第百九話 異変
フードをとった、リアナがお母様と呼んだその人物は女性だった。リアナと同じ綺麗な水色の髪をしていて、長さはリアナとは違いかなり長い、顔も美人だ。だがその顔からは生気が感じられず、生物兵器の表面の様に血管が浮き出ており脈打っている。
「お前‼︎お母様に何をしたっ‼︎」
リアナが今まで見た事が無いぐらいの怒りの表情でクラウスを怒鳴りつけた。
「なに、ただ実験体として活用させて貰っただけだ、これは既に死んでいる、いや詳しくいえば生きてはいるがそれは生物兵器がこの体を使っている結果で、お前の母親としてのこいつは既に死んでいると言う事だ。まあ私の命令が無ければ何もする事が出来ないおもちゃだがな」
「おもちゃだと?」
俺はクラウスに聞き返した。リアナ程ではないが俺もクラウスへの怒りが込み上げてきている。
「先程も言っただろう、私にとって自分以外の生物は全て実験体だと、そしてこいつは戦力としては特に役に立たない出来損ないだ、こいつの扱いはおもちゃぐらいが丁度いい」
「ふざけるなっ‼︎お母様はお前のおもちゃなんかじゃない‼︎フロスト・ブリザード‼︎」
「ショット・ソード‼︎」
俺もリアナに続いて攻撃するが俺が飛ばした8本の剣は、クラウスが出したゴースト・アーマーに全て剣で切り落とされてしまった。リアナの魔法もう一体のゴースト・アーマーに防がれている。リアナは魔力切れで魔法の威力がかなり弱まっているみたいだ。
「はぁ、はぁ、お前は絶対に許さない‼︎殺す‼︎殺してやる‼︎」
「リアナ落ち着け‼︎取り乱し過ぎだ‼︎」
俺はリアナにそう声をかけるがリアナは止まらない、リアナはまた自分の中の残り少ない魔力をかき集めて魔法を放とうとしている。おかしい、自分の母の仇を前にしているとはいえいつものリアナと違い過ぎる。俺はリアナに声をかけようとしたが、それよりも早く別の声が聞こえた。
「いい憎悪だ、だがまだ足りない、これで仕上げだな、やれ」
クラウスがそう言うとゴースト・アーマーは剣を持ち上げると、その鋒をクラウスの前にいた、リアナの母親の背に向けた。
「なっ‼︎やめっ」
俺とリアナの静止の声よりも早く、その剣は後ろからリアナの母親を突き刺した。それは確実に心臓を貫いている。クラウスが言った通り既に死んでいて、表情などは一切変わらないが、体は生きていた様で、その傷口や口からは血が溢れ出ている。
ブシュッ‼︎
ドサッ‼︎
ゴースト・アーマーが剣を引き抜くと、リアナの母親は前のめりに倒れこんだ。
「あっ、ああ……あ…あ………」
「リアナ?」
俺は声が聞こえた方向、リアナの方を向いた。するとリアナは自分の頭を抱えて同じ言葉を繰り返している、すると段々とそれは苦しそうな声に変わり、リアナは頭を抱えて苦しみ出した。
「あ゛あ゛あ゛ああああああああああっ‼︎」
「リアナ‼︎どうした‼︎リアナ‼︎」
俺はリアナのもとに駆け寄り、肩を掴んで声をかけた。だがその手はリアナに振り払われて、俺は突き飛ばされた。そして俺は5mほど中を舞い地面に激突した。
「ガハッ‼︎っクラウス‼︎お前リアナに何をした‼︎」
俺はリアナがこうなっている原因であろう男を怒鳴りつけた。
「私はただクリスタルを起動させただけだ」
「クリスタルを起動、だと?」
俺はクラウスが何を言っているのか分からなかった、クラウスはさっきクリスタルなど発動させていないし、そもそもクリスタルの発動とリアナが今の状態になっている理由が結びつかない。
「お前はリアナからリアナが今までどう過ごしてきたかを聞いたか?」
「聞いたが、そんな事はどうでもいい、リアナに何をしたかを聞いてるんだ‼︎」
リアナは今もまだ苦しみ続けている。
「そう焦るな、話しを聞いていればわかる事だ、お前はその話しを聞いておかしいと思わなかったのか?」
「お前は一体何が言いたいんだ」
クラウスはこ馬鹿にした様に小さい笑みをうかべた。
「こいつが死んでから、家から逃げ出すまでの11年間私がオフィーリア、今はリアナと名乗ってるんだったか?に何の実験もしていないと思うのか?」
「一体何をしたんだ‼︎」
俺はクラウスに怒鳴って聞いた。
「私はオフィーリアの体の中に2つの物をいれた、1つは私が開発した生物兵器が入ったクリスタル、そしてもう1つは」
クラウスはそこで言葉を区切ると、一拍あけて続きを口にした。
「Sランク級の魔物、大海の悪魔リヴァイアサンの魔石だ」
クラウスはニヤリと口元を歪めた。




