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どんな悩みも水無月くんにお任せ!!  作者: たかべー
相談部始動編!!
28/78

水無月翔の多忙な一週間!!

8月の中盤に差し掛かったある週末。俺はとても疲れていた。いつもは無理をしないように自分でスケジュールを調整しているのだが、今週は予想外のことがたくさん起こった。

まず月曜日、いつも通り朝のルーティーンを終えた後、ふとスマホが視界に入った。なぜか気になったので見てみると、ベルさんから「助けてください!」というSOSのメッセージが来ていた。電話をしたが出なかったので、メッセージに書かれていた駅に急いで向かった。到着すると、パンツスタイルの私服のベルさんが落ち着いた様子で「オハヨウゴザイマス!」と言って、待っていた。

俺は状況がわからなかったので尋ねると、行きたいところがあるので、付き合って欲しいとのことだった。あまり詳細に伝えると、断られると思ったようで、あえて一言だけにしたらしい。電話に出なかったのは、ただ気づいていなかっただけだった。俺が電話したことを言うと、ベルさんはバッグからスマホを取り出して確認し、「スミマセン」と言った。何はともあれ、ベルさんが無事だったので安心した。

それよりも、俺はベルさんにまんまと操られてしまったことの方が気になった。以前の俺なら、無視していただろうと思うが、今回はそんなこと思いもしなかった。俺は自分の胸に手を当て考えた。俺の中で何かが少しずつ変わっている気がしたが、それが何なのか、自分でもよくわからなかった。

ベルさんにどこに行くのか尋ねたが、着いてからのお楽しみにされてしまった。この時点で知っていれば、おそらく俺は途中で帰ったと思う。「ここデス!」とベルさんに言われて連れてこられた場所はダンス教室だった。俺はすぐに引き返そうとしたが、ベルさんに腕を組まれて無理やり連れていかれてしまった。

この日のベルさんの用事は、ダンス教室の体験だった。イギリスでは社交ダンスをしたことはあったらしいが、ダンスはしたことないらしい。以前から興味があったらしく、ネットで調べ、ダンス体験ができるこの場所を知ったらしい。それなら俺はいらないだろうと言ったが、「一人では心細いので一緒について来て欲しかったデス!」とベルさんは言った。

イギリスから一人で日本に来ている人が、ダンスの体験教室に一人で行けないはずないだろと思ったが、ここまで来て引き返すのも面倒だったので、見学だけなら、ということで、渋々ついて行くことにした。

そこには小学生くらいの子どもから大人まで様々な年齢層の人が集まっていた。ベルさん以外にも、初めて体験に来ている人が二~三人いるようだった。講師の人に俺も声を掛けられたが、付き添いで来たので見学だけと言って断った。

それから、ベルさんがダンスの基本ステップを講師に教わりながら練習している姿をただ眺めていた。俺はダンスについてほとんど知らないが、ベルさんは他の人に比べると、キレのある動きに見えた。講師の人にも「初めてにしては上手すぎる! センスがある!」と褒められていた。途中でベルさんや講師の人に俺も誘われたが、頑なに断り続けた。

なぜなら、俺はダンスが大の苦手だからだ。小学生の時、テレビでダンスを踊っている人を見て、カッコイイと思ったので、姿見を見ながらダンスを踊ってみたが、まるで壊れたロボットのような動きだった。それから、動画を見ながら、約一ヶ月自分なりに本気で練習してみたが一向に上達しなかった。もう少しグリットを発揮すれば上達したかもしれないが、違うことに時間を使った方がいいかもしれないと思って、早めに諦めた。時には諦めることも必要なのだ。この日から、きっと俺はダンスが苦手な体なのだろうと思うことにした。

それでもベルさんはしつこく誘ってきて、俺の手を引っ張った。この時、俺は判断を誤った。周りの人たちに拍手をしながら笑顔で迎えられたので、少しいい気分になってしまったのだ。調子に乗ってみんが教わっていた基本のステップを踊り始めたが、段々周りの歓声が小さくなっていき、静かになっていくのがわかった。リズムをとっていた手拍子もだんだん小さくなっていった。最初は盛り上がりの歓声だったものが、クスクスという笑い声に変わっているのがわかった。羞恥心が最高になり、途中でやめようと思ったが、それはそれで嫌だったので最後まで続けた。いっそのことこの下手さを笑いに変えた方がマシと思ったくらいだ。

俺がダンスを終えた時には、みんな少し引いているような感じがしたが、ベルさんだけは「すごいデス! そんなダンスもあるんデスね!」と感動してくれているようだった。その言葉を聞いて少し気持ちが楽になりに救われた。俺は静かに壁側に戻り、もう二度と踊らないことを心の中で誓った。

ベルさんたちは、一通り基本ステップを練習した後、曲に合わせて踊り始めた。それもベルさんは、一度確認しながら踊っただけで、ほとんど覚えていた。最後にみんなで曲に合わせて踊ったが、ベルさんは講師の人に遜色ない上手さだった。帰る前にダンサーグループに入らないかとスカウトされていたが、断っていた。

