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魔獣の死体を売ってみて

毎度ありがとうございます。

「そっか、目を狙えばよかったのか~。確かにみんな弱点だよねぇ」

 あれから話し合った結果、とりあえずあの猪はベントの冒険者ギルドに売りに行くことにした。とは言っても売るのは冒険者であるカイルさん達だけどね。今は僕と冒険者さん達で巨大猪を持ち運んでいる最中だ。その中でこの猪との戦い方の話になっていたんだ。

「そうは言ってもリリー、お前の弓で狙えたか?」

「……多分無理。そもそもブルーノの剣が折られた段階で心も折れてたもん。そんな精神状態じゃ当たんないよ」

「獣の皮に負けるとはな。俺も新しい剣を買わないとならなくなったな」

「あぁ、うちの最大火力が……」

 どうやら彼らも駆け出しの冒険者らしく、今回の戦闘で装備がだいぶやられてしまっているらしい。おまけに依頼者も逃げてしまってるだけに、前金だけしか得られない可能性が極めて高いらしい。しかも装備も買い替えるとなると確実にマイナスになるだろうとの事だ。

「あの、この猪を売ったお金でなら装備が買えるんじゃないですか?」

 同じ獣人に会えて嬉しいやら冒険者と仲良くなれて楽しいやらでついてきたアリスがそう尋ねる。確かにこの巨大猪がいくらで売れるかは気になるだろう。

「どうだろうなぁ?俺らの足元を見られる可能性もあるし、それに安く言われたって俺らじゃ目利きも出来ないから言い値で売るしかないしなぁ……」

「あぁ、ジャンさんならどうだろ?そんな事はしなさそうだけど」

 なんだかんだで仕事には真摯に向き合ってる気がするけど。

「え?誰か知り合いがいるのか?」

「はい、ベントのギルドマスターには良くしてもらってるんです」

「おおぅ、こんなところに強力なコネが」

「本当に『幸運のカイル』になりつつあるな……」

 幸運の?この人にも二つ名があるのかな?


 さて街についたところで視線がヤバい。アリスは何時ものフードマント装備だから5人中3人が獣人っていう事なんかどうでもよくなるくらい猪のインパクトがでかい。こりゃとっとと冒険者ギルドに運び込んだ方がいいな。

 ギルドの前に差し掛かると丁度ナットさんが出てきたところだった。ナットさ~ん。

「お、コウタロウじゃん今日はってええぇ~~っっっ!!!???」

 まぁこんなデカ物持ってりゃそりゃ驚くよね。

「ナットさん、今日ジャンさん中にいました?」

「ちょ、ちょっと待ってろ!今呼んでくるから!」

 流石、こちらの言いたい事を察してくれてるね。

「うっわマジかよ。とりあえず裏手に回りな。表からじゃ入らねえよ」

 他の人よりかは控えめだけど、流石のギルドマスターでもこれには驚いたみたいだ。ジャンさんの案内で僕たちは裏手に回り込んで、大きめの入り口から建物に入らせてもらった。

「まさか資材の搬入口から入れる事になるとはな……。これを売りに来たのは」

「この人たちです。僕は冒険者じゃないので」

「ん?冒険者だろうがなかろうが関係なく買い取るぞ?」

 あれ?でもカイルさん達は値段が変わるって。

「そうか、お前たち獣人か。さては冒険者になる前に何かを売りに行って、冒険者じゃないって理由で安く買い取られたな。しかもうちのギルドのモンじゃないのにこんなでかい物を売りに来たって事は旅の最中か、何かの護衛でこちらに向かってたかだな。コウタロウやアリスもいるってことは魔の森方面……そういや今日サルタジア共和国のダラスから来た商人がいたな。急いでたみたいで既にここを出て行ったが、少し怯えてる様にも見えた。という事はお前たちはその護衛で、あの商人はこの猪に襲われてたから逃げてたんだな」

「何この人怖いんだけど⁉」

 リリーさんが叫ぶのも無理はない。というかこれだけの状況でここまで物事を見極められたら、流石に全員がドン引きするって。

「はっはっはっ、これくらい読めなきゃギルドマスターなんてやってられねぇよ」

 ギルドマスターヤバすぎない?

「さて、本題に入るがこれを買い取るにはちょいと時間がかかる」

「そんなっ」

「あぁ、そんな悪い意味じゃないから安心してくれ猫の兄ちゃん。ただこれを査定するのに時間がかかるだけだ」

 査定?

