第三話 ドラゴン
「お前ら俺の縄張りでなにやってんだ?」
赤いドラゴンからの問いに俺たちは誰も答えられなかった。恐怖で口を開くことが出来なかったのだ。だが俺の体はゆうことを聞かないが頭は以外と冷静に周りを見ることが出来ている。これも神が精神力つよくしてくれたおかげだろう、転生する前の俺じゃ気絶しててもおかしくない。
ドラゴンは俺たちの前に着地した。
「おい答えろよもう一度聞くぞ?俺の縄張りでなにやってんだ?」
これは早く答えなきゃまずい、これ以上ドラゴンの機嫌を損ねるわけにはいかない。そう思って口を開こうとした時俺よりも早く答えたやつがいた。
「申し訳ありません火龍様実はこちらの2人は貴族を殺した罪人でありまして私たちはこやつらを捉えるために追っていたのです。縄張りに入ってしまって申し訳ありません。私達はすぐにこの場を立ち去ります」
「そうなんです‼︎俺たちは罪人であるこいつらを捕まえようとしてたんです‼︎」
「その通りです‼︎」
「ちょっと‼︎なに適当なこと言ってんのよ‼︎」
ローブの男が俺達を罪人と嘘の発言をしてそれをすぐにダズとダガーを持った男が勢いよく肯定した。
「それで?自分達は悪くないから見逃して下さいってか?」
「もちろんタダでとは言いません。そちらの者達は罪人ですので好きにしてくださって構いませんのでどうか見逃して下さいませんか?」
まずいなドラゴンが向こうの言うことを信じたら俺たちは殺される。俺が弁明しようとするより早くドラゴンが口を開いた。
「俺はな耳がいいんだ、普段それで縄張りに入ってきた人間がなにをしに来たか探ったりしてんだよ。お前らが言ってることは俺が聞いた話しと大分違うんだが?」
「いえ、それは……その…」
男達はまた冷や汗を流し始めた。
「そう違うんです。本当は…」
「黙れ、俺に嘘をつくとはいい度胸だな死ね」
「待ってくだ…」
ドラゴンはそう言って男達に向かって火を噴いた。3人は一瞬で火に飲み込まれて跡形も無く消えた。その熱風だけで肌が焼けるように熱い。
俺がさっき助けた女はそれを見て震えている。俺も体の震えを止めることが出来ないが冷静な頭は生き残る為に必要な情報を集める。
「で?お前らはどうすんだ?さっきあいつらは色々言ってたが実際俺には罪人だとかはどうでもいいんだ俺の縄張りに入ってきたことが問題なんだからな」
「つまり、俺たちを生きて返す気はないってことか?」
「ちょっとあんたなにタメ口きいてんのよ‼︎」
「別に大丈夫だろ、気にしてないっぽいし」
「まあ喋り方はどうでもいいが前に縄張りに入った人間を見逃したら面倒くさいことになったからあんま返したくねえんだよな、それに殺されても入ってきたのはお前らだから自業自得だろ」
ドラゴンはあまり俺たちを返したくないらしい。ていうか俺ここがドラゴンの縄張りって知らなかったんだけど、でも余計なこと言って嘘ついてるってことになったらヤバそうだから言わない方がいいな、俺以外の4人が知ってたっぽいからこの世界の常識なのかもしれない。
「あっじゃあそうだな、お前その女のこと助けようとしてたよな、その女をここに置いて行くって言うならお前は帰っていいぜ?」
ドラゴンは俺にそんな提案をしてきた、その提案が本当かは分からないが、俺にはなんと答えるのか面白がって観察しているように感じた。
「そんな……」
女が絶望した表情をして呟いたが、その表情はすぐに決意を決めた者の顔に変わった。
「そうよ今までだって1人で戦ってきたじゃない、どうせ死ぬなら1撃でも入れてやる」
女の中では自分はもう見捨てられることで決まっているっぽいな、まあ普通さっき会ったばかりの名前も知らない奴が助けてくれるとは思わないか、俺がそんなことを考えてる間に女は武器を持つ手に力を入れて攻撃するタイミングをうかがっているようだ、おっと早く答えなきゃ取り返しがつかなくなるな、俺はドラゴンを正面から見つめながら言った。
「断る」
「え?」
「ん?」
女は俺の答えが信じられないのか驚いた顔で俺を見つめている、ドラゴンも予想と違ったのか疑問の声をだしている。
