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虹の調律師 ~光と調和の軌跡~  作者: 二一京日
第一章 旅立ち、そして新たな日々
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第19話 真実

「悪魔に、乗り移られた?」


 リベルはグレンが言ったことを繰り返して、内容を確認する。


「そうだ。だからこそ、アグニには乗り移られた竜の体の方と、乗り移った悪魔の魂の方の二つが存在する。先代勇者が倒したのは、竜の方であって悪魔の方は倒せていない。つまり、勇者の負けってことだな」

「先代勇者に関してはどうでもいいけど、それより、悪魔が竜に乗り移るってのがいまいちピンとこないんだけど。一体どうしてそんなことになるの?」

「さぁな、詳しい事情はその悪魔しか知らない。俺には考えもつかないね、自らの魂を別の奴に植え付けるなんて。失敗したら逆に自分が飲み込まれるだけなのにな。まったく、その悪魔の神経を疑うところだ」

「そこまでなんだ。ていうか、グレンが知らないこともあるもんなんだね」

「そりゃそうさ。俺だって全知全能ってわけじゃない。期待のし過ぎは禁物だぞ」

「そう、だね。そういえば、そのアグニを倒すのに必要な特定属性が何か聞いてなかった。確か、特異属性じゃないんだよね?だったら、何?」


 リベルが尋ねると、グレンは顔をしかめて椅子から立ち上がり、悩むようにリビング内をうろうろし始めた。

 何を迷っているのかはリベルには皆目見当がつかなかったが、グレンがあまり言いたがっていないのはよくわかった。

 それに、無理して聞き出したいほど、リベルは特定属性については興味がなかった。


「まぁ、いいよ。今すぐ言わなくても、また別の機会に教えてもらえれば」

「あ、あぁ、そうか。そうしてくれると助かる」

「うん」


 リベルの笑みを見て、グレンはほっとしたように一息ついた。


              ♢♢♢


「…………うぅ……まぶし」


 クレアは目を覚ました瞬間に見えた光の筋に、小さく呻いた。

 寝起きでいきなりの日の光は、目にあまりいいとは言えなかった。

 クレアは起き上がろうとしたが、どうにも体に力が入らず、何度トライしても再びベッドへと沈んでしまった。

 仕方なく寝たまま周囲を見渡してみると、そこは見慣れた王城内の自室だった。

 勇者というイメージから、人々はクレアの室内は物々しく勇ましい様子であると思っている節があるが、実際にはそうではなく、クレアは室内をかなり色鮮やかにしている。

 一応剣を置いていなくもないが、それ以上に他のものが目立つ。

 内装は鮮やかなピンク色で、部屋の至る所にぬいぐるみが置かれ、特にクレアが気に入っているのが、部屋の中央のソファーに大きく陣取っているくまのぬいぐるみ、タディーだ。

