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騒がしいギルドホール

「ベルガスさんおかえりなさい、ずいぶん早かったんですね!」


 噂をすれば件のメーリスんトコの泣き虫娘、このギルドで一番若い受付嬢メーリアが俺を発見して大きな声を上げながらこちらへ近づいてくる、こう言う子供っぽい所は十四になったばかりのガキだねぇ。


「たでーま、んでどーした?そんなデカイ声あげたのは挨拶するためだけって訳じゃねーんだろ?」


 質問に対して母親似の大した膨らみの無いモノを張りながら、よくぞ聞いてくれたとばかりに彼女は何かを取り出して俺に見せてくる、因みにブルンブルン揺れる方が好きだ、小さいのはどうにも食いでが、ねぇ?


「なんですかその嫌らしい視線はっ、女の人をそういう目で見るのは紳士として最低ですよ!」


 ガキが何を言っていると思うがあくまで思うだけ、事実を口にすれば泣くか切れるかの二択だし面倒なので言葉にはしないでおく、でもやっぱりまだ子供だなと思ってつい頭を撫でてしまう。


「あー、そうかー、すまんなよしよーし、あー、今年もそろそろ新年祭の時期か、十二年間一度も帰ってねーってのに、兄さんも随分律儀に送ってくるもんだな……」

 

 頭を撫でながら手紙の差し出し主を見て納得する、今じゃ村長様なんぞになっちまった我が兄ベルウガの名前が刻まれている手紙は、多分新年祭の時期だから戻って来たらどうだと書いているのだろう。


「あら、今年も帰らないの?ずっと帰ってないじゃない、一回くらいは帰りなさいな」


 付き合いが長いメーリスは、俺の表情と言葉から内容を察しているのだろう。


「今更戻って何になる?それに俺はもう村の人間と言うより王都の人間さ、こっちの生活を捨てて戻ってこいなんて言われたらたまらんよ」

 

 何度も気にするなって言ったのに未だに十五年前も前の事を気にしてるのかねぇ、今でも村の一員として考えてくれるのは嬉しんだが村でそんだけ経ちゃ若いもんは顔すら知らねーんだ、どっかで勝手に死んだことにすりゃ良いのによ。


 戻らないのはただ単にこちらの生活が気に入っただけで、兄貴達の生活を邪魔する気も無いからだ。


「アンタがそういうならそれで良いけど、私達に遠慮とか負い目とか感じてるって言ったらぶん殴るからね?」


 彼女が一瞬だけ後悔をちらつかせた後、自身の思いを俺にぶつけてくる、相変わらず意思の強いアンバーの瞳が俺を見透かすように睨みつけてくる。


「おぉ怖ぇな!流石にねえよ、俺は王都が好きだし冒険者の暮らしってやつが性に合ってるんだよ」


 全く負い目感じてるのはどっちだよ、俺の周りはどうにも繊細な奴が多くていけねぇ、あん時の事は誰の所為でもない、ただの星の巡り合わせが悪かっただけだ。


 まぁ確かにあん時は若かったのもあって傷ついたが、今じゃとっくに整理がついている話だ、メーリスに言われた事だって終わった事だと思っているが、言った方はやっぱ違うんだろうな、


「もぅ!いつまでも頭を撫でないでください!折角綺麗にしたのに旅の埃がついちゃうじゃないですか!」


 そうして俺がメーリスと昔話をしていると娘の方が煩くなってくる、無視されるが気に入らなかったのかもしれないと思ったが、考え事してたら頭がイイ所にあったもんで、ついそのまま撫で続けてたのがダメだったらしい。


 ライル村から確かに風呂も入らずに街道をすっ飛ばして来てるから、メーリアの言う通り俺は随分と土埃塗れだ、確かに淑女に会うにゃ少しばっかり小汚い格好だな、こりゃ一本取られたかねぇ?


