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虹の調律師 ~光と調和の軌跡~  作者: 二一京日
第一章 旅立ち、そして新たな日々
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第26話 危機の中の交渉

 リベルが自分たちを囲んでいる人たちを確認すると、合計四人いた。

 それぞれが武器を持ち、その刃が鈍く光る。


「ちょっと、敵がいないのを確認したんじゃないの?」


 先にここに入ったグレンに、リベルは文句をつけた。


「まぁ、確認というのは、あくまでこいつらがいることを確認しただけだしな」

「は?どいうこと?」

「ここが当たりだと確証を得たかっただけなんだ。それだけできれば、敵がいようが関係ない」

「何で?」

「この俺が相手をすれば、全く問題ないからだ」

「なるほど。でもさ、別に村の人たちと争いに来たんじゃないんだったら、戦わない方が良くない?」

「…………そこは、あれだ。この場を切り抜ける便利な交渉術、みたいな?」

「そう言いながら、こっちを見ないでくれる?そういうのはあらかじめ考えておこうよ」


 頼みの綱だったグレンが、今回は戦えないということで、急遽リベルが対応することになってしまった。

 リベルは日ごろから少ないとはいえ客に対応しているため、ある程度は会話を成り立たせられるかもしれなかった。

 グレンはその間、リベルに危害が及ばないように警戒をする。

 方針が決まったところで、向こうも警戒をしていたのだろう。ようやく、話しかけてきた。


「おい、お前たち。ここに一体何の用だ?ここがオーリン村だと知ってて入ってきたのか?」


 リベルたちを囲む男の一人が、鋭い眼差しを向けて聞いてくる。

 それに対してリベルは答えようとしたのだが、そこで重大なことに気付く。

 交渉役を任されたリベルでも、ここに来た目的を知らなかった。

 つまり、この男の質問には答えられないということで、必然的に、リベルは交渉役には向かないということだ。


「グレン、僕には無理だ。今回も君に任せる」

「はぁ!?そりゃないだろ。一応、お前の得意分野みたいなもんだろ?」

「いつそんな得意分野ができたのかは置いておいて、僕は君からオーリン村へ行く理由とかいろいろと聞かされてないんだけど。これでどうやって交渉しろと?」

「あ……」


 今更ながら気づいたようで、呆然と口を開けるグレン。

 その様子にリベルはため息をついた。


「グレンって結構抜けてるんだね」

「……やっぱ、俺がやんのかよ。ていうか、お前はここまで役に立つようなことは……結構やってんだよなぁ」


 役に立つこととは、グレンが見つけられなかった結界を見つけたり、グレンが解析できなかった結界の扉を見つけたり。

 はっきり言って、グレンよりもいい仕事をしたと言っても過言ではない。

 それを認め、グレンは仕方なく交渉をすることにした。


「おい、さっさと答えろ!」


 男が苛立たしげに怒鳴ると、グレンは面倒くさそうにしながらも答えた。


「あ~、俺たちはオーリン村にある腕輪、が目的でここまで来た」


 グレンがそう言うと、二人を囲む四人はさらに表情を険しくし、武器を構えたまま一歩だけ前へ出てきた。

 それに警戒するグレンだったが、グレンが守る対象であるリベルの方は、比較的落ち着いていた。


「なんか、アグニと比べると迫力がないね」

「比べる対象が間違ってるぞ、おい」


 グレンは今の自分でもこの四人には負けないと思っているため、少し軽く見ているところはあるが、リベルのようにアグニと比べるほど低くは見ていなかった。

 リベル本人としては初めて命の危機を感じた相手がアグニで、他に比べる対象がいなかっただけの話なのだが。


「お前たち、村の宝に何の用だ?」


 四人の中の別の男がグレンに問い質す。


「へぇ、腕輪ってのは村の宝なんだな」

「何を白地しいことを!」

「いや、まじで今知ったんだよ。実は、ある人たちの遺言で、その腕輪の所へ行けっていう風に言われててさ。それで来ただけなんだよ。別に、その宝が欲しいっていうわけじゃなくて、遺言だったから来ただけなんだ」