その後、ベルさんはまだ行きたいところがあると言っていたが、お互い汗をかいていたので、一度家に帰ってシャワー浴びるために解散した。ベルさんに「ワタシの家で一緒に浴びマスか?」と本気なのか、冗談なのか、わからないテンションで言われたが、丁重に断った。


約一時間後、再び集合し、カフェで昼食を済ませてから、ベルさんが行きたいというところへ向かった。今度もどこに行くのか尋ねても、教えてくれなかった。

それから俺たちはいろんな店に行った。ベルさんは視界に入った気になる店に入っているような気がしたので、そもそも行きたい店がないのではないか、と思った。そんなことをしているうちに、あっという間に夕方になった。そろそろ帰るかと思ったら、ベルさんはバックから何かのチケットを二枚取り出した。それは演劇のチケットだった。どうやら本命は演劇鑑賞だったようだ。それなら最初からこの時間に集合すればよかったのではないか、と思ったが、口に出して言うほどでもなかったので、心の中にしまった。それに、ベルさんは演劇を観るのが初めてと言っていた。俺も初めてだったので、少し楽しみでもあった。チケット代を払おうとしたが、「貰ったチケットなので大丈夫デス!」と断られたので、甘えることにした。

初めての演劇鑑賞は、とても楽しい時間だった。役者さんの芝居、歌、ダンスはもちろん、演出や衣装などすべてが魅力的に見えた。俺もあんな風にできたらカッコイイのになぁ、と一瞬思ったが、自分の演技力やダンス力を思い出し、すぐに幻滅した。隣で観ているベルさんも目を輝かせて感動している様子だった。ベルさんなら将来こっちの道もあるのでないかと感じた。芝居はわからないが、歌とダンスは上手いし、整ったルックスも活かせるだろうと思った。

演劇鑑賞が終わった後、ベルさんは興奮しているのか、別れるまでずっと一人で感想を述べていた。俺はそれにただ相槌をしていた。

家に帰り着き玄関を開けると、つゆりが怒った顔で出迎えてくれた。その時、連絡していなかったことを思い出し、スマホを見ると着信履歴が数件とメッセージが数件、溜まっていた。弁解の余地がなかったので、俺はその場で正座をして平謝りをすると、つゆりは素っ気ない態度だったが、許してくれるようだった。せっかく仲良くなりだしたと思った矢先に、俺のミスでまた溝を作ってしまいそうになったことに反省した。明日は挽回するため、つゆりに誠心誠意を尽くそうと思った。


火曜日の朝、ルーティーンのランニングから帰ると、リビングの机にメモ用紙が置いてあった。つゆりが書いて置いて行ったらしい。それを読むと、つゆりは今日一日友達と遊ぶから、帰るのは午後7時過ぎになるとのことだった。ご飯も食べる予定だから、いらないらしい。

昨日のことがあったので、今日はつゆりの好きなチーズインハンバーグを作ろうと思っていたが、いないのなら仕方がない。チーズハンバーグは明日にすることにした。ということは、今日は俺一人で食べることになる。

この際なので、久しぶりに新メニューの練習でもしようと思い立ったので、何を作ろかネットで検索していた時、インターホンが鳴った。確認すると如月さんだったので、俺は玄関に向かいドアを開けた。

「おっ、おはよう! 水無月くん!」

「あっ、あぁ! おはよう。どうしたんだ? 急に?」

「え!? つゆりちゃんから聞いてないの?」

「つゆりから? 何を?」

「つゆりちゃんから料理を教えて欲しいってお願いされたから、今日一緒にしようってことになってたんだけど…」

どうやら如月さんはつゆりと約束をしていたらしいが、どこかですれ違ったようだった。俺がつゆりがいないことを伝えると、如月さんは驚いて鞄からスマホを取り出して確認し始めた。そして「あ!」と大きな声を出した。如月さんは俺にスマホの画面を見せながら、「予定…明日だった」と言った。

どうやら如月さんが勘違いしていたようだった。如月さんは「ごめんなさい」と謝りながら、申し訳なさそうな表情で帰ろうとしていたので、俺は引き留めた。ちょうど俺も新メニューを練習しようと思っていたことを伝えて、よかったら手伝ってくれないかとお願いすると、「え!? いいの?」と逆に聞かれてしまった。如月さんが料理上手だということを知っていたので、何か勉強になることがあるはずだ、ということを伝えると、如月さんは謙遜しながらも了承してくれた。

元々何を作ろうとしていたのかを聞くと、決めていないということだったので、まずは何を作るかをそれぞれ調べることにした。挙がったのは、フランス料理のキッシュ、テリーヌ、イタリア料理のアクアパッツァ、スペイン料理のパエリア、アヒージョなどがあった。この中から、アクアパッツァを作ることにした。

