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虹の調律師 ~光と調和の軌跡~  作者: 二一京日
第一章 旅立ち、そして新たな日々
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第49話 出口を作る

 暗い暗い場所で…………リベルはムスッとただそこにいた。


「ねぇ、いつになったら出られるのかな?」


 その声には若干の苛立ちが含まれていた。

 それもそのはず。

 なにせここに来てから記憶を見せられていた時の時間を除けば、体感では二時間は経っている。

 それをこんな何も、自分自身の体が見えないところに居続けたら、頭がおかしくなりそうだ。

 リベルはどこにいるかわからない声がいるから、何となく安心感はあるのだが、それでも限界というものがある。

 できることなら、こんなところは早く抜け出したいのだが、どこをどうすればいいかがわからないうえに、そもそも自分がどうしているのかがわからない。

 人間は自分の体が見えることで、今自分が何をしているのかを確認できているところが多いのだな、と新しい発見をするが、欲しいのはそんなものではない。


「はぁ、こんなとこにいつまでもいるのは嫌なんだけど」

『それはそうでしょうけど、そう簡単にもいかないんですよね』

「一応君が作ったところじゃないの?」

『そうとも言えますけど、あなたとの共同制作ですから、手を出せる部分が半々……いえ、六、七割といったところでしょうか?』

「だったら強引に抜け出せないの?」

『現実に戻った時に廃人になっているのが良いんだったら、今すぐにでも出して差し上げますが?』

「あっと……やっぱ、無理は良くないよね」


 声の脅しにあっさりと屈して、リベルは声に任せることにした。


『本当なら、あなたにも手伝ってもらえるとありがたいところですが……』

「うん、無理」

『即答はやめてもらえますか?せめて振りだけでもいですから、感和える素振りくらい見せてくださいよ。疲れがどっと来ます』

「素振りも何も、今の僕には体見えないんだけど?」

『あくまでニュアンスですよ、ニュアンス』

「あぁ、そう」


 こうして話している間にも作業を続けてくれているのか、目に見えないのが不安になる所だった。

 やはり、人は暗闇に住むのに適していない気がする。

 こうしていると、暗いというだけで気分が暗くなっていくのを、リベルは感じていた。

 できるだけ気持ちを切らさないようにしているものの、もう何か疲れも出てきている。

 ただ、そこにいるだけで。


「う~ん、ここって確か、僕と君の共有空間だったよね?」

『はい、そうですが……』

「もしかして、君だけに見えて僕には見えないものってあったりする?」

『女の子の秘密とかですかねっ?』

「……つまり、二人とも何も見えていない、と」

『さすがにスルーは悲しいです』


 今はたぶん残念がっているのだろう、とリベルは察することができた。

 ボケをかまして無視されたらそうなるのは仕方ないかもしれないが、さすがに時と場所を選んでほしかった。

 今の言葉はリベルはイラッときたため、無視が一番だと思ってそうしたまでだ。

 とはいえ、そんなやり取りでもわかったのは、声にとってもこの場所は暗闇で間違いはない。

 それなのに作業ができているのは、ある程度精通してるからだと思えるが、リベルには生憎とそういうことはできそうにない。

 レクチャーされようとも、できる気がしない。

 だから、ここはリベルの知らない魔法に関する知識よりも、一般的に考えられるところから行ってみるのが良い。


「もし、さ。この空間に何もなくて、出口すらないとしたら、どうする?」

『それは非常に困りますね』

「だよね。でもさ、ここって結局は自分たちの内側ってことなんだから、そこを意識すればある程度融通が利くんじゃない?」

『それができてれば苦労はしないですよ』

「つまり、できない?」

『えぇ。ドアを開けるイメージをしてもどうにもならないですよ』


 リベルの考えはダメだ、とする声だったが、リベルはさらにもっと根源的な方まで考えていた。

 その通りだとするとかなり性格の悪いことだが。


「あのさ、存在しないドアを開けることってできないと思うんだよね」

『何が言いたいんですか?』

「つまり、ドアを開けるイメージをするんじゃなくて、ドアが存在するイメージをしてからそこを開けるってやるとどうなのかなって」

『……………………さすがにそれは、ないでしょ?』

「かなり間が空いて、なぜに疑問形?」


 これは知らないな、とわかったリベルは、声にそれをやることを提案する。

 もしかしたら、それで外に出られるかもしれない。

 もっとも、そうなったら、声のここまでの出の努力が性格の悪いシステムのせいで崩れていくのだが。


『それでは、まぁ、ありえないと思いますけど、やってみますか。そのめちゃくちゃで失礼極まりないやり方』

「そこまで言わなくてよくない?」


 そう愚痴ったのには返さず、声はめちゃくちゃなやり方をやった。


              ♢♢♢


 グレンによってポテンシャルがさらに上昇した五人は、直後の一瞬はグレンへと視線を向けたものの、すぐにグレンの意図を理解して黒蛇へと向き直った。

 とはいえ、意図と呼べるほどのものではなく、ただ適当にやってくれればグレンとしては良かったが、初めて共闘する間ではその些細なことの共有ができることが重要だった。

 そこもわかって、グレンは複雑な意思疎通はしないようにしている。

 そもそも戦場では咄嗟に細かいことまでは伝えられないため、それを補うのが信頼である。

 今回はそれがグレンと村人たちの間にない。

 だから、単純な意思表示だ。


(だが、いつまでもこっち有利の戦いをさせてくれるほどおとなしいわけじゃないしな)


 ここまで一切動きを見せない黒蛇に、その事実だけで威圧感を感じ、グレンの額から背が伝う。

 間近で戦う者たちはさらに、だろう。

 そして、そろそろ。


(戦いが始まってからもうすぐ五分。数十人という少ない人数、さらに前衛が五人だけだと、ここらで少し勢いが弱まるか)


 叩きが始まる前からそう見ていたグレンや長老は、その時のためのことも一応は考えてある。

 だが、初めは動かないとは思ってもいなかったため、その作戦がそのまま通用するかどうかは不安がある。

 少し疲れが見えるところで、急に過激な攻撃に出られたら、ギリギリでやってるグレンたちは、なかなかに厳しい。

 一気に半数近くが負傷してしまいかねないような攻撃があったら、それは何としても凌いでできるだけ負傷者は減らさなければならない。

 その一撃で、心まで折られてしまうかもしれない。

 最初の時と同じように、条件は変わらない。

 戦いから逃げ始めるような村人がいれば、結束が強い分、それに便乗してしまうものも出てくる。


(そこまでは行かないようにしたい。いざという時は全力で防御するが……正直なところ微妙だな。油断が残っていなければいいんだが)


 グレンでも一瞬で守れる範囲は限られているため、できれば無謀に動いてお互いの位置関係を崩さないでもらえればいいのだが。


(今の盛り上がりようだと、ギリギリだな。ここから不意を突いた一撃でもあれば、どうなるかはわからないところが怖いが……その時は何とかするしかないか)


 グレンは黒蛇だけでなく、周囲全体も把握して、急激な変化に備える。

 後方にいる長老が全体を見て指揮をする役割だが、グレンも状況によっては独自の判断で動いていいと長老に言われている。

 その独自に動かなければならない状況というのが、来ないのを祈りたいところだが。

 やはり、そういうのは祈るべきではないのだろう。

 特に、最近運の悪いことが続いているグレンはしない方が良いのかも。

 安い期待は、身を亡ぼす。

 亡ぼす身が現実の自分の体になる戦いなのが、この黒蛇討伐なのだから。


「っ!!」


 そして、ついに黒蛇が動きを見せる。

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