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プロローグ:超越者という存在

 ここは、人間よりもひとつもふたつも次元の高い存在がいるところ。人間がつけた呼び名で言うならば、"神"、"超越者"、"世界の管理者"など様々であるが、ここでは"超越者"で統一しておく。


 超越者たちは様々な世界を創った。彼らが言うに、世界を創造すること、そして管理することは一種の実験、もしくはシミュレーションゲームだ、と。また彼らが言うに、このシミュレーションゲームがこれから面白くなるのは、条件が揃い、"知恵のある者"を生産できるようになってからだ、と。"知恵のある者"とは、つまり人間のことである。人間がその世界に出てきた頃からゲームは実質始まったと捉えてもいい。

 人間は超越者からすれば十分愚かであるものの、ひときわ考えること、特に世界の全てを知ろうとすることに関しては特異な能力を持っていた。彼らは、人間が自分が設定した"仕様"を解き明かしていく姿に興奮を覚える、らしい。これがあるから人間ができるまでの世界創造や世界の"仕様"を決定するという退屈な作業を耐えることができる、らしい。

 また人間はいわゆる"超越者(神)"を知ろうとすることに関しても特異な能力を持つ。勝手にそう呼んで崇拝している者も多い。言っておくが、超越者は、ある程度世界の仕様ができてからは世界に手をつけず、観測者に徹することがほとんど。彼らが何もしなくても、勝手に世界は文明という形で作られる。彼らが何もしなくても、勝手に世界の中で生きていく。むしろ手を加えると、今まで人間が作り上げた秩序を壊すこととなり、利益どころか害をなす結果になるのは明らかなくらいだ。

 ただ、ひとつだけ仕方ないことだが人間ではどうにもならないし、どうしようもないものがある。それは人間は例外なく死ぬこと、である。"仕様"を変えて死なないようにするのは可能であるが(そういう世界も確かに存在する)、そんなことをしても、体の衰えは隠せないことがほとんどで、最終的には、言い方は悪いかもしれないが、人間として使い物にならなくなる。また死なないというのはそれはそれで不幸である。様々な世界があることを知っている超越者たちから見れば、ひとつの世界でしか生きられない人間は井の中の蛙のようで不幸だと思っている。だから人間が死んだ後、彼らは人間を形作るもの(人間はそれを"魂"や"霊魂"などと呼ぶことが多い)を一時的にこの次元に呼び出し、死んだ世界とは違う世界に送る。これが"転生"である。もっとも厳密にはこの次元に彼らが魂を呼び出すのではなく、人間の方が勝手にこの次元にやってくるのであるが。さすがにこの仕様を人間の言う科学的手法で完璧に解き明かした人間はいないし、今後も不可能であるだろうと予想されている。理由は単純で、人間は"自分が生きている世界(現実世界)"しか観測も認識もできないからである。生きている間に死後の世界を観測することはできないし、逆も然り。ただ超越者は「不可能であろうと予想される」と断言はしなかった。したくなかった。現在は不可能と言わざるを得ないが、いつかはこの仕様を証明してくれる人間が現れてほしい、と期待を抱いていた。もちろん超越者の仕様を変えれば簡単にそのような人間を作ることは可能であるが、それでは面白くない。手は加えたくない。手を加えず、できる限り人間を今の仕様で解き明かしてほしかった。超越者にとって時間はあってないようなもの。ずっとずっと待つことにした。


 そして世界から見れば、途方もない時間が経過した後。結局解きあかす前に世界の方が先に寿命を迎えた世界がほとんどを占める中で、最近、転生の仕組みの方にごくごくわずかであるが、変化が生じているのに超越者は気づく。

転生担当の超越者が語るには、「なんかおかしいんですよね、我々が指定した転生先と実際の転生先の座標がわずかであるが違っている。例えばこの事例。データによると本当はこの世界に転生されるはずだったのですが、実際は座標にして隣の世界に飛ばされたり……。こんなことは長い長い時間の中で初めての事例ですよ……」

これに対して、ある超越者は「これから面白いことになりそうだ」と漏らしたという。

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