なぜ、アクアパッツァにしたかというと、魚が好きだからだ。魚はたくさん種類があるし、調理法も様々だ。生はもちろん、焼いたり、煮つけたり、揚げたりと、どんな調理法でも美味しくなる。特にサバを食べると頭が良くなるということが、科学的にも証明されているので、結構食べている。いつでも食べられるように鯖缶は常にストックしている。頭が良くなりたいならオススメだ。

ということで、作る料理が決まったので、まずは近くのスーパーに行き、材料を揃えることにした。練習用なので魚は安い切り身の白身魚にした。他には、プチトマト、あさり、ムール貝、パプリカ、にんにく、イタリアンパセリ、白ワインなどを買って帰った。

せっかくなので、如月さんと別々に作ることにして、料理勝負をすることにした。といっても採点者がいないので、自分たちで評価することになるのだが。

俺は初めてだったので、スマホで作り方を確認しながら調理していたが、如月さんは何度か作ったことがあるらしく、手際よく調理していた。この時点でもう負けそうな感じがしていた。俺は初めて作る料理は基本に忠実に作るようにしている。なので、レシピ通りということだ。まずは練習を何度か重ね、慣れてきたら自分なりにアレンジをする。最初からアレンジして変な味にしないように気を付けている。

しかし、如月さんの様子を見ていると、俺のレシピとは少し違う味付けをしているようだった。学んだレシピが違うだけという可能性もあるが、食べてみなければわからない。如月さんが俺にペースを合わせてくれて、ほぼ同時に完成した。見た目はそこまで変わらない気がするが、なんとなく如月さんの方が彩り良く見えるし、いい香りだった。だが大事なのは味だ。

まずは俺のアクアパッツァ食べた。普通に美味しかった。如月さんも「美味しい!」と言ってくれた。次に、如月さんの作ったアクアパッツァを食べた。一口食べた瞬間美味しさの違いがわかった。魚介のうま味がしっかりと凝縮されており、俺のより数段美味しかった。焼き加減や味付けでこんなにも変わるのかと、改めて料理の奥深さを思い知った。結果、料理勝負は如月さんの圧勝ということになった。


片付けをした後、如月さんに、何かお礼をさせてくれるように言うと、最初は断られたが、それでも何度かお願いすると受け入れてくれた。如月さんは行きたいところがあると言うので、俺はついて行った。俺にできることならなんでもしようと思っていたが、その場所に到着して後悔することになった。

如月さんの行きたいところは、カラオケだった。他のところにしないかと提案したが、如月さんに「お礼になんでもしてくれるんでしょ!」と言われ、返す言葉がなかった。まぁ一時間くらい歌を聴くだけならいいかと思って了承したが、まさかのフリータイムだった。最初は如月さんが歌った。初めて如月さんの歌声を聴いたが、とても上手かった。点数はほとんどが九十五点以上だった。その後、俺も歌うように促されたが、「まだいい」と言って自分が歌わないようにしてこのまま終わるのを待っていた。

俺がなぜ歌わないのかというと、単純なことだ。ただただ歌が下手だからだ。俺は前に一人でカラオケに行ったことがある。自分の歌唱力がどれ程のものか、客観的な評価が欲しかったからだ。その時の点数はほとんどが六十から七十点だった。何回歌っても七十点台の壁を超えることはできなかった。これは極端に下手でもなければ、別に上手くもないという中途半端な点数だ。練習したら上手くなれるかもしれないが、一度自分で録音して聴くと、自分の歌声が気持ち悪かったので、俺は人前で歌わないことにした。如月さんは連続で何曲も歌ったので、さすがに疲れた様子で、俺にも歌うように迫ってきた。俺は歌が下手だということを伝えると、如月さんは「そんなの関係ないよ! カラオケは自分の好きなように歌えばいいんだよ!」と励ましてくれた。

たしかに、思いっきり歌うのはストレス発散の効果があるかもしれないと思ったので、一曲だけ歌うことにした。数年前の曲で、俺が中学生の時によく聴いていた曲を歌うことにした。下手なところを見せたくないという気持ちが強かったので、変に力が入り、両手でマイクを持って、音程をずらさないことだけに集中して歌った。結果は七十三点。俺にしては頑張った方だと満足していた。如月さんに笑われるかもしれないと思っていたが、「なんか楽しいね!」と言って笑っていた。この笑顔は俺が思っていた面白い時の笑顔と違って、なんだか暖かかった。

それから俺と如月さんは、約三時間カラオケで歌った。その後、解散すると思ったが、もう一つ行きたいところがあると如月さんが言うので、もう少し付き合うことにした。そこは大型ショッピングモールで、いろんな店を見て回った。なんだか昨日のデジャブのような感じがしたが、あっという間に時間が経ち、気が付くと午後6時を過ぎていたので、俺たちは帰ることにした。

