出会い
こぼれる光に向かい走りこむ。
扉を開くのに間に合わず、半身を扉にぶつけながら理科室に飛び込んだ。
「うーっす」
僕の声じゃない野太い声が狭い教室に響く。普段ならこんなにも響かないのに。僕と知らない誰かの二人しかこの空間にいないからだろうか。
僕は、なんとなく不思議なこの空間に戸惑った。
「……客??」
声の主の言葉で僕はようやく我に帰る。
焦点を戻し、声の主を視認する。
Yシャツがパンパンになるほどに鍛練された体に、これまたはち切れんばかりの腕、岩よりも硬そうな大きな拳、眠たげに眼をこすっている手の奥にある鋭く力強い瞳、その瞳から額にまたがった大きな傷、一目見て強いとわかるその人。
僕の意識はその人に釘付けになった。
「おい!」
僕が体はびくりと反応する。
「ぼーっとすんなよ。客なのか、客じゃねえのか、どっちだい??」
「じゃあやっぱり…ここがHERO屋なんですか??」
「そうだよ。で、どっち??」
僕のおどおどした態度は、彼のぞんざいな態度に切り捨てられた。
「客です」
僕は語尾強く言った。
「客ね」
「はい」
「……依頼、当ててやろうか??」彼は少し黙って言った。
「え??」
「……いじめっ子退治ってとこかな」彼は悩んだ様子もなく、簡潔に言い放つ。そしてその答は見事に的を射ていた。
「……なんで…??」
「顔見りゃわかるよ」彼は僕の顔を一瞥してから、笑いを含みながら答えた。
「いじめられてる奴はそんな顔するんだよ。いつもは気ぃ弱いくせに、微かな希望には異常に反応する。典型だな」彼はそう付け加えた。
……まあ事実は事実だが、それを小馬鹿にしたように言うのは不謹慎、というか常識に欠けている。
「今、不謹慎とか、こいつ常識ないなーって思ったろ??」彼はにやにやしながら言った。
「え」しまった。顔に出たか??
「不謹慎でいい。非常識でいい。だって俺の仕事の相手は不謹慎で非常識なモンスターだ。こちらもそうじゃなきゃいけない」彼は言い終わった後にニっと笑った。
なんなんだ。滅茶苦茶な理論ではあるがそれに反論もできなかった。言いくるめられてしまった。HERO屋のこの男に。