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虹の調律師 ~光と調和の軌跡~  作者: 二一京日
第二章 戦争の予兆
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第73話 元国王の頑張り

前回はソフィーがあまり参加していなかったので、今回はソフィー中心で行きますので、よろしくお願いします。

 宿を追い出されてから、しばらくしてから別の宿が見つかり、そこでは特にトラブルも起きることはなく、一部屋取ることができた。


「ソフィーはこれでいいの?今更だけど」

『構いませんよ。そもそも、私は常にこうしているわけではなく、時々腕輪の中に戻ってたりするので、私がいることの問題はないと思います』

「あぁ、お前はそういうことができるんだったな。この際だ。他に何かできることってのはあるのか?確か、生前は神属性以外にも他の属性の魔法を使えたんだよな。それは使えないのか?」


 ソフィーには何ができるのか。

 それは一緒に旅を始めてから、まだ聞いていなかった。

 こうして部屋の中で休めるのだから、こういう機会に聞いておいてもいいことだった。


「それは僕も気になるね」

『でしょうね。……グレンの言ったように、私は以前は他の属性の魔法も使えました。使えた属性は、特異属性以外すべてです』

「ほう……」

「つまり、えっと、なんだっけ?」

『火、水、雷、土、風、影、光の基本の七属性です』

「そこに神属性が加わるんだね」

『神属性と言っても、その属性の魔法は<ハーモニクス>だけです』

「なるほどな。まぁ、そうじゃないかとは思っていたが、今はそれはいい。今使える魔法はあるのかってことだ。<ハーモニクス>なんかは使えないのか?」


 ソフィーが<ハーモニクス>を使えれば、リベルに直接見せて指導することができる。

 加えて、身を守る戦力が増える。

 この旅では、別に表立ってどこかの誰かと対立するつもりはないのだが、もしかしたら、どこかの盗賊に襲われるかもしれないし、魔獣だっている。

 守る力は、できるだけ多い方がいい。

 しかし、ソフィーは首を横に振った。


『いいえ。今の私には使えません。<ハーモニクス>というのは、継承という形で、リベルの元へと渡っています。私にはもう使えません』

「なるほどな。まぁ、特別感が強い魔法だからな」

『はい。一つの時代に使える者は一人だけということです』

「それを、僕が持ってるか。何か、すごく複雑な気分なんだけど」


 つい最近まで、ただの楽器店の調律師だったのに、今ではこんなことに巻き込まれている。

 アグニ討伐から始まり、そこからオーリン村の黒蛇、そして神の子。

 誰のせいでこうなった、とリベルは思いそうになったが、それを無理矢理抑える。

 自分の思考に強制的にブレーキをかける。

 それは胸糞悪くなる行為だったが、リベルはそれでも思考を止めた。

 <ハーモニクス>が発動してしまいかねない。

 そういう思いは無意識の所であったかもしれないが、リベルの意識的なところで、そういう風に誰かのせいにして考えることが、非常に不愉快だった。

 誰かのせいにしてしまうことを、リベルは絶対にしたくなかった。

 それは、<ハーモニクス>という絶対的な魔法を持っているに関わらず、そう思っていることだ。

 あまり性格が良いとは言えないリベルだが、それでも一部分は、普通の人よりも清くあろうとしている。


『複雑な気持ちはよくわかります。私も同じような境遇でしたから』

「うん、そうだね」

「そういえば、お前の前に神の子はいたのか?」


 こうしてリベルの前に先代のソフィーが現れているのだから、ソフィーの元にも誰かがいたのではないだろうかとは考えられた。


『すみませんが、それはわかりません。なにせ、神の子の資料は残らないものなのです』

「でも、君のことは資料に残ってるよね?」

『私の言った資料に残らないというのは、神の子であるという証拠が残らないと言っているんです。ですから、私は国王の時に文献を手当たり次第に調べ、この大陸、そしてさらにその先の、他の二つの大陸、獣人のラスカンと、魔族のイスリーノまで調べましたが、何ら記録に残っていませんでした』


