その2
小学生の頃から野球をやっていたが、野球部には入らないつもりでいた。
中学野球はきっと厳しいのだろう・・・。
そう考えていたから野球部に入る気はなかった。
でも、他の小学校から来た佐久間に野球をやっていたことを話したら
その日の午後に練習見学に連れて行かれた。
僕はいつの間にか野球部に入り、佐久間はテニス部に入部していた。
ボール拾いをする日々だった。
自宅に帰ると、親からは「練習どうだった?」と聞かれる
ボールしか拾っていないのにどうもこうもない。
入部してから1週間が経った頃、僕にも打撃練習をするチャンスが訪れた。
というよりも、新入部員の実力を見るためのテストも兼ねている。
そこで僕はホームランを打ってみせた。
左利きだったから、ライトスタンドはレフトスタンドより遥かに近かったのだが
それでも防護ネットを越えたのだからホームランに変わりはない。
家に帰るとすぐに僕は自慢をし、父親も母親も喜んでくれた。
この頃は純粋だったのかもしれない。
その時のホームランが最初で最後だった。
結局僕は3年間でホームランはその1本だけ。
80キロに設定されたスローボール相手に打ったホームランだった。