 この部屋が王国最強と言われる勇者の自室であるなど、誰がわかるものか。

 これでは女の子らしさを全開にした王女と見分けがつかない。

 それについて文句を言われることはあった。

 いくら他の人が見ないからと言って、せめて勇者らしい部屋にしろ、と。

 しかし、クレアは何度そう言われても変えようとせず、あろうことかさらに女の子らしさを増やすという抵抗を見せ、ようやく諦めて誰も文句を言わないようになったのだ。

 この部屋にいるということは、帰ってきたことを意味した。


「よかった……」


 真っ先に、クレアは自分が生きてここにいることがうれしかった。

 これでまた、いつもと同じような日々を送れる。


「本当によかった。生きてて。やっぱり、このままってのも嫌だったからね。あの子には感謝しないとね」


 クレアが言うあの子、とは銀髪碧眼の少年、リベルのことである。

 リベルは記憶がないようだったが、クレアにはあの時起こったことの一部始終を覚えていた。リベルがいなければ、アグニ討伐は不可能だっただろう。

 クレアはその時のことを思い出す。


              ♢♢♢


 リベルが炎に包まれたのを見て、クレアはショックを受けた。。

 当然だ。守るべき人間だったリベルを、結局守ることができなかったのだから。

 クレアは、リベルが炎に飲まれる直前に動かなくなった自分の体を呪った。


「くそっ……」


 原因は何となくわかっている。

 ここまで戦ってきた疲労もそうだが、それ以上にさっきから尋常じゃない魔力回復量に頼って大量の魔力を使っていたからだ。

 使っている最中に感じていた。

 この力は、諸刃の剣だ、と。

 使い続ければ、必ず自分の体にガタがくる。

 それでも、クレアは使い続けた。守りたいものを守れるだけの力が必要だったから。

 しかし、結局最後の最後で無理をしたせいで守れなかった。

 もうどうすればよかったのか、どうすればいいのかわからなくなり、クレアは熱い地面をたたき続けた。

 地面につく膝が熱い、手が熱い、叩いた手から血が滲む。

 だが、それがどうした。

 この程度のことが、ここまでに死んでいった人の苦しみに適うわけがない。

 悔しくて、悔しくて、悔しかった。

 どうすることもできない自分が。

 もう立つことができなかった。

 まだ体が動いたなら、戦えただろう。

 しかし、もう動かないという事実は、容赦なくクレアの精神を痛めつける。


「っ?」


 そんな時、うつむくクレアの視界に影が入った。

 見上げると、今なおリベルを飲み込み続ける炎の中から、一か所だけ虹色に光り輝く部分があった。

 瞬間的に、クレアはそれがリベルだと思った。

 クレアは必死にそれを見る。

 クレアの後方で炎がまだ炎を噴出し続け、勢いが一向に収まる気配がない。

 それに対して、虹色の光も徐々に強く、大きくなっていく。

 まるで、炎の魔力を吸っているかのように。

 炎が噴出し続け、光が強くなり続ける。

 その均衡はしばらく続いたが、先に勢いが緩んだのは、炎の方だった。

 クレアの後方で炎が膝をつき、噴出する炎が止んだ。

 そして、虹色の光がひと際強く輝くと、その中から一人の少年がゆっくりと降りてきた。

 それはおそらく魔力によって落下速度を緩めているのだろうと思われたが、虹色の光と相まって、神々しい雰囲気を醸し出していた。

 少年は地面に降り立つと、ゆっくりと足を進める。

 クレアはリベルをじっくりと見る。

 リベルの体を虹色の光が覆い、綺麗な銀髪がその光を際立たせているように見える。

 そして、リベルの碧眼は、光と同じ虹色となっていた。

 その姿は、人間であるのに人間離れしていた。

 リベルは歩き続け、クレアの横を通り過ぎる。

 どうやら用があるのはクレアではなく、炎の方。

 近くで見てみると、リベルの表情はどこか機械的で、まるで無意識のようだった。

 リベルが近づく炎は、最初に出現したときに感じていた魔力がほとんど感じられず、まるでもうすぐ燃え尽きる灯。

 それでも十分な魔力を持ってはいるが、今のリベルから感じる魔力と比較すると、その差は歴然だった。

 リベルは炎の前で立ち止まると、右手を前に出した。

 そして、それを何かゴミでも払うかのように軽く払うと、炎が一瞬で消え失せた。

 クレアには何が起こったのかわからなかった。

 気配から察するに、間違いなく炎は倒せたと思うのだが、その実感が湧かない。

 目の前の状況が規格外すぎて、どう考えれば説明がつくのかわからなかった。

 クレアが畏れを感じてリベルを見ていると、リベルを覆っていた光が消え、力尽きたようにその場に倒れた。


「ちょっ……大丈夫!?」


 クレアは重い体に力を入れて立ち上がろうとするが、それは無理で、いくらか進もうとして地面に倒れ伏してしまった。

 クレアの視界がかすむ。

 依然として魔力は回復し続けているが、クレアももう体力の限界なのだ。

 かすむ視界の中で、規格外の少年へと手を伸ばす。

 一体どんな人なのだろう、何なのだろう、名前も聞いていなかった。

 聞きたいことが山ほどできたクレアだったが、伸ばした手は届かず、意識を失ってパタリと力が抜けた。


              ♢♢♢


 クレアは思い出して、再びあの時に感じた畏れが戻ってきた。

 何なのだろうか、この感じは。

 アグニを見た時は恐怖を感じたが、それとはまったく別のもの。

 あのような感覚はクレアには経験のないもので、それを面白く思った。

 クレアは口元に笑みを浮かべ、銀髪の少年を思い浮かべる。


「また、会えるかしらね……」


 そう呟くと、不意に廊下からバタバタと騒がしい音が聞こえてきた。

 その音はクレアの自室のドアをノックもなく開けた。


「クレアっ!!」


 あぁ、そうだ。これがよかったのだ、とクレアは思った。

 ドアの前にはアスティリアがいた。

リベルの力は一体何なのか。神の子とは一体何なのか。

それについては、第一章の最後辺りで明かされることと思います。

それまで、予想していてください。

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