第3話 前に逃げるは愚か者、後ろに逃げるは愚か者、わき目振らずに逃げるは愚か者
「え?マジです?」
普通さんは信じられなものを見たような目でこちらを見て聞いてきた。
そんなにおかしなことだろうか?
まるでオークにメスが存在することを知らないみたいな驚き方だ。ま・さ・か、そんなわけはないだろうが。
「マジです。ってか見てオークのメスってわからない?」
「いや、オークにオスメスってあったんですか?」
…ヤバい、こいつらもしかして真正のバカか?オークのこと知らずにオーク狩りに行くとか絶対バカだろう。
なんだか人選ミスのよう気がしないでもないが、バカなら俺を街に入れてくれるようにしてくれるように説得するのは簡単そうなのでまあそちらの方がいい。このまま続けるしかない。
「いや、知らなくても見ればわかるだろう?」と俺は自慢(?)の身体を見せつける。
「いえ、アレが短小なオークかと思ってました。」
…この野郎、その方がまだよかったと生まれて俺がどれほど思ってきたことか!
大体どれほど短小でも全く存在が見えないのはいるわけないだろう!
というか女の子がそんなこと言うんじゃありません!
「いやいや、オークも生物なんだから当然オスメスはある…っていうかそんなことではなく!」
いかん。冷静になれ、なるんだ俺。ここは俺に眠っているはずの交渉力を呼び覚ますのだ!俺はやればできる、できるぞジョ○ョーーッ!
…やっぱり冷静ではないかもしれない。
ここは一度深呼吸して落ち着くとしよう。
「鼻息荒くしてどうしたんですか?まさかオークのメスもやっぱりオスと「そうじゃない!」同じなんですか?」
くそっ、こいつわざと俺を怒らせようとしてるのか?
違うのならすごい才能だぞ、全く使えやしないが。
「まあ、それよりも逃がしてくれるっていうのほんとですか?そこのところ詳しく。さあ、早く。」
…なんだか普通さんはマイペースで相手してると疲れてくる。
しかしいまだに喧嘩していやがるほかの二人よりはマシだと信じたい。なんだかますますヒートアップしてきてるみたいだし。
「オーケー。そっちについてはこちらも先に話をしたいと思っていたところだ。」
ようやくちゃんと交渉にうつれそうだ。
俺は気を引き締めると、キメ顔(?)でこう言った。
「もちろんきちんとここから出られるようにしよう。ただし条件が「はあ、何よこのいつも脂肪ぶら下げて歩いてる破廉恥女!あんたの自慢の乳、私の剣でそぎ落としてそこらのオークにでもくわせてやるわよ、この○○○!」…。」
…気を取り直そう。
どうもちょっと向こうはヒートアップしすぎてきているようだ。
改めて俺はキメ顔(?)をつくると言った。
「もちろん条件がある。それは「ふんっ。僻みですの?そんな何もない荒野のごとき平原では張れるものもないくせに無駄に張って通りを歩くしかないでしょうに。よくオークに男と間違われなかったわね!自らの幸運をかみしめなさい!悔しかったらその無駄な脂肪をつける努力をあきらめるのね!あなたには無理よ、この×××!」…。」
…巨乳さんと絶壁さんがうるさくて話にならない。
よくもこの環境でここまで喧嘩できるな…。呆れすぎてもはや尊敬してしまいそうだ。
このままでは話が先に進まないだろう。
よし、ここはちょっとばっかり注意するか!
「おい!そこのふたr「うるさい!黙ってなさい!この『岩壁』に『薬缶』!」…とも…。」
普通さんは俺の言葉を遮るようにして二人に向かって鋭く叫ぶと、素早く何かを投げて二人に命中させた。倒れて静かになったところを見るとどうやら二人は気絶したようだ。
…おい、誰だよ油断しない(キリッ)なんて言ってたのは。全然見えなかったし、あの二人より俺の方が普通さんには近いんだぞ。十分普通さんのキルレンジじゃねーか。
どこに隠し持っていたのかわからないが、普通さんが投げたのはどうも石のようだ。
あの二人は仲間じゃないのか?どう見ても下手したら死んでるところだったはずだ。幸いにも二人とも気絶しているだけのようだが。
…あれ?っていうかもしかして今までのって実は普通さんの罠だったり?
実はこちらを油断させておいて石投げて気絶させたりする気だったんじゃ…?
うむむ。侮れない。
っていうか、もしそうだったらがっつり罠にはまってたってことなんじゃ…。
いや、でもオークにオスメスがあるって知らなかったのは本当っぽかったし…。
「それで?条件とは何でしょうか?あそこの二人がご入り用なら差し上げますが。」
普通さんは何事もなかったかのようにこちらに聞いてきた。
…やっぱりこれは平常運転なのか?
