表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虹の調律師 ~光と調和の軌跡~  作者: 二一京日
第一章 旅立ち、そして新たな日々
19/230

第18話 朝

今回は会話多めです。かなり気が楽ではないでしょうか?

「…………うぅ……まぶし」


 リベルが目を覚ますと、目に光が入ってきた。

 手で光を遮りながら光の方を向くと、どうやら窓から入ってくる光のようだった。

 外は静かで、何かの鳥が鳴いていることから、今は朝なのだと思った。

 そして、リベルは体を起こすと、周りを確認する。

 そこは見慣れたいつもの、リベルが寝起きしているナルゼの自宅だった。


「どうして……さっきまで、僕は……」


 リベルは記憶を辿ろうと、眉間に手をやる。

 少しずつ手繰っていって、おぼろげな記憶を呼び覚ましていった。

 そして、思い出した最後の瞬間。


「そうか、僕は……炎に飲まれて……」


 炎に飲まれて勇者が何かを叫んでいたのは覚えているが、その後が思い出せない。

 あの時、リベルは自分が死んだと思っていた。

 ならば、今のこの心地よい場所は死後の世界とも言えるのかもしれない。


「そうか。まぁ、こんなに穏やかなら、死後の世界も居心地良さそうだね」


 そう思った矢先、ドタドタとかけてくる音が聞こえ、大きな音を立てて扉が開け放たれた。

 静けさの中に突然現れた騒々しさに、リベルは驚きの表情を浮かべた。

 当然、出てきた顔は見慣れていたため、あまりの突然のことに、という意味だが。


「ようやく起きたんだな、リベル」

「君は騒々しいね、グレン。どうやって嗅ぎつけたんだか」

「目覚めた早々にそれかよ。まぁ、お前らしいと言えばらしいが」

「そりゃ、どうも」


 いつもと変わらない軽い調子で言い合った後、二人して笑い出した。


              ♢♢♢


「それで、結局どうなってるのか聞きたいかな」


 場所を寝室からリビングへと移し、グレンが淹れてくれたお茶をすすりながら、リベルは切り出した。


「どうなってるっつっても、お前は何を聞きたいんだ?」

「う~ん、全部、と言いたいところだけど、それをグレンに要求しても無駄だしなぁ」

「寝起きのくせに、結構頭が回るんだな」

「あれだけ騒がしくされたら、逆にこっちが冷静になる」


 あれだけ、というのはグレンが寝室に入ってきたときの慌てようのことだ。

 あの時は焦りに焦りまくったグレンという、いかにも珍しい絵が見れていたことに、後々になって気付いて、記録できなかったことを残念に思ったリベルだった。


「まぁ、それは置いといて……そうだなぁ、グレンがどういう状況で僕を助けたのか聞きたい」

「助けた、か。俺はただ単に、倒れていたお前をここまで連れてきただけだからなぁ」

「あれ?炎の化け物とは戦ってないの?」

「炎の化け物……アグニのことか?いや、見てないな。俺が行った時は、倒れているお前と赤毛の女がいただけだが」

「そうなんだ。それで、その赤毛の女はどうしたの?」


 リベルはその女が勇者であると確信していた。

 その勇者に対してグレンがどんな対応をしたのか気になった。


「あのまま放置するのも気が引けたんでな。一応、王城前に放置してきた。俺の姿は見られていないと思うから安心してくれ」

「そこで安心するのは、君だけだと思うけど……まぁ、いいか。とにかく、無事であるならそれは良かった」

「良かったじゃねぇんだよ」


 静かに、だが確かに苛立ちを表しているグレンを見て、リベルは体に力が入った。


「お前な、攫われるようなことがなければ、こんな厄介ごとに巻き込まれてねぇんだぞ?」

「それは、その、迷惑をかけて申し訳ない」


 リベルは素直にグレンに頭を下げた。

 いくらリベルが一方的に悪いわけではないにしても、心配も迷惑もかけたことは事実であるため、謝罪するのは当然のことだ。


「あぁ、確かに迷惑はかけられたな。心配もかけられたな。ただ攫われるだけならともかく、なんでアグニとかいう討伐不可能生物の所にいたんだよ?」

「それは僕にもわからないんだよね。連れて行かされたみたいだけど、目を覚ました直後に、アグニが出てきたからね。それより、討伐不可能生物っていうのは、単なる例え?」


 リベルとしてはそこが気になった。

