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虹の調律師 ~光と調和の軌跡~  作者: 二一京日
第二章 戦争の予兆
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第85話 元になる物

「それで?結局、グレンは王宮に行って、何してきたの?」

「王宮に行ったってわかる探知能力なら、何をしたかまでわかるんじゃないのか?」

「行ったことはわかってる。けど、遠ければ遠いほどわかりにくいものでしょ。王宮で何をしたかまでは、僕にはわからない」

「そういうもんか……」

「そう残念にする必要はないと思うけど?なにせ、グレンがここにいるんだから、グレンが説明してくれればいいことだし」

「それはそうだけどな……まぁ、いいか」


 グレンは一つ咳ばらいをすると、リベル、そしてソフィーを見て言った。


「俺は王宮に行って、この国の奴隷制度を実現させているあの首輪について調べた」

「あぁ、あの首飾り。確か、獣人としての力を抑える効果があるんだっけ?」

「そうだ……ていうか、リベルはそれを知っていたのか」

『えぇ、そうですよ。リベルと私はさっき』

「ソフィー、それは今はいい。グレンの話を聞いてからまとめて話した方が、いちいち話がずれなくてわかりやすい」

『はーい』


 ソフィーが言おうとしていた内容が気になるグレンだったが、リベルが後で話すと言っていることから、ここはリベルの言う通り自分が先に話してしまおうと続けた。


「あの首輪の力には、その元になるシステムがあったんだ」

「元?」

「そうだ。元っていうのは、あの首輪を管理している、と言えばわかりやすいか」


 ただ元と言われただけではわからなかったが、そう言われれば、暗い室内で複数の影が機械を操作しているところをリベルは想像できた。


「その管理している元というのが、王宮に存在するというのは、予想できることだ」

『それで王宮に忍び込んだ、と。やることが大胆ですね』

「本当にそうだね。バレたらどうなることやら」

「そこは……おそらく大丈夫だ」


 大丈夫と言いながらも、グレンが一瞬詰まって、おそらく、と付けたのをリベルは聞き逃さなかった。


「あまり大丈夫に思えないのは、僕の錯覚と幻聴かな」

「……王宮の中に忍び込んだのは良いんだが、なかなかその元になるやつが見つからなくてな。いろいろと歩き回ったんだが、それらしいところはさっぱりだった」

「その時に見つかるようなことはなかったの?」

「そこは問題ない。魔法で姿は隠していたからな。見つかることはなかった」

「そう。じゃあ、何が問題なの?」

「……元がなかなか見つからなかったからな、俺は探査魔法を使ったんだ」

『あぁ、なるほど』

「?どういうこと?」


 グレンの言葉に納得しているソフィーだったが、リベルはその先が全くわからなかった。

 生前は様々な魔法に長けていたらしいソフィーだからわかったのかもしれないが、リベルには疑問符しか浮かばない。

 魔法に関する知識が中途半端だと、こういう会話について行けない。


『リベルは、探査魔法の仕組みを知っていますか?』

「知らないよ。そもそも魔法を使うことそのものが最近までなかったんだから、勉強もしてないよ。わかるのは精々が<ハーモニクス>に関してだけ」

『でしょうね。では簡単に説明しますが、探査魔法というのは、魔力の波を周囲に飛ばすことで、その魔力が触れたものが何かを知るというものです』

「う~ん、よくわかんないけど、超音波を発して、跳ね返ってきたそれから何があるかを知るっていうのと、同じようなことなのかな?」

『あぁ、そんな魔獣もいますね。はい。今はその解釈でも大丈夫です』

「で、それだと問題が?」

「あるんだよ。波を飛ばすってことは、場合によっては逆にそれに気付かれる可能性もあるってことだ」

「あぁ、見ている側も見られてる、みたいな?」

「相変わらず、変わった例えを持ってくるよな、お前。間違ってないからいいけど」


 グレンとソフィーのここまで言ったことをリベルは整理すると、あまり時間を使うことなく、ソフィーが納得したグレンが大丈夫だと思えない理由がわかった。


「その探査魔法が、王宮の中にいる人たちに気付かれたってこと?」

「そういうことだ。まぁ、気付かれることは最初から予想していたことだし、すぐにその場から転移でここまで来たから、正体まではわかってないと思うが、それでも、王宮内に誰かが侵入した可能性はすぐに浮上するだろうな」

