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虹の調律師 ~光と調和の軌跡~  作者: 二一京日
第一章 旅立ち、そして新たな日々
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第57話 助けるよ

リベルが戻って来てくれたことで、作者としてはひとまず胸を撫で下ろしています。

このままだらだらと続いてリベルを戻すのが先送りになるのは嫌だったので……。

 リベルの言う、貸し出しているという言葉は、グレンには妙にしっくりとくるものだった。

 グレンが手首の模様から感じていた違和感は、つまりそういうことなのだろう。


「やっぱり、お前はそうだったのか」


 グレンが納得したようにリベルに言うと、リベルはそれに苦笑いで返した。


「僕はついさっき知ったんだけどね。知ったっていうよりは、教えてもらったって言った方が正しいんだけど」

「誰にだ?」


 その質問に、虚を突かれたように驚いた顔をしたリベルは、わからないという意思表示で首を横に傾けた。


「そう言えばそこは聞かなかったなぁ。後で聞けばいいかな」

「そんな簡単に聞けるもんなのか?」

「そうじゃないかな、たぶん。よくわかんないけど」

「あいまいな答えだな」


 グレンが苦笑いで言うと、リベルは他人事のように軽く返した。


「しょうがないでしょ。いきなり聞かされてすぐに納得できることじゃなかったんだから、答えもあいまいになるよ」

「まぁ、確かにあいまいな答え方というのは、お前らしいな」

「それ褒めてるの、貶してるの?」

「どっちでもねぇよ。ただ単に、それがお前だというだけだ」

「そう。まぁ、今は別にいいか。急いでやらないといけないのは、これだね」


 リベルはグレンから視点をずらすと、毒に侵されている人たちを見た。


「この人たちの毒を浄化しなくちゃいけないね。今のままじゃ力が出ないそうだから、悪いけどグレンからは返してもらっていもいいかな?」

「それは構わねぇが、お前はフォルトナの使い方はわかるのか?あぁ、フォルトナはな」

「知ってるよ、それは。それも教えてもらった。使い方も含めて」

「そ、そうか」

「うん。それじゃあ、返してもらうね。あと、一応黒蛇の拘束はしばらく維持しておいて。フォルトナがなくなって少し辛くなるみたいだけど、短い時間なら平気でしょ。あまり邪魔されたくないし」

「わかった」


 グレンの返答にリベルは頷くと、虹色の模様のある右手をグレンの右腕の模様へと向ける。

 そしてさも当然のように何かをすると、グレンの手首から模様が消え、そこから埋めれた虹色の魔力がリベルの右手首の模様へと吸い込まれて行った。


「よし、何とかなった。あとはっと」


 リベルはその右手を今度は倒れている村人たちへと向けると、左手をこめかみに当てて何かを思い出そうとする動作をした。


「えっと、確か……<ハーモニクス>、だっけ」


 リベルがそう言うと、毒に倒れていた人たちの体を虹色の光が覆っていく。

 その人たちに声をかけるなどしていた人たちは、突然のことに驚き、何か悪いことが起きてしまうのではないかと思ったようだが、その人たちは長老が言って聞かせた。

 そしてグレンは虹色の光を見て、以前のことを思い出していた。


(前に<ナイトメア>をかけた時に出た光だな、これは。あの時に魔法を無効化されたから、おそらくフォルトナの力は毒を浄化するだけじゃなく、魔法も無効化するのか。すげぇな)