 グレンの言ったことが例えであったならば、それはいいだろう。ただ倒すのにとんでもなく苦労するということなのだから。

 しかし、例えではなかった場合、アグニはいまだに討伐されず、この世界のどこかにいる可能性がある。

 そんなリベルの考えを読んでか、グレンが口を開いた。


「お前の懸念通りにはならねぇよ。俺も確認したが、アグニは間違いなく死亡、討伐された。今回みたいに復活することもないだろうな」


 グレンの言ったことに、リベルはひとまず胸を撫で下ろした。


「それは良かった。なら、王国の計画も成功したってことだね」

「あぁ、それが不可解なんだよなぁ」

「不可解?どういうこと、グレン?」

「いや、俺が言った討伐不可能生物ってのは、別に例えじゃなく、事実その通りなんだ」


 リベルには、グレンの言っていることに理解が及んでいない。

 なぜなら、今。


「アグニが討伐されたって言ったよね?なのに、アグニは討伐不可能生物ってどういうこと?」

「そこが少し説明が難しいんだが、簡単に言うと、アグニは別に討伐できないわけじゃないんだよ。現に今回は討伐されたわけだしな。だが、討伐するには特定の条件がなければ不可能なんだ。もっと言えば、特定属性の魔法でないと、アグニを倒すことはできない」

「特定属性?」

「あぁ、そうだ。魔法にはそれぞれ属性っていうのがあるのは知ってるな?火、水、雷、土、風、影、光の七属性に、特異属性という他とは違う属性、全部で八つ。これが魔法の常識だ」


 グレンの言ったことに、リベルは頷いた。

 その程度のことなら、魔法に疎いリベルでも知っていることだった。


「うん。もちろん」

「普通に火を出したり、水を出したり、風を操ったりと、バリエーションは様々。まぁ、特異魔法はその数が少ないし、使える奴はそう多くはないがな。ちなみに、俺の転移魔法は特異魔法だ」

「へぇ。じゃあ、アグニを倒すのに必要な特定属性って特異属性のこと?何か特別感があるけど」

「まぁ、特異魔法が特別な魔法なのは認めるが、残念ながらアグニを倒すのに必要なのはそれじゃない。もし、特異魔法が必要な条件だったとしたら、大昔に人類が絶滅の危機に瀕するわけがない。先代の勇者も負けることはなかっただろうな」

「負けたって、アグニの自爆で相打ちじゃないの?」

「いや、違う。確かに、勇者は倒されてアグニも倒されていれば、それは相打ちだろうよ。だがな、アグニが倒れたのは、あくまで竜の方だ。その魂まではやられていなかった。そして、だからこそ今回アグニが復活した」

「竜と魂って、つまり、アグニは二体いるの?」

「二体、とは違うな。そもそも、リベルはアグニについてどれくらい知ってる?」


 いきなり投げかけられた質問に、リベルは戸惑いながらも、頭の中にある知識を引っ張り出してくる。


「えっと、大昔に暴れまわった竜で、人類を滅亡寸前まで追いつめた。たしか、体は赤い竜で火を噴いて、体長は……」

「もうその辺でいい。外見の特徴が出てくるってことは、もうお前が知ってることはないな」

「バッサリと切り捨てるね。事実だから言い返せないけど」

「そう言うな。まず、お前の知識の中に、アグニがどう呼ばれていたか、そんなのはないか?」

「どう呼ばれていたか?確か、災厄、悪魔の竜、だったっけ?」

「その通り。じゃあ、アグニが何で悪魔の竜と呼ばれているか、お前にはわかるか?」

「いや、わかってたらさっき言ってるから」

「じゃあ、予想でいいぜ。突飛な発想を言ったら当たるかもしれねぇぞ?」

「え?悪魔ってのはその所業がどうこうって話じゃないの?何か突飛な発想、突飛な発想……そうだ」

「何か思いついたか?」

「うん。悪魔って呼ばれる理由は、昔、悪魔だったから、とか」


 リベルの答えを聞くと、グレンは机に突っ伏して頭を抱えた。


「えっと、やっぱ間違ってる?」

「あながち間違ってない」

「ホント?」


 リベルが喜びの声をあげると、グレンは体を起こして頷いた。


「あぁ、まさか半分正解の所まで来るなんてな」

「半分なんだ。ちょっと残念」

「そう言うな。こんなの正解する方がどうかしてる」

「ふ~ん、それで正解は?」

「そうだな。アグニが悪魔の竜と呼ばれる理由、それは、悪魔に乗り移られた竜をアグニと呼んだからさ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