 その時は相当苦労したのだろう。

 ソフィーの表情が、その時を思い出してか、少し陰っていた。


「でもさ、ソフィーはどうして神の子の資料が残らないって、どうしてわかるの?もしかしたら、前にはいなかったかもしれないし」

『はい。それは私も思いました。生前の私は、神の子がいたという確信を得ることはできませんでしたし、今でも、残念ながらその確信は持てません』

「じゃあ」

『ですが、資料が残らないというのはわかりました。死んだ後に』

「あ……」

「そういうことか」


 リベルとグレンは、同じタイミングでソフィーの言っていることがわかった。

 死後にこうして幽霊として出てきているのだから、ソフィーだけは知ることができる。


『お二人の答えは正しいと思います。私は生前の頃、人前で何度も<ハーモニクス>を使っていました。それを私の象徴とされるくらい』

「うん、わかる。想像できるね、君がそれを使っているのが」

「俺はリベルのを直接見てるからな。実感が湧く」

『そうして私の<ハーモニクス>は多くの人に知られ、数々の書物に書かれ、記録されました。それを私は知っています。ですが……』

「死んだ後にそれらを確認してみたら、それらが一切なかったということだな」

『はい。当時は自分の物語が作られた時、そして<ハーモニクス>を輝かしい象徴として描かれた時は、かなり照れ臭かったのを覚えています。ですが、それらの光に関する記録がすべて消えた時、悲しかったですよ』

「そりゃ、そうだろうね。自分のことが削られるってことだからね」


 リベルは自分がそこまで目立つような人間でないため、ソフィーのようにどこかに記録が残るようなことはないだろう思っている。

 記録がなければ消えることはないから、ソフィーと同じようなことにはならないと考えている。

 しかし、ソフィーの身になってみると、それはつらかったのだろうと思えた。


『とにかく、そうして私は、<ハーモニクス>に関する、もっと言えば、神の子に関する情報は残らないとわかったわけです』

「なるほどな。お前がそこまで調べてわからなかったってことは、お前の所に、リベルで言うお前みたいな存在は現れなかったのか?」

『その通りです』

「それで、今のお前は生前に作っておいたフォルトナという腕輪のおかげで、こうして俺たちの前にいるわけだ」

『そうです』

「ねぇ、話が大分逸れてるよ。大事な話だったから、今まで言わなかったけど」

「そう言えば、そうだな」

『私も、自分で話しているとなかなか気づかないものですね』


 気を取り直して、元々の、ソフィーの戦力がどれくらいかという所まで戻って来た。

 そこにたどり着くまで、グレンとソフィーは順々に辿って戻って行かなくてはならず、仕方なく、リベルが答えを言ってあげて、元に戻った。


『えっと、<ハーモニクス>はもう使えないというのはもう話しましたね。次に他の属性の魔法ですが、これは難しいです』

「難しい?無理なんじゃなくて、難しい?」


 リベルと同じ疑問をグレンも持ったようだ。


「そこは俺も聞きたいな」

『もちろんです。まず、魔法を使うにあたって、一番大事なのは、魔法を使う本人が魔力を保持していること。その保持している魔法を使って、魔法を放つわけですけど、今の私はその保持する魔力というのがないんです』

「ないの?つまり、ただの幽霊で、魔法は使えない、と?」

「いや、違うだろ。ソフィーは難しいと言ったんだ。つまり、使えないわけじゃないってことだ」

『グレンの言う通り。実は、魔法を使うために必要な魔力を、自分の体内からではなく、大気中から集める方法があるんです』

「大気中?」

「そんなの、俺でも聞いたことねぇぞ」

『だと思います。一応、私が五百年かけて研究してきたことなんです。そもそも、幽霊になって魔法が使えないことにはすぐに気づきましたから、何となく暇つぶしも兼ねて』

「暇つぶしで、とんでもないことを言ってのけるな、おい」


 グレンの言うことには、リベルも激しく同意するところだった。

 まったくもって、リベルと比べると、先代の神の子というのは規格外すぎる。

 さすがは、一刻を建国してしまうほどの人間だ、とリベルは思った。


『これは、まだ研究段階で、あともう少しという所なのです。つまり、実現すれば、私も魔法を使って戦えます。グレンの心配するリベルのことだって、私が守れますよ』

「それをわざわざ言うひつようがあるか?」


 ここから、再び二人の言い合いがヒートアップし、今いるこのエクリア王国に入ったばかりの時と同じようになった。

 それにわざわざ付き合ってやる義理はあるかもしれないが、必要はなかったので、リベルはそんな二人は無視して、窓の外、人々が行きかう景色を見て、時間が経つのを待った。

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