<超短編>彼女と海とカメラ
彼女は、風になびく短い髪を少し気にしながら、カメラをこちらに向けていた。
水平線は はるか遠くに見えていた。間隔の短い大きな波が肌色の砂浜をなぞるように滑っては帰っていく。
人っ子一人いない隠れ家的なビーチで、俺ははしゃぐ彼女を見ていた。彼女の笑顔はとてもまぶしかった。本当に太陽よりも輝いている。心の底からそう思った。
彼女は冷たささえ感じる潮水にくるぶしまでつかるところまで進む。再びカメラをこちらに向けた。本当なら彼女のほうが絵になるのに。でも、彼女は一週間前に買ったそのデジタルカメラがお気に入りらしく、絶対に俺に貸そうとはしない。
ビーチの裏にある小高い丘から突然、風が吹いてきた。慌ててスカートを抑える彼女。
「期待してたでしょ、エッチ。」
ニヤニヤしながら茶化してくる。
「そんなわけねーだろ。」
少し頬が熱くなるのを感じて、一掻きして海水をかける。
「キャ、もー。」
そうしていると、また風が来た。風で彼女の麦藁帽は宙に舞った。
あとがき
初めまして。ASHIKALと申します。初めて投稿しますので、だいぶ前に書いたとても短いものを。読む時間としては一分も満たないと思いますが笑 かとうれいさんの「彼女と海なう につかってもいいよ」に感銘を受けて書きました。ぜひ素敵なイラストなので見てみてください。