第十五話 護衛依頼
今日はいよいよアウグスト様の護衛で王都に向けてカルダムを出発する日だ。俺が新技を開発してからはアウグスト様のところに行って俺の収納魔法で荷物を運べる事を教えて荷物の運搬も依頼にプラスされたり、マジック・ゲートで飛ばす石を大量にストックする作業や鍛冶屋に頼んである物を作って貰った。それは今の俺の奥の手になると思う。
「さて、それでは出発しよう、レンさんとリアナさんには私と同じ馬車に乗って貰うから」
「わかりました」
俺達は王都に向けて出発した。
馬車の中はアウグスト様と魔物の騒動の時に見かけた兵士の隊長が隣同志で座りそれの向かい側に俺とリアナが座っている、だが馬車がかなり大きいため窮屈な感じはせずゆったり座れている。他には御者とその隣には1人の兵士が周りを見張っている。俺達の馬車の他には4台の馬車がいてそれに6人ずつ兵士が乗っている。兵士は馬車の屋根から周りを見回したりして周囲を警戒しなが進んでいく。本当は他にも荷物用の馬車がある筈だったが俺の収納魔法で荷物を仕舞ったためなくなった。
「前に一度会っていると思うが私の領地の兵達をまとめてくれてる隊長のエドガー、レンさんリアナさんよろしくね」
「今紹介されたエドガーだ、隊長ではなくエドガーと呼んでくれ」
「Dランク冒険者のレンだ、よろしくエドガー」
「リアナよ、よろしく」
俺達はお互いに自己紹介を済ませた。
「隊長が来て領地の方は大丈夫なのか?」
「優秀な副隊長に後を頼んできているから問題ない」
「なるほど」
するとアウグスト様がエドガーに話しかけた。
「王都に行くのは1年ぶりだな」
「そうですね、去年もこのパーティーに参加なされた時でしたね」
俺は気になった事を聞いてみた
「王都であるパーティーって言うのはなんのパーティーなんですか?」
「貴族同志の顔合わせみたいなものだよ、1年に1度開かれて国王様の言葉を聞いたり、他の貴族との接点を作る場所でもあるね、普段合わない貴族同志がコミュニケーションをとることで貴族同志で協力してより良い国をつくれるようにと言う理由で始まったことらしい、それが今も続いているんだ」
「帝国の貴族とは大違いね」
リアナがそんな事を呟いた。
「帝国の貴族は自分の利益の事しか考えてない輩が多いらしいね、重税をかけられて苦しんでいる民が多いと聞くし、だけど王国の貴族にも自分の利益しか考えていない貴族が少なからずいるしね」
「帝国と王国って仲が悪いんですか?」
「おや?知らないかい?帝国と王国の不仲は割と有名だよ」
この世界では当たり前の事だったみたいだな。
「そうゆうことには疎くて」
「そうですか、まあ簡単に言うと帝国が王国の領土を狙ってるんだよ」
「なるほど、王国は攻めようとはしていないんですか?」
「ええ、王国側にその気は全然ないよ、国王様とは古い仲だからそう言う事をしようとする人ではないと言うのはよく知っているしね」
帝国が狙ってるだけなのか
「国王様と仲がよろしいんですか?」
「父と国王様がとても仲が良かったんだよ、父が病気で亡くなるまでは一緒に連れて行ってもらって可愛がって頂いたし、王国には王子様が2人と王女様が1人いるんだけど王子様達とは子供の頃はよく一緒に遊んでいたな、不敬になるかも知れないけど可愛い弟達みたいなものだよ、王女様とはあまりお会いした事は無いんだけどね」
「なるほど、そう言う繋がりですか」
その後も何事も無く馬車は王都に向かって進んでいった
それが起きたのはカルダムを出発した3日後の午後だった
昼食をとり出発した馬車は王都に向けて進みはじめた。しばらく進んでいると爆発音の後に馬車が急停止した、馬車の外から他の兵士の声が聞こえた。
「敵襲‼︎」
俺達は領主様をエドガーに任せる事にした。
「俺とリアナは外の手助けに行ってきます、アウグスト様を頼む」
「ああ、気をつけろよ」
俺とリアナは馬車の外に出た。そこには俺達の前を走っていた馬車が車輪を壊されて傾いていた。これのせいで停車せざるおえなかったのだろう。周りでは13人ぐらい奴らが兵士達と戦っていた。
数は兵士の方が多いが1人1人は向こうの方が強いらしく押され気味だ。奥に待機している奴が3人ほど確認できるので恐らくあいつらが車輪を破壊したウィザードだろう。
「リアナは兵士達の援護を頼む‼︎俺は奥の奴を片付ける‼︎」
