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転生したけどTSでオークで辛し  作者: 四季名 一
第一章 オークは辛いよ
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第4話 縋る岩壁に起伏なし

「さて、それでは行きましょうか。」


 そう言って、普通さんは入り口近くの壁にそっと張り付いてこちらを見てくる。


 …なんで俺が外に助け出すはずの側がまるで自分が案内するとばかりの態度で主導してるんだよ。

 普通さんは本当にマイペースだな…。本当に呆れて文句すら言う気力も起きない。

 ん?っていうか巨乳さんと絶壁さんはどうするんだ?二人ともまだ気絶したままだぞ?起こさないのか?まさかこのまま置いて行く気なのか?


「ちょっと待ってくれよ。他に先にやることあるんじゃないか?」


 俺がそう聞きながら二人を指すと普通さんは不思議そうな顔でこちらを見てくる。

 何で頭上に?浮かべてるんだよ。どう見ても何が言いたいのかわかるだろ?


 普通さんはしばしこちらを見ていたがすぐに納得したような顔をして二入に近づいていく。

 ふう。どうやら二人を置いて自分だけ逃げるつもりだったわけじゃなさそうだ。まあ、どうも二人のことを忘れていたようなのはいただけないが、さすがに二人を放置するほど薄情なやつではなかったようだ。

 何やら普通さんは巨乳さんの服をごそごそとまさぐっている。いわゆる気付け薬とかいうやつでも探しているのだろうか?

 おっと、いけない。忘れていた。


「ちょっとここで待っていな。」


 俺は彼女たちの荷物を俺の荷物と一緒に持ってきていたのを思い出したのですぐそこまで取りに行った。取りに行ったついでに近くにまだオークどもがいないのを確認しておくのを忘れない。

 …よし、大丈夫だ。ここら辺にはまだいない。今はもう一度狩りに出ている時間だろう。

 いるとしたらあとは奥にいるメスどもが侍らせているオスども以外だと、他の部屋でヤっているかそれにあぶれた数匹がうろついてるくらいだろう。


 すぐに戻ってきてみるとそっと入り口わきに張り付いて外をうかがっている普通さんがいて驚かされた。まだ完全にこちらを信用したってわけじゃなさそうだ。ただ警戒心が強いだけかもしれないが。


「ほら。これがお前たちの荷物だろ?探し物があるんならこの中にあるんじゃないか?」


 俺はそういって持ってきた自分の荷物を突っ込んでおいた袋から三人の荷物袋を取り出して渡す。もちろん武器は別にしておいたので渡した中には入っていないはずだ。普通さんは油断ならないからな。今度は十分に警戒しておく。

 しばらく荷物袋のうちの一つをごそごそと探るとようやく目的のものを見つけられたようでこちらを見てうなずいた。

 これで二人を起こしてもらってここからおさらばだ。まったく、普通さんとは街で住めるようにしてもらったらとっとと別れたい。今回きりで十分だ。一緒にいると非常に疲れる。


「ありました、これですね。私としたことがうっかり重要なことを忘れてました。」


 そういって普通さんは何やら紙を取り出して俺にひらひらと振って見せる。それが普通さんの探し物だったらしい。

 …どう見ても気付け薬とかそんな感じの二人を起こすためのものには見えない。どうやら二人のことは放っておくつもりらしい。

 何やらちょっと高級そうなだけのA4サイズほどの紙切れに見えるがそれが普通さんにとっての先にやるべきことに関係あったのだろうか?

 …いや、待て。これは普通の紙のように見えて魔力がこもっているように感じられる。これはもしや…?


「おや?これの存在自体は知らなそうですが何かは見当がつくようですね。これは誓約書というものです。私もよく知りませんがこれを使うことで互いに約束を確実に守らせることができるそうです。かなり高価なものですがオリヴィアが常に持っていたので助かりました。」


 やっぱりそうか!魔法があるファンタジー世界ならでは、って感じだ。

 普通さんは何やらドヤ顔で説明しながらそれを俺に突き出して見せてきた。

 ここで三人のうちの一人の名前が判明した。『オリヴィア』のところで『巨乳さん』の方に視線をやっていたのでおそらく『巨乳さん』=『オリヴィア』なのだろう。

 …って、その紙は普通さんのじゃないのかよ!他人のをさも自分のもののように見せてきて!っていうか高いのに勝手に使っていいのか?


「それでは早速これで契約しましょう。大丈夫です、使い方の方は知ってますので。」


 ちげーよ。俺が心配してるのは勝手に使っていいのかってことで、使い方知ってるか心配してるんじゃない!と文句を言いたくなるのを飲み込んで、


「ああ。頼む。」


 とだけ返事しておいた。

 文句を言ってもいいが別に俺に直接関係あるわけじゃないしな。それに俺にとってもその存在は都合がいい。


「使い方はシンプルです。この誓約書の上に互いの手を置き、それからそれぞれ甲と乙で相手に求めることを言ってそれにそれぞれが同意すれば成立します。終われば契約した内容が浮かび上がってきますので成立したことはすぐにわかります。」


 …やべぇ。そういや俺ってマルチリンガル(笑)状態だけどしゃべるだけでこの世界の言語のどれも文字なんてわからなかったぞ。これが文字書く系だったらつんでたな。自分じゃ書けないし、普通さんにすべて任せるとかどうされるかわからない危険なことする羽目になるところだった。助かった。


