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贈り物を胸に

作者: 碧惟

 

桜が満開に咲く並木道を歩きながらあたしは新しい生活への期待を膨らましていた。






あたしは酒井碧惟(あおい)。無事希望していたS高校に合格し、この春高校1年生になった。







 

昨日は楽しみで眠れなかった!!

この扉の向こうにはどんな生活が待ってるんだろう☆彡




ドキドキしながら教室のドアを開けた。

みんなガヤガヤ騒いでいてあたしに気づいている人は1人もいなかった。 




『あたし、このクラスについていけるかな、、、』 




 

『それ1人事?声でかいよ。』




 

え?あたし今声に出てた!?恥ずかしい!!




 

『ごめんなさい!不安になっちゃって(>_<)あたし、酒井碧惟♪そっちは!?』



『、、、、初田香月。』 




 

愛想悪っ!!入学早々隣がこんな付き合いにくい男なんて、、、。









『あなた陸上部入らない!?』






今度は誰!?






『あたし夏川。あなたすごい陸上向きだと思うの♪一緒に汗を流しましょうよ。』



『あたし運動部入るつもりないから(・_・;)』



『じゃあ今日の放課後だけでもいいからあたしと付き合ってよー☆』



『えっでも、、、』



『決まりね♪じゃあまたあとで!!』






マジで(・_・;)?なんか高校って疲れるな。陸上なんて絶対入りたくないよー。

まぁいっか。放課後少し付き合うだけだもんね。 









放課後、あたしは夏川さんに連れられて陸上部の見学をするハメになった。







 

テカここの陸上部イマイチじゃない?みんなそこまで速くないよね?




 

そんなとき、なにかが目の前を風が吹いたかのように一瞬にして前を走り去った。










初田、、、香月?






速い!!初田香月ってこんなに速く走るんだ!すごい!!






『うちのクラスの初田香月、すごい速いでしょ?中学の頃からここで練習してたらしいよ。』



『有名なの?』



『うん。この世界じゃ一目置かれてる人だよ。あたしも初田くんと走りたくてここに入学したの。』



『入る、、、。あたし陸上部入るよ。』



『ホントに!?一緒に頑張ろね!!』 







 

これでもあたしは走りに自信がある。そこらのへっぽこ陸上部より速いと思う。







帰り道、初田香月と会った。




『初田香月!!』



『あ?』



『あたし陸上部入ったから!!』



『だから?』



『、、、よろしくね。』 


『、、、よろしくぅ。』 


たったそんだけの会話なのにすごい嬉しかった。初田香月の後ろ姿を眺めながら【よろしくぅ】っていう初田香月の言葉が頭の中で何回もリプレイされていた。何回も何回も、、、、







ん?なんで!?初田香月のことでなんでこんなにドキドキしてんの!?今日初めて会ったのに!!







あたし、初田香月の走り見ただけで、、、彼のこと好きになっちゃったんだ。

 







 

その日はまったく眠れなかった!!頭の中で初田香月が気持ちよさそうに走る姿が何回も流れる!!




もう!!眠れないよぉ(>_<)!!










初田香月のせいで結局一睡もできなかった。




どんな顔して会えばいいんだろ。







『はよ。また1人事?好きだねぇ、陸上部の酒井碧惟さん。』






初田香月!!?




『おっおはよ。いい天気だね♪』 



『、、、いい天気だねぇ。』







明らかに変な奴って思われてる!!

なんかっなんかまともな事言わなきゃ!!







 

『あっ、、、アド教えて!!』







ちがーーーう!!

なんて事言ってるのー!? 






『いいよ。』



『え?』



『アド、知りたいんやろ?』







 

交換しちゃった。交換しちゃった!!交換しちゃったーーー!!









家に帰って真っ先に携帯を開いた。そんで初田香月のアドの意味を読解!! 



"mika.rikujou、、、、"




【mika】って誰?人の名前だよね?女だよね?

あーーー!!気になる!!







ブーッブーッと携帯のバイブがなった。

画面には『初田香月』の4文字。






マジで?






深呼吸をし、ドキドキしながらメールを開いた。 






「せっかくアド交換したからメールしてみた。」 




こんだけ。だけど嬉しかった。何度も読み返した。




「メールありがとう(^-^)まさかそっちからメールしてくれるなんて思わなかったよー☆笑」



「そか。じゃあまた明日。」







えー!?もう終わり!?あたしの文章なんか変だったかな。もうメールすることないだろな。









そう思ってたけど、初田香月からのメールは毎日決まって8時にきた。




『初田だけど、部活おつかれ。今日のお前の走りすげー良かったよ。』



『ありがとー☆初田香月もいつもながらに速かったよー(^_-)☆』



『そりゃどうも。テカさ、そろそろ俺の事フルネームで呼ぶのやめね?香月でいいよ。』

 






香月、、、って呼ぶ?