家に帰り着くと、今日も玄関でつゆりが出迎えてくれた。顔を見ると少し怒っているようだった。どこに行っていたのかを聞かれてので、正直に如月さんと料理したりカラオケに行ったりしたことを伝えた。それを聞いたつゆりが「やっぱり牡丹さんは策士だね。私も油断できないな」と言った。俺が「つゆりも帰るのが早かったんだな」と言うと、「まぁね、なんだか胸騒ぎがしたから、早めに帰って来たの。そしたら案の定…」とつゆりは答えた。「胸が苦しいのか?」と心配して聞くと、つゆりは「そんなんじゃない!」と言って、自分の部屋に籠ってしまった。また怒らせてしまったようだった。明日は、つゆりと如月さんが料理をするため、俺も何か手伝えることがあったら手伝おうと思った。


水曜日の朝、俺がランニングをしていると、途中で神無月と出会った。俺は無視してランニングを続けたが、神無月は付いて来て、俺を海水浴に誘ってきた。実は以前から神無月に海水浴に行こうと誘われていたが、俺は頑なに断っていた。なぜなら、俺は泳ぎが苦手だからだ。おそらくクロールはできていると思う。いや、正確に言うと、できていると思い込んでいる。フォームが正しいか定かではないが、一応沈むことなく二十五メートル泳ぐことができている。それでも結構ギリギリだ。平泳ぎも挑戦したことがあるが、手と足を一緒に動かしてしまうし、全然前に進まない。クロールに比べて息継ぎがしやすいので、なんとか二十五メートル泳ぐことができているが、果たしてこれを泳げると言っていいのだろうかと思う。ただ浮いているだけという解釈もできるだろう。

そもそも人間は陸上で生活できるように進化してきたので、海で泳げるようにはなっていない。なぜわざわざ不利な状況に自分から突っ込むのかわからないと、いつも自分に言い聞かせている。俺はマイケル・フェルプスのように、泳ぎに特化した体格ではないのだ。それに、夏に海水浴なんて人がどれだけいると思っているんだ。なぜ、わざわざ人が多い時に行くのかわからない。

だから今回も海に行くなどあり得ないと考えて、断り続けた。それでも神無月はしつこく誘ってきて、結局最後までついて来た。神無月が普段から運動をしているのは本当だったようだ。俺のペースに余裕でついて来た。

ランニングを終えて、心拍数を元に戻しながら残りを歩いて帰っていると家の前に誰かがいるのが見えた。ある程度近づくと霜月だということがわかった。なんの用事か尋ねると、霜月も「俺たちと一緒に海水浴に行かないか?」と誘ってきた。どうやら霜月と神無月はグルらしい。たとえ一人増えたところで、俺の考えは変わらない。「二人で行けばいいだろ!」と言ったが、二人は聞く耳を持たなかった。理由はわからないが、どうしても俺を一緒に連れて行きたいらしい。もしかして俺が泳ぎ苦手なのを知って、弱みを握ろうとしているのかと推測した。

その時、玄関のドアが開いて、つゆりが出てきた。家の前で声がするから様子を見に来たらしい。そこで俺は思いついたことを二人に提案した。つゆりが許可をくれたら、一緒に海水浴に行ってもいいという条件を出した。つゆりは、今日如月さんと料理の練習をする予定だ。それには雑用が必要だろう。おそらくつゆりは、その雑用を俺にさせるつもりだろうと考えた。二人はつゆりに海水浴のことをお願いすると、俺の予想に反して、あっさりとオーケーを出した。つゆりに理由を聞くと、「え! だって私関係ないし!」と言って、玄関を閉め、自分の部屋に戻っていった。霜月と神無月が喜んでいる隣で、俺は見捨てられた子犬のようになっていた。

ということで、俺と霜月と神無月は海水浴に行くことになった。

海に到着すると、予想通りたくさんの人がいた。この人たちは炎天下の中、なぜ外で遊びたいと思うのだろうかと不思議に思った。おそらく俺とは違う種の人間なんだろうと思いながら拠点から眺めていると、やたらと女の子が集まっている場所が二箇所あった。目を凝らして見ると、一つは霜月に群がっている女子軍団で、もう一つは神無月に群がっている女子軍団だった。何、あの二人、自分がモテることを俺に見せびらかすために連れて来たのか、と思った。霜月はどうかわからないが、神無月はそんな気がする。時折俺の方を見て、ドヤ顔をしてくるのが、ちょっとムカついた。それから霜月と神無月に海で泳ごうと誘われたが、人が多かったので断った。

俺は借りたパラソルで影を作って、レジャーシートを敷いた拠点で、寝ながら波の音を聴いて楽しむことにした。周りの人間の声がうるさかったが、これも集中力を鍛える瞑想になると思って続けた。目閉じてしばらく波の音に集中していると、周りの人の声がだんだん小さくなっていき、聞こえなくなった。しかし、突然「あれ!? もしかして水無月くん?」という聞き覚えのある声が聞こえた。目を開けて声のした方に視線を送ると、水着姿の女の子が二人立っていた。

