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眠らずの獅子と目覚めのハーブ  作者: 煎茶
第二章
178/363

177.Before After

「あ、バローザさん、お帰りなさい。」

「ああ。今帰った。体調が悪いのか?やはり無理をしたのだろう。」

そのまま抱いて帰ろうとするので、待ったを掛ける。


「バローザさん。無事帰って来る事が出来たので気が抜けただけです。体調は大丈夫。ギルドで休ませても貰えましたし。折角なので、最後まで頑張らせて下さい。」

「だが…いや。良いだろう。丁度良い。」

何が丁度良いのか判らないまま、バローザさんについて裏口から地下に降り、階段の扉の前に立つ。


「ここからは、一人で行きます。バローザさんはその、先に行っていてくれませんか?」

私のみっともない姿を見せるのは避けたい。

以前、私が階段を降りる姿を見たミルトレンさんは心配しすぎて涙を流していた。


私としては、怪我をしないように安全第一で見た目は気にしていなかったが、危なくて見ていられないと言われてしまった。

きっとバローザさんもミルトレンさん以上に心配するだろう。


「いや。仕上がりを確認したい。扉を開けろ。」

「仕上がり?でも…」

「さっさとしろ。」

「うぅ……はい。」


仕上がりって、私の体力検査でもするのかしら?

バローザさんの言葉に恨みがましく視線を送るが<ほら>とばかりに顎をクイッと杓っている。


はぁ…。

仕方なく扉を開け、少し離れたスイッチの位置を確認する。一歩踏み出す前に、グイッと腕を引かれた。


「バローザさん?」

邪魔をしてくれるなと言おうとするも、バローザさんの手が私の腕を掴み、そっと壁際に誘導する。


…あれ?この形!?


バローザさんを振り返ると、静かに頷いている。

信じられない気持ちでスイッチを押し上げると…

パッと柔らかな光が灯り、階段の上までを照らし出した。


「えっ!?」

今まで苦労して暗闇の中を手探りで見つけていたon=offスイッチがバローザさんの部屋の様に扉脇に設置されていた。

しかも……


「この階段…」


「ああ。登って具合を確かめろ。手直しするところがあったら、っっ…!?」

「ありがとう!ありがとうございます。バローザさん!!」

余りの感動に、気付けばバローザさんに飛びついていた。


明るい光の中に現われた螺旋階段の壁際に、一段の間に2つの小さな段が追加され、壁には手摺りまで付いている。

「ああ。ミルトレンと、工房のじじい共も手を加えている。」

バローザさんだけで無く、他の皆さんも手伝ってくれたと聞いて、なおさら嬉しさがこみ上げる。


「具合の悪いところがあれば修正する。登ってみろ。」

「はい!!」

私は恐る恐る一歩を踏み出した。

「はぁ。凄い。登り、易く、なりました。ミルトレンさん達にも、お礼を言わない、と。はぁ、はぁっ、工房の…」

「息が上がっているでは無いか。無駄口を叩かず黙って登れ。怪我をするぞ。」

心配性のバローザさんは、ぴったりと後ろにつき、私が落っこちても身体で受け止めてくれる気満々のようだ。


私は、うっかり足を滑らせないように、しっかりと手摺りを掴みながら階段を上り続けた。

途中、休憩を挟みながら、それでも以前よりずっと早く登り切ることが出来た。

4階扉横のスイッチを切って廊下に出る。

汗を拭いながら振り返ると、静かな微笑みを浮かべたバローザさんが頭を撫でてくれた。


「問題は無さそうだな。」

「はい!問題どころか、とても快適です。感動です!本当に、何とお礼を言ったら良いのか。」

「気にするな。お前の頑張り…いや、振る舞ってくれる料理に対する対価だ。ありがたく受け取れ。」


きっと私を気遣っての言葉だろう。私はありがたくその気持ちを受け取ることにした。

「ありがとうございます…バローザさん。」

「よく頑張った、疲れただろう。部屋に入れ。」

このまま屋根部屋にも登っていきたいと思ったのだが、また今度。

此処で無理して怪我をしては元も子もない。


私はバローザさんに支えられながらリビングのソファーに腰を下ろした。

何故か隣に座り込み、私の頭を撫でるバローザさんを見上げながら、私は背もたれにもたれ掛かった。

「お前も、成長したな…」

はい、頑張りました。一人で、階段も上れるようになりましたし…

「喜ぶべきなんだろうな…」


え?

だって、頭を撫でて、頑張ったって言ってくれた…

そうで…しょう?

もう、大丈夫ですよ。

もう、面倒な私の世話をしなくても…

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