第二話 初めての異世界人
目を開けたらそこには綺麗な湖があった。
「え〜と、ここは森の中か?」
俺がいる場所は、周りは木に囲まれていて湖の周りだけ木は無く開けた空間が広がっていた。
ゴンッ
「ん?これが旅の道具一式と1週間分の食料か?」
俺が足をぶつけた物は干し肉のような物が入った木箱だった。他にも俺の足元には水の入っている皮袋や樽、ランプのような物や小さめのテントもあった使い方がわからない道具もあったがそれはこの世界でしか無い道具なのだろう。色の付いた液体が入ったポーションらしき物もあった。
「さて、これからどうするか」
ここが何処だか知るには探索でもしないとな、でも魔物がいる世界なら動き回るのは危険か?武器もなにも持ってないし、でもずっとここに居ても仕方ないし、取り敢えず収納魔法を使ってみてから考えるか。
俺は木箱を別の空間にしまうのをイメージしながら木箱に触れた。
「収納‼︎」
すると木箱の下に黒い円がでてきて木箱がその空間に飲み込まれた。
「おお‼︎1発で成功すると思わなかった、次は木箱を出してみるか」
俺は今、収納した木箱を思い浮かべて空間から出すのをイメージして手をかざした。
そうしたら、収納した時に出てきた黒い円が手の平に出現して、そこから木箱が出てきた。
「よし!取り出すのも問題なくできたな、他にも色々試してみるか」
収納魔法を試して、わかったのはこんな感じだな
・収納や取り出す事をイメージすれば声に出さなくても使う事が出来る。
・収納するときは体から15㎝くらいの距離じゃないと収納できない。
・収納するときは手じゃなくても体の何処かが収納できる距離に入っていれば収納することができる。
・草や木などの植物は生えている状態では、収納出来なかったが、草は抜いた後なら、木は折った枝なら収納出来た。
・石を上に投げて降ってきた石を収納してそれを取り出すと収納した時と同じ速度で出てきたことから収納する時に収納する物に力がかかっているとその状態で出てくる。
・収納する時に力がかかっていても出すときは収納した時とは力の方向を変えることができる。
・自分から5mの範囲なら収納したものを自由に出すことができる。
今わかったのはこれくらいだな、さて荷物も全部しまったし探索に行きますか!時間は太陽の位置的に昼ごろかな、森から出れなそうだったら今夜はこの湖で夜を明かすか、なんでかわからんがここには動物とか魔物がいないし。
「よし!行くか‼︎」
ガサガサッ
ん?なんだ?俺は音がした方に振り返った。
「はぁはぁ、貴方は誰‼︎どうしてこんな所にいる
の‼︎」
そこには、水色のセミロングの髪の女がいた、顔は凛々しく鋭い目つきをしているクール系でとても美人だ、だが体は傷だらけでまだ受けたばかりの傷なのか血を流しながら片足を引き摺っていて大分弱っているようだ、しかしその顔は活力を失ってはおらず、綺麗な緑色の光沢のある弓を構えながらこちらを睨みつけている。
取り敢えず質問に答えなきゃいけないがどうしようこんなに早く人と会うと思ってなかったから言い訳をなんも考えてない。異世界から来ましたなんて言っていいかわかんないし適当に誤魔化すか。
「え〜と、俺は蓮って言うんだが気づいたらここに居て、俺も何がなんだか分かってないんだ、それよりその傷大丈夫か?魔物にでも襲われたのか?」
「ここは赤の森よ?そんなに強い魔物がいる訳無いじゃない‼︎それに迷い込んで来るような場所でもないわ‼︎」
全然誤魔化せなかった、ていうかここって赤の森って言うんだ、そんな事より余計敵意剥き出しでこっち睨んできてる、さてどうしようか。逃げようと思えば多分逃げれるよな足引き摺ってるし、でも怪我した女の子を1人にするのもな〜、それに魔物以外で怪我するような事がこの森にあるってことだし、
俺が考えてる間も女は注意深く俺を見ているようだ。
「 クソッ!こっちの方にいるはずなんだが何処行った」
「ダズさんあんまり森の奥に入るのは危険ですよ、ここら辺は前に冒険者がやられた場所ですよ、あいつが来るかも」
「うるさい!あの女を捕まえて差し出せば大金が手に入るんだ、他の奴に横取りされてたまるか」
「ダズさん‼︎向こうから声がきこえました」
「よしっ!さっさと捕まえて森を出るぞ‼︎」
森の中から数人の男の声が聞こえた。
「もう来た、この足じゃこれ以上逃げるのは無理ね」
女は足を引きずりながらこちらに進んできた。
「あなたに構ってる時間はなくなったわ、あいつらとは関係ないみたいだしね、早く何処かに行きなさい巻き込まれるわよ。」
そう言って森の方を睨みつけ始めた。
「やっと追い詰めたぞお嬢様」
すると森の中から男が出てきた1人は鎧をつけた体格のいい男、声からさっき怒鳴りつけていた男だろう名前はダズだったか?その後ろにいる2人の男は黒い革鎧のような物をつけて腰にダガーをもっている軽装の奴とローブを着て手には130㎝ぐらいの杖をもっている奴も続いて森から出てきた。
「大人しく捕まって貰おうか、お父様が待ってるぞ」
「お母様を殺した男なんか父親だなんて思ったことないわ」
「まあ、無理やり連れてくからお前の考えなんてどうでもいいわ」
なんか俺を無視して話しが進んでしまっている。
まあ多分悪いのは男達の方っぽいな、さてどうしようか、あの3人と戦っても勝てなそうだな、武器もないし魔法も収納魔法しかないし。でもなぜか俺すげー落ち着いてるんだよな、もともと冷静な方だったけどこれが神の言ってた精神力を強くするってやつの影響なのか?
