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ハイポーションを売り出してみて

 あれから1週間、冒険者ギルドではハイポーションが順調に売れてるみたいだ。駆け出しであったり何らかの理由で回復スキルを持ったメンバーがパーティーにいない場合、回復アイテムは当然そのパーティーの生命線となる。HPポーションの販売量を増やしたりハイポーションを売り始めた事にもよって、このベントの冒険者ギルドの冒険者達の生還率が徐々に増えて行っているとはジャンさんの話だ。

「皆が皆回復スキルを使えるわけではないからな。それに傷が早く治ればより早く安全に次の依頼に向かう事も出来るからな。ギルドとしても助かってるのさ」

 僕達も収入が増えて助かってます。

「他のポーションも売るつもりなら言ってくれ」

「あー、でも他の薬草は育て方が判らないので……」

 アリスも僕と同じなようで横で頷いている。本当はスキルを使えば育てられるのだけれど、何も知らない状態だとどうしてもMPが足りなくなるのは目に見えているしなぁ。

「何だ、そんなの図鑑とか見ればいいだろう?」

「……家に有ったっけ?」

「おばあちゃんからは口伝えだけだったし、そう言った類の本も持って行ってしまったので……」

「……はぁ~、ちょっと待ってろ」

 溜息を吐いたジャンさんはそう言って奥の部屋に引っ込むと、ものの数分で2冊の本を持って戻ってきた。

「ほらよ、これやるから」

 ジャンさんが持ってきたのは薬草図鑑と薬品の調合辞典だ。

「これ読んでまた新しいポーションを作ってみろよ」

「そんな、2冊もいただくなんて。ちゃんと買い取りますから」

「いいんだよ。そもそもそいつらは両方とも初級の本だから安いしな。ぶっちゃけて言えば新しく何かを作るなら初級の本から作ってほしいぐらいだからな」

「どういうことですか?」

 アリスが尋ねると彼は困ったような、でも仕方ないとも言わんばかりに答えてくれる。

「うちのギルドでポーションを買う奴らは。上級のポーションは買えねぇからな」

 あぁ、成程ね。上級ポーションを買うにはお金がかかる。支払えるのはそれなりに経験を積んだ手練れの冒険者だろうし、そんな冒険者なら回復スキルを持った人とパーティーを組んでいる可能性が高い。まれにソロで活動してる人もいるのかもしれないけど、ここではほとんど見ないのだろう。ここで望まれているのは初心者が手を出せる安価なものなのだ。まぁその中でポーションの効果を求めていくのは当然だけどね。

「それにお前さん、コータローって言ったか?お前がアリスの嬢ちゃんと一緒に来るようになって色々とうまく回るようになったからな。お前さんの出自はこの際気にしない。それどころか俺は期待してるんだぜ?たった1ヶ月ちょいでうちのギルドの冒険者の生還率をこんだけ上げた奴だからな」

「あ、ありがとうございます」

 アリスじゃないけど僕も褒められることに慣れてないみたいだ。顔が熱くなってきちゃうよ……。



 そういえば街の子供たちが遊んでいる所にたまたま出くわしたんだけど、そこで僕はとんでもない物を見つけてしまったんだ。

「パチンコ?」

「スリングショットの事ですか?」

 そう、子供たちが遊んでいたものは正確にはスリングショット、いわゆるパチンコ銃と呼ばれるものだった。それを木の板で作った的に向かって撃ち合っている。

「あれって、子供たち皆やってるの?」

「皆かどうかはわからないですけどやってる子は多いんじゃないでしょうか」

 アリス曰く野犬に襲われた時や小動物を狩るときに使えるし、小石を使えば弾には困らないから子供にはうってつけらしい。

「雑貨屋に行けば多分売ってますよ」

「ちょっと買いに行こうかなぁ?」

 というわけで買ってみましたスリングショット。こっちの世界ではどうかと思ったけど、意外と作りはしっかりしてるね。

 家に戻り近くの樹に印をつけて、それを狙って小石を撃ってみる。スリングショットお撃つのは久しぶりだから当たればいんだけど。とそんな心配をしつつも何回か撃ってみると、当てるだけなら20mくらい距離を伸ばせた。けれど武器として使うなら10mくらいが限界かな。威力が格段に落ちちゃうし。

「コータローさん凄いですよ!初めてなのにこんなに当てるなんて!」

 アリスは喜んでくれてるけど、僕はそんなに天才じゃないからね。

「実は初めてじゃなくてさ。元の世界で教えてくれた人がいてね。鈍ってなくて良かったよ」

 近所の兄ちゃんであり、学校の先輩でもあり、いろんな知識を教えてくれた人。まぁ元の世界で使えたかどうかは怪しい物ばかりだったけど、まさか異世界に転移して役立つとは思いもしなかったよ。

 スリングショットだけじゃなく、亜人のアリスやシールド特化のポーラさんに関しても抵抗が一切なかったのは多分、いや絶対に彼のおかげだろう。

「多分今のこの現状の事を話したら羨ましがられるんだろうなぁ」

「……?」

 アリスの頭を撫でつつ、≪アリスみたいな娘≫が大好きだったその人を思い出しつつ、僕は呟く。いつか時間が出来た時にでも彼について話すのも面白そうだ。 

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