 黒蛇を抑える針を維持しながら、グレンはその光を見ていた。

 その場にいる誰もが、その光から何か温かいものを感じ、それと同時に安心感が湧いてきた。

 黒蛇討伐は終わっておらず、まだまだこれからという所ではあるが、それでもその暖かな光に安心した。

 その光に包まれている人たちも、徐々に顔色が良くなってきて、しばらくすると目を覚ました。

 そのことに歓喜する村人たち。


「これで終了っと」


 村人たちの様子を見て、リベルは毒の影響はなくなったと見て、虹色の光を消した。

 そんなリベルに、長老が切羽詰まったように言う。


「リベル君!君のその力で、あの黒蛇から毒を消し去ってくれ。そうすれば、わしたちはあの黒蛇に勝利することが可能となるのだ。だから、早く!」


 そんなに焦ったように言うのも当然だろう。

 なにせ、ここに状況が好転するフォルトナがあるのだ。

 グレンとリベルに起きていることが理解できなくとも、そこにあるのなら使おうとするのは当然だ。

 しかし、それに対してリベルの反応は冷静なものだった。


「いえ、毒は消しませんよ」

「なぜじゃ!?」

「それはもちろん、そうしたら先ほど長老が言ったように、あなたたちが黒蛇に攻撃しかねないからですよ。それは少し、というかかなり困るので」

「お主は何を言っている!黒蛇を殺せる絶好の機会を逃そうというのか!」

「言い方の問題ですね」

「何がじゃ!さてはお主、村への復讐のために黒蛇をこのままにしておくつもりか!」

「おいおい……。理解できるとか言ってたのはお前だろうが……」


 長老の言葉に呆れを含めてグレンは言った。


「それは当然じゃ。理解はできる。しかし、納得はできん。村の皆の命がかかっているのじゃ」

「だからって、お前らがリベルを傷付けたのは許されないことだろうが」

「そう言ってわしらを見捨てるのか。助ける力があるというのに」

「それとこれとは違う!」

「違うものか!」

「いいや、違うのね。第一黒蛇の問題だってこの村のことだろうが。外の人間に関わらないというこの村の方針はどこに行った?」

「そっちから関わって来たであろう。それをこちらに向けるとは、それは筋違いというものだ。それに、フォルトナはこの村の宝。その力を村のために使うのが当然のことじゃ」

「それを言うなら、村のものと言うより、適応した人間のものだろうが。そいつが助けないといったら、助けないでいいだろうが」

「それはわしらに死ねと言っているのだぞ。それがわかっているのか!」

「あぁ、わかってるさ。だがな、俺にとっては些細なことだということもわかってるか?」

「そんなに人の道を外れるのか、この外道が!」

「リベルを傷つけたような村に用はないってことだ。リベルもそう判断したんだろう?」

「すべてこの村が悪いかのように言うな」


 お互い相手に言葉を投げつけ合って、息を切らす。

 グレンはそのまま黒蛇を抑えているのだから、器用なことだ。

 もしくは、黒蛇がそのやり取りに呆れて何もしていないからか。

 後者とも取れなくもない。

 そして、もう一人。


「くくくっ……ははははっ」


 二人のやり取りに腹を抱えて笑っているリベルがいる。

 グレンも長老もその姿を見て固まった。

 他の村人たちもだ。

 リベルは一通り笑い終えたようで、目の端の涙を拭って、表情にまだ笑いを残したまま、グレンと長老の勘違いを指摘した。


「僕は別に、この村を見捨てるなんて一言も言ってないんだけど?」

「はぁ?」

「それはどういうことじゃ?グレンが言うには、この村にはもう用はないと……」

「それはグレンの勘違いです。僕はこの村をちゃんと助けますよ」

「あ、ありがとう……」


 長老は涙を流してリベルに頭を下げるが、リベルはそれに困惑した。

 そんなリベルに、額に汗を浮かべたグレンが言う。


「リベル。ことの真実は別にいいから、そろそろ俺、辛いんだけど……」

「ダメ。もう少し頑張って」

「おいおい、マジかよ」


 グレンが絶望一歩手前の疲れ果てた表情をすると、リベルは笑った。


「冗談冗談。その魔法を解いて、暴れるかもしてない毒を放出する黒蛇を自由にして、この村を危機に陥れてもいいよ」

「そう言われたら、なおさらこのままじゃねぇか!!」


 迫力のある顔で突っ込むグレンだが、リベルは笑顔を崩さなかった。


「そういうこと。大丈夫。そう長くはならないから」

「本当に頼む。ていうか、こういう魔獣絡みでお前に全面的に頼むのも変な感じだな」

「僕もそう思うよ。今回限りになりそうな、特別な出番だね」

「その言葉は信用ならねぇなぁ」


 ため息を吐くグレンに、リベルは笑顔を返すだけで、今度はまだ頭を下げたままでいる長老へと話す。


「先ほど、僕は黒蛇の周囲の毒を無力化はしないと言いました。それは本当です。ですが、黒蛇のことは僕に任せてください。どちらにもいい結果になるようにしますから」

「よろしく頼む」


 暴言を吐きまくっていたのと打って変わって素直になる長老。

 やはり、村が助かるとなって、安心したのだろう。

 とはいえ、リベルとしては絶対の保証ができないため、そういう期待をかけられたら苦笑いをするしかない。


「じゃ、ちょっと行ってくるから、グレンは僕が言うまで黒蛇を抑えておいてね」

「気を付けろよ。お前は抜けてるところがたまにあるからな」

「はははっ、そうかもね。気を付けるよ」


 そう言ったリベルは、グレンの前に出て、毒で満ちる黒蛇へと近づいて行った。

 一歩一歩、リベルは普通に歩いて行く。

 フォルトナの浄化の力で、リベルには毒が効いていないのだ。

 グレンのおかげで黒蛇は身動きが取れなくなっているので、リベルは比較的ゆったりとした心持ちで黒蛇の元へと歩き、そこにたどり着いた。

 間近で見上げると、その体は聞いていた数字以上にインパクトがあるものだった。


「さてと、何から話そうか。そうだね。まずは、君がどうして生まれたのか、かな」


 リベルは非常に穏やかな声音で、黒蛇に話しかけた。

黒蛇とは何なのか。それが次回の内容です。

リベルがした記憶の旅ですね。

ちゃんと書けるように頑張ります。

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