最後のスキル枠
グォオオオオオ
目の前に青白く光る巨大なドラゴンが立ちはだかる。
この街道に全くふさわしく無いデザインのモンスターであることは、見た瞬間に理解できた。
「おいおい、このゲームバグりすぎじゃねーか!」
キースは青ざめた顔で悲観していると、ドラゴンの上に赤いマークが灯る。
交戦状態になってしまったが、どう考えても勝てる相手ではない。
「さっさとダンジョンから出よう!」
そう俺は言うと、キースとダッシュで街道をダッシュで逆走する。
街道の入り口まで戻りエリアから出ようとしたが、前のマップへの移動先が消失したかの如く、見えない壁にぶち当たった。
「痛てぇ!」
見えない壁に激突した俺は、後ろを振り返ると、滑空してきたドラゴンをギリギリでかわした。
「何その凄いドラゴン!?」
そう言うと、近くに居た女性パーティのヒューマノイドがこちらに声をかけてきた。
「宝箱を開けたら急にポップしたんだ!逃げたいんだけど、前のエリアに戻れねぇ!」
「ひまちゃん! 近づくのは危険だよ!」
そう天使の少女が言うと、ドラゴンのターゲットがヒューマノイドの女の子へと向く。
「あ……私の方に来ないでー!」
そう言うと、ヒューマノイドの女の子は持っている剣をぶんぶんと振るう。
青白いドラゴンに攻撃はヒットしたが、全くHPが減っている様子はない。
「トレインはマナー違反だって!とっとと別の方へ逃げましょ!」
天使の少女はそう言った。
「別の方って言っても、一本道だから逃げ場はねーよ!」
八方塞がりの俺たちを余所に、ドラゴンは体当たりを繰り出してくる。
地響きと共に迫りくるドラゴンのタックル攻撃を、キースとヒューマノイドの女の子が受けてしまい、大きな川に吹き飛ばされる。
キースとヒューマノイドの女の子のHPバーが一気に無くなったが、数ミリだけ残っていた。恐らく誰かのパッシブスキルが発動したのだろう。
「キース! 早くヒール、ヒール!」
俺はそう指示をしたが、すぐにドラゴンが川の方に向きを変え、大きく息を吸い込み、青白い炎を吐き出す。
二人が炎の中で燃えた。それと同時に青白い光と共に二人は消えてしまった。
そして、画面がプツッと消えた。
◇◇
また、奇妙なオルゴールが鳴る。
「このイベントは何なんだよ!」
苛立って俺は叫んでいた。
光り輝くカオスが語りかけてくる。
『……あなたの左手で……ドラゴンを……私を元の場所に連れて行って……』
またガラスが割れる演出が起きて、元の場所に戻される。
「こんな状況でボッ立ちしてる暇無いでしょ!」
天使の少女はドラゴンを引きつけてくれていたようだ。
俺はふらふらとしながら、ドラゴンに近づく。スキルカードはさっきまでの戦闘で3枚消費していた筈なのに、何故か1枚だけスキルカードがセットされていた。
それに気づいたドラゴンは、俺に向かってタックルを繰り出してきた。
ズゴゴゴゴオと大きな地響きが響き渡る中、俺はスキルカードを投げた。
──「リバースラーニング!」
急速にMPが消費される。
迫りくるドラゴンに俺は左手を思いっきりぶつけた。
その瞬間、青白いドラゴンは鳴き声も上げず、モデリングがバグった様に歪み、まるで居なかったかの様に姿を消した。
【マーシュ】
種族 ヒューマノイド
LV 2
HP 200
MP 50
ATK 11
MATK 17
DEF 21
MDEF 21
AGI 5
LUK 7
所有スキル
───
パッシブ【マナ自動回復++】
パッシブ【自動ガード性能++】
パッシブ【知力増加】
アクティブ【リバースラーニング】