一瞬誰かわからなかったが、よく見ると睦月会長と一ノ瀬さんだった。制服じゃないとこんなにも印象が違うのかと思った。どうやら二人も海水浴に来ていたらしい。睦月会長に「水無月くんは海水浴に来るような人だと思わなかったわ!」と言われ、一ノ瀬さんも頷いていたので、俺はここまでの経緯を説明した。睦月会長は絶賛モテモテ中の二人を見ながら「あなたも大変ね」と慰めの言葉を掛けてくれた。一ノ瀬さんには「水無月くんは泳がないの?」と聞かれたので、人が多いことと、泳ぎが苦手なことを伝えると、二人は驚いたような顔をした。「あなたも苦手なことがあったのね!」と睦月会長が言い、「意外!」と一ノ瀬さんが言ったので「俺にも苦手なことはたくさんありますよ!」と告白した。

この会話中、俺の視線は一ノ瀬さんのある一部に集中していた。なぜなら、一ノ瀬さんのある一部が予想以上に大きかったので、男の本能でつい見入ってしまった。制服姿だとよくわからなかったが、一ノ瀬さんは着やせするタイプなのだろうと思った。俺の視線に気づいた一ノ瀬さんが、胸を手で隠しながら「あんまり見られると照れるんだけど…」と言った。俺は「あぁ、ごめん。つい本能的に見てしまった」と謝ったが、隣の睦月会長が許してくれそうになかった。

睦月会長は一ノ瀬さんを庇うように少し前に出て「水無月くん。あなたには、この前の件で感謝はしているのだけれど、初雪ちゃんに変な事したら許さないわよ!」と怖い口調と目つきで警告してきた。

初めはニッコリしていたが、最後の方は鋭い目つきになり、とても怖かった。暑さのせいか、睦月会長に黒いオーラが漂っているように見えた。おそらく幻覚だろうが、はっきりと見えた。この時、睦月会長の他にもいくつか殺気を感じたので、周りを見渡したが、怪しい人はいなかった。この殺気は、俺の勘違いであってほしいと心の中で祈った。それから二人は、海の中に泳ぎに行った。


また一人になったので、波の音に集中する瞑想を再開した。しばらくそうしていると、今度は「あれ!? 先輩じゃないですか?」と言う、さっきとは違う聞き覚えのある声が聞こえた。目を開けて視線を送ると、水着姿の七海さんと二宮さん、それといつも全裸のカスミンがいた。今度は一年ズに偶然出会ったのだった。「先輩も海水浴ですか?」七海さんに聞かれて、夏に海に来て、水着を着ている人が海水浴以外に何をするんだ、と心の中で思いながら、「あぁ!」と一言だけ答えた。といっても、俺は海で泳がずに、寝ているだけなので、海水浴と言えないかもしれないが…。

そんなことを考えていると「ちょっと、ななみん! 夏に海に来て、水着を着ている人が海水浴以外に何をするんだニャ!」とカスミンが俺の代わりにツッコんでくれた。

「あ! そっか! それもそうだね!」七海さんはあっさり納得していた。

「ところで、水無月くんは泳がニャいの?」

カスミンにそう聞かれたので、先程睦月会長たちに説明したことと同じことを三人に説明した。俺の話を聞いて、七海さんは「先輩、泳ぎ苦手なんですね! 意外です!」と睦月会長たちと同じ感想を言った。カスミンは「水無月くん、泳ぎ苦手ニャんだー! ボクたちと同じだニャ!」と言ってくれた。

「二宮さんも苦手なのか?」俺がそう尋ねると、二宮さんは頷いた。

「ボク、泳ぎは好きニャんだけど、水を過度に吸収してしまう体だから、上手く泳げニャいんだよニャ! それに海水だと臭くニャるし…」

カスミンそう言ったのを聞いて、その光景を想像すると、少し面白そうだったので、見てみたいと思った。俺はカスミンにお願いしたが、「それは絶対嫌だ!」と強く断られてしまった。もしかしたら過去に何かあったのかもしれない。

七海さんが「泳がないのなら、先輩は何をするんですか?」と聞いてきたので、「ここで波の音だけを聴く瞑想をする」と答えると、「何ですか、それ?」と返された。

逆に三人は何をするのかと尋ねると、「ボクたちはサンドアートを作るんだ!」とカスミンが答えた。それを聞いて少し面白そうだと思ったので、俺も参加していいか尋ねると、オーケーをもらった。

こう見えても、俺はサンドアートが得意だと自負していた。海に来た時は、いつも砂で何かを作っていたからだ。子どもがよく作る山なんてレベルのものではない。城や世界遺産などの建造物から日用雑貨など、いろんなものを作っていた。もちろん細部にまでこだわっている。二宮さんも得意ということだったので、誰が一番すごい作品を作るか、勝負をすることになった。

