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虹の調律師 ~光と調和の軌跡~  作者: 二一京日
第二章 戦争の予兆
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第91話 初めての魔法

 リベルは、予想していなかった光景に、思わず閉じていた目を開いた。


「おぉ、これはすごいね」


 今のリベルには、魔法によって青く見える世界と、いつも通りの世界のその両方が見えている。

 言ってみれば、青い世界に、現実の世界の色が加わったような感じだ。

 初めての視界に、リベルは感嘆の声を漏らすと同時に、しばらく眺めていると、違和感を覚える光景だった。


「これ、目を開けてるとやりづらいね」


 そう言いながら、リベルは目を閉じると、元の青で構成された世界に戻り、しっくりきた。


『だからこそ、目を閉じているんですよ。そもそも、目を開けていると、どうしても目の前のことに集中してしまいますので、そうなると探査という主目的が達成できなくなってしまいます』

「あ、確かにそうだ」


 リベルは思い返すと、目を開けていた時は、ソフィーの言う通り探査の範囲が狭まっていたようだった。

 そう考えると、今リベルが目を閉じてみている青い世界の範囲が、探査魔法の許容範囲ということだ。

 目を閉じているために、探査の範囲外は完全に真っ暗で、途中で途切れているように見えるのが怖いところだった。

 昔は世界は平たい大地が円形になっていて、世界の縁というのがあると信じられていたらしいが、今見ているリベルの世界が、まさにそれと同じようになっていて、その先があるとわかっているリベルには変な感じがしていた。

 ただ、探査というだけあって、その範囲は相当に広く、大体半径数キロメートルはあった。

 おそらくはこれが全力ではないはずだから、ソフィーはやろうと思えば、もっと広く探査を広げられるだろう。

 また、探査の中を動く人たちだが、その人たち全員を意図度に俯瞰しているようで、誰か一人、どれか一つに意識が集中しているわけではない。

 あくまで、探査という目的に沿った魔法ということだ。


『じゃあ、切りますね』


 ソフィーがそう言うと、青い世界は徐々に薄れていき、数秒後には、いつもの目を閉じた時の暗い世界だけが残った。


「なるほどね……」


 目を開けてリベルが最初に言った言葉がそれだった。


『なるほど、というのは、この魔法のことがわかったということですか?』

「えっとね……感覚を掴むという最初の目的は達成できた、と思う」

『そうですか。探査魔法の性質、というか理論に関しては昨日言った通りです』


 リベルはさして遠くもない記憶を引っ張り出して、その時の言葉を口にする。


「確か、魔力の波動を放つことで、大気中に存在する魔力に反応して、探査する、だっけ?そんなことを言ってた気がするけど」

『その通りです。例えて言うなら、掌の中に納まっている物の、形状を探る、という感じでしょうか』

「なるほどね。つまり、大気中の魔力がいわゆる掌ってことか」

『その通りです。それが広範囲の探査魔法の原理です』

「広範囲?そこで区別が必要なの?」

『はい。ただそこに誰かがいる、何かがあるということしかその探査魔法ではわかりません。あくまで探査魔法の中でも基本的なものなので、それぐらいしか効果がないんですよ。もっとも、それゆえに、もっとも広範囲を探ることができますが』


 リベルはソフィーの言葉を聞いても、あまり驚かなかった。

 探査魔法に種類があるというのは知らなかったが、ある程度予想はしていた。

 先ほどソフィーの使った魔法では、ソフィーの例えのように形状を調べるもので、詳しくは何かは予想するしかない。

 グレンが昨日帰ってきて、王宮内で探査をして見つけたという『元』だが、それは今の探査だけではわからないもののはずだった。

 そう考えると、もっと他の探査があるということも十分に考えられた。

 予想の範疇でしかなかったが、見事に的中したようだ。


「まぁ、探査魔法が他にもあるのは別にいいけど……まずは、さっきのを使えるようにならないと」

『リベルなら、大して練習しなくても、ぶっつけ本番でもできそうな気がするんですが……』

「実際に感覚を味わったからね。やり方はわかりやすかったけど、それでも試さないことにはどうにもならないよ」

『わかってますよ。言ってみただけです』


 リベルは先ほどの感覚を思い出しながら、目を閉じた。

 見えるのは、何も見えない暗い世界。


「えっと、この魔法は詠唱は要らないの?さっきは使ってなかったけど」

『そうですね。詠唱というのは、あくまでイメージを固めやすくするものなので、特に決まっていませんし、リベルはもうその感覚を直に味わっていますから、詠唱は必要ないと思います』

