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短編の本棚

鬼女

作者: 九藤 朋

 昔、夫に先立たれた女がいた。

 女は悲しみの余り鬼女と化し、山中に庵を結んで時折訪れる旅人を喰らっていた。

 時には一夜を共にした男を喰らうこともあった。

 ある晩、庵の戸を叩いたのは亡き夫に生き写しの男であった。

 女は何もすることが出来なかった。

 手すら触れず、男を生きたまま送り出した。

 女の庵が討伐の火を受けたのはその夜。

 夫に生き写しの男は都で噂の鬼女の様子見をしたのであった。

 女は射かけられた火矢を消そうともせず、庵の中で自害して果てた。

 まだ煙燻る庵の跡、討伐の大将から賛辞を賜りながら、様子見をした男は己の前世を思い出した。

 妻を手に掛けたと悟った男は、止める周囲の手を振り切って、己もまた自害した。

 事情を察した大将が、庵の跡に二人の菩提を弔う寺を建立させたのは後のこと。

 因果は巡る。

 来世で二人が邂逅を果たしたかどうかは解らない。





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― 新着の感想 ―
[一言] 端的に過不足ない研ぎ澄まされた文章で描かれる。 凄いことです。 物語の核のようなものでありながら、あらすじのようでなくきちんと美しい物語そのもの。 語りの力を感じました。
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