なんかすごい進展した感じがして嬉しい。




「香月!!笑」



「なんで"笑"なんだよ!笑」



「あたしも酒井ぢゃなくて碧惟でいいから☆」










そんなやりとりでその日は終わった。







 

メールのやりとりを初めてから20日後の夜、いつもは8時にくるはずのメールが9時になっても11時になってもこない。







不安だよ、、、。









11時45分。バイブ音があたしの部屋中に鳴り響く。画面には【初田香月】の文字。

そっと携帯を開く。













「付き合おう。

※12時ちょっきりに返事返すこと!!」













先こされた。

あたしが言いたくて言いたくてたまらなかった一言。









"付き合おう"

 









ほぅっと一回深呼吸をし、ゆっくり一文字一文字を大事に打った。









12時00分4月23日










 

「あたしにあなたの走りを誰よりも近くで見せてもらえますか?」










初田香月と酒井碧惟は恋人同士になった。










 

次の日はすごく恥ずかしかった!!






あー!!香月に会うの気まずいよー!!






『おはよ、、、碧惟。』 




 

香月だーー!!






『おぉぉぉはよおぅ!!』 


『ぷっ。』







笑われた(;_;)最悪だ!!  




 

『付き合ったからって別に緊張しなくていいんよ。いつも通りしとけばいいの。』



『だって〜。』



『今日から一緒帰ろな。』






今日から一緒、、、か。やっぱり照れちゃうょ。  










『なんで!?それらしい事何もなかったじゃん!!』 




 

響きわたるリィ(陸上部の夏川)の声。






『ご、ごめん(>_<;)』



『メールしてること知らなかったしー!!学校でだって目立って話してなかったじゃん!!あたしてっきりあー子には好きな人いないって思ってたよ!!』



『リィに言うの恥ずかしかったんだってー!!だってリィは結構香月と仲良かったから言いにくかったもん。』



『まぁあー子の言うことも一利あるから許すけど今度からは何でも話してよ?親友なんだからさ☆』



『うん!!』










その日から毎日香月と一緒に帰った。たくさん話した。キスをするまではそう時間はかからなかった。




香月の部屋に初めて遊び行った時、香月はアド変した。







"aois2katsu.rikujou、、、、"






前のアドにあった"mika"は香月の家で飼っている犬の名前だった☆笑







その日もキスをしてさよならした。  









『ハァハァ、、、』



『大丈夫?あー子最近バテるの早くね?』



『大丈夫。ありがとね。』






おかしい。陸上選手がこんな早く息切れしてちゃやってけない。

最近まではこんなんじゃなかったのに。

胸が、、、苦し、、







ドサッ







 

『あおいーーー!!』






香月の声?

あたしの名前呼んでる。大丈夫だよ。










目が覚めたら病院のベッドの上だった。

香月がこっちを見て笑ってる。






『おはよ。』



『香月、あたし倒れたの?』



『そのようですな。』



『なんかの病気?』



『、、、、、』

 






















こっからは俺、初田香月の目線での物語が始まる。


















なんか碧惟が変だ。

50メートル走っただけだぜ?

そんな息切れすっか?







ドサッ







『あおいーーー!!』






そっからはがむしゃらやった。  






『碧惟に触んな!!』




部員、そして監督をも押しのけて碧惟を抱き上げた。

そしてわけもなく走り出した。

みんなに無理やりおさえられて我に返った。




先生の車で碧惟を病院まで連れて行きすぐに碧惟に機具がつけられた。






碧惟が眠ってる間、碧惟の両親は医者と話をしていた。

しばらくして、俺も呼ばれた。 




 

そこには碧惟のお袋さんがいて、ゆっくりと話し始めた。




 

『香月くん、あなた碧惟と付き合ってどのくらいたったのかしら?』



『2ヶ月っす。』



『そう。今が一番楽しい時期ね。』



『碧惟何かあるんですね?』



『、、、碧惟の心臓はもぅ使いものにならないんですって。』



『え?』



『臓器移植しなくちゃなの。ドナーが見つからなかったら、、、』



『、、、、、、。』



『もって半年ですって。』






半年?ありえんやろ。

だってまだ16歳だぜ?