「そう?じゃあ、そうする」


 リベルは確認が取れたところで、ソフィーがやったのと同じように探査魔法を使おうとした。

 しかし、その途中であることに気付いたリベルは、目を開いてソフィーへ向き直る。


「そう言えば、ソフィーは周囲の魔力を集めてたよね」

『あぁ、そこですか。確かに、そこは私とリベルでは違う所ですね。私のやったことを忠実に再現するのなら、大気中から魔力を集めた方がそのままになりますが、やはりやりやすいの自分の魔力を使うこと、でしょうね。私でもまだ慣れませんから。リベルは、自身の体内の魔力を集めて、それを外に放出してください。放出すること自体は、私と変わらないので、問題ないですよ』

「わかった」


 リベルは応え、もう一度目を閉じた。

 意識するのは、外の大気の魔力ではなく、自分の中の魔力。

 それをイメージしやすいように、手を体の前に差し出して、その手元に集める。

 リベルは外の魔力に関する感知能力は優れているが、自分の内側に関してはよくわからない。

 そのため、魔力の流れというのを、血液の流れと同じようなものだと考えると、イメージしやすかった。

 そのイメージしたものが徐々に手元に集まっていくのを感じながら、リベルはさらに集めていく。

 ソフィーが集めていたのは、今のリベルの手元にある魔力よりも、もう少し多い。

 それに合わせて、リベルは体内の魔力を集める。

 そして、一度味わった感覚と同じだけの魔力が集まった時、隣にいるソフィーから声がかかった。


『それでは、リベル。その魔力を、周囲に広げていってください。ただし、一気に高密度の魔力を放つと、物体に影響が出ることがあるので、魔力の密度を意識して外に広げていってください』


 知っている感覚に合わせながら、ソフィーの助言もあって、リベルは慎重に集めた魔力を外に向けていく。

 手元から少しずつ魔力が流れるのを感じるのと同時に、リベルは視界に映る暗い世界に、自分を中心にした青い世界が広がっていくが見えた。

 そのことに感嘆の声は出なかったが、リベルは何だか嬉しくて、笑みを浮かべていた。

 それを見て、ソフィーも微笑ましそうにしていた。


『そのまま少しずつ範囲を広げていってください。私の時と同じくらいの魔力量なので、さっきと同じくらい見えるはずですよ』


 それに対して、リベルは声に出すことなく頷いた。

 集中していて、声に出して答える余裕がないのだ。

 いくら基本的な魔法であったとしても、この探査魔法はリベルが初めて自分から学んで使っている魔法だ。

 <ハーモニクス>は意識的に使ったことはあるが、そのやり方は初めから知っていたかのように、何も違和感も苦労もなく使えた。

 そのため、実質的にはこれがリベルにとっての初めての魔法とも言えた。

 そのリベルの集中している表情を見ていると、ソフィーはリベルのしたいようにしたのは正解だったとわかった。

 確かにリベルの才能なら、もっと難しい魔法をやっても良かったが、ソフィーはリベルが魔法に関しては全くの初心者であることを失念していた。

 初心者であると知ってはいても、他とは違って最初から問題なくできるものだと思ってしまっていた。

 今のリベルでは、高難度の魔法を教えても、うまくコントロールできなかった可能性が高い。

 才能があると言っても、最初から何でもかんでもできるというわけでもないのだということを、ソフィーは理解した。


「よし、こんな感じ」


 リベルのその声でソフィーは、リベルと繋いでいる意識でリベルの探査魔法を覗くと、ソフィーの方まで、リベルと同じように笑みを浮かべていた。

 それはとても興味深いものを見た目だ。

 ソフィーが見たもの。

 それはただの青い世界。

 ただ、その世界にソフィーと違っているところが一つあった。

 探査の範囲は同じだが、その探査の範囲に映っている人やものたちには、いくつかの情報が見えていた。

 それは、ソフィーが次に教えようと思っていた探査魔法で、その魔法を最初から無自覚で使えているということに、ソフィーは笑みを浮かべたのだった。

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