この話をしている時に、睦月会長と一ノ瀬さんが戻ってきた。

「あら、気になって戻って来たのだけれど、余計なお世話だったかしら」睦月会長が凛とした態度で言った。

「せっ、生徒会長!!」七海さんが驚きながらそう言い、隣にいた二宮さんとカスミンも驚いていた。

「私のことを知っているっていうことは、暦学園の生徒かしら? もしかして一年生?」

「はっ、はい!」七海さんが答えてから、お互いに自己紹介をした。

それから俺たちの話を聞き、面白そうだということで、二人もサンドアート対決に参戦することになった。そして女子軍団から逃れてきた霜月も来て、流れで参加することになった。これで偶数人になったので、3チームで競うことになった。睦月会長・一ノ瀬さんチーム、二宮さん・七海さん・カスミンチーム、俺と霜月チームに分かれた。お題はなく、何を作ってもオーケーで、時間は午後四時まで。どのチームが一番魅力的な作品を作るのかを競うというルールだった。

俺と霜月は最初に何を作るかを話し合った。あまり時間を使いたくなかったが、海と言ったらあれだろということで、あっさり意見が一致して、作業に取り掛かった。他チームもすぐに決まったようで作り始めていた。二宮さんはカスミンを外し、ペットボトルで固定して見守らせていた。

サンドアートと言っても、やることは単純だ。水と砂を混ぜて土台を作り、それを削っていくだけだ。この時、砂と水の比率に気を付けなければならない。水が少ないと形を保てないし、作っている途中で乾いてしまい崩れることもある。結構繊細な作業だ。他の人たちは途中で休憩したり、昼食を取ったりしていたが、俺は一度集中すると面白くなって、やめられなくなるので、水分補給だけをしながら、ずっと作り続けた。

そして時間になった。3チームとも時間内に完成させることができていた。

まず、俺と霜月が作品から発表した。俺たちが作ったのは、『海賊船』だ。海と言ったら船。船と言ったら海賊船。ということで、船体やマスト、帆、大砲まで一つひとつ細かく再現している。4人の評価もなかなかといった感じだった。

続いて、睦月会長・一ノ瀬さんチームが発表した。二人が作ったのは、『海岸で歌うマーメイド』だった。岩場に座って、ハープを弾きながら歌うマーメイドを表現したらしい。目や鼻、口まで細かく彫られている。髪は長いが、顔はなんとなく一ノ瀬さんに似ている気がした。おそらく睦月会長が担当したのだろう。胸は睦月会長に似て小ぶりだったので、首から腰までは一ノ瀬さんが担当したのだろうと思った。鱗も細かく作られており、なかなかいいと思ったが、俺たちの方が魅力的だなと思った。

最後は一年ズの作った作品だ。一年ズは、世界的に有名な建造物をたくさん作っていた。ドイツの『ケルン大聖堂』、フランスの『エッフェル塔』や『凱旋門』、イタリアの『コロッセオ』、インドの『タージ・マハル』、アメリカの『自由の女神』、日本の『姫路城』など各国の世界遺産を作って、旅行気分が味わえるというコンセプトらしい。俺たちの作品と違って、一つひとつの作品は小さいが、きめ細かく作られていた。それに同じ時間内で、これだけの作品をどうやったら作れるんだ、と驚嘆した。俺以外の三人も同じような表情をしていた。

そして結果発表。文句なしで、あっさりと一年ズの優勝が決まった。量、質共にダントツで魅力的だった。これはみんなも納得で満場一致だった。

しかし、俺たちの勝負はここからだった。俺たちと睦月会長チームのどちらがより魅力的かということを決めなければならない。俺は、断然、俺たちの作った海賊船の方が迫力あって魅力的だということを主張したが、睦月会長は「私たちのマーメイドの方が繊細で細かく表現できていて、魅力的だわ!」と主張して譲らない。お互いなかなか譲らず収拾がつかないので、二宮さんと七海さんとカスミンの三人に決めてもらうことにした。彼女たちの評価なら納得できるだろうと思ったからだ。

最初の評価者、七海さんは睦月会長・一ノ瀬さんチームに票を入れた。マーメイドの作りが細かくて、見ているだけで感情が伝わってくるのが良いということらしい。次のカスミンは、俺と霜月作の海賊船に票を入れてくれた。大きくて迫力がありながらも、細かいところもしっかり作っているところを評価したようだった。さすがカスミン、よく見てくれていると感心した。それに、俺はカスミンが俺たちに票を入れた時点で勝利を確信した。なぜなら、カスミンは二宮さんの一部だからだ。カスミンの考えは、二宮さんの考えと同じだろう。つまり、カスミンが海賊船を選んだということは、二宮さんも海賊船を選ぶということだ。

