初めての狩り
PM7:30 HUDの右上にある通知欄に運営からのお知らせメッセージが届いた。
──不具合とイベント中止のお知らせ──
この度はラストピアを遊んで頂きありがとうございます。
現在、一部ユーザーがログアウト出来ない状況になっております。
現在状況の調査を行っていますので、今しばらくお待ち下さい。
また、この状況を鑑みて、現在新規ログインを受け付けておりません。
発生日時 【2035年 7月13日 PM6:00~】
対象ユーザー数【この時間にログインしていた全ユーザー】
原因【調査中】
また、本日行う予定だったイベントは、中止にさせていただきます。
現在ログイン中のユーザーには特典キーをインベントリに追加してあります。また、今後ログイン出来るようになりましたらプレゼントを送付いたします。
ご理解賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。
◇◇
「これからどうするかー」
アルツベリオル城商業地区を二人で歩いている。
1時間前は阿鼻叫喚していたユーザー達は、既にこの状況に順応していた。
運営が対応してくれるのを待つしか無い状況だ。それに、今日は発売日ということもあってどの道夜ふかしする気では居た。
「近場のダンジョンにでも行くか?」
アルツベリオル城から離れると、ミール草原が広がっている。αテストの時はミール草原の東側に”ライオネル街道”というダンジョンがあった。
このゲームラストピアはMMO/MOマップの2つがあり、今いるアルツベリオル城や、ミール草原等のいわゆる大型マップはMMOマップとなっており、各個人が個別で作れるワールドや、インスタンスダンジョン等は、MOマップとなっている。
大型マップに点在するダンジョンは全て、MMOマップになっている。
「俺はマーシュと違ってαテスト組じゃないから、慣れてないけど大丈夫か?」
「大丈夫、道中の雑魚を倒しながら慣れていけば。俺もレベル上げながら行きたいし」
そう言って俺たちは、ミール草原に向かった。
◇◇
【ミール草原 狩場】
ミール草原はスライム類や、マジックラビットなどの、モンスターの中でも比較的可愛くて弱い、初心者向けのエリアだ。その中でも狩場マップは、敵が大量湧きする格好のレベル上げマップになっているのだが、それを知っているプレイヤーが大勢占拠していた。
「駄目だ、狩場が全部埋まってる」
MMORPGにおける狩場の暗黙のマナー。狩場は早いもの勝ちで埋まっていく。このマナーを守れないやつは横狩り認定される。最悪の場合PKしてくるやつもいる。
リリース初日ということもあり、広大な狩場エリアは全部埋まっていた。
「どうする?」
実際、このレベルの敵で死ぬことはまず無いし、序盤に貯めておきたいポーションの素材をドロップすることもあり、狩りたい所ではあるが…
「今日は開かないだろうなぁ」
通常、この手の狩場は人気な為、離席する時は狩場を開放するのもマナーの一つだが、今日に限っては違う。誰もログアウト出来ないのだから。
「ライオネル街道の入口付近で狩ろうか。そこならLv1でも倒せると思うし」
オッケーとキースは頷き、俺たちは草原を東の方へ走り抜けた。
「こっちこっち! ここに裏道があるんだ!」
俺はキースを青白く小さな魔法陣まで誘導する。
ミール草原の東側にライオネル街道への入り口があるのだが、その前には今のレベルでは倒す事が出来ない、ゴーレムが出てくる。逃げながらダンジョンマップまで移動することも可能だが、裏道を使ったほうが圧倒的に早い。
◇◇
【ライオネル街道 入口】
ライオネル街道は、大きな川に隣接する街道が長く続くマップだ。
街道の入口にはリスの様な見た目のクイールと、ゴブリンしか沸かない。
αテストの時に唯一実装されていたダンジョンだが、ここに辿り着く頃には、入り口付近のモンスターは雑魚でしか無いため、ここで狩りをするプレイヤーは殆ど居なかった。
(流石に、初っ端からここを狩場とするプレイヤーは居ないだろう)
そう思いながら付近を見渡すと、ヒューマノイドと、白い羽根を生やした天使の様なキャラクターの2人パーティが居た。どちらも身長が低めの女性キャラクターだ。
俺はそのパーティに声をかける。
「すいません。隣で狩りをしてもいいですか?」
そう問いかけると、か弱い声で、いいですよと返事が返ってきた。
「うっしゃー! 早速モンスターと戦おうぜ!」
キースはようやくモンスターと戦えるとうずうずしていたようだ。
キースは近くに居たクイールに初期装備の片手剣で攻撃した。
ザシュっと言う効果音と共に、クイールに攻撃が当たった。
キューッ!とクイールが鳴くと、近くに居た取り巻きのクイール達がキースの方に向かってきた。
交戦状態になると、敵の上に赤い丸のアイコンが表示される。
交戦状態のクイールが一斉にキースに向けて攻撃をしてきた。
俺の体が勝手に移動し、クイール達の攻撃を受ける。
「危ないっ!」
俺は咄嗟に盾を構えながら、スキルカードを投げて、呪文を唱えた。
「ファイア!」
瞬間的に空間から小さな炎が発生し、取り巻きのクイール達が燃え上がる。
「とりあえず燃えてる敵から殴れ!」
キースに指示を出して、俺も初期装備の片手剣で敵を切る。
きゅぅい~と可愛い声断末魔を上げて毛皮を残し、クイール達は消滅した。
「ここの敵は、叩くと周辺の取り巻きが出てくるんだ。だから、状態異常にしてから戦わないと、エルフだとHPすぐに無くなるぞ」
「序盤の敵だから、適当に殴れば大丈夫かと思ったよ」
どうやら、自動ガード性能++は、パーティに対する攻撃も防御出来るタンク向けスキルのようだ。
「そういや、スキルカードってどうやって使うんだ?」
「お前、チュートリアルスキップしたのか?」
ゲームに慣れているとは言え、やったこと無い新作ゲームでチュートリアルをスキップする奴の気がしれてる。
「スキルカードは、魔法やスキルを使うことが出来るんだけど、基本的に使い捨てなんだ」
下級スキルに関しては、スキルカードを使用して使うことが出来るが、魔法や武器スキルに関しては、レベルアップで取得しなければ手に入らない。
レベルアップで取ったスキルに関しては、カードとして手に入るが、使ってもなくなることは無い。
もらったスキルカードを確認した?と聞いたら、見ていなかったようなので、スロットにセットさせた。
「俺は今使った炎の魔法が後2回使えるけど、キースは何を貰った?」
「ヒールのカードが3枚だった。とりあえずスロットにセットしておく」
そうして、数体のクイールを倒したらLVが上がった。キラーンという効果音と共にLEVELUPの文字が表示された。
「お、レベルが上った。スキル割り振りする」
俺はステータス画面からスキルのタブに移動する。
各装備、魔法毎のスキルツリーや、その他の生産系のスキルツリーも存在している。
キャラクター毎におすすめのスキルツリーが表示されている。無限に使えるスキルカードを得られるスキルを取るための前提スキル【知力増加】のスキルを獲得した。
「どうする? 毛皮集まったし適当に売りに帰るか?」
下級の魔法スキルカードは、NPCから購入可能で、1枚5ルピー程だ。毛皮1枚で15ルピーで売れるので、30枚位は買えそうだ。
「戻る前にさ、奥の宝箱開けようぜ」
そうキースは言うと、街道奥の宝箱の方に移動した。
こんなところに宝箱なんてあったか?と思ったが、まぁ開けて損は無いだろう。
──それが悲劇の始まりだった。
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