第百二十五話 警告機
駆け込んできた男の言葉を聞いたクレメンスは顔色を変えた。
「最高レベルの警告だと?一体何に対してだ、隣国のガーグルフ国が攻めてきたとしても、そんな事にはならないだろう?」
「それが、ネールファイドの情報を解析したところ、この次元ではない、別の次元にとてつもないエネルギーを感知しまして、それが私達のいるこの次元に近づいているようなのです」
クレメンスはそれに眉根を寄せながら答えた。
「そのエネルギーは何なのかは分からないのか?」
「はい詳しくは、ですがそこに生物のような反応があったようです」
それを聞いたクレメンスは、信じられないと言った様子で答えた。
「我々がやっと観測する事が出来た別次元に生物がいるだと?いや、生物のようとはどういう事なのだ?」
「それが、私達人間や他のエルフや獣人とも違った反応でして、ただ…龍の方達と似た反応が確認されました」
男は言いづらそうにそう言った。さっきから話しの内容がよく分からないな、別の次元とか、何の話しをしてるんだ?
「龍と同じ?」
「はい、前にクレメンス様経由でアイリス様のデータを取らせて貰ったものと比較したので間違い無いかと、細部に違いはあるのですが、極めて近い反応でした」
それを聞いたクレメンスは腕を組んで考え込んでいる。
「それと、実はそのエネルギーは2つ観測できまして、大元の巨大なエネルギーは3ヶ月後ごろに接触するのですが、それとは別に少量のエネルギーが今から約2週間後に接触します、そちらの方は少量ですのでまずはそちらで様子を見るのはどうでしょうか?」
「分かった、では観測員と念の為軍も派遣しよう」
すると、そこで最初と同じように視界が強い光に覆われて、目を開けると周りの景色が緑の大樹の中の物に戻っていた。
「それで、アイリス、さっきのは一体なんだったんだ?それと途中にアイリスの名前が出てきてたが」
「先程も言いましたが、今のは遥か昔、転換期よりも前の時代の映像です、そして私の名前が出てきた理由ですが、私とクレメンスは友人だったからです」
転換期よりも前か、確か転換期にその前までの時代の色々な技術が失われたんだったか?
「それで、これを俺達に見せた意味は何なんだ?」
「全ての場所を周り、全ての映像を見れば、レン達が知りたがっていた、今世界で起きている異変の原因を知る事が出来ます、そしてこれを見せられた理由も映像を全て見れば知る事が出来るでしょう」
アイリスはそう言って言葉を切った。どうやら説明はそれで終了らしい。
「分かったよ、つまり全部の場所に行けば、全部を知る事ができるんだな」
「はい、そうです」
アイリスは頷いて肯定した。それと他の気になった事も今のうちに聞いておくか。そう思ったが俺よりも先にサーラが質問をした。
「私も質問いいですか?さっきの話しを聞く限りだと、クレメンスは転換期を生き残った人物という事ですよね?さっきの別次元のエネルギーと転換期にあった謎の今までの文明の消失と関係があるんですか?」
「そうですね、クレメンスは転換期を生き残りました。それと文明の消失についてですが、その理由も映像全てを見れ終われば知る事が出来ますよ」
アイリスはまた同じ言葉でサーラの疑問に答えた。
「じゃあ俺も聞きたいんだが、シャロリアはどこの場所から回ってもいいって言ってたが、これって順番通りに回らないと、映像の順番がバラバラになるんじゃ無いか?」
「それは心配いりませんよ、全ての装置は繋がっていて、宝石を入れた順番で映像が流れるようになっているので、次に何処の場所に行こうと先程の続きの映像を見る事ができますよ」
なるほどなそういう事か。俺は納得して頷いた。
「それじゃあ、ここでやる事はもう無いってことか?」
「そうですね、もう外も暗くなっている頃ですので、早く帰った方がいいでしょう」
俺は台座から宝石を回収してから、緑の大樹の中から外に出た。




