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虹の調律師 ~光と調和の軌跡~  作者: 二一京日
第三章 獣人界へ
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第144話 差別、迫害

今回は、文字列がダラーと並んでいます。

苦しかったら、スルーで。

 人とは一体何なのだろうか、という疑問は、リベルの中で常に渦巻くものだ。

 そして、それはその重要性の大小はあるにしても、人々の心の中にあるものだ。

 それは人間族でも、獣人族でも、魔族でも何も変わらないものだと、リベルは思っている。

 もっと言えば、自分が何者であるかを考え、他者が何者であるかを考えるのは、生きていくうえで大切なことなのだ。

 それのせいで、自分の身勝手な考えを押し付けるものが多いには、リベルとしては悲しいことなのだが、別にリベルは人々を統括するような立場にはなく、そんなことを言うのは的外れと言われてしまうかもしれないというのを自覚している。

 また、そうして他者を迫害することに関しては、人間族は素晴らしい才能を持っているというのが、リベルの嫌味たっぷりな感想だ。

 そして、その素晴らしい才能を持っている人間族の一人であるということに、リベルは少なからず残念に思うところがある。

 今ラスカンで行われている、大武闘大会。

 それは解放された獣人族奴隷たちへのお祝いということで、とてもよく賑わっている。戦いということではあるが、それを楽しんでみる者が多く、また戦っている者も自分の意志でやっているのだ。

 言葉だけで表現するのなら、そういうことは人間族にもあることだろう。

 あくまで、言葉だけで表現すれば、ということだが。

 結局のところ、種族によって生き方が変わってくるのは仕方のないことで、当たり前のことで、そしてそれを互いに受け入れることが生きていくことで当然のことなのだ。

 それがどうにも、今の世界では成されていないことが、リベルには心苦しい。

 もちろん、全ての人々が互いを認めることができないということは絶対になく、どこかで他種族を認めている者はいるはずだ。

 世界の雰囲気を感じるに、それを公にすることは難しいことなのだが、それでもいることに間違いはないはずだ。

 しかし、その声をどの種族も聞こうとしない。

 リベルとしては、そのことで獣人族と魔族に同情せざるを得ない。

 いや、同情という表現自体が、侮辱に当たることがある。ここは逆に、人間族側は理解できない、というのがリベルの見解だ。

 互いを認めないというのは、どの種族も同じ。

 では、どこが違うのか、という所に立ち返るのだが、それは先ほど述べたとおり、人間族が常に迫害する側なのだということだ。

 人間族があからさまに嫌悪するのだ。

 そして、他種族は自分たちを嫌悪する人間族を嫌悪する。

 こうなると、人間族の方がリベルには大人気ないように見えてしまうのだ。

 どうあっても、認められないなどということはないはずなのだ。

 実際、その実例は存在する。

 過去には、人間族と獣人族に関しては、一時期友好的な関係を築こうと政策が打ち出されたことはあった。

 しかし、表向きはそれを認めても、心の奥底では認められるような者はあまりおらず、その政策は打ち切りとなった。

 そのために、今のように形ばかりの友好関係が結ばれている。

 一応、友好という言葉を使っているが、それがただの詭弁であることは、残念ながら両国が暗黙の了解としているものだ。

 その結果が、いまだに改善しない他種族同士の因縁。

 こういう時も、リベルは人間族の考えは理解できない。

 なぜ、他種族を認めることができないのか、不思議しかないのだ。

 言葉上では、リベルはそういう人たちの言い分は知っている。

 つまるところ、見た目が自分とは違う、という所に収着する。

 だが、それがどうして迫害する理由になるのかが理解できないのだが、迫害する側はリベルの理解できない途中経過をすっ飛ばして、見た目が獣に依っていることから、薄汚いとか、人ではないとか、気持ち悪いとか、そういった偏見へとつながっている。