「聞こえなかったのか?俺は断ると言ったんだ」
「なんでだ?聞こえてきた話しだと別に仲間って訳でもねえんだろ?」
「ああ、別に仲間じゃないなでもそれは助けない理由にはならないだろ」
「確かに助けない理由にはならねえが助ける理由はねえだろ」
「別に誰でも困ってる人は助けようなんて訳じゃないがたまたま目の前で襲われてて助けちまったんだそれを途中でやめるのもどうかと思っただけだ」
「そんな理由で命を捨てるのか?」
「別にこいつを見捨てないって言っただけだ死ぬ気は無い」
「お前みたいな人間には初めて会ったな。で?お前はこれからどうするんだ?命乞いでするか?俺を倒すか?」
さて、このままじゃどうせ殺されるし一か八かの賭けをしますか。
「じゃあ俺と勝負をしないか?」
「勝負?お前俺に勝てるとでも思ってんのか?」
「まさか、そりゃ普通に戦ったら負けるさだから勝負内容はお前の撃った魔法を俺が防げたら勝ちってことにしてくれないか?それで俺が勝ったら俺たち2人を見逃してくれ」
まずは最初の賭けだドラゴンがこの勝負を受けてくれなかったら終わりだ。
「あっははははは‼︎本当に面白い人間だなこの俺に勝負を挑むのかそれに俺の魔法を防ぐ?いいね!その勝負を受けてやるよ!」
よし、後は俺がこいつの魔法を防げるかだが俺には収納魔法があるなんとかいけるはずだ。
「追加で1ついいか?お前は本気の1撃を撃ってくれて構わないそのかわり俺がお前の魔法を防げなくてもこの子のことは助けてくれないか?」
「しかも俺の本気かよ‼︎ははっ‼︎本当に面白いな、いいぜその女のことは見逃そう」
よし、これで俺が失敗してもこいつは助かるな、俺のミスで死なれるのは嫌だからな。
「ねえ、なんで私を助けるの?あの状況で見捨てても別にあなたを恨んだりしなかったわ誰だってあの状況だったら逃げるもの、勝負なんて無茶よ火龍の魔法を受け止めるなんて絶対に無理よ、それにわたしだけ助かるなんて…」
女が俺を心配している顔で声をかけてきた。
「さっきも言ったが1度助けちまったんだ途中で投げだすのが嫌だっただけだ、それにまったくあてが無い訳じゃ無いお前もさっき見たろ?」
「あのファイアー・ボールを消した魔法のこと?でもいくらなんでも無理よ、火龍の本気の1撃は昔に国1つを1撃で跡形も無く消し飛ばしたっていう記録が残ってるのよ」
「そりゃ凄いなでもなんとかするさ」
「なんでそんなに余裕そうなのよ‼︎死ぬかもしれないのよ‼︎なのに…」
女が俺の肩を掴みながら声を荒げてきたがその言葉は途中で止まった、俺の体が震えていることに気がついたのだろう、頭は冷静でいくら言葉で強がっても体は正直だずっと震えを止められない死ぬかもしれないんだ怖くないはずがない。
「確かに死ぬかもしれないな、あの魔法が通用するかなんて分からないし、でも何もしなきゃ死ぬんだだから絶対にあいつの魔法を防いでみせる」
「あなた……分かったわ私は火龍相手じゃ何も出来ないしね、でもあなたが死んでわたしだけ生き残るなんて納得いかないだから私はあなたの後ろにいるわ」
「それじゃ俺が魔法防げなかったらお前まで死んじまうだろ」
「あなたがいなきゃここで殺されてたわ、ならあなたの可能性に賭ける、自分だけ生き残るのなんてごめんだわ」
その顔はさっき火龍に挑むのを決心した時と同じ顔をしていた、これじゃ俺が何を言っても聞かないだろう。
「分かった、そこまで言うなら止めない」
「ありがとう、それと勝負の前に名前教えて貰える?」
「そいえばお互いに名乗ってなかったな。俺の名前は蓮だ。歳は17。」
「そんな余裕無かったしね、私はオフィーリア・フェルモンド、私も17歳よ」
「あらためて名乗ると変な感じだな。」
「ふふっ確かにね」
それは、出会ってから初めて見た彼女の笑顔だった、出会ってから時間は全然たっていないが張り詰めていた顔が緩んで歳相応の女の子の笑顔になっていた。
「準備は出来たか?それじゃあ始めるぞ?」
命を賭けたドラゴンとの勝負が始まる。