第六話 仲間
気がつくと俺達はさっきと同じ作りの台の魔法陣の上に立っていた。でも周りがさっきまでいた岩に覆われた洞窟の中では無くしっかりとした人工的な建物の中にいた、壁画のようなものがあちこちに描かれていて遺跡のような場所だ。ここにも大きな入り口の他にそれとは逆方向にも通路があった。
「ほら着いたぞ、ここが魔の森にある遺跡だ。」
「転移なんて始めてしたけど本当に一瞬なのね」
「すげー魔力使うんだけどな、これ」
「俺は神に送られた時のを数えたら2回目かな、あの時もこんな感じだったな」
俺達は魔法陣から降りて出口に向かって進んで行った。
「赤の森とそんな変わらないな」
「見た目はね、でも住み着いてる魔物は桁違いの強さよ」
「なんで赤の森には強い魔物がいないんだ?」
「俺がいるからだな、赤の森も、もともとここみたいな感じだったが俺が住み着いて反抗してきた強い魔物は俺が倒して、力の弱い奴らはみんな逃げてったからな」
「なるほど、火龍が此処にいるから俺達は襲われてないのな」
「いやそれは違うぞなぜだかは知らんが魔物は遺跡には近づかないんだ、赤の森の洞窟にも外から魔物は入らないしな」
外に出た俺達はまた、火龍の背中に乗って飛び始めた。
「ここからは少し遠いから速度を上げるぞ」
「うおっ‼︎」
「きゃっ‼︎」
火龍がいきなり今までよりもかなり速い速度で飛び始めた、周りの景色がどんどん後ろに流れていく、
「いきなりスピード上げるなよ危ねぇな、それにしても魔物の姿が見えないな」
「俺がいるから姿を隠してんのさ、赤の森の奴らじゃ相手になんねえし、お前ら送った後はしばらくここら辺の魔物でも狩って暇つぶしでもするかな」
「まあいいんじゃないか?それより森の近くに街とかあるのか?」
「さあ?ここら辺の地形には詳しくないからわかんねえな」
「私もわからないわ」
「じゃあ森から出たらとりあえず村とか街を見つけないとな」
それから会話は無くなり俺達はしばらく空を飛び続けた。
「よし、着いたぞ周りに冒険者とかも居なかったから森の端まで来れたな」
「そりゃよかった。火龍がいたなんてなったら大騒ぎになりそうだしな」
辺りはもう日が傾き暗くなり始めていた。
「それじゃ俺達は行くわ。送ってくれてありがとな。」
「さて、帰りはのんびり帰るかな、また赤の森に来いよレン、リアナ」
「ああ、また行くよ」
「私も家の問題が片付かないと無理だろうけど絶対にまた行くわ、送ってくれてありがとう」
俺とリアナは火龍に礼を言って森と逆方向に歩き始めた。後ろでは火龍が羽ばたき飛び立とうとしていた。
「また会おうレン」
頭の中にいきなり女の声が聞こえて俺は驚き後ろを振り返った。
すると火龍がニヤッと口角を上げて笑っていた火龍はそのまま飛び立ちきた方向に飛んでいった。
「なあリアナ今の声聞こえたか?」
「声って?」
「いや、なんでもない」
俺は火龍の事を気にしながらもリアナに続いて歩いて行った。
俺達はしばらく歩いて森から離れたところで暗くなってきたので今日はここで野営する事にした。といっても俺は道具の使い方が分からないのでリアナに教わりながらだが。
「それにしても便利な魔法よね、物をしまい放題で中の時間は進まないなんて」
「そうだな、でも俺もまだこの魔法で何が出来て何が出来ないのか全部は把握してないんだ」
「そうなの?」
「ああ、まだこっちに来てから全然時間がたってないからな」
リアナは話しながらも着々と準備を進めていく。
「この道具はなんだ?」
俺は収納魔法で出した道具の中のリアナが使う物として出した物で使い方が分からないものがあったので聞いてみた。その道具は全長20㎝ぐらいの円柱の上に傘の屋根のような物が付いていて一番上の中心に丸いボタンが付いている。
「ああそれ、上に付いてるボタンを押してみて」
「これか?」
ボタンを押すと下の円柱の壁の部分が横にスライドして開いた。中には小さい石の様な物が入っていた。
「これだけか?」
「それで大丈夫よ」