頭が真っ白になった。






『それでね、香月くんから碧惟にこのこと、話してほしいの。あの子隠し事されるの嫌いだから。』



『、、、、、、。』



『香月くん、、、。』



『、、、、、、。』



『辛いわよね。』




 

そう言ってお袋さんは席を立った。






碧惟のとこ行かないと。 







碧惟はまだ眠ってる。

このまま起きなかったらどうしよう。






その時碧惟の目がゆっくり開いた。

俺は、、、笑った。






『おはよ。』



『香月、あたし倒れたの?』



『そのようですな。』



『なんかの病気?』



『、、、、、、。』



『ねぇ。』



『心臓病。碧惟の心臓はもぅ使いものにならない。ドナーが必要で、もし見つからんやったら半年の命だって。』



『ありがとう。』



予想外の言葉に俺は驚いた。



『ちゃんと教えてくれてありがとうね。』






そう言って碧惟は声を出さずに泣いた。






俺は碧惟の頭をポンと叩いた。




『死なせたりしないから。』




碧惟はうなずいた。  










『碧惟!!』



『もー、香月また来たの?』







 

俺はあれから毎日病気に通っている。

碧惟はいつも笑顔で迎えてくれた。







 

ビョウキナンテウソミタイダ。









『今日はな、夏川が走ってたら顔面から転んでさ!!』



『えー!!痛そう!!どうなった?大丈夫だった?』 


『鼻のしたから血が出ててさ、ありゃかさぶたできて変くなるな。』



『リィらしい♪』



『そんでさ、その後、、、痛っ!!』



『どうしたの?頭痛!?』 


『みたいやね。ちょいトイレ行ってくるわ。』









やっときたな。あとちょっとだ。あと少しで、、、。







俺はトイレに行くと言ってそのまま帰った。

そして、、、












帰る途中に倒れた。










 

碧惟、俺からの最後の、、、、、





















『碧惟さん!!ドナーが見つかりましたよ!!すぐに移植しましょう!!』






看護士さんが勢いよくあたしの部屋に入ってきた。






ドナーが見つかった!?あたし助かるの!?










あたしの手術はすぐに行われ見事成功。

あぁ!!はやく、はやく香月に会いたい!!







部屋のドアが開いた。






『香月!!』







お母さんだった。 







『移植成功おめでとう。』



『ありがとう。香月見なかった?』



『、、、、、、。』






『お母さん?』










『香月くんね、家に帰る途中で倒れたの。脳死の状態になったのよ。そしたらね、香月くんドナーカード持っててね、、』 


『もう黙って!!』









目から涙が溢れ出た。

そして自分の胸に強く手を当てた。









香月、、、なんでよ。










あたしを守るってこういうことだったの?







『碧惟、これ香月くんのカバンの中から出てきたの。』









手紙?







 

丁寧に封を開け手紙を読み始めた。 










 

−−−−−−−−−碧惟へ


移植成功おめでとう。

たぶん俺はもうこの世にはいないやろな。

泣いてる?泣くなバカ。

俺別にお前に心臓やるために自分で頭叩きまくったわけじゃねぇかんな。

そんくらいわかるか♪笑

俺さ、実は入学前から自分の病気のことわかってたんだ。

治すつもりやった。

そしたらさ、そろそろ手術しねぇとって思ったころにお前が倒れやがってさ。

自分の体なんてどうでもいいって思った。

お前が倒れたその日にドナーカード持った。

それからは早く俺の脳みそバカになれ!!ってずっと考えてたんだ。

この手紙読んでるっつうことは俺の脳みそはバカになったんだろな。笑

言ったろ?死なせないからって。

お前後追い自殺とかしやがったらマジ許さねぇ!!

生きろよ。

俺は生きてるよ?

お前の体ん中で確かに動いてる。

触ってみ?ドクドク言いよるやろ?

泣かないで。もっと軽く考えて。俺から貰った贈り物みたいな感じで♪笑


大好きだよ。


これからはずっと一緒じゃん!!

俺、幸せやったよ。

じゃあな。


      香月

−−−−−−−−− 












香月、、、。







 

あたしは自分の胸に手を当てた。









"ドクッドクッ、、、"






香月があたしに語りかけてるみたい。

"俺はここだよ"って。







あたしは静かに泣いた。 










あたしの体は元通りになりインターハイ出場の切符を手に入れた。







 

100メートル走。決勝。隣のトラックには予選通過1位の強豪。









香月、あたしここまできたよ。

香月と一緒にここまできたよ。

何応援とかしてるの?あたし、1人で走るんじゃないよ。

だって、、、、







 

あなたから貰った最高の贈り物と一緒だから。









さぁ出番だよ。

香月行くよ。










これからがあなたとのスタートなんだから。







『位置について』









香月、準備はいい?







 

『よーい』










 

"スタート"




あたしはあなたと今スタートラインから勢いよく飛び出しました。













あなたからの贈り物を胸に、、、、




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