「ではまず私からやりますので真似してください。」


 普通さんは地面に座り込むと紙を地面に置き、俺にも手に置くように示してからそういった。素直に俺はそれに従う。


「甲は乙が街や村などの人間が住んでいる場所で暮らせるように取り計らうことを乙がこの誓約を守る限りにおいてここに誓う。」


 普通さんはそう言うと俺に真似するように目で示す。

 やり方は今ので何となくわかった。


「乙は甲を含む三人がこのオークの住処である洞窟から逃げ出せるように取り計らうことを甲がこの誓約を守る限りにおいてここに誓う。」


 普通さんの顔を伺いながらこれでいいのかと目で確認する。

 普通さんが黙ってうなずいたところを見るとこれでよさそうだ。

 …くそっ、黙って真面目な顔してれば普通にかわいいなコンチクショウ。


「甲はこの誓約に同意する。」

「乙はこの誓約に同意する。」


 俺が普通さんに続けて言うと、ほっとした顔で普通さんは紙から手を離した。


「…これで成立、ですね。」


 普通さんは手を置いていた誓約書とやらに目をやるとそういった。

 …別にアニメとかでよくあるように光ったりもせずにあっけなく終わった。なんかちょっと物足りない気もするがいつのまにか紙には文字らしき記号が並んでいる。そこは流石ファンタジーって感じがする。

 …やっぱり俺にはこの文字らしきものは読めないようだ。俺に言語チートとかはなかったらしい。神様も俺をオークなんかに転生させたなら転生ものの定番である言語チートくらいつけておいてほしかった。もし神様がいるならだが。


 普通さんは「では今度こそすぐにでも出発しましょう。」なんて言ってきて…


「って、ちょっと待ってくれ!そうじゃないだろ!」


 俺がそう言って普通さんを引きとめると、普通さんはまだ何かすることでもあるの?とでも言いたげな顔でこちらを見てきた。いや、あるよ。あるに決まってるだろ。


「いや、あの気絶したままの二人はどうするんだよ?起こして説明しなきゃいけないだろ?」


 俺が再び気絶してる二人を指さしながらそう言うと、普通さんは、ああ、そのことか!みたいな顔した。いや、それしかないだろ。


「ああ、そういえばそうでしたね。二人には起きて騒がれても面倒ですし、説明するのも面倒なのでそのまま気絶させておいた方がいいでしょう。面倒ですがそのまま運びましょう。面倒ですが。」


 そう言って普通さんは荷物袋をごそごそと漁ると縄を取り出してきて二人をそれぞれ縛り始めた。

 …って何してるんだ?

 俺は普通さんが何をしているのかわからずにぽかーんと呆けてそのまま見ていた。


「よし。できました。これいいでしょう。」


 二人をきっちり縄で縛ると強度を確認するように縛った二人から延びる縄を引っ張って一人納得したように言った。強度に問題がないことを確認すると、持った縄を肩から掛けて引っ張るようにしてこちらを見た。もしかして…?


「さあ、これで二人も連れていけます。行きましょう!」


 …マジか。まさか二人を縄で引きずって行く気か…?正気とは思えない。二人の扱い雑すぎるだろ。というか前世では昔そんな感じの拷問だか刑だかがあったと思うのだが。二人は大丈夫なのか?どう見てもアウトな気がするのだが。


「ちょっと待ってくれ。まさかそのまま二人を引きずって連れて行く気か?」

「??そうですが何か?」


 俺が念のため尋ねると、いったいどこに問題があるのかと言いたげに不思議そうな顔をして尋ねかえされた。問題ありまくりだよ、どう見たって問題だらけだよ。むしろどうして問題がないと思えるのかこちらが聞きたい。


「一つ聞いていいか?」

「何でしょう?できれば早くここから出たいのですが。」


 俺は恐る恐る尋ねてみる。


「その二人は仲間…、なんだよね?」

「もちろんそうですが?固定パーティーとして組んでいる同じ冒険者仲間ですけど?それがどうかしました?」


 …仲間、か。仲間っていったいなんだろうと思いたくなるよ。これがこっちの世界では普通なのかな…と思わず遠くを見てしまう。…いやさすがに普通さんクオリティかな。そっちだと信じよう。


「…二人はこっちで担いで運ぶよ。」


 俺はため息を吐きながらそう言った。


「あ、ではよろしくお願いしますね。さあ、こんなところからはさっさとおさらばしましょう。ぐずぐずしてると見つかってしまいますよ!」


 普通さんは俺の言葉を聞くとすぐにまぶしいほどの笑顔で俺に向かって持っていた縄を放り投げてきた。


 …パ○ラッシュ、俺はもう疲れたよ。

冬野雪よ。

真面目に待っている人なんていないだろうからこれからも気まぐれに更新し続けるわ。

ちなみに今回更新した理由は見事アクセス数0をきちんと記録したみたいだからよ。…本当は下がるか知らないけど評価が下がったら更新しようかと思っていたのだけど逆に上がって更新しそびれたわ。

そういえば一応この作品は3、4章ぐらいになる予定だわ。まあ、予定だから変わるかもしれないけど。

それから他の話を内容そのものには影響ない範囲で予告なく変更する可能性があるけど文句は…受け付けるけど聞き入れはしないわ。

それからポイント評価?とかいうのがあるらしいわね。私は詳しく知らないからやりたい人がいたら自分で調べてやっておいてちょうだい。以降も求められても説明することはないわ。


…最近は何でもいいいからとりあえず読みたいらしいから読んで欲しい人がいたらツイッターの方に@かDMで送っておいて。感想も評価もしないけど。


さて、今回の話タイは「とあるお話がもとで、悪いことをしたら落ちて戻れないといったような意味。覆水盆に返らず的な感じ。また、女性の胸が薄いことをこのように揶揄することがあるため、胸の薄い女性を『岩壁』ということがある。」って感じね。

3話で普通さんことブリジット・ウェルフォードが罵ってた時に言っていたのはこれね。

薬缶?そっちは怒りっぽいとか短気とかそんな意味よ。


…ちなみに予約投稿ってのをしたから正しくできてれば11月12日22時頃に投稿されてるはずよ。

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