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第6話 そこまで堅物の朴念仁だったか

「おい! まだ返事は来ないのかっっ!!」


 東宮殿の一室では、スシーマ王子が世界を模した珍妙なオブジェの周りをさっきからうろうろと歩き回っていた。


「はあ。今日のところはまだ何も……」


 ナーガは困ったように三日月のような目を更に細めた。

 頭の蛇二匹も可愛らしく小首を傾げた。


「お前の手紙の書き方が悪かったのではないのか?」

「スシーマ様にも事前に見せたではありませんか。

 これでいいと満足気に言ってらっしゃったくせに」


「では届いてないのではないのか?」

「いえ、侍女の一人が直接手渡したそうですから、それはないです」


「では何か? マガダの皇太子である私に関わる手紙を無視したと、そう言いたいのか!」


 ナーガはやれやれと深いため息をついた。


「スシーマ様、あちらの姫君にもプライドがございますから。

 やはり自分から謝って結婚して下さいとは頼めないのではないでしょうか。

 スシーマ様も言ってたではありませんか。

 もし自分が神妻だったなら、敵国の王子に嫁ぐ前に自死すると。

 自死は出来ずとも、あの姫はそのぐらいの覚悟は持っているでしょう」


「う、うむ。それは確かに……」


 よくよく考えてみれば、あの意志の強い姫が敵国の王子に頭を下げる訳がなかった。


「で、ではどうすればいい?」


 このままでは弟王子に手篭めにされるか、切り捨てられるかだ。

 それを想像しただけで、眠れぬ日が続いていた。


「正直にスシーマ様の想いを伝えてはどうでしょうか?」


 ナーガの言葉にスシーマは怪訝に眉をしかめた。


「私の想い? いったいどんな想いだ?」


 ナーガは呆気あっけにとられたような顔をした。

 頭の蛇も呆れている。


「どんなって、もちろん妻になって欲しいという想いですよ」


「な?!!」


 スシーマは側近の言葉に一時いっとき固まった。


「バ、バカを言うなっっ!!

 誰が妻になって欲しいなどと言った!

 私はあの姫が気の毒だから人助けのつもりで妻にと言ってるだけだ!

 勘違いするなっっ!!」


 ナーガの方こそ想像以上の堅物王子の鈍感に頭を抱えた。


 気付いてないのだ。


 これほど気になって、瞑想の時間を忘れるほど頭の中を占領されているというのに、それが恋だと気付いてない。


(そこまで堅物の朴念仁ぼくねんじんだったか……)


 呆れるのを通り越して絶望を浮かべた。


「も、もういいっ!!

 あんな女、アショーカに手篭めにされようが切り捨てられようが、好きにすればいい。

 私の知った事ではない!」


 あーあ、とナーガはがっくり肩を落とした。


「では、今度の鹿狩りで正妃を選ぶのですね?

 鹿狩りで誰も選ばなかったら、王も重臣も黙ってませんよ」


「う……それは……」


「もういっその事、ユリ様にお決めになったらいかがですか?

 そうすればみんな納得するでしょう。

 正妃さえ決めてしまえば、後で好きな女が出来たら側室にすればいいのですから」


「ユリを不幸にするではないか」


「ユリ様はスシーマ様の正妃に選ばれない事こそが不幸ですよ。

 誰でもいいならユリ様にお決め下さい」


「形だけでもという事か……。

 それでもユリは幸せだろうか?」


「たぶん幸せでしょう。

 今のまま宙ぶらりんで放っておかれるよりは」


「私はユリだけは抱けぬぞ」


「知りませんよ。

 私にそんなこと宣言しないで下さいよ」


 ナーガはもう一度大きなため息をついた。



次話タイトルは「少し傷ついて助けを請えばいい」です

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