「そう、こいつは所謂魔獣と呼ばれる存在、魔力で狂暴化、巨大化した獣だな。これだけでもわりと高額にはなるんだがこいつはちと大きい上に死体の状態がいいからな。毛皮も厚そうだしちゃんと計算してからお前らに支払いたい。無論獣人だとか冒険者だとか一切抜きの適正価格でな。だから明日の朝にまた来い」

 ついでだがうちには宿も付いてるとジャンさんは付け加える。

「どうする?」

『よろしくお願いします!!』

 3人はジャンさんに大きく頭を下げる。今回の依頼で依頼そのものは失敗かもしれないけど、それでも彼らが一番報われた瞬間なのかもしれない。

「ついでに2人もどうだ?夜も遅くなるし部屋は空いてるぜ?」

 だったら今日はお世話になろうかな。アリスも期待の目で僕を見てるし。そうだよね、何だかんだリリーさんとも仲良くなったし、女の子同士でもっと話したいよね。

「じゃあ僕らもお願いします」

 ま、僕も猪をここまで運んで疲れたし、ゆっくり休ませてもらおう。


 その日の夜。男性部屋と女性部屋に別れたので今日はカイルさん、ブルーノさんと同室だ。

「ところでコウタロウ」

「何です?ブルーノさん」

「ブルーノで構わない。それよりお前は冒険者じゃ無いと言っていたが、レベルはいくつなんだ?」

「レベルですか?1ですよ。」

「……冗談だろ?」

「本当ですよ。そもそも今回の戦闘が初戦闘だったんですから」

「はぁ~、戦士としての自信を失いそうだ」

「だ、大丈夫だってブルーノ!コウタロウがおかしいだけだ。お前が俺達のパーティーで1番の高火力なのには間違いないんだ。自信を持てって」

 おっと、今日は何か異常者扱いされ過ぎじゃない?今日僕1番の功労者だよね?

「それにコウタロウのおこぼれとは言え、俺達もレベルが9に上がったじゃないか。まだまだこれから強くなればいいだろ」

「カイルさん、僕のおこぼれってどういうことですか?」

「俺もカイルでいいよ。それでさっきの魔獣にとどめを刺したのはコウタロウだが、その直前に俺達も戦ってたからその経験値が入ってきたんだよ。つまりあの魔獣対俺達4人の戦闘って扱いになってたわけだ」

「へぇ、じゃあ少し戦って後は任せても経験値は入るわけですね」

「そういうレベル上げの方法もあるらしいけど、それだと実践経験が足りなくなりそうなんだよなぁ」

「それにそもそも俺達はレベル的にもまだ半人前だ」

 レベル的に半人前?

「そういや戦闘も初めてって言ってたもんな。冒険者ってのはモンスターと戦ったり危険事に突っ込んで行くわけだから、レベルにも指標があるんだよ。つっても明確なもんじゃなく、何となくこれくらいなら安心だな、くらいのもんだけど」

「中堅どころやベテランなんかは大体が皆レベルが20を超えている。これ位になると冒険者ギルドから高難易度の依頼を受けることもあるらしい」

「そうなんですか。王国騎士団の騎士さんなんかはどうなんでしょう?」

「俺達はこっちの国の事には詳しくはないが、国のお抱えの騎士って事ならそれ以上なのは確実だな。国を護る役目の奴がそこいらの冒険者に負けるとか洒落になんねぇしな」

 確かに。という事はポーラさんもレベルが高かったのかなぁ?

「まさかコウタロウ、お前その騎士にも知り合いがいるとかいうなよ?」

「知り合いというか、ポーションを卸す契約をしているだけですよ」

「……お前のコネ、どうなってんだよ」

 ただの成り行きだからなんとも。


 2人が寝た後、寝つきも悪かったこともあり自分のステータスを確認してみる。

アマクサ コウタロウ 人間 男 18歳 平民

転移者

レベル:6

HP:83/83

MP:10/126

攻撃力:E  守備力:F  器用:D-  敏捷:E  知力:E+  精神力:E

スキル

聖域【植物】:Lv5

加速魔法:Lv1 硬化魔法:Lv1

調合:Lv3 射撃:Lv1


 おぉ、本当にレベルが上がってる。特にMPの最大値が増えたのが一番嬉しいや。これで植物栽培が捗るぞ~。

 でも1から6って結構上がり幅大きくない?強いモンスターは経験値が豊富なのは相場だけど、あの猪そんなにヤバいやつだったのかな? 

ご拝読ありがとうございます。

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