「ダズさん、あいつの陰に誰かいます」
「ん?誰だお前は‼︎」
ダガーを持った男に言われてこちらを見た。
無視されてるかと思ってたら気付かれてなかっただけか。
「ん〜、なんて言うんだろうな、まあ簡単に言うと迷子だな」
「おい、お前ふざけてるのか?女の前でカッコつけてるのか知らねぇが殺すぞ」
「なんでまだいるのよ邪魔だからどっかに行きなさい、あなたには関係ないでしょ」
両方からそう言われてしまった。
「確かに関係無いけど、女の子見捨てて逃げるのもどうかと思ってさ」
「あなたの助けなんかいらないわ、私は1人でも問題ない」
俺を睨みながら言っているが、これは強がりだろう、なんとか出来るならここまで追い込まれてはいない筈だ。
「無視してんじゃねえよ、まあそんな死にてえなら殺してやるよ」
ダズが剣を抜いて、こっちに進もうとしたがローブの男に何か耳打ちされて止められている。
「ダズさん、落ち着いて下さい。見た目はただのガキですけどこの森に荷物も持たずに1人でいるなんて不自然ですよ。見たところ武器を持ってるようには見えないので魔法使いの可能性が高いと思います。」
「なるほどな、じゃああの女に向かって魔法を打てガキはあいつを守りたいみたいだしな助けに入るだろう一応女に当たっても死なない威力にしとけポーションも渡されてるからある程度の傷なら大丈夫だ、それに連れて帰るにはもう少し痛めつけておかないと面倒くさそうだしな。」
「わかりました。それなら威力を抑えたファイアー・ボールあたりでいいでしょう。」
「ガキが魔法使いだった場合は3人でやるぞ違った場合は俺が殺す。」
向こうが話し合いをしてるうちにこっちもどうするか決めるか。
「なあ、ぶっちゃけあの3人と戦って勝てるのか?」
「だからなんでいるのよ、貴方には関係無いでしょ」
「さっきまではそうだったんだけどもう向こうは俺を殺す気満々みたいだから無関係でも無いんだよね」
「はぁ、自分から首突っ込んできたくせに。分かったわ質問に答えると今の状態で相手にするにはきついわね1人はなんとか倒せると思うけどそれが限界ね貴方は?」
「ぶっちゃけると俺はぜんぜん戦えない、俺じゃ1人も倒せないだろうな」
「なっ‼︎じゃあなんで出てきたのよ‼︎」
「言っただろ?ほっとけなかったんだってば」
「だからって出てきてもそれじゃ足手まといじゃない‼︎」
「しょうがないだろ、ほとんど成り行きだ…おい‼︎前‼︎」
「え?」
前を見るとローブを着た男が前にでて杖をこちらに向けて構えていた。その杖の先には赤いバスケットボールぐらいの火の塊が浮いていた。
「くらえ!ファイアー・ボール‼︎」
ローブの男の声と共に火の塊が俺の前にいる女に向かって一直線に迫っている。
「まずいっ‼︎うっ」
女は避けようとしたようだが足の怪我のせいで思うように動けないでいた、このままじゃ女に当たるそう思った俺は女と火の塊の間に駆け込んでいた。
俺は咄嗟に火の塊に手をかざして俺が唯一使える魔法を使用した。
「収納‼︎」
すると俺の手に黒い円が現れて火の塊を飲み込んだ。
「え?…魔法が……消えた?」
俺の後ろにいる女が呆然としながら呟いた。
「なっ‼︎おいっお前俺の魔法に何をした‼︎」
ローブの男が怒鳴りつけてくるが俺はそれどころじゃない。
まじか‼︎咄嗟に使ったけど収納魔法って魔法まで収納できるのかよ使えないって思ったけど実はすごい魔法なんじゃね?
ん?収納が出来たってことはつまり。
「おい答えろあんな魔法見たことないぞ」
「敵に教えるわけないだろ、それよりお返しだくらえ!」
俺はさっき収納した火の塊を相手の方向に向かって取り出した。すると思った通り火の塊は相手に向かって行って爆発した。
「クソッ!見たことねえ魔法だがやっぱり魔法使いだったみてえだな、さっき言った通りに3人でやるぞ」
ローブの男は咄嗟のことで避けきれなかったみたいだが戦闘不能になるほどのダメージは与えられてない。他の2人はローブの男よりも後ろにいたこともあり無傷のようだ。
「あなた魔法使いだったの?」
「うーん、まあそんなもんだ。それより今はあの3人をどうするかだ。」
取り敢えずなんとか、しのいだが状況はあまり変わっていない。相手も俺を警戒してか、まだ動こうとはしていない、早く倒す方法を考えないと。
俺がそう考えているとあたりに凄まじい咆哮が木霊した。
低い腹の底に響くような咆哮に俺は冷や汗が止まらなくなった、身体中が震えて動くことが出来なくなって立っているのがやっとの状態だ、俺の他の4人も俺と似たような状態になっているただ一つ違うのは、他の4人の顔には恐怖の他に絶望しているような感情も伺えることだ、もしかしたらこの4人はこの声の主がなんなのかを知っているのかも知れない。
咆哮が聞こえた次に、いきなり上から強風に襲われた俺は目を手で守りながら強風が吹いてきた方向を見た。
そこにはドラゴンがいた。
赤の鱗に全身を覆われた全長20mはあるであろう巨大なドラゴンがこちらを見下ろしていた。