相変わらずあっさり二人を売ろうとする普通さんには呆れて尊敬するね。
悩んでもしかたない。悩むより進めだ。
「いや、別に二人はいらない。条件をのんでくれたら三人ともここから出て街なりどことなりに行けるようにすると約束する。」
「よし、条件をのみましょう。さあ、ここから早く出ましょう。」
…やっぱりこれが平常運転のようだ。条件も聞かずにすぐに承知してきた。
「まあ、待って。とりあえず条件を聞いてくれ。どうせオークたちはまだしばらく来ないから。」
「その言葉は信じられませんが…。まあ、いいでしょう。条件をどうぞ。」
…あれ?なんだかおかしくないか?交渉の主導権が普通さんに握られてる気がするぞ?
やっぱり普通さんは策士なのか?それとも偶然か?
「条件っていうのはだな、実は私を街…いや、村とかでもいいけどそのの中で暮らせるように取り計らってもらいたいってことなんだよ。」
「ふむ…。それは王国の民として、ということですか?」
普通さんは少し考えるそぶりを見せると俺にそう聞いてきた。
「いや、街の中に入って暮らせるなら何でもいいよ。」
「そうですか。それなら私たちは冒険者ですから冒険者として暮らせるようにならできるかもしれません。」
普通さんはまた少し考えこむと、
「では私たちがあなたのことを冒険者になる気であるとギルマスに紹介する、ということでいいですか?」
と聞いてきた。
もちろんそれじゃあだめだ。
それだとのこのこついていった俺が確実に討伐されることになるだろう。
そんな罠に引っかかるほど俺の交渉術はひどくない。
「それだと冒険者になれるかどうかわからないだろう?のこのこと行って討伐されるなんてのはごめんだね。その条件なら受け入れられない。」
普通さんはどうやら侮れなさそうだがこの交渉において有利な手札がそろっているのは俺の方だ。ここは強気で行かせてもらおう。
おそらく普通さんも初めからその条件では無理だろうと思っていたのだろう。特に考えるそぶりもなく、
「それでは街や村などの人間が住んでいる場所で暮らせるように取り計らう、ということが私たちをここから連れ出してくれることの交換条件でいいですか?」
とすぐに確認するように聞いてきた。
これは最初から俺の狙っていた条件通りである。ここで断る理由は特にない。
ここからうだうだ駆け引きのようなことをして、もっといい条件を探そうとしてもあとは普通さんのペースに飲み込まれるだけだろう。希望の条件を満たしているのならさっさと交渉を切り上げるべきだ。
「ああ、それでよろしく頼む。」
最初からその条件でよかった俺はもちろんうなずいた。
ふっ、俺の交渉術はなかなかのものだったようだ。転生前は高校生だったとはいえ、生きた年数も違ければ生きていた世界も違うのだよ、ハッハッハッ。
おそらく冒険者としてでも暮らしていくことになるだろう。幸いにもこの身体はそんじょそこらの魔物どもには負けることはないくらいには丈夫だ。強さ的には申し分ない。
「では交渉成立ですね。(まあ、この条件なら最悪奴隷として暮らしてもらえばいいでしょう。)」
「ん?なにか言ったか?」
「いえ、何も。」
何か最後に普通さんが呟いた気がしたが気のせいだったようだ。
とりあえずこれでこの三人を外に連れ出せば俺の未来は安泰だ。
外に出てから三人に武器を返したとしても、あっさりオスのオークどもに負けてるようじゃ、メスのオークである俺には不意打ちでもなければ勝てるはずがない。これで俺は確実にこの貞操の危機的状況からやっと逃げ出せるのだ。
俺の未来は明るい。
俺はこの先に思いをはせて遠くを見やるように洞窟の天井に目をやって感慨にふけった。
「何やってるんですか、天井なんか眺めて。もしかしてボケたんですか、歳ですか?早く行きましょう!」
…どうやら普通さんは俺に感慨にふける間も与えてくれるつもりはないらしい。
まったく。この世界はなんて俺にやさしくないんだ!
冬野雪よ。
今回は文字数が少ないだろうけどその理由を説明しましょう。
単純に私がWordで書いてそのおおよそのページ数で同じような長さにしてるから短いのよ。
まあ、結局これも気分で長さ変えるでしょうけ/桜)今回連続投稿してること言ってな、あいたっ!痛いです!痛いです、ユキちゃん!!……
……
…
…桜が割り込んできたけど気にしないでちょうだい。いいわね?
桜がどうなったのかなんて聞いてはダメよ?
さて実は早くもあとがきの話題が尽きたというか私あきたわ。
というわけでこの小説についてだけど一応構成としては3章~5章くらいで完結予定よ。
まあ、ネタバラシすると1章は街に行って冒険者になってなんだかわちゃわちゃする感じよ。
1章終わるかそれともランキングにでも載ったりしたらもしかすると途中でいったん中断して別の書き途中の上げるかもしれないからあまり評価上げたりするのも考えものかもしれないわね。
まあ、上がっても更新続けるかもしれないから結局私の気分ね。
今回の話タイはことわざ的なもじゃなくて冒険者の注意事項的なのよ。
意味は「それぞ状況を見ずにすぐに逃げ出すこと、考えすぎたりして逃げるのが遅れること、逃げるときに周りに注意を払っていないことはダメ。」って感じね。