第27話 長老
休日でも他のことに夢中になると、さすがに更新できなくなってしまいますね。
更新だけじゃなくて、他作家の作品を読んだりすると、なかなか時間が取れない。
ギャーーっ!
やっと更新です。
現れたのは一人の老人だ。
その老人のことを長老と呼んだ四人は、すぐさま武器を下げ、その老人に向かって跪いた。
跪いている四人の男たちの中央でリベルが状況の変化に戸惑っていると、その長老がゆっくりと歩み寄ってきた。
そして、その後ろからは三人の男が現れ、彼らは今跪いている四人よりも、何となく強いような気がした。
長老は四人の近くまで行くと、穏やかな声で話す。
「お主たちは、この者らから邪気を感じたのか?」
「いえ、あの、それは……侵入者に対して警戒していただけでありまして、そのような判断は、しておりません」
「そうか。確かに突然人が入ってきたらそうなるのは致し方ないが、しっかりと相手を見極めることの重要性は、常日頃から教わっているであろう?」
「はい!その通りであります!」
「別に警戒するなとは言わん。だが、詳しい事情を聞く前に攻撃するのは褒められたことではないな。彼らに敵意がないのは明らかだっただろう?」
「それは……あの者らが長老にお会いしたいと申していたので、もしかしたら敵ではないかと……」
「確証もなしに襲い掛かったということか。それはいくらなんでも行き過ぎというものだ。客人に対してする行いではないぞ」
「この者らが、客人、ですか?」
四人の男たちが顔を上げてリベルとグレンを見る。
その顔は、半信半疑という様子だった。
それが面倒くさくなったのか、グレンは頭をかいて唸った後、長老へと親しげに話しかけた。
「久しぶりだな。元気にしてたか?」
「お主も随分と久しぶりだな。相変わらず元気なようだ」
まるで旧知の仲のように話す二人に、その場にいる二人以外は絶句していた。
「さっきはありがとな。おかげでこいつらに怪我をさせることがなかった」
「変わらずお主は優しいな。そのことはこちらが責められるべきことであって、お主が謝ることではない」
「いや、突然こんなところに来たら、こんな歓迎もあるだろうとは予測していたから大丈夫だ。なんの知らせもなしの訪問は、失礼と言われても仕方ない」
「それこそ、お主の責任ではないだろう。ここは外部との接触は極端に避けておる。結界の正式な解除の仕方も教えていなかったし、そもそも正確な場所も教えていなかったのだ。これはわしの責任じゃ」
「それにしても、ここの結界はやっぱりすげぇな。扉がなかったら、入ることすらできなかったぞ」
「わしとしてはむしろ、結界の場所を特定したことや、扉をこじ開けたお主の方がすごいと思うのじゃが。なにせ、ここは何百年もずっと無法者らの侵入を拒んできたのじゃから。いくらお主でも、正式な手順を踏まない限りは、見つけることも入ることも難しいはずじゃ」
「いやぁ、まさにその通り。俺一人じゃ、どんだけかかっても、扉を開けるどころか結界を見つけることすらできなかっただろうな」
グレンの言葉に、長老は首を傾げた。
「どういうことだ?現にここにお主は入ってきているだろう?」
「あぁ。俺がここに入れた理由は、ずばり、こいつだ」
グレンが、ドンっ、とリベルの背中を叩いた。
リベルはその勢いで倒れそうになったが、何とか踏み止まって長老と顔を合わせる。
長老は、そんなリベルを黙って見つめた。
「ど、どうも……」
沈黙に耐えられず、リベルがそう会釈すると、長老の方は我に返ったようにグレンへと視線を戻す。
「見た目だけ若く、中身は百歳を超えているということか?」
「それはさすがに失礼だろ……。まだ十六歳だ」
「何だとっ!?では、十代の子どもがここの結界を感知したというのか?」
驚く長老に、グレンはさらに追い打ちを変える。
「結界の感知だけじゃねぇぜ。扉を見つけたのもこいつだ」
「そんなことがあるのか!?もしや、結界が弱まっているのか!?」
「そりゃねぇよ。俺でも結界の感知すらできなかったんだぞ?結界が弱まってるわけじゃねぇよ」
「では、一体どうして……」