リアナが言うにはこれは魔物避けの魔導具らしい。ボタンを押すと開いて中から魔物が嫌がる匂いのような物が出てるらしい、人間や他の動物には害はなく魔物だけが嫌がるといっても効果があるのは弱い魔物だけで魔の森の奥にいるような魔物には効果がない。
「だけどここら辺は強い魔物はいないし、いても魔の森の入り口付近でも生活出来なかった弱い魔物だけよ、魔の森からでてくることは滅多にないらしいし大丈夫でしょ。まあ寝る時には交代で見張りをしないと駄目でしょうけどね」
俺は野営の準備をしながら色々と聞いてみることにした。
「さっきの道具の中に入ってた石みたいのはなんなんだ?」
「あの道具の名前は魔除け管ね。中の石は魔石よ」
この世界特有の物らしいな。リアナはそのまま魔石の説明を始めた。
「魔石は魔物の体内で生成されるものなの、動物と魔物の違いは体内に魔石があるかどうかなのよ」
「魔物の魔石は生まれた時から体内にあるのか?」
「違うわ、まず魔物って言うのは普通の動物が変異した物なのよ」
動物が変異?どうゆう事だ?リアナの説明を纏めるとこんな感じらしい。
・空気中の魔素が動物の体内に溜まりそれが集まり魔石となり動物の体を変異させて魔物となる。
・魔物となった後も魔石に魔素が溜まると体の変異を起こし前よりも強力な魔物になる。
・魔素は空気中以外にも他の魔物の魔石を食べる事でも溜まる。
・集まった魔素は魔石となり、その魔石の中には集まった魔素が魔力へと変換されている為それを利用して様々な動力に使われている。
「とりあえず魔物と魔石についての説明はこんなところね」
「ああ、ありがとう良く分かったよ」
俺はリアナに礼を言って野営の準備を進めた。
野営の準備を終えた俺とリアナは火を間に向かい合わせで座りながら神から貰った荷物に入っていた携帯食料を食べていた。
「ねぇ、街に着いたらレンはそれからどうするつもりなの?」
リアナが突然そんな事を聞いてきた。
「どうするって言うのはその後の予定って事か?とりあえず金を稼がなきゃ生きて行けないからな〜、まあ今は冒険者になるのが1番の候補かな」
そう答えるとリアナが真剣に何処か躊躇うように言ってきた。
「レンは私が追われて帝国から逃げて来たのは知ってると思う、だから暫くは王国を拠点にするつもりそれで私も冒険者をやろうと思うの、それで提案なんだけど私とパーティーを組まない?。」
パーティ?つまり一緒に冒険者として仕事をしようってことか、それは俺からしたら願ったりかなったりだけど、なんで遠慮気味なんだ?
「それは俺からしても有難い申し出だよ。リアナが良いなら是非よろしく」
そう答えるとリアナは、さっきと同じ様な表情で不安そうに聞いて来た。
「本当にいいの?追っ手に追われてるなんて絶対に面倒な問題があるのは分かるでしょ?私はまだ追われてる理由も話してないのに」
なんだ、そんな事気にしてたのか。
「俺もいきなり1人でやるのは不安だしな。それにその問題はリアナが言おうと思った時に言ってくれたらいいよ。俺が力になれる事なら手を貸すしさ」
するとリアナは少し落ち込みながら答えた。
「ありがとう、今は言えないけどいずれ全部話すわ。さらに色々と迷惑をかけてしまうかも知れないけど」
俺は落ち込んだるリアナを元気づけようと少しおどけながら答えた。
「迷惑をかけるって言っても、火龍に正面から挑むよりは全然楽だろ?」
それを聞いたリアナは俺が元気づけようとしてるのに気づいたのか、可愛らしく笑いながら答えてくれた。
「ふふっ、確かに火龍に挑むよりは、全然楽でしょうね」
俺はリアナに手を差し出しながら改めて言うことにした。
「これからパーティーメンバーとしてよろしく頼む」
それにリアナは俺の手を握り返しながら笑顔で答えてくれた。
「こちらこそよろしくね」
その後適当に雑談した俺とリアナは最初は俺が見張りで先にリアナはさっき準備した1人ようのテントで就寝することにした。
俺は外で火の番をして周りを警戒しながらこれからの冒険者としての生活のことを考えながらリアナとの交代までの時間を過ごした。