 これが平民へと伝わっていることから、長い間の風習は嫌な意味で人々に根付いてしまうのだなと理解してしまう。

 リベルは途中経過がわからない。知ろうとしても、誰も途中経過があるということすら意識しない。

 まるで息をするように、見た目が違うと、全面的に悪いということになるのだ。

 それに対する意見は、やろうと思えばいくらでも出すことができる。


 例えば、他種族でも意思の疎通が問題なくできる。

 例えば、他種族でも、しっかりとした国土を持ち、王を持ち、政を行っている。

 例えば、感情がある。

 例えば、人間族は他種族を奴隷として使っている。

 例えば、形ばかりとは言え、友好関係を結ぶこともできる。


 簡単なのでも、こんなものだ。

 奴隷として扱っていることを、肯定するつもりはリベルにはないのだが、それでもリベルは奴隷というものに対する考えからが普通の人とは違う。

 どうあっても、人々は魔物や魔獣を奴隷としては扱わない。

 だからこそ、不本意ながら、奴隷として扱うことが、意志ある者として扱っていることになるとリベルは考えている。

 もっとも、これらの意見は、どうやっても感情論で押しのけられてしまう。

 リベルはそれが理解できない。

 実際、他種族がどれだけの実害を人間族に与えているのか。

 元をただせば人間族の方に非があるというのに、それを直そうとしない。それどころか、認めることすらしない。それなのに、相手の否定だけはする。

 それこそが、この世界においての人間族の在り方だ。

 そのことに、リベルは吐き気がする。

 なぜ、人間族は人間族だけであろうとするのか。

 それがわからない。

 見た目が違うなど、些細なことではないのか。

 例えば、同じ人間族でも髪の色が違ったり、目の色が違ったり、生まれが違ったり、性別が違ったり。

 そう言う違いがあれば、人間族の中でも優劣くらいは出てくるが、それでも他種族への仕打ちほどひどくはない。

 それを認めることが、リベルにはできない。

 どうしてなのかは、リベル自身にもよくわからない。

 ただ、気付いたときにはリベルには、他種族への偏見など一切なかったのだ。

 周りがそういうことに敏感なのに気付いて、自分はどうなのだろうかと考えた時、その偏見は全くリベルにはなかった。

 だから、リベルは他種族とも打ち解けることができるということなのだろう。

 アンナのことも含めて、エクリア王国での獣人族のリベルへの反応。

 最初は他の人間族たちと同じような反応だったが、徐々にリベルへの風当たりが変わっていき、そして、アンナに至っては今は一緒にいるくらいだ。

 本当に、人生は何が起こるのかわからない。

 そして、そう考えると、リベルは少し複雑に思うところがある。

 リベルたちのメンバーは種族に関係なく共に過ごすことができるが、よく考えてみると、英知の神託教団の人たちも同じようなものなのではないだろうかと思える。

 あそこには、何も人間族ばかりがいるというわけではなく、ナッシュのような獣人族もいる。魔族がいる可能性も十分にあり得る。

 なら、陰で世界を混乱へと誘おうとしている組織が、もっとも種族間のいざこざが起きにくいという皮肉が生まれてしまう。

 いや、皮肉というより、必然となってしまうかもしれない。

 おそらく、英知の神託教団は目的を一つに絞っているのだろうと、リベルは予想する。

 そして、絞っているからこそ、そこに集う者たちは意志の統一が初めからできている。意志が統一されていれば、種族の違いなど大した問題でないのは当たり前のことかもしれない。


(結局のところ、世界が一つになるのは……世界が幸せになるのは、かなり先のことになるのかな?まずは、人間族から変わっていかないとどうしようもないことは確実だけど、それができているなら、もうとっくにそうなっているだろうしね。政治のことはよくわからないけど、そういう考えができてしまう人は、政治の中枢から外されてしまうだろうし……。まったく……国を治めている人たちの方が、国を混乱に陥れかねないとは、これこそ皮肉かな。シュトリーゼは大分ましな方だったけど、他ではどうなんだろう?別に、エクリア王国だけじゃないからなぁ)


 リベルは悩みに悩むが、それでも答え何て出ないことは、リベル自身良くわかっていた。

 それでも悩んでしまうところ、リベルも納得がいかないのだろう。

 そうして悩んでいると、いつの間にか今日の試合は終わっていた。

 一応、重要なクレアとグレンの試合は見ていたので、それだけでもよしとした。実際、二人以外には、特に興味はないことでもあるし。

 観客が各々立ち上がるのに合わせて、リベルたちも観客席がから立ち上がり、出口へと向かった。

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