そして最後に二宮さんは、より魅力的だと思うものをゆっくりと指さした。それは、俺の予想を通り………とはいかず、二宮さんは睦月会長・一ノ瀬さんチームに票を入れたのだった。その結果に睦月会長と一ノ瀬さんはハイタッチして喜んでいた。二宮さんに理由を聞こうとしたが、やめることにした。二宮さんはやさしいので、優劣をつけたくなくて、カスミンと意見を分けたのかもしれないと思ったからだ。

結果、三位が俺・霜月チームの『海賊船』、二位が睦月会長・一ノ瀬さんチームの『マーメイド』、優勝が一年ズの『世界遺産』になった。俺にとっては少し悔しい結果になったが、みんなが笑顔で楽しくしているようだったので、良しとすることにした。作品作りと結果発表に集中していた時は気づかなかったが、いつの間にか周りには人だかりができており、知らない人たちも俺たちの作品を見ていた。

このまま大団円で終わりそうだった雰囲気に、ようやく戻ってきた神無月だったが、近くに来た時、躓いて転び、一年ズの作品の一部を壊してしまった。一瞬周りの時間が止まったかのように感じた。「何してんだ! お前!!」と心の中で叫びながら、二宮さんを見ると、泣きそうな顔になっていたので、これはまずいと思い、俺は咄嗟に「うりゃー、悪魔のギガントキック!」と超ダサい技名を叫びながら、海賊船の船首を蹴って破壊した。

「ちょっと! 何してるんですか!? 先輩!?」七海さんが驚いていた。

「いや、自分たちが作ったものをこうやって破壊するのも楽しいかなぁと思って! ほら! こういう儚さも芸術の一部って言うし…」

俺は結構強引な考えを述べて、挽回しようと思ったが、難しいようだったが、その時、一ノ瀬さんが「初雪チョップ!」と言いながら、マーメイドの顔を破壊した。それに続き、睦月会長が「それなら私に任せなさい!」と言って、俺たちの海賊船の横に立ち、「フゥー」と息をゆっくりと吐きながら集中力を高め、「セイッ!」と言ってから正拳突きをして船体に丸い大きな穴をあけた。

正直、どうして自分の作品じゃなく、俺たちの『海賊船』を破壊したのだろうと思ったが、それがきっかけで周りにいた子どもたちがまるで破壊神のように派手に壊し始めたので、まあいいかと思った。神無月には後日改めてお仕置きをしようと思った。


帰りの電車の中ではみんな寝ていた。結構はしゃいでいたので疲れが溜まったのだろう。俺は外の景色を見ながら黄昏ていると、隣に一ノ瀬さんがやって来た。

「水無月くんって頭の回転が速いね!」

「なんですか? 急に?」

「いや、あの時すぐに自分の船を壊したじゃん! あれ、一年生を悲しませないためにしたんでしょ?」

「別にそんなつもりはないですけど…。ただ壊したかっただけです。どう壊そうか考えていた時に、たまたま神無月が壊したから、それに乗っただけで…」

「ふーん。まぁそういうことでもいいけどね。私の中では水無月くんのポイントがまた上がったよ!」

「そんなポイントがあるんですね。溜まったら何かに使えるんですか?」

「それは、溜まってからのお楽しみ!」一ノ瀬さんは笑顔でそう言って元の席に戻った。


みんなと別れた後の帰り道、気が抜けたのか急に疲労感が出てきたので、帰ったらすぐに風呂に入って早めに寝ようと考えていた。そして玄関を開けると、つゆりが怒った顔で出迎えてくれた。

「お兄ちゃん。今、何時だと思ってるの?」

そう言われて、スマホで確認すると午後8時半だった。それにスマホにはつゆりからの着信履歴とメッセージが溜まっていた。遊びに夢中で連絡するのをすっかり忘れていたのだ。それで心配したつゆりは怒っているらしい。またしても俺の落ち度なので弁解する余地もなく、その場に正座してただひたすら謝った。最近、毎日つゆりに謝ってばかりな気がする。明日、何も予定がないということだったので、一日付き合うことになった。それが決まるとつゆりの表情が少し柔らかくなった気がする。次の日に備えて俺は早く寝た。


木曜日、俺とつゆりは一緒に出かけることになった。午前中は、美術館や博物館といった比較的静かな場所だったので、俺も落ち着いて楽しむことができた。午後からはつゆりが予約をしていたVRの体験をしたり映画を観たりした。その後。服やコスメの買い物などつゆりが行きたいと思っていたお店を回ってたくさん買ったため、俺は荷物持ちになっていた。普段はこんなに物を買わないと言っていたが、今日は特別だそうだ。久しぶりにつゆりの笑顔を見られたので、俺も安心した。最近つゆりを怒らせてばかりいたので、改めて謝ることにした。