「なるほど。でも、そのリスクに値する結果は持ってこれたってことでしょ?続けて」

「わかった。俺が探査魔法を使って、その首輪の元の在りかを調べたんだが、それがどうやら地下にあるみたいなんだよ」

「地下って、王宮の地下?妥当なところだよね」


 獣人の奴隷化はこの国においてはもう当たり前のように行われている。

 それ支える重要なものは、ジト目に触れるような場所に置かないのが普通。

 地下というのは、頷ける場所だった。


『ただ、地下となると少し面倒かもしれませんよ』

「どうして?地上にあるのと、大した違いはあるかな?」

『大ありですよ。地下となれば、行動できる場所も、見える範囲も、地上よりもはるかに制限されていますから、警備を配置するなら、地上よりもより効率的に配置ができます』

「そういうものなのか……」

「ソフィーの言う通り。だが、今はそこは別にいい。どんな守りも、完璧ということはあり得ないからな。突破しようと思えば、どうにでもなる」

「そこに、どんな作戦も完璧ではないという反論を言ってしまうのは、やめた方がいいかな?」

「そう思うなら、最初から言わないでほしかったが……その時はその時だ。とにかく、その首輪の元が王宮の地下にあるということはわかった。通常は警備はそこまでの人数は割かれていないみたいだ」


 グレンは、気付かれる前に探査で確認したことを思い出しながら、情報を伝える


「一応、国家にとって大事なものだから、信頼できる少数に守らせてるんだろうな。地下ということもあるし、さっきソフィーが言ったように行動は制限される。大人数を配置しても、逆効果になりかねん」

「へぇ~。そこまで考えてるんだね。奴隷だなんて馬鹿なことをする割には、頭の回転は正常レベルなのかな?」

『その言い回しには、所々に棘が含まれてます』

「狙って言ってるのは明らかだな」

「あ、もしくは、その愚王じゃなくて、周りの誰か頭が回る人の手助けもあったかもしれないね」

『はっきりと言いましたよ、この人』

「同感も共感もできることだな、これは」


 不機嫌の残り香のように、優しい口調で棘を含ませているリベルに、グレンは冷や汗を流しながらも、締めに入った。


「リベルの意見が正しいかどうかはともかくとして、俺が見たのはここまでだ。ただ、俺が勘付かれたのを考慮すると、王宮内は少し緊張感は上がっているかもな。同じようにあっさりとは侵入させてくれないかもしれない」

「だろうね。王宮に侵入者っていうのが前代未聞だろうから、相当に警戒するでしょ。一体何が目的だったんだ、ってね」

「はぁ~、そこはすまんな。後々が少し苦しくなるかもな」

『王宮内の空気が変われば、それは国全体に影響が出かねません。警戒態勢が国全体に叱れれば、面倒なのは事実ですね』

「そうだね。まぁ、何をしようにも面倒になるのはわかり切ってることだから、早いか遅いかの問題。むしろ、一気に警戒が上がるようなことにならなくてよかったんじゃないかな?僕はそういう緊張感に慣れてないから、慣れる時間があるのは経験として良いことだし」

「うわ、アグニと相対した奴が、緊張感に慣れてないとか言ってるよ」

『そうですね。黒蛇に怖気づくことなかった人が、何か言ってますね』


 二人からの集中砲火に、リベルはため息を吐いた。


「二人はさ、時々そうやって気が合うのは、僕に対しての文句だけなの?」


 その一点に団結するのは、それはリベルに対して抱いているイメージが同じということだった。

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