《おまけのエピローグ》
ところでね。新しい『はるぶすと』の候補地に建っている一軒家は、趣のある切妻屋根の建物だったの。
切妻屋根…?
私はもしやと思いながら、鞍馬くんに聞く。
「ねえ、ここの改装も、また親方に頼むの?」
「え? はい、坂ノ下さんにお願いするつもりですが、それが何か?」
やっぱり!
「じゃあ! 改装の交渉は私にさせてよ! 絶対だからね!」
「?」
鞍馬くんは変な顔をしてるけど、もしもこの仕事を親方に任せたら…。
きっと『はるぶすと』はグリーンゲイブルズになるわよ、間違いない!
現に、遅れてやってきた親方が、その建物を一目見たときの喜びようと言ったら。
「鞍馬くん! これがあたらしい喫茶店にしようと考えている建物かね?」
と、子どものように目を輝かせてるんだもの。
そこで私はきっちりと釘を刺す。
「屋根は緑に塗らないで下さいね」
押し殺すような私の声に、親方はキッとなって反発する。
「なんでだね?」
「『はるぶすと』は、グリーンゲイブルズじゃありません!」
「ああ、そうだ。だが、この切妻屋根! これを他の色に塗るなど、わしには出来ん!」
「でも、依頼主は私です!」
バチバチっと飛び散る火花。
鞍馬くんと夏樹は、そんな2人のやり取りをあきれながら見ていたのだった。
その後も親方と私の攻防は続いていたが、そこは2人とも大人? だ。
何度も検討した上で、じっくり見れば緑だとわかるが、ぱっと見は黒っぽく見える屋根にすることで、何とか交渉は成立したのだった。
ただ、外壁の色や窓の感じ、そして内装は各自の私室に至るまで、とことん親方の趣味が最優先だったのは、致し方ないか…。
そして春――、新生『はるぶすと』がオープンします!
了
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
今回は、春人が日本に来るところから、シュウの出来上がりや、また彼の昔話など、なかなかバラエティに富んでいたのではないかと思います。
『はるぶすと』は、冬里を迎えて、まだまだ進化していきそうですね。
またいつかお会いできる日を楽しみに。来て下さった皆様に感謝を込めて。