「つゆり、ごめんな。最近いろいろと迷惑かけて」

「迷惑? なんのこと?」

「いや、帰りが遅いのに連絡を忘れていたこととか…」

「そんなの別に迷惑だなんて思ってないし」

「いや、でも、つゆりの予定もあるだろ?」

「そんなのお兄ちゃんがいてもいなくても変わらないよ! ただ…」

ここで少し間があったが、俺はつゆりが言うのを待った。

「…ただ、連絡がないと少し心配になるだけ」

「そうか。ごめん」

「まぁ、お兄ちゃんのことだから大丈夫だとは思うけど、遅くなる時ぐらい連絡して欲しいなぁ!」

「あぁ! 約束する!」

家に帰り着いた後、俺はつゆりにプレゼントを渡した。買い物をしていた時に、つゆりが欲しそうにしていたのに、結局買わなかったイヤリングをこっそり買っていたのだ。今日の感謝の気持ちと、今までの反省の気持ちを込めて渡した。つゆりの表情を見たところ、喜んでいるようだったので、安心した。やっぱりプレゼントは本人が欲しがっているものに限ると改めて思った。


金曜日は、特に予定もなかったので、ルーティーンを終えた後、家でゆっくり本を読んで過ごしていた。久しぶりに静かな空間で心地良い時間を過ごしていると、あっという間に午後三時になっていた。水分を補給しようと思って、キッチンに行くと、浴衣を着たつゆりがリビングのソファーに座っていた。

「あれ? 今日夏祭りなのか?」

「お兄ちゃん知らないの!? 今日だよ! 花火大会!」

そう言われて、今日が花火大会だということを知ったが、俺は人混みが嫌だから関係ないと思っていた。

「へぇー、まぁ気を付けて行って来るんだぞ」

「ん? お兄ちゃんも行くんだけど!」

「え!? 俺も!?」

「当然でしょ! 私を一人で行かせる気なの?」

「いや、つゆりは友達と行くんじゃ…?」

「ふーん、お兄ちゃんは私と行きたくないんだぁ」つゆりやけに冷たい視線で俺を見てきた。

「いや、そういうわけじゃない。ただ、人混みが苦手なだけで…」

「ふーん、そうなんだぁ」

そう言ってつゆりは少し寂しそうな顔になった。その時、つゆりが付けているイヤリングが揺れたのが目に入った。俺が昨日プレゼントしたイヤリングを早速付けてくれていたのだった。

「わかった! 俺も行く!」

俺はつゆりの気持ちを察して、一緒に花火を見に行くことにした。

花火は午後8時から打ち上げだったので、ギリギリに行こうと提案したが、即却下され6時には家を出ることになった。

河川敷に到着すると、まだ時間はあるというのに、もうすでに多くの人がいて、出店もたくさん並んでいた。俺が多くの人に当てられて酔っている時、つゆりはスマホを取り出し、誰かと連絡を取っていた。誰かと待ち合わせをしていたらしい。それなら俺が来なくてもよかったんじゃ…、と思っていると、待ち合わせ相手と合流した。

その相手とは如月さん、ベルさん、霜月、神無月だった。如月さんとベルさんも浴衣を着ており、普段とはまた違った印象だったので、一瞬見とれてしまった。如月さんとベルさんに似合っているかを聞かれたので、素直に似合っていると答えると嬉しそうだった。

それから、6人で出店を見て回ったり、射的をしたり、輪投げをしたりした。みんなでたこ焼きや焼きそばといった粉物を分けて食べたり、砂糖の塊である綿菓子を食べたりしているとあっという間に午後8時になり、花火が打ち上り始めた。

今までは人が多いのが嫌で、特に見たいとも思わなかったが、久しぶりに肉眼で見た花火は綺麗だと感じた。花火を見に来る人たちの気持ちが少しわかった気がする。花火を見ている時、この儚い芸術に感動すると共に少し寂しさも感じた。

俺は相談部のみんなを見て、この関係がいつまで続くのだろうかと考えていた。高校時代に仲が良くても、大学進学や社会に出たら、疎遠になる人は多いと聞く。実際、俺も小学校の頃からの知り合いはいない。中学校の頃から今でも付き合っているのは、霜月だけだ。そんなもんだ。人は成長と共に付き合っていく人も変わってくる。たとえ今が楽しくてもそれがずっと続くなんてことはない。それでも今が楽しいのなら、全力で楽しむ方がいい。なぜなら俺たちは今生きているのだから。変えられない過去を嘆くのではなく、どうなるかわからない未来に憂うのでもなく、今の時間を大切に生きたいと思う。だから俺は自分が信じていること、楽しいと思うことに全力を注ぐことにした。


 こうして俺にとっての多忙な一週間が終わったのである。振り返ると楽しいと思える時間が多かったように感じた。たまには、誰かと外出するのも悪くないなと思いながらも、心身ともに疲れが溜まっていたので、翌週はつゆりとの夕食以外、誰とも会わずに一人で過ごして回復に努めた。



読んでいただき、ありがとうございます。

次回もお楽しみに。

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