第1話 オークの巣に入る愚か者
(うわっ、嘘だろ!オークってやっぱりマジで人間の女性も母体にするのかよ!)
俺はオークの住処である薄暗い洞窟の中で三人のまだ少女と呼ぶべき年齢であろう女冒険者らしき人間たちをオークのオスどもが運んでくるのを見て思わず叫んだ。もちろん心の中で、だが。
察しのいい奴ならすでに気づいているかもしれないが、もちろん俺はオークである。オークでなければこんなオークだらけの場所で悠長にオークどもを眺めているなんてことは絶対にできない。
オークどもはこの世界においてオーク単体でもそこそこ脅威なのだが、たいてい群れていていてその場合はかなりヤバい。
一応オーク一に対して冒険者五っていうのが基本らしい。詳しくは知らない。何せ俺がオークなので冒険者側の基本なんて知れるはずがない。オークどもが噂しているのを聞いただけだ。
ただそれが本当なら、ここの群れはかなりの規模なので殲滅には軍隊が必要になるだろう。
最も上級冒険者なら一人で何体も倒せるらしいので実際にはそれほど必要なわけじゃないだろうが。
オークの脅威だが実はそれは単純に強いということだけではない。もちろん強いことだけでも十分に明確な脅威ではあるが、何と言おうが一番の脅威はその繁殖性だ。
オークのオスというのは相手が人型でメスであれば大体オークの子を孕ませることができる。もちろん(?)一部の人型でない相手でも孕ませることもできる。
オークどもときたら相手の美醜どころか姿形も何も関係ないとばかりにメス相手なら無理矢理にでもヤってヤってヤりまくるくそったれどもなのだ。
俺が今のところ実際に見た限りであればゴブリン、ハーピィ―きれいな女の子を期待している奴には悪いが哺乳類型の超大型鳥類といったところなので萌えることはない―系、ウルフ系、タイガー系など本当に節操がない。
他にもオークの噂やおとぎ話ではエルフに小人―おそらくドワーフのことである―にウェアアニマル(獣人)、フェアリー系、それからこれはおとぎ話なのでおそらく嘘だとは思うがドラゴンを孕ませたという話まである。…なにそれ、例え捕まえることできてもサイズが違うだろ。どういうことだよ、どうするんだよ。
オークどもは孕ませるのに適した相手を見つけると、そいつを生かしたまま捕らえて巣の中に運んできてそれ専用の部屋に入れて複数人でヤる。
とにかくそいつが孕んだとわかるか壊れるまで入れ替わり立ち替わりヤり続ける。
孕んだら産まれるまであとは放置だ。
そしてオークの子供が無事産まれたら、また孕むまでヤる。あとはオークどもはそいつが壊れるまでこのサイクルを繰り返すだけだ。非常に見たくない光景である。
オークどもは捕らえて運んできてもそれらを大体2、3日は部屋に放置している。
理由は特には知らないが、逃げ出すとしたらその機会をおいてほかにない。あとは大抵オークが一匹はいるからだ。まあ、逃げ出せる機会と言っても実際にはオークどもがうじゃうじゃいる中から逃げ出すことになるので実質不可能に近いが。
…時に壊れた場合だが、その結末は最悪で救いなんてない。奴らは用済みとばかりにそれを食べるのだ。オエッ。
さて言い忘れていたことだが俺はもともと「この世界」の人間じゃない。
いや、オークは人間じゃないだろ、というツッコミはなしだ。
そういう意味ではなく俺には前世の記憶ってやつがあるのだ。この世界ではなく、科学と文明で発展してきた地球という星の日本ってところで生活していた記憶だ。
そこで俺は普通に暮らしていたんだが、まあ、ある日事故にあってあっけなく死んでしまった。そしてこの世界で、めでたくかどうかはおいておくとして、オークとして産まれてきたってわけだ。
ちなみにこれは幸いなのかそうでないのかはわからないが、この世界での母親が誰なのかは知らない。
当たり前だが父親の方もこの洞窟のオークどものうちの一人だろうことしかわからない。
…まあ、わかったところで何がどうなるということはないのだが。
一応記憶なんて言ってみてはいるが、実際には日本で死んでしまったと思った瞬間にこちらに生まれていたので、前世の俺がそのままこちらにオークとして来たような感覚である。
例えるなら昨日眠ったときは地球で人間やってたのに朝起きたらオークになっていたような感じだ。生まれた瞬間が寝起きとするならばそれは最悪の寝起きだったわけだが。
まあそれはさておき、俺は今までずっとオークどもかあるいはモンスターの類しか見てこなかったので、実はこの世界において人間らしき生物を見るのは初めてだ。
そろそろこの世界には人間なんていなくて、エルフや小人もドラゴンもみんなオークどもの空想の中だけのもので、モンスターしかいないんじゃないかと思っていたところだった。なので人間に会えたのはなりうれしい。捕まっている彼女たちにしてみれば不幸なことこの上ないかもしれないが。
とにかく初めての現地人(?)の観察の機会が捕まっている彼女たちなのはいただけないが、助けるか―あるいは助けられるか―はさておいて、この際なのでしばしの間はじっくり観察するなり接触を計るなりしてみようと思っている。「オークは発見後即デストロイ」な感じであれば助けようとするこちらの身も危ないのだから。
捕まっている三人は全員気絶しているので実に静かである。
まあ、そうでなければ今頃騒ぎ立てて暴れまくっていたか逃げる算段をどうにかたてていたことだろう。
オークどもの生態はかなり有名らしいので何としてでも逃げようとしていたはずだ。俺が人間だったらそうする。いや、むしろしない人間がいた方が逆に驚きだ。
さてその三人だが、俺が見る限りおそらく普通に人間のはずだ。