「そんなの信じられるか!お前たちも、俺たちの種族を狙ってきたんだろ!」

「種族?狙って?ねぇ、グレン、一体何のこと?」


 グレンが先ほど言っていた利用されたり迫害されたりという過去を持つことなのだろう、とリベルはわかったが、詳しくは聞いていなかったため、話について行けていなかった。


「あとで教えてやる。今は黙ってろ」

「はーい」


 今教えていたら話が進まなくなるのだ。

 仕方なくそう返事して、この場では役立たずのリベルは黙っていることにした。

 どうせ、詳しい内容は全くわからないのだし、その度に聞いていたらきりがなさそうだからであった。


「お前らも、村を荒らしに来たんだろ!」


 四人の男が口々に真ん中にいるリベルとグレンを責め立てるが、リベルは当然のことながらグレンにも責められるいわれはなかった。

 しかし、それでもグレンはそのことには腹を立てることもなかった。


「オーリン村の人々がどのような扱いを受けてきたのか、俺は十分にわかっている。それによって受けた痛みも苦しみも、わかってはいる。理解できるなどと軽々しくは言えないが、それでも当時の人々がしてきたことには胸を痛める。そのことに嘘偽りはない」

「そんな言葉に騙されるか!」

「お前たち人間は、そんな風にきれいごとを並べて、最後には俺たちを傷つけるんだ!」

「そうだそうだ!」

「人間なんてそんなもんだ!」


 グレンの言葉を男たちは激しい言葉ではねのける。

 それだけ、過去に受けた扱いが苦しいものだったのだろ。


「お前たちの言いたいことはもっともだ。否定はしない。人間にはそういう生き物は多くいる。そして、そういう奴らばかりがオーリン村に接触してきたのだろう。そのことには残念だ、としか言いようがない」

「なんだと、おい!」

「馬鹿にしてんのか!」

「馬鹿になどしていない。俺はお前たちを否定するつもりなどないし、ましてや危害も加えるつもりもない。むしろ、友好的な関係を築ければ、と思っている」

「人間は皆そう言って俺たちに取り入ろうとする!」

「もうたくさんなんだよ!」

「俺たちに危害を加えるつもりがないって言うなら、さっさとここから出て行け!」


 男たちからきつい言葉が飛び交う。

 取り付く島もないとはこのことだ。

 このままでは、いつ襲い掛かられてもおかしくはない。

 しかし、グレンは交渉をやめることはなかった。


「俺たちがここに勝手に入ったことはすまないと思っている。お前たちに相当な不安を与えたことだろう。だが、俺たちは遺言があってここまで来た。たとえ門前払いされようとも、はいそうですか、って帰るわけにもいかないんだ」

「だからって、この村を荒らすのか!」

「勝手に入ってきといて、何だよその言い草は!」

「お前たちの怒りはもっともだ。利用されまいと、迫害されまいとして閉ざしてきたところに、いきなりお前たちが忌み嫌う者たちが来たのだから。だがな、何も対話せずに追い返されてもこっちも納得がいかない。だから、ひとまず長老と話をさせてほしい」

「ふざけんな!」

「お前らみたいな外道を、俺たちの長老と会わせるわけねぇだろ!」


 グレンの言葉は届かず、男たちの温度はさらに上がる。

 これはまずいと思ったリベルは、自分も何かしようと思った、その時。


『なりませんよ』


 不思議な声が、リベルを動かす一歩手前で押しとどめた。


『このまま動かずに見ていてください。あの者には考えがあるようなのです。今は信じましょう』


 声にそう言われ、リベルは何が何だかわからないという感じになった。

 だが、グレンを信じるという所には賛成できたので、声の言う通り、この場を見守ることにした。


「長老に会わせてくれれば、俺たちのこともわかるはずだ。俺たちが一体何なのか、そうすればわかるはずなんだ」

「そんな必要はねぇ!」

「お前らみたいな、悪魔には慈悲は要らねぇ!」

「そうだそうだ!」

「悪魔の言葉に耳を傾ける必要はねぇ!」


 怒鳴り散らす男たちの口から『悪魔』という言葉が出た瞬間、グレンは暗い表情となる。

 男たちはその瞬間を見逃さなかった。


「!?」

「しまっ!」


 四人の男たちが一斉にリベルとグレンに襲い掛かり、グレンは咄嗟に魔法で障壁を張った。

 そこでグレンは焦っていたがゆえの失敗に気付いた。

 このまま障壁に四人が激突すれば、少しはダメージがあり、敵対行動だと捉えられるかもしれなかった。

 しかし。


「そこまでじゃ!!」


 低い男の声がその場に響き、障壁の手前で四人とも手を止めた。

 その四人は、恐る恐ると言った様子で声のする方を振り向く。

 そして、そこにいる人物に驚きの声を出した。


「「「「長老!」」」」

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