「いやー、どうにも昔の癖が抜けなくてな、働く女性に子供に接するようにしたらイカンわな、スマンスマン」


 ご立腹の娘に俺が軽率な行動を謝る姿を見ながら、母親の方はいつもの事だと言わんがばかりの態度でこちらに先ほどの話を伝えてくる。


「ベルガス、私このままギルド長に報告を入れて来るわ、多分夕方には何らかの方針は決まると思うから、今日はまっすぐ返って来なさいよ?」


「大家の娘からのご指示じゃ嫌だとは言えんね、わかったよ、今日は昼飲みだけにして戻ってくるさ」

 

 そうしてメーリスの背中を見送っていると、メーリアは自身の頭を撫で付けながらグチグチとお説教を始める、こう云う所は母親というより育ての親のあの鬼婆に似たんだろうな。

 

「悪かったよメーリア、いつまでも子供扱いじゃギルドのガキ共に舐められちまうよな、すまんかった」


 と言ってもこれくらいの年頃じゃまだ身体も育ちきってないからガキしか見えんが、それでも心は大人になろうと必死だ、だからその努力は俺が周りの大人に認めてもらったように俺も認めるべきだろう。


「もう!私は子供っていう年でも大きさでも無いんです!そーゆー雑でいい加減な態度だからいつまでたってもベルガスさんは独身なんです!というか、みんな心配してますから、いい加減お嫁さんの一人くらい見つけて結婚して下さい!」


 しかしこの泣き虫は気付きゃすっかり母親に似た気の強い女になっちまったなぁ……、昔はおいたんおいたんって可愛かったのによ~、まっ言われて当然な内容だな、根無し草のヤクザな商売してるおっさんだ、それを見る周りはそう思っても仕方ないわな。


「へ~い、まっ、こんなヤクザな商売止める切っ掛けがあったらそうするよ、今ん所これくらいしか出来ねーから当分ねぇし、残念ながらみんなにはもう少し心配してもらわにゃならんかねっと!」


 これ以上怒られるのもここで騒いで誰かに捕まるのも面倒だ、いい加減風呂に入って風呂あがりの酒を楽しみに行くか。


「もう!いっつもそればっかり!ベルガスさんなら軍にだって入れるし、試験を受ければ騎士にだってなれるってビラスドさんも言ってたし、オルテガさんだって専属の護衛に雇うって言ってたじゃないですか!」


 同じ釜の飯を食った後輩ビラスドは、いつの間にか立派な騎士さまになって気が付きゃ副隊長様だ、そんな立派な姿見りゃ、今の俺を見てるコイツは一言二言言いた来るのかも知れねぇな。


「あーそんな話あったけか?そいや最近ビラスドにゃ会ってねえな、アイツも騎士団の中隊副隊長なんぞに成っちまったし忙しいんだろうな」


 髪を左右にわけて結んだ父親譲りのサンディブロンドが、彼女が怒る度に揺れて居るのを見ながら早く終わらねーかなーと思っていると、心を読まれたのかメーリアのお小言がいっそう騒がしくなる。


「もぅ!ちゃんと聞いてます?!ギルドの仕事ももちろん大事な事ですけど、ベルガスさんは自分の人生も考えるべきです!このまま年をとっても子供も居ないままで、家族も居ないならお先真っ暗なんですからね!」


 今日は随分とメーリアがうるさいなぁ、まぁいいや、とりあえずやることはやったし逃げよう、どうもこの泣き虫には随分嫌われたみたいだな、これが反抗期というやつかもしれんな。


「はいはい、分かりました-、んじゃ俺はそろそろいくわ!それとメーリア、あんまりモウモウ言ってると牛みたいだから男が寄ってこんぞ?女は少しお淑やかな方が何も知らん若い男にゃ受けがいいからな!」


 これ以上の時間を掛けるといつまでも怒られると思い、近所のおじさんとしての心配を彼女にぶつけた瞬間、俺は風になってギルドのドアへ走る。


「も~~~~~!おじさんのバカ~~~~~!!!!」


 俺の言葉を理解した瞬間、ギルドの受付ホールに響き渡るような声でメーリアが叫ぶ、そう言う端ないのはおじさんダメだと思うなぁ、せめてこちらは紳士的に返しておこう。


「ハハハー!それではメーリア嬢、さらばだー!!!」


 顔を真赤にしたメーリアがこちらに羽ペンやら帳簿やらを投げてくる、相変わらず乱暴な所は母親に似たなと思いながら、俺はこれ以上被害が広がる前に、とっとと扉に向かって走ってギルドを飛び出していった。


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