3人のうちの1人がこちらに向けて手をかざしている、また魔法を使う気だろう、俺は向こうが魔法を発動するよりも早く行動した。
「マジック・ゲート‼︎」
すると、石がかなりの速度で飛び出し魔法を使おうとしていたウィザードの顔面にあたり顔を陥没させて死亡した。
隣の2人が慌てだしたが俺はもう2撃目3撃目を放っている、それも2人の頭にあたり絶命させた。
すると、近くにいた奴が2人向かってきた。
「マジック・ゲート‼︎」
俺はすぐにマジック・ゲートで1人を倒したがその隙にもう1人の方に接近されてしまう。そいつは剣を振りおろして俺を斬ろうとしてきたが、俺は剣の真横にゲートを出現させて、剣の腹に石を当てて剣を弾き飛ばした、何が起きたか分かっておらず混乱しているうちに、俺は腰にさしていた剣を抜き、相手を斬りつけた、だが相手もこう言う状況には慣れているのだろう、すぐに冷静になり俺の剣をギリギリでかわした、俺から距離を取ろうとしたが、それよりも早く相手の後ろに出現させたゲートから石が飛び出し、相手の後頭部に直撃。それでそいつは死亡した。これは俺の周囲5メートルなら自由に物を出せると言う事をリアナに話したら、じゃあ自分の近くの相手なら後ろから攻撃できるんじゃない?と言われてできるようになった技だ。
「フロスト・アロー‼︎」
リアナは氷の矢で的確に相手の急所を狙って倒している。するとアウグスト様の馬車に向かって行く奴がいたのでマジック・ゲートで石を使って倒した。横からの攻撃だったので反応出来ずに直撃だ。俺は他の兵士の援護に向かった。
あれから暫くして戦闘は終了した、兵士は半分以上が怪我をしてしまい、動けない者もいるが死者はいなかった。敵は4人ほど生きて捕まえられたがそれ以外は全員死亡した。その4人は縛られて一箇所に集められている。兵士達は傷の手当てをしていてリアナとアウグスト様はそれを手伝っている。
「エドガー、この襲撃はどういう事だと思う?」
「装備は野盗の様に見せてるが武器はなかなか良いものを使ってるただの野盗では無いだろうな、普通の野盗相手にこいつらがここまでやられる筈がない。レンは戦ってみて何か感じたか?」
「こいつらの狙いはアウグスト様だと思う、こいつら兵士を倒す事よりもアウグスト様がいる馬車に行く事を優先させてた、とどめも刺さずに兵士の隙を突いて馬車の方に向かっていたからな、こっちのが人数が多くて殺される前に助けに入れたのもあるが、死者が出なかったのは相手がとどめを後回しにしたのが大きいと思う」
「なるほどな、後はさっき捕らえた奴らを尋問して聴きだすか、アウグスト様に尋問の許可と、今の事を伝えてくる」
そう言ってエドガーは治療の手伝いをしているアウグスト様のところに向かって行った、アウグスト様は自分から進んで手当ての手伝いを始めたあの人は領主なのに凄いな、俺の中にあった貴族のイメージとは大分違うな。
俺はそんな事を考えながら周りを見回した、すると木の陰からこちらに手を向けている人影を見つけた。その手の先には火の塊が浮かんでいるから恐らくファイアーボールだろう、その魔法はすぐに発動されてアウグスト様とエドガーのもとに真っ直ぐに飛んでいく。俺は駆け出しながエドガーに叫んだ。
「エドガー‼︎アウグスト様を守れ‼︎」
俺はアウグスト様達とファイアーボールの間に体を滑り込ませてファイアーボールを収納した。俺は急いでウィザードの方を確認するとそいつはもう二発目を打つ準備を完了していた、さすがにマジック・ゲートでも間に合わないので俺は次の魔法も収納する為に構えた、がファイアーボールがこっちに来ることはなかった、あいつはファイアーボールを撃つ直前で方向を変えたのだ、ファイアーボールは縛られていた4人に直撃した。
「あいつっ‼︎口止めに殺しやがった」
後ろでエドガーの声が聞こえた。
ファイアーボールを撃ったウィザードは逃げようと駆け出したがその足に氷の矢が飛来し倒れて逃走を止めた。
「ナイスだリアナ‼︎」
俺はウィザードの方に駆け出した、だが俺が辿り着く前にそいつは何かを飲み込みそのまま動かなくなった。
「クソっ‼︎自害して尋問をされるのを防いだか」
悪態を吐くエドガーに俺は質問した。
「なぁ、こいつらは一体なんなんだ?」
「恐らく裏ギルドの連中だろうな」
エドガーは苦々しげに答えた。