もちろん女性なのは確かだ。
オークどもがわざわざ男を生かしたまま巣の中に連れてくることはない。今までも、そしておそらくこれからも。
エルフはこの世界でも耳が長いようだし、小人というには明らかに背がでかすぎる。他の種族の特徴にも当てはまりそうにはない。
服装などからしてまず間違いなく人間の冒険者といったところだろう。
もちろんハーフって可能性がないわけじゃないが、他種族間ではほぼ子供が生まれない―もちろんオークは例外である―上に生まれても片方によりつつも必ず両者の特徴を受け継ぐらしいのでまずないだろう。
背はこの世界の人間の平均を知らないので何とも言えないが、とりあえず胸は大きい順に大中小と見事にそろい踏みだ。だから何だという話ではあるが。
彼女たちを連れて帰ってきたオークどもの数は出て行った時と変わってはいないが、多少傷ついていることから見るにおそらく実力的には初級から中級の冒険者といったところだろう。
初級や中級の冒険者のパーティーといったら、単体ならともかくく二匹以上のオークを相手するのは避けるべきレベルなはずだ。
奇跡でも起こらなければ―あるいはランク詐欺でもなければ―、オークどもに敗北するのはほぼ確実である。
彼女たちはおそらくオークを侮った愚か者か、あるいはこんなにいることを知らなかった不運な奴らかのどちらかだろう。
…俺としては前者であった方が話はしやすそうなのでそちらであることを望むところだ。
オークどもは彼女たちをそれほど脅威だとは思わなかったのだろう、三人とも同じ部屋に入れられている。
前に数度ほど連れ帰ってきたものを部屋を分けて入れたことがあったのだが、その時は帰ってきたオークどもの数が減っていたのでなかなかの強さのやつだったのだろう。
ちなみに理由は知らないがオークどもは一度に連れて帰ってきたものは基本的に同じ部屋に入れるが、同じ種族であっても別に連れてきたのは別の部屋に入れている。
なので今彼女たちが入れられている部屋にいるのはその三人のみである。
もちろん脅威に思われていないだろうといったが、さすがに見える限りでは武器は取られている。
さて彼女たちの胸の大きさについては言及したがその容姿はというと、ぶっちゃけこちらもこの世界の平均は知らないのでこの世界においていいのかは判断がつかない。
…俺の周囲のやつらを参考にしないのかって?それならほとんどオークしかいないので前世で不細工だと言われるやつがイケメンだと断言できるくらいだといえばその顔面偏差値の低さといかに参考にならないかがわかるだろう。
まあ、とりあえず前世を参考にするなら三人ともはっきりと美少女だといえるだろう。クラスか学年に一人レベルの美少女である。
つまるところ美少女の中でもかなりの美少女である。
繰り返す。美少女の中でもかなりの美少女である。
今の俺にはさして重要なことではないが念のため二回言った。
武器を取られて気絶している美少女三人組冒険者についてだが、他にも観察する限りでもわかることはまだある。
同じパーティーであろう三人とも武器は見当たらなくとも服装がそれぞれ違うので、おおよそのそれぞれパーティーでの役割などが予想できる。
とりあえず三人の区別は胸で判断するとして、大きいのは明らかに魔術師の類だろう。神官の可能性もあるが、少なくとも神官っぽくはない布系の装備(レザーのブレスプレート付き)を着ているので魔術師だろう。
次に小さい―あるいはない―のは前衛でおそらく剣士系だろう。フルプレートではないが各所に金属部分のあるレザー系アーマーを付けている。もしかしたら盾も持っていたかもしれない。
最後に中くらいのはゲームで言うところの盗賊系だろう。金属部分のほとんどないレザーアーマーを付けている。盗賊とは言ったが役割的には遊撃なのでゲームの盗賊ともちょっと違うのだが、まあ似たようなものである。
…実はこうも長くいろいろ説明しているのには理由がある。
それは俺がどうしても目をそらしたくて、でもそらすことのできないとある事実からできるだけ目をそらしたいからである。
俺は前世ではちょっとオタクなだけのごく普通の男子高校生だった。
容姿だっていいってわけではなかったが特別悪いってわけでもなかった。
太ってもないし痩せてもいない。ごくごく平凡などこにでもいる男子高校生だった。
それが今世ときたらオークである。
もちろんこれでもすでに嫌なのだが、実はもう一つ付け加えなければならないことがある。
それは「今の俺」が捕まっている三人が美少女であることをさして重要ではないと言った理由でもある。
そう、今の今まで言うのを避けてきたがおれの今世での性別は女である。
つまり現在俺はオークのメスなのだ。
こんにちわ!春野桜です♪初めまして!そしてよろしくお願いします♪
っんちゃっす!夏野海だ!!よろしくな!!
…………
はぁ、上のしゃべってないやつが秋野椛よ。自己紹介もできない引きこもりのポンコツよ。ついでに私が冬野雪よ。以上!
桜)「4人合わせて四季名一です!」
さて他の3人の自己紹介も終わったことだしあらためてあとがきよ。
答えるかどうかは別として一応私たちへの質問も受け付けているわ。
質問するのはどこででもいいわ。ただし規約とかには違反しないように。
現在、思いつくだけなら50以上、設定をちゃんと考えてるのなら20以上は小説のネタがあるので次いつ更新するかは未定だから期待しないこと。
ちなみに今回の話タイの意味は「いかな理由であろうとそれは愚か者であるということ。あるいは自分から死に行く人。」ってこと。
この世界のことわざ的なのって設定よ。