「こいつは異常に魔力の感受性が高いんだろうな」
「ただそれだけで扉の場所まで見つけたというのか?ありえん。人間にできることではない」
「実際にできる奴がいてもおかしくねぇだろ?目の前にいるわけだしよ」
長老は再びリベルへと顔を戻し、リベルの顔を覗き込んだ。
突然の急接近に、リベルは体を反らして、頬を引きつらせた。
身長としてはリベルの方が高いが、それでも下から思い切り覗き込まれると、それなりの迫力があった。
これが年を重ねたがゆえのオーラなのだろうか、とリベルは思った。
「お主、結界の場所も扉も見つけたというのは本当なのだな?」
グレンの言葉だけでは信じられないのか、リベルでも確認を取る長老。
それほど厳重な結界だったのか、と改めて認識するリベルは何だか申し訳ないことをしたような気になり、正直に話すことにした。
「はい。結界は、まぁ、何となくですかね。なんか変な感じがして、たまたまそこが結界だったって感じですね」
「たまたまで発見されては、こちらとしては迷惑なのだがな」
「ごめんなさい。あ、でも、扉を見つけたってグレンが言っていましたけど、別に僕が見つけたわけじゃないんです」
「どういうことなのじゃ?」
「僕はただそこからならグレンでも開けられるって教えてもらって、それをグレンに教えただけで」
「教えてもらったとは、一体誰にじゃ!」
ものすごい剣幕でさらに詰め寄る長老に、リベルは少しずつ後ずさりしていた。
「えっと、よくわかりません」
「わからないとはなんだ!」
「ごめんなさい!えっと、何か急に声が聞こえてきて、その声が教えてくれたんです。それしかわかりません。あ、ちなみに若い女性の声でした」
「そんな情報は今はいらん!」
「はい!」
必死に答えるリベルは嘘偽りないことを言っているが、長老はまだすべてを信じ切ってはいない様子だった。
ひとまずリベルへの追及は終わったのか、下がっていく長老にほっとしたリベルだった。
そして長老は、もう一度グレンへと顔を向ける。
「一体、これはどういうことだ?」
「これ、とはどういうことかな、長老?」
「当然であろう?なぜここに来たのか、なぜこの者のようなひ弱そうな少年が一緒なのか」
「これって、複数あるじゃん。普通そう言う時は単数だと思うんだけど」
「細かいことは気にせんでいい。とにかく、わしの質問に答えるんじゃ」
「はいはい、わかったよ。まぁ、俺がここに来た理由は、はっきり言って、俺自身のためじゃねぇ。こいつのため、だと思う」
そう言ってグレンがリベルは差すと、長老はリベルを一瞥した。
「この少年はいったい何者なのだ?もしかして、お前の息子とかか?」
「いや、違う。俺が前にお世話になった夫婦の息子だ。俺の友だちみたいなもんだ」
「随分と年が離れているのだな」
「年の差は関係ねぇよ。それで、リベルのためと言ったが、それはあくまで俺の予測だ。正確には、こいつの両親の遺言なんだ」
「遺言、だと?」
「あぁ、こいつの両親はもう二人とも亡くなっていてな、死ぬ間際に俺に書き残したメモがあって、そこには、もしリベルが旅に出るようなことがあればオーリン村へ行くようにって書かれてあったんだ」
「そうか。それで、その両親の名前は何だ?」
「父親がキリルス=ハーモ、母親がミシュア=ハーモ」
二人の名に、長老は少し考え込むような素振りを見せるが、すぐに首を横に振った。
「聞き覚えがないな。おそらく、ここの種族の人間でもないのだろう?」
「だろうな。あの二人は、普通の人間だったからな。長老に心当たりがないってんなら、こことどんな関りがあったんだろうな」
「それはわしも知らん。他には遺言はなかったのか?」
「あぁ、ここに関することはそれだけだ。ただ行け、としかなかったな」
「ふむ……。謎だな、その二人は。そこの少年も含めて、親子で謎ばかりだ」
「まぁ、あの二人が精神面で特殊だったのは違いない。初めて会った時、俺はあの二人の正気を疑ったくらいだからな」
「それほどか……」
リベルやほかの村人を置いて行って、グレンと長老の間で話が進んでいった。




