衣室にカスミンを忘れてしまったのを思い出して取りに戻ったらしい。その時にお守りが落ちているのを見つけて、見覚えのあった文月ひまわりのお守りに似ていたので、拾って確認しようとしたらしい。しかし、休み時間になると、文月ひまわりがすぐにどこかに行き、時間ギリギリに戻って来るから、なかなか渡せなかったらしい。それなら部活で渡せばいいかと思って、ずっと持っていたそうだ。その日は部室に一度も行かなかったので、盲点だった。

こんな風に考えてもいないところから、探し物は見つかったりすることもあるということだ。もし俺たち二人のどちらかが部室に行っていたら、もっと早く見つけて安心できていただろう。ただそれは結果論であり、今だからこそ視野を広げて考えることができているに過ぎない。探している時は、その日行った場所から捜索するのは常套手段だ。しかし、もし見つからなければ、視野を広げて行っていない場所も探した方がいいのかもしれないと思った。何はともあれ、大事なものが見つかったので、これで俺のモヤモヤも解消された。


 翌日の放課後、今日も俺は少し遅れて部室に行った。部室に入ると、いつも置いていた観葉植物がないことに気づいたので、霜月に尋ねると、文月ひまわりが、たまには外の空気を吸わせてあげないと、と思ったそうで、朝、中庭に持って行ったらしい。それを今、一年ズが回収に行っているらしい。

俺は様子が気になったので、荷物を置いて中庭に向かった。中庭に着くと、三人がそれぞれ観葉植物を両手で大事そうに抱えて歩いていた。笑顔で話しながら歩いている三人を見て、仲が良いんだなと感じながら見守っていると、文月ひまわりが段差に足を引っかけて転んでしまったので、俺はすぐに走って向かった。

「大丈夫か?」俺は声を掛けた。

「いたたたた」そう言いながら文月ひまわりは起き上がり、すぐにハッとした顔をして「ポトスは?」と言い、辺りを見渡し始めた。そして、前方に鉢が割れたポトスがあるのを見つけて「ごめんなさい。私のせいで…」と顔を青くして謝っていた。

「そんなことより、どこか怪我してないか?」俺は文月ひまわりに聞いた。

「え!?」文月ひまわりは固まっていたので、俺はもう一度聞いた。

「どこか痛いところはないか?」

「わっ、私は大丈夫です。それよりもポトスが!」

「あれは新しい鉢を買えばいい。それよりも左膝を少し擦りむいているな」文月ひまわりの腕や足を確認していると、左膝から血が流れているのが見えた。

「これくらいたいしたことないです!」文月ひまわりはそう言っていたが、俺は聞く耳を持たなかった。

落ちて鉢の割れたポトスの掃除を二宮さんと桔梗さんに任せて、俺は文月ひまわりを保健室に連れて行くことにした。最初は嫌がっていたが、二宮さんと桔梗さんが説得してくれたことで受け入れてくれた。

保健室に着くと先生がいなかったので、しょうがなく部品を拝借し、洗浄、消毒をしてから絆創膏を貼った。

「ごめんなさい」文月ひまわりは突然謝ってきた。

「何が?」

「ポトスの鉢は私が弁償します」

「別にそこまで気にすることじゃない。それよりも文月さんが大きな怪我をしてなくて良かった」

少し沈黙が流れた。

「先輩はいつもそうなんですか?」

「ん? 何が?」

「なんでもありません!」文月ひまわりはそう言って立ち上がり、「さぁ、部室に戻りますよ!」と元気な声で言った。

 部室に戻ると、二宮さんと桔梗さんがすでに戻っており、如月さんとベルさんがとても心配そうな顔をして、文月ひまわりに迫ってきた。どうやらカスミンが事情を説明したらしいが、いろいろと話が盛られたようで、事実よりも重く解釈され、とても心配していたらしい。文月ひまわりがちゃんと事実を説明すると、安心したようだった。俺は二宮さんを桔梗さんに後片付けをしてもらったことに対してお礼を言った。


 俺と文月ひまわりに、そんなことがあってからの次の相談で、いつもと少し違うことに俺は気づいた。文月ひまわりの俺に対しての反論の仕方が少し変わっていたのである。今までは明らかに攻撃的な言い方だったのが、今回から同意しつつも違う意見もあるという風なやさしい言い方になっていた。前みたいに俺たち二人だけで言い争いになることなく、クライエント主体の相談に戻っていた。そのおかげで、相談部は前よりもさらにレベルアップしたように感じた。



読んでいただき、ありがとうございます。

次回もお楽しみに。

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